このちっぽけな心眼で俺は、異世界成り上がりを果たしてみせる   作:ささんさ

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3 『心眼の力とステータス』

「何か説明の前に質問はあるか?」

「あ、あの。こういう……異世界召喚って国の重大なイベントな訳でしょ? そういうの普通、王様が立ち会う物なんじゃないんですか?」

「──私のお父様とお姉さまは多忙でな、第二王女の私に鉢が回ってきているのだ。聞きたいことがそれだけなら、早速説明に入るとしよう」

 

 さて場所を変えて、有栖たちは華美な装飾に彩られた室内にいた。そこには中世ヨーロッパ風の調度品が並んでおり、おそらくは客間なのだろう。

 有栖と二人の召喚者は各々、長テーブルの上座に座るアルダリアとの問答に参加している。

 身長も縮んでいる有栖は、足をブラつかせて視線を動かす。

 

 長テーブルの向こう側には、柳川明美が座っており、裕也は一人立って聞いている。

 話途中にこちらへ時折、好奇的な視線を飛ばしてくる柳川。道中に「この子可愛い!」とはしゃいでいたから、きっと有栖の外面に関心があるのだろう。鏡がないため自分の姿が確認できないが、おそらくは大層可憐な少女の形をしているに違いない。

 中身が男なのは、有栖の嗜好で言うのなら落胆せざるを得ないのだが。

 落ち着かないためか椅子に座らない裕也は、右頬が紅潮している。

 だが羞恥の念を感じている訳でもない。  

 ──まさかバーチャルじゃないって証明する方法が物理だとは思わねーよ……。

 夢か現か判断するために頬を抓るような解決法だ。

 ちなみにその執行者は、第二王女と名乗るアルダリア。

 双方の了承はとられていたが、御愁傷様である。 

 

 裕也は「夢だけど、夢じゃないのか」と呟いていたところから察するに、やっと現実と認識したらしい。

 田舎に越してきた姉妹みたいな感想だな、と思わないでもない。

 

「……さて、我が国は他国で召喚された異世界人の危機に晒されている。異世界人は皆、何らかの特権、スキル、身体能力の異常性を持っていて、こちらの世界の人間ではごく少数を除いて到底太刀打ちできない。故に今までも我々は周辺の巨国に苦汁を舐めさせられてきた──だが、それも今日まで。君たちを召喚したのは他でもない。その雪辱を晴らす、我らの『光』になって欲しいのだ」

 

 テーブルの上座に腰を下ろすアルダリアの話によると、こうだ。

 

 この世界において、数百年前から異世界召喚という奇術を扱える者たちが出現し始めた。

 召喚士と呼ばれるこの者たちは、あまりの有用性に国の争奪戦となったと言う。拉致、誘拐、監禁──様々な方法で召喚士たちは従えさせられていったらしい。

 そうして遂には国同士の闘争をも呼び、丁度百年前には大国が激突。

 召喚された異世界人たちは猛威を振るい、野を焼き、街は焦土と化したそうだ。

 星自体をも荒廃させんとする大きな戦いは二十年経ち終戦。

 帝国と呼ばれる戦勝国が、各地の国と和平を結び、今は比較的平和であるらしい。

 しかし表立った諍いがないだけで、今も異世界人を使った侵略や略奪が行われていると言う。

 そして有栖たちを召喚したダーティビル王国も、隣国の異世界人たちに苦戦を強いられている現状だそうだ。

 

 ──おい、変態神。どこがベタだこの野郎。

 魔族と戦う勇者を想像していた有栖としては、当てが外れて拍子抜けする。

 加えて、見逃せない言葉もあった。

  

「ち、ちょっと待ってください! つまり俺たちは、戦争の道具にされるってことじゃあ!?」

「そうだ。こちらの世界にとって、異世界召喚とは傭兵雇用にほぼ等しい。違うのは、異世界人とは事後承諾する関係というだけだ」

 

 憂いたような顔をするアルダリアは、惜し気もなく言い放つ。

 この世界では、異世界人は戦争の道具とされていると。

 そして我々もその例外ではなく、異世界人を戦争に利用する腹積もりだと。

 本来ならば隠すべき本性と本音を、愚直にも、実直にも裕也たちに伝えていた。

 悪感情は当然湧くものの、あまりに清々しい言い様に爽快さすらも感覚しそうになる。

 裕也と明美も一瞬、ぽかんと口を開けたが、

 

「そんなこと、俺たちが了承する訳ないじゃないですか」

「当然だろうな。だからこそ、こちらの世界には異世界人を縛る『首輪』がある」

 

