とはいえ、この世界の場合はGE1主人公枠と同等が複数いるので世界観的な難易度がハードですが、人員的には少しマシです。
極東支部に行くと宣言される以前から答申を続けていたフライヤは、気付けば大分極東支部に近づいていた。
具体的には明日には極東支部(旧・藤沢市)に付きそうだというぐらいだ。
ちなみに俺がフライヤに着いた当時は欧州の何処かにいた筈だ。
何処か、と言うのは……残念ながら、日本の外…というか神奈川県外の地理は詳しくないしそこまで気にしてなかったから特に気にしなかったのだけど、大体がシルクロードか海を渡る感じだった。
ただ、当然の話だが海中にもアラガミは存在し、そしてGEは残念な事に陸戦専門の歩兵部隊なので水中の荒神に対しては全力で逃げるぐらいしか手段が無かったのだった。
ちなみに、俺も水中戦は非対応だ。
ドラゴンズドグマの世界で神の座に至ったけど、それは権能的な話で戦闘能力に水中適正が生えた訳じゃない。
神様ならその位どうにかできるんじゃないか、と言われそうだが俺の得た権能は所有する世界の改変能力で、所有しているわけじゃないこの世界で好きにあれこれできたりしない限定的なものだ。
この世界でそれをする権限は持ってないので、自前の能力で魔法を放ったり出来たがそれだけだ。
そんな事を振り返っていると、館内放送でブラッド隊全員にブリーフィングルームへの呼び出しがかかった。
『現在極東支部に向けて、赤い雨の中を移動中です──』
「赤い雨かぁ、前回の神機兵護衛の時のだよな、濡れるとマジでヤバいんだろ?」
ロミオが館内放送にあった赤い雨について何とはなしに声に出す。
「正式には『赤乱雲』ですね、赤い雲から降り注ぐ赤い色の雨。極東で確認されている最も危険な現象です。
赤い雨に濡れる事で発症する蜘蛛のような入れ墨模様の痕から黒蛛病と呼ばれています」
俺が答えようと思ったところでシエルが先んじて口を開く。
「そして、感染すれば現在のところ、死亡率は……100%」
「んで、雨の中を万が一にも戦う場合は専用のレインコートを着て戦うんだが、破けでもしたらそれでおしまいだからな。
だからこそ、俺は赤い雨の中でも動ける神機兵の完成に期待してるんだよね……いや、本当に頑張って欲しいんだけどなぁ」
そもそも、神機兵を望む理由は赤乱雲対策のみならず、不足する前線の人員対策、重機の代用などもある。
特に今まで活用できなくて余らせていたスラムの人々が定職についてくれれば、治安も良くなるしサテライト拠点を増やしていく事も出来る。
現場の負荷もだいぶ軽くなるのは言うまでもないだろう。
ただし、現時点ではまだまだ先の話だな、と思わざるを得ないのが実情だ。
赤乱雲のかかるエリアを抜け、極東支部に近づくにつれて再び進路上のアラガミ退治で出動したりなんなりと言う話も出て慌ただしくなる。
フライヤのロビーで全員で飲み物を飲みながら軽いデブリーフィングをしているのだが、全員やや疲労気味になりつつある。
「前の支部で噂には聞いていたが、出撃頻度が段々と多くなっていくな」
「極東……旧日本に着いてからだよなぁ」
ギルとロミオがぼやいているが、その認識は甘い。
「言っておくけど、この辺りはまだマシだからな?中型種と同時に3~4種と戦って雑魚も沸いてとか、今回は接触が無かった大型とか普通に連日戦い続ける羽目になるから覚悟する様に」
「そういえば、極東支部のGEの人達は連日どころか前線で泊まり込みで狩りもする事があるんだっけ?」
俺が言うとヒロが思い出したように言う。
それに対してジュリウスが思い出したように口にする。
