元RTA実況者がSAOをプレイしたら   作:Yuupon

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 風邪を引きました。風邪を引くのは二年振りです。
 早く治さないと。

 あ、それから今回は皆さんも知ってるあのキャラクターが登場するぞ!


9.ホルンカの村への帰り道

 

 

 

 歩こう、歩こう。歩くの〜大好き♪

 リトルネペントから目的の物を手に入れたハクレイはご機嫌なのか、鼻歌交じりにホルンカの村への帰路についていた。

 効率的に、そして速く。何より全速力で。

 鼻歌とは打って変わってその動きは変態じみていた。

 端的に言おう。

 

『ふふふふふふっふっふー♪』

 

「ちょ、待」「orrrrr(オロロロロ)(嘔吐)」

 そう、上記のコメントでお気づきだろう。

 ハクレイは遅れを取り戻すべく、さながらローリンガールの如く前転していた。非常にアクロバティックな動きであり、大怪我するんじゃないかとヒヤヒヤするような転がり方である。

 コメントでは、「酔うわw」「やめい!」「いつもの」「またかw」「動きがww」「歩こうじゃねーよw」「歩いてない件w」「そもそも走ってすらねーよw」「変態機動やめww」

 と、鼻歌にツッコミを入れる声や動きに関する声が多かった。

 

『ふっふっふーん、ん? 前方に敵の反応あり、か。攻撃態勢に移行するぞー』

 

 尚も上機嫌なままのハクレイだったが。

 その時、索敵に敵の反応があったのか意識を切り替えてそんな事を呟く。回転を止める事なく言った彼は、おもむろに剣を取り出すとそれを手に持ったまま転がり始めた。

 やがて、前方に敵の姿が映る。

 ウルフの群れだ。数は二匹。

 ウルフは、リトルネペントと同じように近寄るだけで敵対反応を見せるモンスターで、第一層のモンスターでは一番素早さがある敵である。一度噛み付いたら離れない強靭な(あご)がとても危険な魔物で、下手を打てば死んでしまう事もある。だが、逆に言えばそれさえ気をつければ問題無い敵だった。

 転がりながらハクレイは言う。

 

『ウルフの弱点は喉の奥です。なので喉の奥に剣をぶっ刺します。やり方はこうやっ、てッッ!!』

「キャオン!?」

 

 転がりながらウルフ達の直前まで近付いたハクレイは素早さを落とす事なく、そのまま綺麗にウルフの喉を剣で貫いた。続いて二匹目も同じように仕留める。

 これも神業だが、コメント欄はもう「いつもの」と言わんばかりの感じだった。

「もはや止まりさえしない」「ポケモンの転がる思い出した」「鬼畜ゥ!」「わんわんお……」「わんわんおU・x・U」「←……可愛いじゃねぇか」「犬……首輪」「幼女に鎖……ハッ」「←天才か」「←お前ら絶対馬鹿だよw」「こ の ロ リ コ ン 共 め」

 

 ……何度見ても酷いコメント欄である。というか今更ながらに思うのだが、何でもかんでも幼女に結び付けられると怖いな、と幼女ハクレイは思う。いやまぁネタだろうけれども。

 

(鎖か。奴隷系幼女……二次ならアリだな)

 

 まぁ、結局のところ同じ穴の(むじな)だった。

 心の中で小さくニヤつくと、ハクレイは動きを続行する。前転、手を付いて加速し一回転、くるりくるりと横回転。見てて飽きない動きだが、明らかに人間業では無い。というかあんなもん現実でやれば三半規管がどうにかなってしまうだろう。ハクレイは自分自身の動きをそう客観的に判断した。

 と、その時不意にハクレイの体に妙な感覚が(まと)い始める。

 

『あれ? なんか段々気持ち悪くなって……。それに目が回って』

 

 手を付いて飛び起きて走り出すと、少し足元がフラフラした。何だろうか。グルグルと回った後に世界が回って見えるような、そんな感覚。

 おかしいな、対処したはずなのに。そんな疑問を抱いてステータスを開けると、その原因が判明した。

 

『……パラメータ、酔い? こんなのも追加されてたの? もしかしてβ時に俺が練習してたから?』

 

