艦これ&鋼鉄の咆哮【防空戦艦夜雨】〜夜空の防人と狩人〜   作:妖鵞夜雨

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前回、大和に引っ張られて演習する所まで行きましたよね。

今回も少しきりが悪いですが、仕方ないね。


夜雨「炭酸飲めないのに無理して飲んで体調壊すバカを初めて見たわ」


凪紗「炭酸飲めない人って結構レアだよね」

せやな。苦労しかしてないわ

夜雨「しかもタイトル割と適当なのね」

本編を読んで思いついた言葉をテキトーにいじってつけてます。

今回はWSG2Pでいう【自動迎撃モード】による【対地攻撃】や艦これVita版でいう【砲撃演習】です。



龍奈「と、いうわけで本編行ってみましょうね」


0-7-B 〜砲撃演習〜

夜雨side

 

 

「全主砲、なぎ払え!」

 

爆炎を噴き出す艦前部の左右4門の46cm砲。そして発砲遅延装置が作動し遅れて爆風を吹き出す中央2門の46cm砲。

 

ちなみに、大和型の同時斉射可能砲門数は6。9門同時に斉射すると艦体が変型、損傷するからである。

 

はるか遠くで着弾により水柱が噴き上がる。

 

「前部主砲弾着!超遠1!遠1!至近2!近2!広散布夾叉!下げ2!」

 

「後部主砲弾着!遠1!至近1!近1!夾叉!目標そのまま!」

 

大和搭載の水上機【零式水上観測機】からのモールス信号文が届く。かなりアナログチックで敵からも解読される可能性があるが、極めて効果的な修正が行える。

 

広散布夾叉とは、【散布界は広いが一応夾叉した】ということであろう。

 

そして、後部主砲に関しては斉射1発目できっちり夾叉。

 

どちらもなかなかの腕を持つ証拠である。

 

 

「夾叉か…… うん、次は直撃させます!」

 

主砲を艦の正面に向け、最速装填角度を取る。単純に速く装填をする極めて基本的な姿勢。

 

 

すぐに目標に砲を向ける。

 

再び爆風が吹き荒れる。

 

 

私達は鎮守府近海で砲撃/雷撃演習をしている。

 

ちなみに編成は

 

旗艦.戦艦 大和改

   航艦 扶桑改ニ

   航戦 山城改ニ

   軽巡 大淀改

   防戦 夜雨

   軽巡 天龍改

 

となっている。

 

 

 

「これが46cm砲…すごい爆風ね」

 

CIC艦橋の外部映像が映し出されているモニターを見ながら龍奈がそう呟いていた。

 

「確か、私達の世界では発射時の爆風だけで人間を無残に引きちぎり吹き飛ばす程度でしたっけ。あんなもん喰らいたくないわね」

 

 

私たちの世界には……それ以上の口径を持つ巨艦巨砲主義の破壊神は居た。

 

 

 

210mm133口径の【パリ砲】、【53cmの艦載砲】や61cm、80cm列車砲や【ロンドン砲】等でイギリスを屈服させようとしたドイツ。

 

イスラル王国を直接攻撃するためにイルル国が制作した100cm100口径の【バビロン・ガン】

 

日本も一応計画倒れだが、改大和型用の試製51cm砲を制作している。

 

アメリカも914mmの圧倒的破壊力を持つ自走榴弾砲【リトル・デーヴィッド】などを生産している

 

 

(……そういえば演習開始前に自走砲数両と装甲車数両と水陸両用車数両を格納していたっけ。その担当の人も妖精化していたけど扱えるのだろうか)

 

 

 

大口径砲の近くに人間が立っている時、その大口径が発砲すると気絶や軽い怪我どころでは済まない。

 

即死級の怪我や肉片としてその辺に散らばってるかもしれない。

 

 

もしくは肉片すら存在しない、か。

 

 

 

「直撃2!目標爆散!」

 

艦前部砲斉射2発、後部主砲斉射2発で標的艦を仕留めたようだ。

 

 

「軽巡大淀、対地攻撃(ストレス発散)始めます」

 

 

 

標的が設置されている小島と一定距離を保ちながら大淀が目標と対峙する。

 

「ロケラン大淀……いい響きじゃねぇか」

 

ちなみに【ロケットランチャー】とはドイツで開発されUボートに搭載された対地対艦攻撃用の艦載ロケットランチャー【WG42】のことを指す。

 