 糾弾するような裕也の声は、アルダリアの取り出した物体を見た瞬間に萎れてしまう。

 それ(・・)は、ビー玉を連想させる色とりどりの球体だった。

 彼女の白い手のひらに転がる球体は三個。

 そのそれぞれは、赤褐色、藍色、黒色に淡く光りを放っている。

 

「これは召喚された者を使役する『首輪』たる、『(こんかい)』と呼ばれる物だ。これを私が掌握している限り、君たちは私に逆らえない。暴力は勿論、反抗自体もな」

「そんなこと──」

「試してみるか?」

 

 裕也を遮って、アルダリアは三つのうちの一個である藍色の玉を摘む。

 そして深呼吸を数回繰り返した後、アルダリアは小さく呟いた。

 

「跪け」

 

 その言葉が放たれた途端、直立していた裕也の体が崩れ落ちた。

 息を呑む有栖は、それが倒れた訳でなく──アルダリアの口上通りに跪いているのだと判った。

 動作を行った本人である裕也も「な、な……え?」と動揺していることからも、それが彼の意思とは無関係な行動であることは明白だ。

 

「これで納得したか? やりたければ飛び掛かってきても私は構わない。ただその場合は多少過激なことになるだろうが」

「いや…………もう十分です。くそっ、何だこれ冗談じゃないぞ」

 

 掠れた声で裕也は制す。

 語尾の吐き捨てるような声は一段と小さかったが、きっとアルダリア本人にも聞こえている声量だ。

 しかしそれに頓着せず、彼女は柳川と有栖へ問いたげに視線を寄越す。

 話を進めても良いか、と。そう言うように。

 

 良い訳ねぇだろ裕也も何あっさり納得してんだよ脅迫だろこれ。

 というのが有栖の本音である。

 

「…………」

 

「意見はないようだな。それで、だが」

 

 ただし本音を口に出すとは言ってない。

 有栖は様子見のため口を開かなかった──と言うより、下手なことを口にして怒りを買いたくないと慄いていた──が、柳川はそこまで臆病者ではないようだった。

 震えるような声で彼女は抗議を口にする。

 

「ストップです! で、でもうちら、そういう戦うみたいなことは出来ないですって。って言うかうちらただの一般人! そういうのはほら、軍人さんとかに……」

「先刻も言った通りだ。我が国の盾と成ることが役不足ということはあれども、異世界人が力不足というはない。そうだな……ステータス画面を見せた方が早いな」 

 

 アルダリアはそう呟くと、

 

「自分の状態を確認すると、そんな感覚を頭で念じてみてくれないか?」

 

 その唐突な要求に裕也と明美はたじろいでいた。

 だが他人事気分の有栖は「変態神がなんか言ってたな」と思い出して、すぐさま頭でステータス表示をするように念じてみる。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 アリス・エヴァンズ Lv1

 年齢:──

 種別:人類種

 

 HP(体力):120/120

 MP(魔力量):100/100

 

 STR(筋力):12

 DEF(防御力):15

 INT(知力):10

 AGI(敏捷):50

 DEX(器用):25/100

 LUK(幸運):40/100

 

 《アクティブスキル》

 【|凡(すべ)てを見透かす心眼:Lv1/3】 射程:視界範囲内 魔力消費:なし

 視界範囲内の、精神を宿した者の心を()る神託の力。

 抱え込む隠匿はこの能力の前に等しく無力である、女神の澄み切った瞳。

 

 《パッシブスキル》

 【言語翻訳C】

 世界を移動する際に自動付与されるスキル。

 他世界の標準言語を、アリスが認識できる言語に自動翻訳する。 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 誰だよアリス・エヴァンズって。

 何よりも先に有栖が突っ込んだのは名前だった。

 遠藤有栖。アリス・エヴァンズ……全く似ていないのだがどういうことだろう。

 もしや異世界トリップではなく異世界転生をしたのかと疑ったが、そうでもないことが直後判明した。

 ……ってかエヴァンズって、あの変態神のラストネームじゃねぇか! 気持ち悪っ!

