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第9話
『玉狛支部②』
修、遊真、千佳の3人がボーダー玉狛支部に入隊及び転属し、3人でチームを結成してから一夜明けて翌日……彼らはA級に上がる為の講義を宇佐美から受けていた。
「さて諸君! 諸君はこれからA級を目指す! そのためには……もうB級になってる修くんを除く、千佳ちゃんと遊真くんの2人にB級に上がってもらわなければならない! それは何故か!」
ハイテンションでそう言いながらホワイトボードに描かれた上からABCの順で並んだピラミッド図をペンで差す宇佐美。
「まずはB級……つまり正隊員にならないと、防衛任務にもA級に上がるための『ランク戦』にも参加できないのだ!」
「ランク戦?」
聞き慣れない単語に疑問符を浮かべている遊真に、シュテルが代わりに答える。
「ボーダー隊員同士が訓練のために行う模擬戦のことです。防衛任務による功績と合わせて、このランク戦で勝利することが、上に
「ふむ、つまりおれがB級になるには、C級のやつらを蹴散らしてくればいいわけだな」
「そういうことです」
シュテルの説明に納得した遊真は、続けて次の質問をする。
「それいつからやるの? 今から?」
「いいえ、遊真はまだ正式なボーダー隊員ではありませんので、本部で年に3回行われる『正式入隊日』まで、ランク戦には参加できません」
「え~~~……」
まだランク戦には参加できないと聞いて、不満そうな声をもらす遊真。
「慌てんなよ遊真。おまえは
自身のトリガーを使えないという迅の言葉に、遊真は新たに疑問を覚える。
「ふむ……? なんで? 本部の人に狙われるから?」
「それもあるんだけど、
「ふむ……そうなのか。じゃあ使わんとこ」
ユーノの説明に納得し、遊真は
「千佳ちゃんはどうしよっか? オペレーターか戦闘員か……」
次に千佳の扱いをどうするかで悩む宇佐美に、ディアーチェが間髪入れずに答える。
「無論、戦闘員であろう。雨取のトリオン能力を考えれば当然とも言える」
「おれも王様に賛成かな。この先狙われた時のためにも、チカは戦えるようになったほうがいいだろ」
「千佳ちゃんてそんなにすごいの?」
「見たらびびるよ」
「トリオン能力だけでいえば、この中で1番だな」
「わたしも……自分で戦えるようになりたいです」
ディアーチェの言葉に遊真も賛同し、千佳本人も戦闘員を希望したので、彼女が戦闘員になる方向で話を進める。
「じゃあ次はポジション決めよっか」
「ポジション……?」
「防衛隊員は戦う距離によってポジション分けされてるんだよね。『
「いえ、あんまり……」
「数学は得意?」
「成績はふつう……です」
「将棋とかチェスとかしたことある?」
「ないです……」
「チームスポーツも経験なしかー。う~ん……」
「すみません……取り柄がなくて……」
「えっ、ううん大丈夫だよー。参考にしてるだけだから」
悩む宇佐美に申し訳なさそうにしながら俯いてしまう千佳。するとそんな千佳を見かねた修が口を開いた。
「千佳は足は速くないですけど、マラソンとか長距離は結構速いです」
「お、持久力ありね」
「それに我慢強いし、真面目だし、コツコツした地道な作業が得意だし、集中力があります。あと意外と体が柔らかいです」
「「「おおー……!」」」
修があげた千佳の特徴に、遊真、シュテル、ディアーチェが感嘆の声を上げると、千佳は頬を赤らめて照れていた。
「ふんふんなるほど……よし、わかった!」
するとそれを聞いた宇佐美はホワイトボードに千佳の特徴を一通り書いた後、得意気にメガネを光らせる。
「わたくしめの分析の結果、千佳ちゃんに一番合うポジションは……」
「「
「あー!! 迅さん!! ユーノさん!! アタシが言いたかったのに! なんで言っちゃうのもー」
「あはは、ついね」
「お前がもったいぶるから」
一番言いたかったセリフを迅とユーノに取られてしまった宇佐美は2人に抗議するが、笑ってかわされてしまう。
するとその時……部屋の扉が勢いよくバンっと音を立てて開かれた。
「「「………!?」」」
そしてその場にいた全員が一斉にそちらへと視線を向けると、そこには何やら1人の少女が何故か半泣きで立っていた。
「あたしのどら焼きがない!!! 誰が食べたの!!?」
「……桐絵か……」
その少女を見たディアーチェが溜息混じりにそう呟く。少女の名は『
すると小南は、雷神丸の上で眠る陽太郎の両足を掴んで逆さ釣りにし始める。
「さてはまたお前か!? お前が食べたのか!?」