 

「そう、これが本当の大淀型の力よ!」

 

一斉に火を吹き飛翔。地面に突き刺さり、爆発。

 

 

付近の土を吹き飛ばしつつ標的を薙ぎ払う。

 

 

 

「計算通りです」

 

 

噴煙が晴れた時には地上の標的はすべて爆散していた。

 

 

「演習にならないなんて不幸だわ……」

 

「姉様、初撃でまた爆散させるなんて素敵です」

 

 

この2人は初撃で命中弾をだし、洋上に浮かぶ標的を爆散させている。 

 

ちょっと変わったベクトルで不幸なのかもしれない。

 

 

「次、夜雨さんの番ですよ?」

 

 

 

 

「了解。対艦、対地攻撃演習開始します。機関増速30knot。面舵2」

 

やっと私の番が来たようだ。

 

先頭の大和をゆっくりと追い抜き艦の向きを調整する。

 

 

《ラビリンスからナイトメア。本来は必要ないが一応観測頼むわね》

 

上空待機していた何故か3つも外部増槽かフロートのようなものが付いている神電Ⅱに指示を送る。

 

 

 

《ナイトメア了解。ラ進R40。K45。S25kn。D》

 

 

この通信をわかりやすく言えば 

 

|夜雨の進行方向に対して右方向40度、距離45km、敵速力25knot、同航戦方向に進行中

 

という事になる。

 

 

「了解、第一標的、算出中。主砲2.3番目標、標的艦。弾種通常榴弾。サーマルレールガンモード」

 

2.3.番主砲が右舷の指定角度に向き、標的艦に照準を合わせる。

 

《艦長、何時でもどうぞ》

 

2.3番砲から準備完了の合図が届く。

 

「…提督からの指示通り発砲警報を鳴らしますね。実弾発砲警報!」

 

…ピーッ。。。

 

警報にしてはかなり薄っぺらく情けない音がCICに鳴り響く。

 

この警報は空砲射撃用の警報、つまるところの礼砲用の警報だった。

 

「誰が礼砲の警報鳴らしたんじゃドアホー!」

 

砲雷長妖精が館内無線機に向かって叫び倒している。

 

普段は警報すら鳴らないから無理も無いだろう。戦闘時や演習時に艦外に出る人は自己責任というルールだからだ。

 

 

ちなみに、発砲用警報などは砲雷長の正面にあるコンソールで管理されている。つまり……

 

「砲雷長、貴方の正面の警報スイッチを押したのは貴方以外なら誰になるんですかね」

 

副長のどストライクの指摘。砲雷長が真っ赤になって怒っている

 

「ムキーーー!!」

 

「砲雷長、自分のミスを他人に押し付けるのは如何かと思いますよ。副長他数名でCICからこいつを連れ出してください。後、砲雷長のマイク切ってくれたら嬉しいです。うるさいので……」

 

「了解(っス)」

 

副長と手近な所にいた航海長と航空管理長が砲雷長を物理的に持ち上げて運搬する。

 

女性化、妖精化してるとはいえ、力は一応元のサイズの時と同じらしい。

 

「やめろ!はなせ!ぐあぁぁ…!」

 

 

容易く持ち上げられ搬出される。

 

 

 

 

「…にしても暑いわね。夏だから仕方ないですが……総員、水分補給は適度にとってくださいね」

 

 

CICや艦橋その他全区画に冷房はついているがCICではコンピューターの排熱、室内に居る私や妖精さんの体温、太陽からの放射熱等が原因で最適温度にならず熱交換機が吠え回している。

 

 

「そろそろやりますか。副長、鳴らしてください」

 

やっと本来鳴らすべきである大きめのブザーが鳴り響く。

 

 

 

「実弾発砲ブザーの正常動作を確認。2番3番斉射!(てぇー!)

 

 

 

超高電圧がかかり砲尾の導体がプラズマ化して爆ぜる。

 

それとほぼ同時に複数本のレールに電位差が生まれ、砲口から稲妻が迸り、吼える。

 

 

 

 

《新たなる目標を確認、ラ進L35。K38。S32Kn。H!》

 

この場合は進行方向左35度、距離38km、速力32knot、反航戦方向に進行中となる。

 

 

 

神電Ⅱ(ナイトメア)からの命中の報告を待たずに新たな標的艦という目標に向けて機械音を立てずにクルッと2.3番主砲が旋回する。

 

 

先程放たれた四つの砲弾が音の壁を軽々と破り寸分狂わず標的艦に吸い込まれて直撃、装甲を貫き爆散する。

 

《弾着、今!3発直撃、1発水中弾!目標の爆散確認!》

 

そう報告が入った時にはもう既に別目標をロックオンしていた。

 

「…2番3番斉射!(てぇー!)

