やってきた宿営地に辿り着くと、唐突に脳裏に声が響く。
声が聞こえるか?とかこっちに来いと言う類の声だった。
「私についてきてください!」
ルークが意気揚々と走っていく。
……ここで捻くれて着いて行かない、と言うのはありなのだろうか?
「いや、素直についていくかぁ」
そうして辿りついたのは宿営地の宿泊施設。
いや、雑魚寝なんだけどね?
しかも程度も最悪でコレで寝泊りするのに300Gも取るらしい。
「ありえない。これなら野宿選ぶぞ、俺は」
「現在ドラゴンの影響かゴブリン等の魔物や心悪しきモノ達が非常に強暴になっております。なにせ、大の大人がゴブリンの棍棒の一撃で即死するほどですぞ?…っとそんな事よりもあちらの『リム』に触れてください。これ以上の話はそこからです」
「……仕方ないな」
宿泊施設は木で組まれた簡素なテントだ。
モンゴルなどの移住民族が使うようなキャンプみたいな感じだろうか?
その建物の置くにデデンと何か渦巻くように文字が書き込まれ、中央に文様のある石があった。
「これは……村で見たやつと同じか?」
付け加えると、先日の夢でも同じ様な石、いや碑石か?それを見ている。
─ようこそ…私の声が、届いていますでしょうか?
「このリムから、聞こえているのか?」
思わずそう口にする。
─遠い場所からお呼びかけしています。
我々ポーンの民は…あなたを待っておりました。
「……ポーンの民?ルークと同じポーンか」
─わけあって、先ずはこのような形でのご接触となる事をお許しください。
─これは"リム"…我々ポーンがこの世界と繋がる為の、門のようなもの。
「(世界と繋がる門?異世界の住人って事なのか??もしかしてコレを経由して別の世界とか、いけるんだろうか?)」
─そして…覚者(かくしゃ)は強い意志と勇気を持って、我々ポーンを従える存在。
─あなたがそうだとおっしゃられるなら…その証、示していただけますでしょうか?
「(……証?何を示して証といってるんだろうか?)」
問われた内容に思いつくものも無く、仕方ないので聞き返す。
「示すのは構わないが、何を示せば良い?」
─わかりました、私が案内を務めます。
─これから課題をお伝えします。覚者の力があれば、達成はたやすいでしょう。
「……課題、ね。イージーな課題だと嬉しいんだけどね」
とか思っていると…。
─覚者たるもの、かかる脅威に立ち向かい、万難を退けなくてはなりません。
─"弛まぬ向上心"こそ、我々を繋ぐ絆。その証、ぜひお示しください。
「……了解だ。まぁ、竜退治をしようと言うんだ。俺の根性、見せてやる」
そう言いつつ外に出ると褐色の肌の騎士らしい重装備の女が出て直ぐのところに居た。
「お前、徴募隊に参加するつもりか?」
そう言ってこちらを値踏みするように見る。
「良い体躯をしているが……興味があるなら、参加を希望するといい。必ず受かるとは限らんが」
そう言ってぷいっとそっぽを向かれた。
「ありがとう。気が向いたら参加してみるとしよう」
とりあえずの礼を言い、ぶらぶらと宿営地を散歩していると俄かに騒がしくなり始める。
「こっちだ、やつが来るぞ!」
どこかでそんな声が聞こえた。
見渡してみると東門の方で何か騒ぎが起きているようで、兵士がそちらの門をくぐり外に出るのが見えた。
「もしかして襲撃か?……行って見るとするか?あ、そうだ念の為に油矢を用意しておくか」
実のところ、弓を持って入るが矢はキチンと用意していなかった。
薪木をいくつか持っているのでコレと油ビンの油を利用して簡単な矢を作ればあっという間に油矢だ。
コレを用いれば相手を燃やして火達磨にしやすく出来る。
更に都合のいい事にルークは魔法使いであり、炎を放つことが出来るし炎の魔力を武器に付与することも出来るのでコレを用いれば相手を火達磨というわけだ。
そう思いつつ矢をあっという間に作り終わり矢筒に入れて現場へ向かう。
「覚者様はとても手が器用なのですな」
「なに、物を作るのは好きでね……っておいおい敵はサイクロプスかよ……この辺りじゃ余り見かけないはずだぞ?」
目に付いた相手、サイクロプスの巨体は既に血塗れだが単眼を真っ赤に燃やして大暴れし兵士を一人、また一人と殴り飛ばしていく。
サイクロプスが勝利の勝ち鬨なのか声を上げた時、うっすらと赤い模様が見えた。