 見た事の無いパラメータ。残り時間が三〇秒、となっていて視界が歪んで見える。

 混乱という表示の方が合っているのかもしれないが、走っているのすらキツイほど喉元まで酸っぱい何かがこみ上げてきた。

 

『〜〜〜〜〜〜ッッ!?』

 

 慌てて口元を押さえる。すぐ喉元までせり上がってきた吐き気でジワリと涙が出てきた。そのままポロポロと涙が零れていく。

 「どしたん?」「酔った?」「その顔可愛い」「萌えた」「抜いた」「←サイテー」「←紳士の風上にもおけん」「ヤメロォ(建前)ナイスゥ(本音)」「どうした?」とコメントが流れていくが答えている余裕は無い。

 お の れ 茅 場 晶 彦と。ふつふつと湧き上がる怒りと、どうしようも無い吐き気に苛まれてハクレイは完全に立ち止まった。そのまま座り込んで必死に嘔吐しないよう堪える。

 

(うえぇ……気持ち悪い。何だよこれ、恨むぞ茅場! あぁぁ涙が止まらねぇ。というか酔いなんてステータス付けんじゃねぇよバーロー!)

 

 ピンチである。先程の触手プレイ(もどき)もピンチだったが、こっちもこっちでピンチだった。

 嘔吐放送なんて笑えない。というか生放送でそんな事をしてしまった暁には完全にアウトである。

 故に顔をぐしゃぐしゃにして涙を零していたとしても、嘔吐だけはしてはならないのだ!

 

『ぁぁぅう! 〜〜〜〜ッ!』

 

 地獄のような三十秒。だが、意地でハクレイは吐くことなくこの危機を乗り越えた。

 

(……やったよ。俺頑張ったよ。もうゴールで良いよね?)

 

『……ッ、はぁはぁ。けほっ、けほっ……』

 

 解放された瞬間、思わず咳き込む。口からは荒い息が飛び出し、心臓がバクバクと音を立てていた。顔が紅潮する。へたり込みたい気分になったが、無理やり立ち上がり、走り出した。

 「えろい」「完全に事後」「ありがとうございます!」「流石期待を裏切らない」「なんか危うくなってきたな」「茅場グッジョブ」「俺、ロリコンだったのか」「抜いた」「←去れ、マーラよ!」「最速攻略がヤバイぞ」「頑張れー」「泣き目からの赤顔とか俺の好みじゃないですか」「初対面から決めてました」

 まさかの予想だにしない前転への対応にコメントも盛り上がる。「流石茅場晶彦! 抜かり無いぜ」というコメントもあれば単純に「萌えた」というコメント。または、「タイム大丈夫?」という最速攻略を心配するコメントも見られる。最速攻略の為に一番早いと思った技をやったのだが、まさかのタイムロスだった事にハクレイは内心で地団駄を踏みたい気持ちになった。

 

『くそ、茅場め。しねばい……何でも無いや』

 

 思わず毒づきそうになって止める。というかこちらは実況プレイさせてもらっている側なのだ。迂闊な発言をしてしまったことに反省する。

 だが、怒りがあるのは本当だった。先程のリトルネペントといい今回の前転といい上手いこと最速攻略の技を防がれてしまっている。

 ーー何か、悔しい。

 

『あぁもう、グダグダですいません。でもこっから見返してやりますよ!』

 

 それでも。

 グッと拳を握ってハクレイは気持ちを切り替えた。

 「頑張れー」と画面の向こう側の人達も応援してくれているのだ。こんなところで不貞腐れていてはいられない。

 

 そして暫く元来た道を帰っていた時だった。

 

『……ん? あれはプレイヤーかな』

 

 今度は前方にプレイヤーを発見したのだ。

 どうやら六人でパーティを組んでいるらしく、モンスターと戦闘中の様子だった。剣や槍と各々好きな武器を装備している。

 とりあえず他のプレイヤーには基本関わらないスタンスなので横をすり抜けていこうか、などと考えていると彼らの様子がおかしな事に気付いた。

 その時、ハクレイの耳に叫び声が届く。

 

「キバオウさん、後ろに下がって、スイッチするぞ……って危ない!」

「ディアベルさんが仲間を庇って吹き飛んだ!?」

「ディアベルはーん!!」

 