 

再び砲口から稲妻が零れ落ちる。

 

飛翔する四つの砲弾。

 

まるで透明なパイプの中を通るかのように綺麗に標的艦に吸いこまれ爆散する。

 

《弾着、今!2発直撃、1発水中弾、1発至近弾!目標の爆散を確認!》

 

ナイトメアからの爆散報告を軽く聞き流して要求を出す。

 

 

深淵(アビス)、陸上攻撃観測よろしく。神電Ⅱ(ナイトメア)は上空で補佐と制空戦を頼む》

 

《了解ー。リポジします》

 

神電Ⅱが淡く青い推進炎を吹いてほぼ垂直に急上昇していく。

 

 

 

《全部主砲弾着!命中2!至近2!目標爆散》

 

大和の観測機から報告がかなり遅れて入ってきた。

 

「……えっ?」

 

大和がすっぽ抜けた声を通信機に向かって出したのであろう。

 

ちなみに、私はお嬢様がこんな声を出すところを想像ができないが…。

 

 

 

 

「…主砲もどーせー。増速55knot。目標、地上標的。右舷高角速射砲、撃ち方用意!弾種対地榴弾!攻撃は指示があるまで待て!」

 

 

「艦長。自走砲もヘリポートに上げておきますか?」

 

「……副長、やっぱり積んでたのね。強襲揚陸演習できる時に頼んでおきます。あと演習場の手配も」

 

 

 

そんな話をしている間にも大和との間が広がる。

 

慌てて大和は機関出力を上げて追従しようとしているが、虚しく煙突が黒煙を噴き上げるだけで差は広がるばかりである。

 

深淵(アビス)水上着弾観測準備中!》

 

水面に対してほぼ垂直でゆっくり降下。海面にスレスレピタリと静止。ローター吹き下ろした空気が海面を波立てる。

 

 

神電Ⅱ(ナイトメア)増設観測機器スイッチオン。精密計測モード選択》

 

先述した神電Ⅱに装着されている三つの増設物のうち、一つが赤外線/電波複合式の超高性能対地測定器である。

 

高度1万mからでも地上の様子をほぼ誤差なく測定し、観測できる。

 

普段はそこまで超精密に測定する必要が無いから外しているが、必要になれば増設することは可能である。

 

 

 

 

 

深淵(アビス)、データリンク成功。ポップアップ5前!3、2、1、今!》

 

彩竜エンジンがメインローターをぶんまわし深淵(アビス)が上空へ飛翔する。

 

《目標補足。14α、4Dα、28β、12γ、16Δ、36εζ!効力制圧射(カモン!)!》

 

今回の演習では

 

α(アルファ)】……戦車、自走砲、装甲車などの戦闘車輌。

 

Dαまたはα´(アルファダッシュ)】になると熱源を発していない(=行動していない)となる。

 

β(ベータ)】……地上砲台、対空砲など

 

γ(ガンマ)】……通信設備やレーダー設備

 

Δ(デルタ)】……トーチカなどの堅固かつ小型な目標

 

ε(イプシロン)】……軍事関連の施設、航空基地など

 

ζ(ゼータ)】……その他の目標

 

 

となっている。

 

「了解!ラビリンス効力制射撃(撃ちぃ方ぁ)……始め!」

 

 

主砲に比べるとかなり大きさで劣る咆哮。しかし鳴り止まない。

 

片弦に向けれる高角速射砲は7基。連装なので砲門数は14

 

1門あたりの発射速度は秒間2発に設定している。

 

つまり、一秒あたり28発の127mm砲弾が飛んでくることになる。

 

命中精度は二の次の制圧射撃。目標付近で榴弾が弾け、標的の破片が踊り舞う。

 

それに乗じて深淵(アビス)から2発の【デスフレア-セレナーデ】が発射。すぐさま海面すれすれまで降下する。

 

【デスフレア-セレナーデ】というはモノを簡単に説明すると気化性の高い液体燃料のをばらまくだけの無誘導タイプの空対地ロケットである。

 