「そういう話はこちらでも確認している。ブラッド隊も最初の内は慣らしとして彼等よりも出撃ペースは控え目にしておくが慣れれば彼等と同程度に出撃する事になるだろう。
特に感応種に対しては我々ブラッドが優先して対応しなければならない……ヨシアキ注意点などはあるか?」
ジュリウスが俺に振ったのは極東での経験の有無ゆえだろう。
「勿論それは迅速に討伐対象を片付けること、討伐対象を退治したら迅速に帰還する事ですね。
GEになってから実感したが、俺達は時間制限付きの活動しかできない。
極東は下手に戦いが長引くとどんどん敵が群がる、グレム局長曰く『アラガミの動物園』だから事前情報からどれだけ対策を用意して任務に臨めるかが鍵だな」
俺がそこまで言い終わると今度はナナが手をあげる。
「はいはーい、対策って例えば?」
「携行品は当然として、他はやはりオラクルバレット等でしょう。
予め討伐対象が分かっていれば相手の苦手とする属性のバレットも用意できますし、バレットエディットで飛行型や守りの堅い相手の対策バレットも組めます」
「そうだな、狙撃型なら小型種を一撃というのはそれなりにあるし、大口径や散弾タイプなら中型を一撃と言うのもたまに聞く話だ。
アサルトは相手の足止めには最適と言える、普段は使わない銃身タイプを使ってみれば新しい発見もあるだろうな。
後は……そうだな戦場跡などでt間に見かける『遺された神機』からのデータを得る事でスキルソフトを生成し、刀身、銃身、装甲それぞれのパーツに焼き付けていくスキルインストールがある。
神機が強化されれば俺達にも腕輪越しにフィードバックされそれなりの強化に繋がる。
もし拾う事があれば積極的に活用すべきだな」
「強くなる方法って結構色々あるけど、あれこれ考えると目が回っちまうなぁ」
「けど、スキルインストールとか考えると、いわゆる『僕の考えた最高の神機』とかできそうだよね、そっちを考えると面白そうかな」
ロミオはぼやくがヒロは楽しそうに言う。
「俺もパーツの合成や強化を考えると、それが楽しみだ」
「いや、ヨシアキはパーツ作り過ぎだからね?そのせいでいつも金欠じゃん。
もっと作る物絞んなよ」
俺が言うと、ナナが呆れたようにツッコミを入れる。
「い、一応絞ってるぞ?」
扱うのが苦手な重量系のハンマーや大剣、ショットガンとブラストは諦めたし。
「普通、刀身の方ももっと絞るものだがな。大体の場合、一つに絞るが多くても3種類だ」
「うむぅ、コレクターには理解者が居ないというのか…」
そうして極東支部に到着してしまった。
この世の荒神全てが集う『アラガミ動物園』と呼ばれる極東に。
GEと偵察班は過労死か戦死が多いと冗談で言われる極東に。
「コレクションと残高がばれたら、姉ちゃ…姉上にシバかれる」
俺には故郷の懐かしさよりも、身内への恐怖しかなかった。
そして、フェンリル極東支部、通称アナグラの士官居住区のとある士官の元に俺は出頭して、其処の住人にフライヤでの活動を余さず報告した。
「まるで貯蓄しておらんではないか、この馬鹿者が!!」
俺の浪費が既に癖になっているのを知られて義理の姉から見事な雷を落とされた。
相手も元GEだけあって、その攻撃力はGEになった俺の頭に見事なたんこぶを作る威力だったとここに記しておく。
俺の義理の姉、雨宮ツバキの説教をする姿を見て、義理の兄であるリンドウも苦笑いだ。
「ほれ、ヨシアキ、今は外の奴らの所にも顔を出しておけ。
偵察班の奴等だけじゃなく、コウタやソーマ、特務の奴等にも顔を見せておけよ」
「いつつ……了解です兄上。
んでは姉上、挨拶回りに行ってまいります」