「むにゃむにゃ……たしかなまんぞく……」
「お前だなーーー!!?」
そう言って怒りを陽太郎にぶつける小南に、宇佐美が申し訳なさそうに口を開く。
「ごめーんこなみ、昨日お客さん用のお菓子に使っちゃった」
「はあ!?」
「また今度買ってくるから~」
「あたしは今食べたいの!!」
小南が宇佐美に詰め寄り、両頬をこれでもかと引っ張っていると……ディアーチェが呆れたような表情をしながら口を開いた。
「落ち着け桐絵」
「! ディアーチェ、いたの?」
ディアーチェに声をかけられた小南は、そこで彼女がいたことに気がついた。
「どら焼きの代わりというわけではないが、台所に我の特性マフィンが置いてある」
「ホント!?」
「ああ。それで機嫌を直せ」
「しょうがないわね~、今回は許してあげるわ」
そう言ってあっさりと宇佐美を解放し、機嫌がよくなる桐絵。その様子を見たディアーチェは内心で「相変わらずチョロいやつよ」と呟いていた。
「ありがと~王様~」
そして小南から解放された宇佐美は、ディアーチェに両手を合わせながら感謝したのであった。
「なんだなんだ、騒がしいな小南」
「いつも通りじゃないすか?」
するとそこへ、2人の男性が部屋に入ってきた。
「やあレイジ、京介、お邪魔してるよ」
「あっ、ユーノ先生。来てたんすね、お久しぶりです」
そう言ってユーノに軽く挨拶をかわすのは小南と同じく玉狛支部所属のA級隊員『
「ご無沙汰してます、ユーノさん」
そしてユーノに対して頭を下げながら挨拶をしているガタイのいい男性は同じく玉狛支部所属のA級隊員であり、隊長の『
「……おっ、この3人、迅さんが言ってた新人すか?」
「新人……!?」
すると遊真たち3人が目に入った烏丸がそう言うと、それを聞いた小南が険しい表情で3人を睨んだ。
「あたしそんな話聞いてないわよ!? なんでウチに新人なんか来るわけ!? 迅!!」
「まだ言ってなかったけど、実は………」
小南にそう問われた迅は、ゆっくりとソファから立ち上がると、3人が座るソファの後ろに回りながら口を開く。
「この3人、おれの弟と妹なんだ」
「……!?」
「「?」」
ドヤ顔でそう言い放った迅に修は驚愕し、烏丸とレイジは疑問符を浮かべていた。
「えっ、そうなの?」
そして小南はそんな明らかにウソだとわかる話を、あっさりと信じた。
「迅に兄弟なんかいたんだ……! とりまる、あんた知ってた!?」
「もちろんですよ。小南先輩知らなかったんですか?」
シレっとそう言いながら迅のウソに乗っかる烏丸。
「ユーノさん、シュテル、ディアーチェも知ってたの!?」
「まあね。僕も初めて知った時はビックリしたよ」
「というか、桐絵は知らなかったのか」
「意外ですね、桐絵が一番迅さんと付き合いが長いはずなのに」
そう言ってスクライア隊の3人も、迅のウソに付き合うことにした。
「よく見てください。この遊真という子なんか、迅さんにそっくりでしょう?」
シュテルにそう言われて、遊真も面白そうだと感じたのか、迅と同じようなドヤ顔を浮かべる。
「言われてみれば迅に似てるような……レイジさんも知ってたの!?」
「よく知ってるよ――迅が一人っ子だってことを」
「!?」
レイジの言葉に、困惑するような表情を浮かべる桐絵。そこへすかさず、宇佐美が紹介に入る。
「このすぐダマされちゃう子が小南桐絵、17歳」
「だましたの!?」
「いやーまさか信じるとは、さすが小南」
そこでようやく騙されたことに気がついた小南に、張本人である迅は笑う。
「こっちのもさもさした男前が烏丸恭介、16歳」
「もさもさした男前です、よろしく」
「こっちの落ち着いた筋肉が木崎レイジ、21歳」
「落ち着いた筋肉……? それ人間か?」
一通りの紹介が終わったところで、迅が口を開く。
「うーん、そろそろ本題に入りたいところなんだが……まだ面子がそろってないんだよな」
そう言って迅は端末で時間を確認する。
「おれのサイドエフェクトが言うにはそろそろ……っと、来たな」
「「「?」」」
迅の言葉に全員が首を傾げていると……部屋の扉の向こうから、ドタバタと騒がしい足音が聞こえてくる。
「ああ、これは……」
「来たわね」
「みたいすね」
その音を聞いたレイジ、小南、烏丸は察したようにそう言い、その隣ではユーノたちスクライア隊の3人が呆れたように頭を抱えていた。
足音は次第に近くなっていき……そして次の瞬間……
「いやっほー!! 玉狛のみんなオイーッス!! 遊びに来たよーー!!」
扉が壊れるのではないかというほど勢いよく開かれ、同時に水色の長い髪をツインテールにした元気いっぱいの少女が飛び込んで来た。
