俺は未だにお呼びが掛からないので、滞在費稼ぎと武具の新調に掛かる費用を稼ぐ為に、カサディスの村長を眩みの砦まで護衛したり、レイナードをドラゴンが居るであろう山の麓の砦まで送り届けたり、何度もキメラと武装したサイクロプスに襲われたが全部返り討ちにした。
つか、キメラはアレ強いんだか弱いんだか分からんな。動き回られると厄介って感じだが。
サイクロプスに関しては、近づかずに遠距離から射殺したり魔法寺くらい食らわせればいい感じだった。
そうしていると、マリーが好い加減焦れて来たのかこう言った。
「はやく、ポーンギルドに、行きましょう」
ポーンギルド、それはポーンがいっぱい集まってる場所。
そこに行くと、ポーンのバーナビーというギルドの運営に携わる男が居て、そいつに頼まれてギルド地下……正確には領都の地下に存在するエヴァーフォールの様子を見に行く事になった。
バーナビーやポーンギルドの役目はここの監視にあるらしいのだが、色々と手が回らないし危険なのでお願いしたいだとか?
……いや、わかってるぜ俺は。
お前もあの教官殿(バーン)同様に嘘みたいに強いんだろ、本当は!!
なんてことは口にも出さず、連れていたポーン達が凄く乗り気だったので『No』という前にエヴァーフォールに入る事になってしまった。
俺に、選択権なんて、無かったんだ。
そうして潜るエヴァーフォール。
最下層まではやたらと螺旋の坂道が続く。
「……やっべぇ、今までの相手を思い出すとこの道のりがベリーイージーに感じる」
げに恐ろしきは盗賊やキメラ、スノーハーピーやサルファーリザードマンということか。
奴らに比べればここで出てくるゾンビやスケルトンなど雑魚でしかない。
途中でオーガも出てきたのだけど……ヤツは何故か飛び降り自殺をした。
魔物にも、自殺するような衝動的な何かってあるんだろうか?
楽だったからありがたいけど。
そしてエヴァーフォール最深部。
ひび割れた床と中央のデカイ謎の紋章。
ひび割れた床の下からは青白い光が漏れ出しており、紋章のイメージは何となく『蓋(ふた)』という印象だ。
「何なんだろうな、コレ」
「分かりません……しかし、ここはなんだか嫌な気配が濃いです」
そんな会話をしていると、周囲のほか二人のポーンが驚きの声を上げ警戒を促す。
「な、なんだこりゃ!?触手??!!」
「地面から出ているように見えますが、何も無い所から生えて来ているようです!」
「っ!?取り敢えず迎撃ッ!!」
そこかしこに生えてくる触手。
明らかにごんぶとで、エロ目的では役に立たないなーとか、寧ろグロ目的という一文字違いになるなーとか考えながら戦ったせいか、背中に触手の放ったファイヤボールが直撃。
「うぉわ!?」
慌てて応急薬を飲み込んで回復。
この世界、飲むだけで結構速攻で回復するのだ……世界が違うだけどここまで色々と差が出る物だろうか、と思ってしまったのは本当に仕方が無いことだと思う。
「マスター!劣勢です!!このままでは包囲されてしまいます!」
「くそ、地上まで駆け足!!急げよ!!」
何度か吹っ飛ばされたり、焼かれたりしながら地上目指して走る走る走る!
「くそっ!高々触手の癖に魔法使うとか生意気だ!!」
触手のなぎ払いを飛び越え、魔法を飛び込み前転で回避し、なんとか地上に辿り着いた。
ココまで来ると流石に敵の気配はしてこない。
多分、エヴァーフォールの螺旋の中限定なのだろう。
「……ってワケだ。報告はコレだけだ」
「そうですか……。実のところ、エヴァーフォールについては我々が把握している情報はさほど多くありません。しかし、今の報告にあったような異変はこれまでには無かった物です」
バーナビーに伝えると深刻そうな表情でそう口にされる。
「ともすれば、その様な僅かな歪みが大厄の引き金となるのは、まま有ること。些少とはいえ、その可能性から目を背ける訳には行きませんね」
「そうだな。今回はエヴァーフォールの内部だけで済んだが、アレが外にあふれ出たらと思うと洒落にならない」
無限沸きの触手がそこかしことか、それなんて悪夢?
