ユーノのボーダー活動日記   作:ZEROⅡ

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黒トリガー争奪編
本部トップ部隊


 

 

 

 

 

 

第11話

『本部トップ部隊(チーム)

 

 

 

 

 

場所は変わってボーダー本部の会議室。

 

 

そこには城戸をはじめとした城戸派の幹部たちと、三輪と奈良坂の2人が集まっており、そして……

 

 

「これが今回の遠征の成果です。お納め下さい、城戸司令」

 

 

「御苦労。無事の帰還なによりだ、ボーダー最精鋭部隊よ」

 

 

労うようにそう告げる城戸の目の前には、今回の遠征から帰ってきた3人が立っていた。

 

 

A級1位 太刀川隊

NO.1アタッカー

太刀川(たちかわ)慶《けい》』

 

 

A級3位 風間隊

NO.2アタッカー

風間(かざま)蒼也《そうや》』

 

 

A級2位 冬島隊

NO.1スナイパー

当真(とうま)勇《いさみ》』

 

 

この3人が、A級トップの3チームの代表である。

 

 

「おお! 素晴らしい! 未知の世界のトリガー! これでボーダーのトリガー技術は更なる進化を遂げるぞ!」

 

 

彼らが持ち帰った未知のトリガーに、技術者として喜ぶ鬼怒田。

 

 

「……さて、帰還早々で悪いが、お前たちには新しい任務がある」

 

 

すると、城戸がさっそく本題に入る。

 

 

「現在、玉狛支部に在る(ブラック)トリガーの確保だ。」

 

 

(ブラック)トリガー……!」

 

 

「玉狛?」

 

 

城戸の言葉に風間と太刀川が各々反応を示す。

 

 

「三輪隊、説明を」

 

 

「はい」

 

 

城戸は説明を三輪隊に任せると、奈良坂が立ち上がった。

 

 

「12月4日午前。追跡調査により近界民(ネイバー)を発見。交戦したところ、(ブラック)トリガーの発動を確認。その能力は『相手の攻撃を学習して自分のものにする』」

 

 

「………!!」

 

 

奈良坂が説明した(ブラック)トリガーの能力を聞き、風間は声には出さないが驚いたような表情を浮かべる。

 

 

「その後、スクライア隊のディアーチェ隊員が戦闘に参加し、近界民(ネイバー)と交戦。だがそこで、玉狛支部の迅隊員が戦闘に介入。迅隊員とその近界民(ネイバー)に面識があったため一時停戦。その近界民(ネイバー)は迅の手引きで玉狛支部に入隊した模様――そして現在に至ります」

 

 

近界民(ネイバー)がボーダーに入隊!? なんだそりゃ!」

 

 

奈良坂の説明が終わると同時に当真が驚いたようにそう言う。

 

 

「玉狛なら有り得るだろう。元々、玉狛の技術者(エンジニア)近界民(ネイバー)だ。今回の問題は、ただの近界民(ネイバー)はなく、(ブラック)トリガー持ちだという事だな。玉狛に(ブラック)トリガーが2つとなれば、ボーダー内のパワーバランスが逆転する」

 

 

冷静に分析した風間の言葉に同意を示したのは、他でもない城戸だ。

 

 

「そうだ。だがそれは許されない。お前達にはなんとしても(ブラック)トリガーを確保してもらう」

 

 

城戸の言葉を聞いていた太刀川が奈良坂に問い掛ける。

 

 

「『(ブラック)トリガー』の行動パターンは? 1人になる時間帯とか決まってんの? まさか玉狛の全員を相手するわけにはいかないだろ」

 

 

太刀川に問われた奈良坂は端末を取り出して、データを確認しながら答える。

 

 

「『黒トリガー』は毎朝7時頃玉狛支部にやって来て、夜9時から11時の間に玉狛を出て自宅に戻るようです。現在もうちの米屋と古寺が監視しています」

 

 

「チャンスは毎日あるわけだねぇ。ならばしっかり作戦を練って……」

 

 

「いや」

 

 

根付の言葉を遮って、太刀川が告げる。

 

 

「今夜にしましょう、今夜」

 

 

即決でそう言いきった太刀川に、驚きの声をあげる鬼怒田と根付。そして三輪がそんな太刀川を睨んだ。

 