単体ではあまり効果がないものの焼夷弾などの炎上物やエンジンなどから引火、爆発し広範囲を焼き尽くす。

 

 

大炎上する目標一帯。

 

《ラビリンス、射撃やめ!》

 

深淵(アビス)からの一報が入る。

 

「了解、撃ち方ぁーやめっ!減速、15knot!」

 

 

ピタリと止まる咆哮。

 

しかし、獄炎から移動して逃れた標的や範囲外の目標がまだ残っていた。

 

砲煙が晴れ、地上標的付近の煙がおさまる。

 

 

深淵(アビス)が上昇し残りの目標の位置、数を報告する

 

 

「え、まだ残ってま……」  

 

《……以上。残存目標を殲滅せよ。戦車は我々がやります》

 

 

深淵(アビス)からと大和さんからの無線に対して

 

 

 

 

「了解…アベンジャー(35mmClws)起動、殲滅せよ!」

 

こう答えた。

 

 

素早く向きを変えるClws。バルカン砲身が高角速射砲よりもさらに細かく速い砲弾の咆哮を吐き出す。

 

音よりもはるかに速い機関砲弾が獄炎範囲外だった標的を跡形も無くミシンで布を縫うがごとく地面ごと耕す。

 

 

それに合わせて深淵(アビス)が上空から20mm六砲身ドアガン2丁と機首部20mmチェーンガン一丁を振り回し戦車を吹き飛ばす。

 

《…、目標の殲滅を確認。ラビリンス、攻撃やめ》

 

 

深淵(アビス)了解、撃ち方やめ」

 

 

私がそう言った時には地上は荒れた更地になっていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

大和side

 

言葉にならない。圧倒的な破壊力。そして圧倒的な火力。

 

絶対的パワーの暴力。

 

 

恐怖が私の心を支配する。こんな化け物と私の妹、そして最高のライバルとが殴り合うなんて……

 

怖い所の話じゃない。本能が警鐘をガンガン鳴らす。

 

「……なんですか……今の……」

 

 

悪魔か殺人鬼でも見たかのような怯えた声を絞り出す。いくら絞り出してもそんな声しか出てこない。

 

 

 

「…?これが私ですけど…何か問題でもありました?」

 

 

 

私は彼女のことを白露型と似た服を着た、改金剛型クラス、良くて改伊勢型クラスの高速戦艦だと思っていた。

 

 

しかし、そんな生易しいものでは無い。

 

駆逐艦以上の機動力

 

正確無慈悲な砲撃。

 

圧倒的な副砲類の対地制圧攻撃。

 

艦載機の強力で正確な運用能力。

 

データでしか見れなかったが、秋月型を3隻以上の圧倒的な防空能力。

 

どれだけ回避をしても追尾してくる神の弓矢「ミサイル」を放つ頭脳。

 

規格外にも程があります…。

 

 

「……夜雨以下5隻は帰投してください。私は後片付けをします」

 

「了解、お願いします」

 

 

 

 

 

岸に船体を横付けし、妖精を上陸させる。

 

破片や不発弾の処理をさせるためだ。

 

 

暑い夏の日差しが容赦無く照りつけ、地を焼き焦がす。

 

遠くに浮かんでいる入道雲が白く眩しい。

 

 

夜雨シュレッダーの餌食になった標的はもう手では集められない程焼け焦げ、塵になっている。

 

「高角砲でこんなことができるなんて信じられない……」

 

もし、この標的が地上部隊だったら……良くて壊滅。

 

いや、文字通り【全滅】

 

 

それ以外の表記ができないかもしれない。

 

 

もし、これが仮に私だったら……。

 

 

全身が粉々に砕かれ水面に散るだけで済むであろうか。

 

日本の最終兵器。

 

その大和型が沈むとなると太刀打ちできる艦が無い。

 

 

『怖い』という感情以上に私を支配する『焦り』

 

 

私が数々のライバルを自慢の主砲で殴り倒し、提督とともに築き上げてきた【最強】の二文字。

 

私に提督は絶大な信頼と愛情を注いでくれた。

 

ケッコンカッコカリという名だが、劣悪燃費、運用難題をかかえる私も育てて、私にも指輪をくれた。

 

 

そんな過去の努力が先程の一瞬で粉々に砕かれ、塵となり、消えた。

 

