オーバーロード 古い竜狩りの英雄譚(?) 作:Mr.フレッシュ
「久し振りだな……我が宿敵よ」
「貴様はインペリウス!?」
「さあ今こそ裁きを受けるがいい!!」
「アルベド!!」
「はいアインズ様!!」
「エアリー!そいつを押さえておけ」
「はい!!」
「くっ……」
「さあ………長年の因縁に今こそ決着をつけようではないか…」
ディアブロとブレデフォに一時期嵌まってこんなの書いてたぜ……………
浮気すまぬ………
「何やってんのモモンガさん?」
「ひょあっ!?」
生きる者にとってはかかせない『食事』と『御手洗い』を済ませて玉座の間に行くと、そこにはラスボスが鏡を前に珍妙な躍りをしているというシュールな事極まりない場面に出くわしてしまった。
そのため声をかけた訳だが、如何にもラスボス然とした豪華絢爛なローブを纏った骸骨はその姿には似つかわしくない悲鳴を上げた。
…………あれ、なんかデジャヴ? こんな感じの前もやらなかった?
「なんですか『ひょあ』って…………」
「シャラップ! 忘れるのだエルダーよ」
「え、あ、はい。 いや、分かった」
いきなりラスボスボイスになったモモンガさんに一瞬戸惑いを覚えてしまうが、モモンガさんの隣にセバスが控えているのを見て察した。
〈心中、御察しします〉
〈胃が無いのに
此方に気が付き、深くお辞儀するセバスを横目に〈伝言〉を使っての秘密裏の会話から、モモンガさんが相当に参っているのが分かる。
「………それで、何をやってたんだ?」
「ああ、ナザリックの外の様子を手っ取り早く視たくてな。 それでこの『
ああ………あの指定したポイントしか視れない上に低位の対情報系魔法程度で簡単に隠蔽され、攻性防壁で簡単に反撃されるというビギナー狩りにしか使いどころが無い微妙系アイテムか。
ただ、モモンガさんの横に立って覗いてみると、モモンガさんの動きに合わせて普通に視点が動いていることから、ユグドラシルの時とは違い仕組みが少々変わっているらしい。
「……………スマフォ(※仕様)と似たような感じでやれば………」
「グッジョブエルダー」
「おめでとうございます、モモンガ様。 このセバス、流石としか申し上げようがありません」
次の瞬間に目まぐるしく視点が自在に変わる遠隔視の鏡、モモンガェ……………
それとセバス、君 多分スマフォ知らないよね? そんなんだと現実世界の住人の大半を褒めなきゃいけなくなるよ?
「ん…………なんだアレは、祭りか?」
「どれ」
モモンガさんをズイッと押し退けて鏡を視る。 「ヒドい………」とモモンガさんが何か言ってるが、そもそもローブを着ているモモンガさんは177㎝という身長と相まって体面積が異様にデカいのだ。 これくらいの暴挙は軽く見逃してほしい。
しかし、これは…………
「セバス…………」
「はい、これは祭り等ではありません」
“虐殺”
それがモモンガさんが祭りと見間違えた光景の正体だった。
遠隔視の鏡にはなんの変鉄もない村が映っていた。 そう、鎧を身につけた兵士が逃げ惑う村人を一方的に殺してさえいなければ。
「ちっ!」
一方的な殺戮に胸糞が悪くなったのか、モモンガさんが舌打ちをして光景を変えた。 だが、不機嫌故のミスか、モモンガさんの手が滑り、鏡をズームにしてしまう。
鏡に、数人の兵士達に剣で幾度も刺される村人の男性の姿が映る。 致命傷、というレベルではない。 傷の位置、出血量からして既に死んでいる様なものだ。
───だが、ふと男性と目が合った気がした。ありえない。 これは何かの偶然だろう。 何せ此方は遠隔視の鏡で長距離から監視しているのに加え、この鏡での監視は対情報系魔法でもないとバレない筈なのだ。
だが、声を出すための声帯も、呼吸に必要な肺もぐちゃぐちゃに切り裂かれ、貫かれているのにも関わらず────娘達をお願いします───そう男性は言った気がした。
「───どう致しますか?」
そのタイミングを見計らっていたかのようにセバスが尋ねてきた。
…………助けに生きたいのだろう。 セバスはナザリックでもカルマ値が+300と善に傾いている数少ないNPCだ。 そんな善側である彼からしたら、抵抗のできない者が一方的に殺戮されるのは見過ごせない筈だ。
「見捨てる。 助ける必要性もメリットも無いからな」
しかし、モモンガさんはそう言って切って捨てた。 だがそれは奇しくも正論と言えるだろう。 何せ、此方には彼等を助ける義理立ても無ければ、モモンガさんの言った通り必要性も無い。 それに加え俺達はまだこの世界に来て日が浅い。そんな状態で無闇に行動するのは暗闇の中を手探りで歩くに等しい。 一歩踏み出した先が落とし穴、なんてシャレにならない事もあるのだ。
────と言っても、
「そうか? 助ける価値は相応にあると思うぞ」
メリットが無い……とは言い切れない。
「どういうことだ?」
「────我々がこの地に来て日はまだ浅い、だからこそ不用意な行動は控えるべきだが、我々にはこの地に関する基礎的な知識も情報も無い。 となるとあの村の住人を助ければ良き情報の提供者になるとは思わんか?」