 どうやら苦戦しているらしい。ウルフに向かって剣を振りかざしたディアベルと呼ばれた聖騎士のような見た目の男がすぐ横の味方を庇いフレンジーボアの突撃をまともに受け、ゴロゴロと地面に転がっていく。

 キバオウ、と呼ばれた男が叫んでリカバリーに入るが手数が足りていない。周りの四人もそれぞれ別の敵を相手にしているようだった。というかその四人が概ね足を引っ張っているように思える。直ぐさま起き上がったディアベルという男が攻撃に参加してようやく戦況は五分五分だった。

 

(……初心者プレイヤーかな? 助けるべきか?)

 

 一瞬、思考してハクレイは助ける事にする。

 というか通り道なのだ。これまで散々タイムロスをしているのでこれ以上時間は掛けたくなかった。

 とりあえずソードスキルで一掃する事にする。

 

『すみません、通ります』『ドロップアイテムなどはそちらに譲渡しますので』『横から来てゴメンなさい』

 

 六人に声掛けて、ハクレイはソードスキルを発動する。突然現れたプレイヤーに驚いた様子を見せる六人だったが、謝罪を口にしてハクレイはモンスターを蹴散らしにかかる。

 

『ーーアバンストラッシュ!!』

 

 後ろ手に剣を構え、腰を低くして捻りながら放たれたソードスキル《ホリゾンタル》で見事に敵を吹き飛ばしたハクレイは一瞬の硬直時間後、空いたモンスターの隙間を潜り抜けて村へと駆け抜けていく。

 残っているモンスターもいるが、かなりダメージを与えたので六人でも対処出来るだろう。後ろから「待ってくれ」という声も聞こえてきたが、『すみません』と言ってハクレイは村へと走り続けた。

 

(うわー、思いっきりマナー違反な真似しちまったよ。やっぱ横に避けていくべきだったかな?)

 

 後悔してももう遅い。とにかく今は遅れを取り戻そう、と自分に言い聞かせてハクレイはひた走る。

 そして数分後、ようやくハクレイはホルンカの村へと帰還したーーーー。

 

 

 

 1

 

 

 

「……なんやねん、今の」

 

 あの後、なんだかんだでモンスターを倒した六人だったが、もう背中が小さくしか見えない女の子プレイヤーを見ながらキバオウという男が呟いた。

 助かった、という思いが半分。誰だ? という思いが半分。なんと反応すれば良いやら分からない。

 

「キバオウさん、とりあえず一旦休憩を取ろう。ここまで皆疲れてるだろうし。俺もなんだかんだで一撃もらってしまった」

「あぁ……分かったでディアベルはん」

 

 後ろから声を掛けられて振り返ると、腰を押さえて苦笑いを浮かべるディアベルの姿があった。言われてキバオウは他の仲間達の方へと歩いていく。

 仲間達はそれぞれウィンドウを開いて回復したり、掲示板を開いていたりと様々な行動をしていた。

 

「本当にすみませんディアベルさん」

「初めてのプレイだから仕方ないよ。これから上手くなろうぜ」

 

 庇われた仲間からの謝罪をディアベルは受けとる。あくまで爽やかな笑顔だった。それからディアベルはそのままの表情で仲間に声を掛ける。

 

「じゃあ暫く皆休んでてくれ。俺が辺りを見回りしてくるよ」

 

 そう言って彼は少女が走っていった方向へと歩いて行く。

 そして。

 ーー仲間からある程度の距離を取った彼は、少女が消えていった方向を見据え、小声で呟いた。

 

「……プレイヤーネームHakurei。確かあの人ーーいや、人がどうとか気にしている場合じゃないか」

 

 その声は誰も届かずに虚空へと消えていく。

 やがて、彼はフッと笑って仲間達の元へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「一言」
アスナ(SAOのヒロイン)が息をしていない件について。
はい、今回は閑話です。ネタも抑えめにしました。
あ、ちなみに次回はキリトさん回です。



 主人公の性癖
・ロリコン
・巨乳お姉さん
・触手プレイ(される側)×
・鎖を付けられた幼女、奴隷少女←New

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