何もかもがわからない。今までの努力のすべてを否定された。

 

心にポッカリと大きな穴が空いた。その表現以外ない。

 

残らない真っ暗な闇。

 

それが徐々に大きくなり私を覆う。

 

世界が歪む。直線の物がグニャりと曲がる。

 

(私ってこんなに弱くてちっぽけだったの……)

 

 

 

 

何もかも捨てて逃げだしたい。1歩でも遠くに逃げ出したい。

 

左手薬指につけた銀色の指輪が太陽光を鈍く反射して輝いている。

 

提督が私へとくださった大切な指輪……

 

提督……私ハ……ワタシは…………無用のシロモノ…………ホテル……㌨……?

 

 

 

頭が痛イ……光が痛イ……

 

 

意識が闇二堕チて行ク

 

 

 

「……助ケ……テ…」

 

 

 

 

ついに膝から崩れ落ち、床に倒れ伏した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

夜雨side

 

 

 

夏の暑い日は特に危ない。

 

大量の汗をかくなどが原因で体内の水分が不足し脱水症状を起こす日射病。

 

体内の熱を十分に発散しきれず高い体温に体が対処し切れなくなり熱暴走を起こす熱射病。

 

そして最悪の場合、その二つの複合版も起こりうる。

 

 

「総員、水分はしっかりとるように。しんどい場合は無理せずに冷房が効いている部屋でゆっくり休んでね」

 

 

 

 

「艦橋見張りからCIC、戦艦大和から発光信号。『ヤマトフス。SOS』です」

 

「えっ?!」

 

 

CIC内がざわめき立つ。

 

深淵(アビス)緊急事態発生規定により緊急発艦(スクランブル)!外せる武装は全部外して医療器具を載せて!通信手!鎮守府とコンタクトを!航空管理長、深淵の指揮任せましたよ!」

 

 

「了解っス!」

 

航空管理長妖精が自席から航空作戦指揮管理座席に移動する。

 

深淵(アビス)緊急発艦(スクランブル)!》

 

 

 

先程着艦した深淵(アビス)にはほとんど燃料という燃料が残っていない。

 

増槽をつけかえれば鎮守府まで最速で送り届けられる。そう考えたのであろう。

 

飛行甲板(ヘリポート)に増槽と装着機が用意され、救護班が待機する。

 

ミサイル発射台とドアガン、チェーンガンを切り離す(リリース)

 

少しでも軽くし、速度を稼ぐためだ。

 

 

投下されたチェーンガンやミサイル発射台は即回収、艦内に格納する。

 

マーシャラーの的確な誘導の元、素早く発艦準備をおこなう。

 

 

燃料補給をしながら増槽を付け替えつつ、救護班が乗り込む。

 

完了の合図。

 

《よし、深淵(アビス)行けっ!》

 

《行ってくださいっス!》

 

応急修理班長妖精や航空管理長妖精が熱血漢と化しているが私はそうなるわけには行かない。冷静に判断を下す。

 

《了解、発艦後戦艦大和へ向かへ。目標回収後、即この船の医務室へ。その後曳航しつつ鎮守府へ急行せよ》

 

彩竜エンジンが甲高く吠え、素早く上昇。

 

《了解、発艦完了。目標に向かいます》

 

 

 

「副長、戦艦大和の曳航準備指示その他を頼む。私は神電Ⅱで鎮守府に行くわ」

 

「了解」

 

 

私はCICから甲板へ向かう。階段を8段飛ばしで駆け上がり、甲板への扉を蹴り開ける。

 

 

その反動を使い上へ跳躍。艦橋の台座へよじ登り、全力疾走。小ジャンプからの着地、二段階目の跳躍で飛行甲板着地、前まわり受身をとり衝撃を受け流す。

 

 

神電ⅡがVTOLモードで降りてくる。

 

 

 

《……夜ちゃん、例のアレ(増設超高性能対地測定器)を外すから受け取ってね》

 

神電Ⅱから赤外線/電波複合式の超高性能対地測定器が切り離され、私の手の中に収まる。

 

それを丁寧に専用のキャスター付き運搬機に載せる。

 

キャノピーが半分ほど開き手招きされる。

 

 

 

本来は1人乗り用だが大柄な人やロボットが乗り込むことを考えてかなりゆとりのある座席となっている。

 

 

私は凪紗の膝の間に座り抱き抱えられる。

 