 叫び散らしたくなったが、そこはぐっと我慢する。

 神話的生物でも発見したのかと精神病院へ連れて行かれるのは御免だった。

 名前はもう諦めよう。そういう星の下に生まれてしまったのだ。

 響きだけは結構まともな名前になったことを幸運だと考えるのだ。

 

 それよりもそう、ステータスの内容である。

 ゲームそのままの表示は分かり易い反面、基準が判らないために今は判断できない。

 INTが文字通りの意味だとは思いたくないものだ。知力が低いと誤解を受けかねない。

 DEXとLUKについている、百の文字の意味は上限だろうか。

 確かに幸運も器用さも、数値がインフレすると判りづらいなと納得する。

 

 次にステータス下に表示されたアクティブスキル欄とパッシブスキル欄に目を移す。この二つの相違点は、RPGなどに出てくるため有栖は曖昧ながら掴んでいた。

 きっと起動して発動する能力がアクティブスキル、自動的に発動するのがパッシブスキルに違いない。

 変態神にニヤつかれながら授かったスキルは、アクティブスキル欄にある『心眼』の能力だろう。

 ──心を見通す力、か。

 中々に強力なのだが、あまり物理的な力がないのが辛い。

 右も左も分からない異世界において、武力がないのは結構致命的である。

 男には容易に押し倒されるだろうし、他の異世界人に太刀打ちするのは難しいだろう。

 それが変態神に危惧された点に違いないと溜息をした。

 何故かレベル表示がスキルにあるのも謎だけどさ。これ、もしかしてスキルが成長するってことか。

 巷に言う、スキルレベルという奴だろう。

 

 他の人のステータスは……と有栖は見渡してみるが、一向にステータス表示は現れない。

 きっと他人のステータス表示はできないのだろう。プライベート的に、それもそうかと納得する。

 ならば、この『心眼』のスキルならどうか。

 裕也たちは自分のステータス画面を眺めているらしく、難しそうな顔で唸っている。

 今、彼らの瞳には自己のステータスが映っているはずだ。

 それを見通せればと、有栖は裕也に目を凝らす。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 蒼崎(あおざき)裕也《ゆうや》 Lv6

 年齢:17

 種別:異世界人

 

 HP(体力):968/980

 MP(魔力量):250/250

 

 STR(筋力):195

 DEF(防御力):150

 INT(知力):70 

 AGI(敏捷):140

 DEX(器用):45/100

 LUK(幸運):70/100

 

 《アクティブスキル》

 【一撃にて屠殺する斬撃】 射程:近〜中距離 魔力消費:200

 上級剣士のスキル。

 手にした剣の一振りを、衝撃波如く前方へと放ち広範囲を諸共斬撃する。

 

 《パッシブスキル》

 【言語翻訳C】

 世界を移動する際に自動付与されるアビリティ。

 他世界の標準言語を、蒼崎が認識できる言語に自動翻訳する。 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ──おお、できた。ってか裕也俺に比べて強ぇよ……いや俺が弱いだけなのか。

 ステータスの強さとレベルは、裕也が圧倒的に上だ。

 アビリティ欄の【言語翻訳C】は有栖と同じ。Cの意味は計りかねるが、今は無視しておく。

 スキル欄には『心眼』の代わりに、何やら必殺技じみた物がある。 

 上級剣士のスキルと書かれているが、ゲームのように剣士という職業が存在するのだろうか。

 そもそも、『心眼』にあったレベル表示がないのも不可解だ。

 『心眼』のスキルは一応、特別な扱いなのだろうか。

 

 そして何より気にかかるのは、種別:異世界人の表示だ。

 同じく異世界から来たはずの有栖には、そのようなものがないのである。

 有栖の体が元の世界とあまりに違いすぎて、体が異世界人か判然としないためなのか。

 であれば、神から別枠として送り込まれた有栖に『魂塊』なる物体の強制力はあるのだろうか。

 ──異世界人じゃなくて、ただの人類種の扱いなら大丈夫そうだけど。

 

 疑問符が頭に浮かぶ有栖がじっと見つめている中、首を傾げながら裕也はアルダリアに、

 

「基準が判らないんで、強さがあまり理解できないのですが……」

「ああ、済まない。失念していた。一応私のステータスと比べてみると良い。大体こちらの世界の成人男性を少し越した程度の数値はあるはずだ」

 

 アルダリアは虚空で人差し指を振り、こちらの視界にステータス表がスライドしてくる。

 ステータス表を他人に見せることも可能なのか。

 そう脳内に知識として刻み込みながら、一旦疑問は保留にして送られてきたステータス画面に目を通す。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 アルダリア・フォン・ダーティビル Lv18

 年齢:19

 種別:人類種

 

 HP(体力):340/340

 MP(魔力量):210/210

 

 STR(筋力):65

 DEF(防御力):95

 INT(知力):55 

 AGI(敏捷):100

 DEX(器用):55/100

 LUK(幸運):10/100

 

 《魔術》

 【────】

 