今のモモンガさんからはあまり人間性が感じられない。 それは恐らくこの世界が現実となった為に、アンデットの肉体(骨体?)に精神が引っ張られているが故の弊害だろう。
だからこそ、今のモモンガさんには人間性や道徳観を説いて説得するよりは、こういったメリットとデメリットの損得勘定で無理矢理納得させるしかないのだ。
「しかし………」
「それに、ここで我々が参上すれば、罪なき人々を救うという大義名分が得られる。 村人にも恩が売れる上にこの世界での行動も取りやすくなる。 特に、お前の世界をその手に納めるという野望も、ただの恐怖統治では上手く成り立たないことも理解していよう。 ならばこれは絶好の機会だろう? 少なくともここで良い印象を与えて置けば後々の統治も楽だろうしな。
それに、鏡越しとは言え兵士達の強さはそこまで高く無いように見える。 尤も、それはあくまでも我々と比較した場合だが、あの程度なら手こずることもあるまい」
ただひたすらにメリットを教える。
何やら言っていることがマッチポンプというか出来レースというか、そんな感じがして若干気分が悪くなるがここで引いてはいけないのだ。
「………………ふむ」
「私からも、御一考の余地を……」
「っ! たっちさん………」
セバスの追撃に、正義マンことたっち・みーさんをセバスの中に見たモモンガさんがとうとう折れた。
「…………わかった。 助けよう」
計 画 通 り
「では、一番槍は私に任せて貰おうか」
「うむ。 では私はアルベドを連れて行くとしよう。 少し遅れるが構うまい?」
「構わん。 私を誰だと思っている? 我が栄光有るアインズ・ウール・ゴウンの突撃隊長だぞ?」
「そうか、頼んだぞ。
───セバス、ナザリックの警備レベルを最大限に引き上げろ。 それと私の護衛にアルベドを連れていくから完全武装で来るように伝えろ。やだし、ワールドアイテムは無しでだ。 次に、不測の事態で我々が撤退せねばならない時の事を考えて、隠密能力に長けた者を村に送り込め」
「畏まりました。 ただ、モモンガ様の護衛でしたら私が────」
「いや、お前にはこのナザリック近辺の警護を頼みたい。 あの兵士達を我々が襲撃した際に、此方に逃げられると色々と面倒だからな」
再び、「畏まりました」と言ってモモンガの命令の通りに行動を始めたセバスを尻目に、モモンガは再び鏡を見ると…………
「あるぇ?」
思わずそんな声が漏れた 。
舌が無いのに巻き舌気味なのはこの際置いといて、鏡には先程まで側に居たエルダーが兵士に囲まれた少女二人を助けていた。 鏡が先程とは違う場所を映していたことから、エルダーは勝手に鏡を操作していたという事になるが、まさかモモンガとセバスが会話している間にそこまで行動していたのには流石としかモモンガは言えなかった。
というよりも、
「あれ、エルダーさんって〈
その日、死の支配者は仲間のなんかもう意味わかんないくらいの走力に首を傾げずにはいられなかった。
・
・
・
・
・
・
「(間に合ったか………)」
玉座の間でモモンガさんとセバスの会話中に鏡を視ていたら、そこには少女達を襲っている兵士達が居たのでナザリック最速を誇る我が神脚で即座に駆けつけ、少女達に集っていた
やはりというかなんというか、兵士達は思っていた通り弱かった。 彼らの剣は俺の鎧に当たった瞬間ポッキーの様に折れるし、剣が折れずに済んだ兵士は逆に兵士自身の腕がポッキーの様に折れるし、自分が少し槍を振るうだけで、上半身と下半身がおさらばするのである。
まぁ、ちょっと「他愛なし」とどこぞの運命の暗殺者の様に思ってしまったのは内緒である。
「(さて、残った奴は……モモンガさんに任せるか)」
〈転移門〉からモモンガさんが現れ、兵士の一人に〈
モモンガが何かを握り潰す仕草をした次の瞬間には、兵士は物言わぬ死体となって地に倒れる。
「そうか……やはり肉体のみならず心までも人間を止めたということか……」
モモンガさんが不意にそう呟いた。
一切の抑揚が無い声、しかし、そこにどれほど複雑な心境が含まれているのかが分かった。
酷く同感だった。 何せ俺だって今さっき人を一切の躊躇い無く一方的に殺戮したのだ。 多少の罪悪感はあれど、そこに同情の余地もなければ手加減するつもりもない。
アンデットに比較的近いように見えてまったく異なる俺ですらこうなのだから、完全なアンデットであるモモンガさんは俺よりも更に空虚に感じている事だろう。
『俺は人間を止めるぞ! ジ◯ジ◯ーッ!!』
なんか石製の仮面(柱印)を持った吸血鬼が一瞬脳裏を横切ったが、多分気のせいじゃないだろう。
閑話休題
何処からともなく現れた黒い騎士と異形の怪物、突然の仲間の死にパニックになった兵士が逃げ出したが、モモンガさんが唱えた魔法、〈
弱いのは分かりきっていたことだが、まさかここまでとは…………
「お、お姉ちゃん……!」
「し、静かに!!」
む?