 

「夜ちゃん…OK?」

 

「OK。飛ばして」

 

 

 

 

 

神電Ⅱのキャノピーが締まりゆっくり浮上した後、鎮守府まで雲行きが怪しい空を翔け抜ける。

 

 

 

 

鎮守府の本館の屋上。そのはるか上空でVTOLモードに切り替え垂直降下。

 

屋根にぎりぎりつかないぐらいで静止静止。

 

凪紗から肩を2回タップされる。降りれるよという合図だ。

 

 

キャノピーが半分ほど開き凪紗にお尻を持ち上げられ体が宙に浮く。

 

そのまま屋上に着地。

 

それを確認した凪紗は神電Ⅱを自動帰還モードにして降りる。

 

神電Ⅱは凪紗が降りたことを確認して母艦から発される誘導電波を探りつつ飛んでいった。

 

「…えーっと、見た感じ出入口はないよね」

 

「無さそうね」

 

なーんて話をしていたら後ろから声をかけられる

 

「窓蹴り開けるなんてやめてくれよな。えーっと、夜雨だっけ?出入口はこっちだ」

 

 

真夏なのに白と黒のシマウマ外套を身にまとい、黒のガチ眼帯をつけ、サーベルを腰につけている緑髪の女の子。

 

「サンキュ。えーっと、木曾だっけ?」

 

「そうだ。とりあえずここから降りるぞ。んで、隣の娘が凪紗だっけ?」

 

 

「そうよ。私は神電Ⅱのテストパイロットの凪紗。覚えといてね」

 

「俺の名は木曾。以後よろしく」

 

話をしながらも壁4階から突き出ている錆びたハシゴを降りる。

 

 

 

めんどくさいから私と凪紗は4階にダイナミック着地(お邪魔します)をするが。

 

「やっぱり貴様らあの記録といい一航戦をボコしたことといいマジみたいだな」

 

「これでも身体技能は普通クラスなんだよ?男性には流石に負けるし」

 

 

 

「いや、それはないと思うぞ?」

 

「音よりも早い物を撃ち落とせる私にとっては音より遅いレシプロエンジン機を撃ち落とすことは朝飯前どころか出来て当然なんですよ」

 

「スゲェな、おい」

 

 

赤城と加賀……私の知ってる限りでは戦争の中盤ぐらいに出てきた凶悪空母。アメリカと同盟関係だったこともあり、合同で演習をしたこともあるが3倍の戦力差があっても負け無し。

 

頭の中で物凄く違和感を覚える。

 

 

 

 

「……そういえば、赤城と加賀の2人、艦載機の使い方をいろいろ間違えてた気がする」

 

「凪紗もやっぱりそう思う?」

 

「一撃離脱機で旋回戦は流石にねぇ……」

 

「俺は航空機に関してはからっきしだからわかんねぇ」

 

 

 

木曾が速攻でお手上げポーズをとる

 

 

提督室で起こったことの報告の後、苦労しながら説明を続けていたら艦が着いたようだ。

 

「夜ちと私で大和を医務室に運ぶわ。木曾とアンタ(弟提督)は医務室の1室空けといて」

 

 

「了解」

 

「なぜ俺だけアンタなんだ?」

 

「んなことはどうでもいいから行くぞ」

 

「ういーっす」

 

 

 

 

 

弟提督と木曾が扉の無い提督室から出ていった。

 

 

それに続いて私と姉提督が退出した。

 




ほんとに夏の暑い日は気をつけてくださいね!

夜雨「洒落にならないですからね」

凪紗「水分と塩分とミネラル分の補給が大事よ」

龍奈「スポーツドリンクやお手製の夏水でも大丈夫」

鈴奈「……冷え過ぎ……注意……」

夜雨「……で、なぜ大和をぶっ倒したのさ」


大和→夜雨の好感度を上げるため、大和VS夜雨の直接対決を避けるためetc……ちゃんと理由はあります。

大和「だからといって不用意にぶっ倒さないでください」


「書類仕事が原因で冷房により水分と体力を奪われ冷えてる時にハッスルした人誰ですかね」


大和「うっ……」


夜雨「…仕方ないの方がでかいのか」

そゆこと。

えーっと、次回以降しばらく【本編】と【番外編】の交互投稿になります。

お楽しみに!


大和「次回、未定ですよね?」

勿論!

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