「やっぱりアンタだったわね」
「おー! こなみんおっはよー! とりまるとレイジもおはよー!」
「ああ、おはよう」
「おはよう」
そう言って少女はハイテンションのまま小南とレイジと烏丸に挨拶を交わす。すると……
「ふんっ」
「おぶっ」
そんな少女の後ろから、ディアーチェが彼女の脳天にゲンコツを落とした。
「痛い! 痛いよ王様!」
「たわけが! 痛くしたのだから当然だ! それよりもっと静かに入ってこんか!!」
「え~、でもボク玉狛に来る時いつもこんな感じだよー?」
「それを直せと言っておるのだ。レイジさんやとりまる、それに支部長にも迷惑がかかるであろう。あとのやつらは知ったことではないが」
「「「おいこら」」」
少女を説教しているディアーチェに迅と小南と宇佐美がツッコミを入れるが、ディアーチェは普通に無視した。
するとそんな様子をポカーンとしながら眺めていた遊真と修と千佳の3人に、シュテルが小さく頭を下げながら謝罪する。
「ウチの者がお騒がせして申し訳ありません」
「えっと……あの子もスクライア隊の人なのか?」
「はい。彼女は『レヴィ・スクライア』。私とディアーチェの妹に当たる子です」
「あーーーっ!!」
修の質問に答えながら、シュテルは少女ことレヴィの紹介をする。すると、そんな修たちに気がついたレヴィが大声を上げながら彼らに駆け寄った。
「キミたちだね! おとーさんが言ってた玉狛支部の新人って!!」
「どうも、おれは空閑遊真。よろしく」
「三雲修……です」
「あ…雨取千佳といいます」
「よろしくー! ボクはレヴィ!! 強くて凄くてカッコイイ!! スクライア隊の最強
元気いっぱいに自己紹介するレヴィに若干気圧されながらも、遊真たちも自己紹介を交わす。
「ところでレヴィ、ユーリは一緒ではないのですか?」
「うん? ユーリなら一緒に……あれ?」
シュテルにそう言われて後ろを振り返るレヴィだが、そこに目当ての人物がいないことに首を傾げていた。すると……
「レヴィ~待ってください~」
トテトテと足音を立てながら、今度はフワフワとした長い金髪が特徴の少女が、息を切らしながら部屋にやって来た。
「ユーリ、遅かったね」
「レヴィが早すぎるんですよ! 私を置いて行くなんてひどいですー」
レヴィに対して片頬を膨らませて、ぷんぷんと怒りながら文句を言う金髪の少女。だがその可愛らしい容姿も相まって、全然怖くはない。
「ディアーチェ……あの子ももしかして、スクライア隊の?」
「そうだ。我ら4姉妹の末っ子であり、スクライア隊のオペレーターのユーリだ」
「オペレーター!? あんなに小さい子が!?」
ユーリと呼ばれた少女がオペレーターと聞いて驚愕する修だが、それも無理はない。ユーリは遊真や千佳よりも背が低く、どう見ても小学生くらいにしか見えないのだから。
「ユーリを甘くみるでないぞ? やつは姉妹の中でも一番の切れ者でな。歳は12歳だが、飛び級で大学に通うことを許された秀才だ」
「………!?」
まるで自分のことのように誇らしげに語るディアーチェの言葉に、修は言葉を失う。僅か12歳の少女が大学に通っているなど衝撃でしかなかったのだろう。
するとそんな修たちに気がついたユーリは、彼らにペコリと頭を下げて挨拶をする。
「はじめまして、空閑さんに三雲さんに雨取さんですね? 父さまから事情は聞いてます。スクライア隊オペレーターのユーリ・スクライアです。ユーリと呼んでください」
「よろしくな、ユーリ」
「よ、よろしく」
「よろしく、ユーリちゃん」
挨拶をするユーリに遊真はいつも通りの(=ε=)の顔で、修は若干戸惑い気味に、千佳は優しく微笑みながらそれに応じていた。
そしてそれが終わったのを見計らって、ユーノがパンっと手を叩いて全員の注目を集める。
「さて、じゃあ全員そろったことだし、本題に入ろうか。迅」
「了解です、ユーノ先生。こっちの3人は、わけあってA級を目指してる。これから厳しい実力派の世界に身を投じるわけだが、さっき宇佐美が言ったようにC級ランク戦までにまだ少し時間がある」
「今日は12月15日だから、1月8日の入隊日までには約3週間くらいある。この3週間を使って玉狛の新人3人を鍛えようっていうのが、僕と迅が考えたプラン」
「具体的には……レイジさんたち3人にはそれぞれ、メガネくんたちの師匠になって指導してもらう」
ユーノと迅がそう説明すると、小南が異論を唱える。
「はあ!? ちょっと勝手に決めないでよ! あたしまだこの子たちの入隊なんて認めて……」
「小南、これは
「……!