ヨシアキが逃げるように去るのを見てツバキはため息をついた。
その姿は姉と言うよりは母親みたいだなとリンドウは思いつつ声を掛ける。
「まったく、手が掛からないと思ったら思わぬ癖が付いちまったもんだ。
まぁ、仕事漬けの無趣味よりは遥かにマシになったと言えるか」
「とはいえ、聞く所によれば仕事漬けなのは変わらないそうだ。
ヨシアキは戦闘のみならず、先行偵察も含めて出動率が高過ぎだ」
極東において、偵察班に所属していたころのヨシアキの直接の上司は本来支部長となるのだが。
彼の場合、年齢が理由で本来ただ保護者としてある筈だった雨宮ツバキが監督者も兼ねている。
フライヤからの一時帰還の報告は既に支部長にしてあると言っていたが、過去の癖なのか自分にまで報告に来たのは呆れるべきか、とツバキは思う。
「いや、姉上…それはアイツなりに身内への気遣いじゃ?」
「だとしても、詳しく報告しすぎだ機密ギリギリまで言いかけていたぞ」
「あ~……それは何の擁護も出来ないな」
しかし、とリンドウは思う。
「おそらく、ここからまた激動の日々が始まるな」
「それは……ユウ達が来た時のような?」
ツバキはウム、と頷く。
「第二世代神機の極東での運用が始まったあの頃、アラガミの活動は数倍にも活発化した。
原因も理由も不明だが、それに呼応するように第二世代の使い手が、しかも今では特務を受け続けられる凄腕になる者達ばかりが揃ったのはまさに天啓とも言えた。
そしてあの事件を乗り越えてホッとしたのも束の間、感応種と赤乱雲……そして感応種に唯一対処可能なブラッド隊。
波乱を予想するなと言う方が無理があるだろう?」
「それにあいつは『神機無しでアラガミを殺していた』から、ですか?」
「そうだ……私の先輩の息子だったから気にかけていたのだが……全く参ったものだよ」
先輩、と言うのはツバキが現役だった頃のメカニックの夫婦だ。
ツバキの現役時代には共にアナグラで暮らしていたが、何時しかアナグラの外に出て今のサテライト拠点の基礎となる研究に手を貸していた二人だ。
その二人の子供の事は自分が少女と言える頃から知っており、リンドウと共に可愛がっていたのだ。
何年も前にアラガミの群れにその集落は蹂躙されてヨシアキの他に僅か数名だけが命を拾った。
「あの時に集落を襲ったアラガミの幾つかの死骸は当時消えずに残っていた、そしてどれもコアのみを真っ直ぐに刺し貫かれた様子で死んでいた……姉上の判断で神機に捕食させてなけりゃ、アイツも危ないっていうのは直ぐにわかりましたしね」
解り易く、死体の直ぐ傍で剣の様な何かを片手にダウンしていたヨシアキを見れば誰もが何があったか一目瞭然だろう。
神機使いでもない人間がアラガミを殺す。
それはある意味全人類への朗報でもあるかもしれないが、それだけに慎重にならなければならない。
何せ、偶然ではあるがヨシアキのその件に神器のブレードの端っこが触れてしまった際、まるで豆腐を切るかのようにスパッと切れてしまったのだ。
直前に自分が触れた時は完全な鈍らで握っても問題ないと思えた剣でだ。
神機でも何でもないただの剣の様な何かは、得体のしれない何かヤバイものだと二人に直感させた。
しかし、それは二人が知るヨシアキが持つのならば悪用する事は無いとも思えた。
だから二人はこの事に触れる事無く、何時の日にか来るであろう嵐の時まで自分たちの元で見守ろう、と思った。
そんな二人の想いをよそにヨシアキはアラガミに対し能動的に動くことを望んみ、紆余曲折あって今のブラッドへと配属された。
「姉上、そろそろ」
「わかった。直ぐに出よう」