「覚者様。今、ヤツの額に妙な文様が」
「見えている…けど、それよりもヤツを止めることが重要だ」
宿営地自体はぶっちゃけどうなっても構わないが、その先にあるのはカサディスだ。
「ここで負けるわけには、行かないよな」
「援護します、ヤツの目を射抜いてください!」
「任せろ!射撃は得意だ!」
油矢を弓に番えると、即座にルークのファイアギフトが飛んでくる。
「一気に決めるぞ!」
矢を同時に指と指の間に3つ挟み集中して高速で連射する"連なり射ち"は得意技の一つだ。
二度ほど連なり射ちでサイクロプスを攻撃するが、目に当たったのは僅か三本。
「ち、燃やすには至らないか」
「覚者様!あぶない!!」
何時の間にか至近距離までゴブリンが近づいており、棍棒を振りかぶっていた。
「っ!」
この瞬間、全意識を集中して更に弓を番えて、放つ。
「ギャアアアア!」
矢は振りかぶったままのゴブリンの頭に突き刺さり、更に盛大に燃えていた。
「ルーク、ゴブリンへの牽制を頼む!俺は引き続きやつを狙う!」
引き続き、弓を射続けるが、そろそろ矢の数が心もとなくなってきた頃、サイクロプスがこちらめがけて大ジャンプしてきた。
「避けろー!!」
叫びつつ回避行動。
スタミナだけは自信が有ったおかげか即座に回避する事に成功するも兵士が一人、踏み潰されていた。
しかし、何が気に食わないのか更に踏み潰そうと足を上げる。
「そこだ!」
ルークがファイアボールを持ち上げられた足に放つと重心が不安定なったのかサイクロプスがぐらつく。
「今です!ヤツの軸足を狙ってください!」
「任せろ!」
背負っていた弓をしまい、今度は双短剣を手にサイクロプスの軸足となっている左足を無我夢中で切りつける。
「こいつは、おまけだぁ!!」
そしてトドメにソバットを決めると完全にバランスを崩し、前のめりに手を突いて倒れこむ。
「今です!ヤツの目を潰しましょう!」
「やぁああってやるぜ!!」
大声で叫ぶと周りのまだ戦える兵士も状況に気付いて駆け寄り剣を振るう。
そこからはもうあっという間だった。
元々消耗していたというのもあるが、短剣とはいえ急所を何度もえぐる攻撃にサイクロプスは遂に耐え切れず力尽きたのだ。
「ふぅ、冷や汗かく場面もあったけどなんとかなったな」
「上出来でしょう」
簡単にでも褒められれば嬉しくなるのは俺が単純だからだろうか?
「んじゃ、もどるぞ」
「はい」
そうしてリムの前に戻るとリムから課題達成を告げ、俺を真の"覚者"であると認めた。
……ルークを見ると、誇らしげに笑みを浮かべながら胸を張っていた。
そして、専従のポーンを選べと告げてきたのだった。
その瞬間、ふとイメージが沸いてきた。
常に自らの隣に立つ、最高のパートナー。
そして、共にある事で安堵を得ることが出来る最高の仲間。
そんなイメージが沸いた直後、リムによりゆがめられた空間の歪から一人の少女が現れた。
金髪をポニーテールにして翠と赤の猫眼をした杖を持つ少女。
彼女が降り立つとポールが口を開きひざまずく。
「ここに契約はなりました、覚者様。これよりポーンの民全てがあなたに付き従いましょう」
気付けば、入り口の方には何時の間にか何人もの人…いや、ポーンが居た。
「そうか……よろしく頼む」
今日のNG① ミス=即死
油矢を弓に番えると、即座にルークのファイアギフトが飛んでくる。
「一気に決めるぞ!」
矢を同時に指と指の間に3つ挟み集中して高速で連射する"連なり射ち"は得意技の一つだ。
二度ほど連なり射ちでサイクロプスを攻撃するが、目に当たったのは僅か三本。
「ち、燃やすには至らないか」
「覚者様!あぶない!!」
何時の間にか至近距離までゴブリンが近づいており、棍棒を振りかぶっていた。
「っ!」
この瞬間、全意識を集中して更に弓を番えて、放つ。
「ギャッ」
俺は矢を完全に外し、ゴブリンの棍棒が俺の脳天を叩き割った。
今日のNGその2 足元ご注意
「ふぅはははは!今度はゴブリンに殺される前に殲滅したから後はサイクロプスだけだー!」
「覚者様、メタすぎます!」
勢い込んでサイクロプスの足元に取り付き切りつけ続ける!
「グゥアアアアアア!」
怒りに燃えたサイクロプスは素早く足を持ち上げ。
「「あ」」
プチっと二人を踏み潰したのだった。