考えたくもない。
「我々はより注意深く、この地を監視し、更なる予兆に気を払う事にいたします」
「あぁ、任せた。俺も時々ココによる事にするよ。それじゃ、またな」
そう言ってギルドを出ようとすると、外から勢い込んで兵士が走りこんできた。
「貴殿が覚者様にあらせられますか?」
「あ、あぁ…あんたは?」
「自分は城からの使いの者にございます」
兵士は俺にハイドラの剣によって俺に竜征伐任務を許可するということが決まったと告げ、竜征伐任務の証を渡して、詳しい事は城の前に居る担当兵士に聞いて欲しいと言ってさっさと去ってしまった。
「あわただしいヤツだな」
「兵士も暇ではない、ということでしょうか?」
「……けど、直ぐに行く必要は無いな」
そうおもってポーンギルド周辺、職人区を回ってみると、鍛冶師がおお泣きしているのが外からでも分かるように見えていた。
「なんか、あからさまだけど……ま、話だけでも聞いてみようかな?」
そう思い、俺はおお泣きしている鍛冶師に話しかけようと思い、火事場に足を運んだのだが、火事場には妙に似つかわしくないモノが倒れていた。
それは、死体だ。
しかしその死体は怪我の痕跡や病気による苦悶の後も見えず、まるで突然死でも起こしたかのような様相だった。
俺はいぶかしみながらも鍛冶師に話しかけると、その死体が息子で、今朝突然死んでしまったとげ、藁にも縋る思いで『集めれば死者を蘇らせることができる』という謎の物体を集めて欲しいと俺に依頼してきた。
「あ、これなら持ってるな。2個ほど」
と口にした瞬間、その謎の物体、竜の心臓の欠片と呼ばれるそれが輝き、まるで磁石のようにくっつき、一つの塊となった。
「……まじか。いや、都合がいいな」
竜の心臓を手に持ち、鍛冶師…オースティンの息子の胸の上にかざすと不思議な光を放ち、オースティンの息子の胸に吸い込まれるように消えた。
すると、オースティンの息子はまるで寝起きのように起き上がり、復活した……。
「……さすがファンタジー。死者蘇生も余裕か!」
思わずこんな事を言ってしまったけど、俺がこんな事を言うのも仕方ない。
ポーンを含めた周りの奴らも吃驚仰天してるんだから。
その後、感謝の言葉の嵐を受けつつ俺は竜征伐任務の担当へ意思に会いに王城の手前の門がある、富裕区に向かう。
「あなたが覚者殿ですね?」
「あぁ、俺がそうだよ。これ、さっき兵士に渡された証文だ」
「ホンモノですね。私の名はマクシミリアン=アイゼンシュタット。領王様より、竜征任務の指揮を撒かされております」
そういって、マクシミリアンは竜征任務の説明を始める。
基本は竜に関する情報収集を主とし、国民の為に頑張るのだーということらしい。結構は背負ったがそんな感じだ。
そして、彼らは"覚者"に対し可能な限りの協力を惜しまぬように命じているらしい。
「貴殿の活躍には、みなの期待が掛かっておりますよ。是非!ご協力を!!」
「お、おう!任せてくれ!」
マクシミリアンの勢いに押され、思わずその場の勢いで返事をしてしまった。
だけど、俺は竜退治を目指しているのだから協力事態に問題はないだろう。
「では、早速任務へのご協力をお願いしたい!」
「わかった。俺が出来る任務は?」
そう言って掲示された任務は4つ。
石版の解読任務、眩みの砦を兵士たちと共に奪還する任務、『救済』の一派に対する潜入調査、教会の遺跡調査に対する協力だ。
「近場から、順番に片付けるか」
「そうですね、効率的にやるべきです」