 《パッシブスキル》

 【────】

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 魔術欄、そういうのもあるのか。変態神も「剣と魔法の世界」と述べていたような気もする。 

 であれば、何故に有栖や裕也の画面には魔術欄がなかったのだろうとふと疑問が浮かぶが、おそらくは魔術を習得しなければ表示されないのだろう。

 

 はてさて、とステータスを見ると……随分と幸薄い王女様だった。

 だがそれ以外は軒並み有栖のステータスを凌駕している。

 そしてそれすらも大幅に上回る、裕也のステータスは規格外なのだろう。

 とりあえずこれで、裕也が──と言うか、一般の異世界人が強大なのは大体証明できた。

 有栖のステータスが一段と貧弱なのは確からしいとも確認できて、実に重畳。

 予想通りだったが、改めて自身の弱小さに落胆する。

 

 そんな有栖を他所に、柳川が戸惑いながらも質問を口にした。

 

「あっ、あれ? 魔術とパッシブスキルってとこ文字が伏せてあるんですけど……どゆこと?」

「相手にステータスを渡す際、ステータスの一部分だろうが、スキルだろうが、魔術だろうが、自由に隠蔽することが出来る。親密度愛によって公開する情報を選ぶことも、こちらの世界では常識だ。かく言う私も流石に大っぴらには出来ない事情があってな。そちらは伏せさせてもらった」 

 

 苦い顔で申し訳なさげにアルダリアは答えたが、とんでもない。

 謝罪の必要もなく、最低限のプライベートなど普通は隠蔽するだろう。

 有栖も狭量とは言えど、そんなことで憤慨はしない。

 

 ──だって勝手に見るしな。

 最低なことを考えながら、アルダリアに『心眼』の力を行使する。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 《魔術》

 【治癒の雫】 射程:近距離 魔力消費:30

 治癒の初級魔術。

 世界を支える大樹から滴ったその雫は、傷付いた者を癒す。

 

 【灯火】 射程:近距離 魔力消費:10

 炎属性の初級魔術。

 射程の範囲で小規模な火を起こす。燃料がなければ数秒で消失する

 

 【燃え盛る火焔】 射程:近〜中距離 魔力消費:50

 炎属性の中級魔術。

 生み出す炎に核を与えることが出来、炎弾として打ち出すことも可能。

  

 《パッシブスキル》

 【ダーティビル家の次女】

 ダーティビル家の三姉妹のうち、公明正大なアルダリアの人徳。

 硬い言葉遣いだが根本的に平和主義者で、非道を断じ、人民の命が最優先という正義を持つ。

 領民にも信頼を置かれ、第一王女を差し置いて次代の王に推薦されることも少なくない。

 ただ愚直なまでの正実さは王に相応しくはないと、アルダリア自身が毎度の如く否定している。

 

 【父親嫌い】

 ダーティビル王国の第十五代王、サーヴァ・フォン・ダーティビルに対する嫌悪と忌避。

 幼少期に実父であるサーヴァから襲われ掛け、それ以降アルダリアは彼を汚物と見做している。

 この事実は当人二人の胸の内に仕舞われており、アルダリアはその露見を最も恐れている。

 此度に異世界召喚を行った所以は、他国との抗争の他、王に反逆する牙として扱うが為。 

 ただ非道を演じ切ることが出来ない彼女は、異世界人を脅迫するだけでも内心が揺れ動いている。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 説明欄が自重してないぞ誰か止めろよ、何か色々暴露してるじゃねぇか。

 先ほどまでのアルダリアの言動が、全て強気なハッタリだとバレる仕様である。

 アルダリアが隠蔽せざるを得なかったのも解る話だった。あまりに説明が正直すぎる。

 ネタバレ嫌いのAくんだったら発狂してしまうレベルの打ち明け具合には辟易する他ない。

 

 ──それで王様と俺らを面会させないのは、未来の自分の武器を敵に見せないためってか。つーか王様も気持ち悪い性癖持ってんなぁ。変態神と重なっちまう。

 『心眼』で得られるアドバンテージに感嘆しながら、有栖はまだ馴染んでいない頭を掻く。

 もはや嫌な予感しか頭を掠めないが、考えなしにその真実を今喋る理由もないか。

 それに、変態神が課した自分の境遇とも重なるような部分もある。

 出来ることならば手助けもしてやりたいくらいだった。 

 

 ──まぁ、面倒ごとに首は突っ込みたくないけどな!