ふと声のした方に目を向けると、二人の少女が此方を怯えた目で見ていた。 まあ、目の前であんな虐殺劇を見せられたのだ。 怯えるな、と言う方が酷か。
「大丈夫か?」
「ひっ………」
なるべく穏やかに話しかけたが悲鳴を上げられた。 少し心が傷ついた。 だが、片方の少女の手が赤く腫れ上がっていたので、悪化する前に治療をした方が良いだろう。 もしかすると骨折とか骨に罅が入っているかもしれないからな。
「これを飲むといい」
ユグドラシルではポーションの回復量なんぞ某国民的RPGのホ◯ミや薬草並みみたいな物なので、現実でどれだけ回復するかは分からないが、まぁそれでダメならより上位のポーションを飲ませれば良い。
………しかし、何時まで経っても少女がポーションを受け取らない。 なんかボソボソ言ってるのを聞き取ると、ポーションを血か何かだと勘違いしているらしい。
確かにポーションの色は血みたいな赤色だが、普通間違えるか?
…………いや、もし仮に彼女たちがポーションを見たことが無いというのなら間違える可能性もあるが、流石にそれはないだろう。
となると、彼女たちが知っているポーションとユグドラシルのポーションとじゃ色が違うとか? だとしたら青とか緑のポーションだろうか? 俺としてはそんな飲んだら色々とヤバそうなポーション飲みたくない。 むしろ血液カラーのポーションを俺は選ぶ。 赤は神の血の色って言うしな。 最近、アパートの一室で仏陀と同居してたり、はたまた異世界で悪堕ち闇堕ちしたキャラと異形軍団を率いてロード・オブ・ザ・リングみたいなヒャッハーしてる疑惑をかけられている聖人様も赤ワインを私の血だか神の血だか言ってたしな。
んで悪魔には、赤い神の血ではなく、青い海水だかが流れてるって汎用人型決戦兵器の解体新書に載ってたっけ。
閑話休題。
どうも先程から話が逸れて困る。 取り敢えずさっさとポーションを飲ませてしまおう。
「これは一種の回復薬だ。 色は赤いが、血ではない」
さりげなく少女達の考えを否定し、強引に少女にポーションを持たせた。
少女は暫く躊躇った後に、残業終わりのサラリーマンがビールをイッキ飲みするように豪快に飲んだ。 良い飲みっぷり!
「あ………手が」
すると少女の手から腫れがたちまち引いていった。
さすがポーション。
例え巨大な火球に当たろうと生きてさえすれば数本ガブ飲みするだけで元気になれる製法がイマイチ謎の万能薬。
まぁ何処ぞの狩りゲーでは例え溶岩に当たろうと明らかに数トン近く有りそうな巨体に潰されようと、飲んだらあっという間に回復する原材料が薬草・キノコ・ハチミツという何をどう合成させて化学反応を起こさせたらそんな薬が出来るんだと至極尤もな疑問が出てくるグレートな回復薬に比べたらまだましな方か。
「準備に時間がかかり、申し訳ありませんでした」
そこで、 全身を黒い甲冑で覆い、緑の燐光を放つバルディッシュを装備した完全武装のアルベドが遅れてやって来た。ちょっとカッコいい。
「いや、実に良いタイミングだ」
「ありがとうございます……………それで、その生きている下等生物の処分はどうなさいますか? お手を煩わせるというのであれば、私が代わりに行いますが」
「セバスに何を聞いて来たのだ?」
「………………」
「………今回は彼女達の村を助けにきた。そこらに転がっている兵隊共が敵だ。それと彼女たちは貴重な情報源だ、殺すな」
「はい」
普段の淑女然とした印象が一瞬で崩れるアルベドのアグレッシブさ。
そして
「さて、私は先に村へ向かおう」
「え?」
「それではな」
「ちょっ…………!?」
取り敢えずこの場はモモンガさんに任せて村へ急ぐ。 あまりのろのろしてると村が壊滅してしまうからな。
なんかモモンガさんが言いかけてたけど別にいいか。
「(ハァ………無闇に突っ込むなって言おうとしたのに)」
そう溜め息をついて、自分を見る三つの視線にどう対処するのかを考える。
…………何やら無い筈の胃がキリキリと痛むのは気のせいだろうか?
NEXT?
はい………遅れてすみません。
浮気でフラフラとあちこち行って、最終的には同じフロムのACの主任に惚れて新しい小説書いてます……