「林藤さんの命令じゃ仕方ないな」
「そうっすね、仕方ないっすね」
「ボスの命令じゃしょーがないよこなみん」
「…………」
レイジと京介、あと何故かレヴィにまでそう言われて、小南は押し黙り……やがて仕方なさそうにしながら口を開く。
「わかったわ、やればいいんでしょ。でもその代わり──こいつはあたしがもらうから」
そう言って小南が捕まえたのは、なんと遊真であった。
「見た感じ、あんたが一番強いんでしょ? あたし弱いやつは嫌いなの」
「ほほう、お目が高い」
ひと目で遊真の実力を見破った小南に、遊真自身も興味を持ったようである。
「じゃあ千佳ちゃんはレイジさんだね。
「よ、よろしくお願いします……」
「よろしく」
唯一の
「……となると俺は必然的に……」
「…………よろしくお願いします」
残った修の指導は、同じく残った烏丸が担当する事に決まった。
「ああ、それともう1つ。さすがにレイジさんたちも防衛任務や用事とかで、3人の指導に当たれないことがある。特に京介なんかは、バイトもあるからなぁ」
「まあ、そうっすね」
「そこで……ディアちゃん、シュテルちゃん、レヴィちゃんの3人には、レイジさんたちの補佐にとして、一緒にメガネくんたちを指導して欲しいんだ」
「ハァ!?」
迅がそう言うと、ディアーチェが聞いてないぞと言わんばかりに大声を上げて驚愕する。
「シュテるん、どういうこと?」
「要するに、私たちも一緒になって遊真たちを鍛えましょう…ということです」
「おおーっ! おもしろそー!」
「面白くないわ!! 大体なんの権限があって、貴様にそんなこと決められなければならんのだ!!?」
「だっておれ、今はスクライア隊の指揮権持ってるからね」
「なっ……ぐぬぅ…!!」
そう、現在スクライア隊は忍田本部長の命令により、迅の指揮下に置かれているのだ。それを迅にドヤ顔で説明されたディアーチェは悔しそうに歯噛みする。
「ディアーチェ、今回は遊真くんや三雲くんのために、引き受けてもらえないかな?」
「ぬぅ……わかった、父上にそう言われては断れまい。迅の命令というのが非常に癪だがな」
「ディアちゃん、おれにキツすぎない?」
そんなこんなで、ディアーチェたち3人も補佐として遊真たちの指導につくことになった。
「では
「ああ、頼む」
「よろしく、シュテルちゃん」
「じゃあボクはこなみんと一緒にユーマを鍛えるー!」
「ほほう、よろしくお願いします」
「邪魔だけはしないでよね」
「では我は、とりまるの補佐か」
「そうなるな」
「えっと…よろしく」
シュテルはレイジと千佳へ…レヴィは小南と遊真…そしてディアーチェは烏丸と修にそれぞれつくことになったのであった。
「父さま、私はなにをすればいいんですか?」
「ユーリは宇佐美ちゃんのサポートだね。いろいろ手伝ってあげて」
「よろしくね~ユーリちゃん」
「はい! がんばります!」
ユーノと宇佐美の言葉に、ユーリは元気よく返事を返したのであった。
「よーしそれじゃあ、3人とも師匠と補佐役の指導をよく聞いて、3週間みっちり腕を磨くように!」
そう言って迅が締めくくると、宇佐美が疑問符を浮かべながら問い掛ける。
「そういえば、迅さんとユーノさんはコーチやらないの?」
「うーん、残念だけど……今回は僕と迅は抜けさせてもらうよ」
「いろいろやることがあるからな」
宇佐美の疑問にそう答えながら、迅とユーノの2人は意味深な笑いを浮かべていたのであった。
つづく
■レヴィ・スクライア
■スクライア隊
■13歳 中学2年生(飛び級)
■5月21日生まれ
■うさぎ座
■B型
■身長:154cm
■好きなもの:おとーさん、水色、カレーライス(甘口)
■ユーリ・スクライア
■スクライア隊 オペレーター
■12歳 大学生(飛び級)
■7月7日生まれ
■つるぎ座
■A型
■身長:138cm
■好きなもの:父様、ハンバーグ