 

 一旦保留にして、有栖は視線を柳川の方へと向ける。

 彼女のステータスを覗き見れば、この場の全員のステータスを把握したことになるのだ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 柳川(やながわ)明美(あけみ) Lv5

 年齢:17

 種別:異世界人

 

 HP(体力):550/550

 MP(魔力量):500/500

 

 STR(筋力):60

 DEF(防御力):50

 INT(知力):250

 AGI(敏捷):100

 DEX(器用):60/100

 LUK(幸運):50/100

 

 《魔術》

 【灯火】 射程:近距離 魔力消費:10

 【燃え盛る火焔】 射程:近〜中距離 魔力消費:50 

 【紅蓮の咲き誇る花壇】 射程:近〜遠距離 魔力消費:300

 自身を中心に、円状に爆炎で広範囲を焼き滅ぼす炎属性の上級魔術。

 その獄炎はまさしく麗しい花々のようで、見惚れて巻き込まれる者も少なくない。

 

 《パッシブスキル》

 【言語翻訳C】

 世界を移動する際に自動付与されるアビリティ。

 他世界の標準言語を、柳川が認識できる言語に自動翻訳する。 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 柳川はどうやら炎属性の魔術の使い手らしい。

 INTが二百を超えている……RPGで言うところの『魔法使い』のようなステータスだった。

 やはりと言うか、レベルが低い割には強大な数値とスキルだ。

 裕也と同じように、異世界人としての特権は「上級スキルを初期から使える」というものだろう。

 

 さて、全員のステータスを見終えることができた。

 有栖が嘆息すると、こちらを一瞥してきたアルダリアが瞠目しながら、

 

「……平気か? その、目の色が」

「目の色?」

 

 自分の声音とは思えない、鈴の音のような声を出して右の瞼に触れてみる。

 尤も気分的にそうしただけで、何の意味もない行動だ。そのため素直に鏡を要求した。

 

「自覚していないのか? 異世界人としての特殊能力かも知れんが……瞳の色が、黒から変化している」

 

 独り言をするアルダリアから、銀に縁取られたシンプルな手鏡を受け取る。

 そして、異世界に来て初めて自分の顔を目の当たりにした。

  

 肩まで流れる闇色の髪に、形の良い眉。

 見惚れてしまいそうな可憐な顔立ちは、まさに漫画のキャラクターのようだった。

 何よりも目を引くのは、黄金に輝く双眸だ。

 

 金色の眼って猫みたいだな。と、感想を持ったそのときだった。

 

(金色の眼って猫みたいだな……って、おい何だこれ) 

 

 ──不思議なことに、頭の中で自分の内心が文字として見えた(・・・)

 鏡の中の愛らしい少女の顔の周りに、注釈のごとく赤文字でそう書いてあるのだ。

 何事かと驚愕したが、刹那の後に『心眼』の効果かと納得する。

 『心眼』の説明文にあった通りだ。

 対象者が思っていることを文字として有栖の視界に出現させることができるのだろう。

 先刻まではステータス情報に集中していたせいで、表示されなかったのかもしれない。

 試しに、アルダリア同様訝しげにこちらを見る我が親友、裕也へと目を向けてみる。

 

「どうかした? 気分でも悪い?(アルダリアさんのビンタも興奮したけど、可愛い小さな女の子に睨まれるのも悪くないな)」

 

 ちょっと待て裕也お前マゾだったのかよと引きたい気持ちを必死に抑える。

 体調を気遣う傍ら、何を考えているのだこの男は。

 いや、元親友の特殊性癖はひとまず置いておこう。

 ……『心眼』のスキル、確かに有用だ。何とか試行錯誤していかないとな。

 相手の内心を見ることが出来るこのスキルならば、邪なことを考えている相手を避けることもできる。

 そう有栖が総括した頃だった。

 暫し考える仕草をするアルダリアが、唐突に提案してきた。

 

「頭の整理のために、一日。今日は諸君らにあてがった部屋で休むと良い。ステータスについては、今日中に私が訪ねた際に報告を……あとは、間違っても脱走など企てることのないように(私も精神的に疲れた……慣れないことをするものではないな。お布団に早く入りたい)」

 

 厳しい顔つきのアルダリアの心の声にほっこりとしながらも、有栖は良からぬ策謀に耽っていた。

 

 ──でもまぁこのステータスを簡単に明かす訳にはいかないし……アルダリアも同情はするけど、自分のことが最優先に決まってるし……そう怖い人でもなさそうだし。

 

 ちょっと掻き乱してみるか。

 うぃひひ、という今まで表には出したことのない下衆な、調子付いたような笑みを零すのだった。

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