 

「……太刀川さん、いくらアンタでも相手を舐めない方が良い」

 

 

三輪の言葉に太刀川は不思議そうに疑問符を浮かべながら彼に視線を向ける。

 

 

「舐める? 何でだ三輪? 相手のトリガーは『学習する』トリガーなんだろう? 今頃、玉狛でうちのトリガーを『学習』してるかもしれない。時間が経つ程こっちは不利になるぞ」

 

 

太刀川が決行日を今夜と決めた理由を聞いて、あまりの正論に三輪は返す言葉もなかった。

 

 

「それに、長引かせたら見張りしてる米屋と古寺に悪いだろ。サクっと終わらせようや」

 

 

「なるほどね」

 

 

「……確かに、早いほうがいいな」

 

 

太刀川の提案に当真と風間は頷いた。

 

 

「それでいいですか? 城戸司令」

 

 

「いいだろう。部隊はお前が指揮しろ、太刀川。だがくれぐれも油断するな」

 

 

「わかってますよ。場合によっちゃ迅や玉狛の連中とやり合うことになる。ま、その方が俺にとっては願ったり叶ったりですけど」

 

 

「太刀川」

 

 

「おっと」

 

 

城戸からの承諾と、警告ともとれる言葉に対して、太刀川は軽い調子でそう答えるが、すぐに年長者である風間に睨まれて口を噤んだ。だが城戸は特に気にした様子もなく、言葉を続ける。

 

 

「それだけではない。今はA級8位『スクライア隊』も、迅の指揮下のもとで玉狛側についている」

 

 

「げっ」

 

 

「!」

 

 

「マジで!?」

 

 

城戸から告げられたその言葉に、太刀川はあからさまに顔を歪め、風間は僅かに目を見開き、当真は驚愕を露にする。

 

 

「迅のやつ、ユーノ先生と手を組んだのか。あの2人が手を組むとかなり厄介だ」

 

 

「ユーノさんだけじゃない。シュテル、レヴィ、ディアーチェの3人もかなりの使い手だ。スクライア隊が敵に回るとなれば、作戦は慎重に立てるべきだろう」

 

 

「よし、じゃあ夜まで作戦立てますか」

 

 

「襲撃地点の選定と、万が一戦闘になった際の対策も必要だろう」

 

 

「なるほど。帰還早々、こいつは忙しくなりそうだ」

 

 

そして太刀川と風間はそんな会話をしながら、今後の作戦を立てるべく、会議室を後にしていったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてその夜……警戒区域内を音もなく駆け抜けて行く集団。その集団とは、言うまでもなく太刀川率いるA級1位、2位、3位、そして7位の隊員による混成チームである。

 

 

それぞれがレーダーから姿を消すことができるマント型のトリガーである『バッグワーム』を纏いながら、彼らは静かに玉狛支部を目指していく。

 

 

だがそんな彼らの目の前に、迅が1人立ち塞がった。

 

 

迅は遊真はもう正式なボーダー隊員だと主張し、『模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる』という隊務規定を盾にして彼らを退かせようとする。

 

 

だがそれは、太刀川の『正式入隊日を迎えるまで本部ではボーダー隊員として認められない』という言葉に、あえなく論破されてしまった。

 

 

「本部と支部のパワーバランスが崩れる事を別としても、(ブラック)トリガーを持った近界民(ネイバー)が野放しにされている状況は、ボーダーとして許す訳にはいかない。城戸司令はどんな手を使っても玉狛の(ブラック)トリガーを本部の管理下に置くだろう。玉狛が抵抗しても遅いか早いかの違いでしかない。大人しく渡した方がお互いの為だ……それとも、(ブラック)トリガーの力を使って本部と抗争でもするつもりか?」

 

 

風間から問い掛けられたその言葉に、迅は微笑を浮かべながら返す。

 

 

「城戸さんの事情は色々あるだろうが、こっちにだって事情がある。アンタ達にとっては単なる(ブラック)トリガーだとしても、持ち主本人にしてみれば命より大事な物だ。別に戦争するつもりは無いが、大人しく渡すわけにはいかないな」

 

 

揺るぎ無い意志で告げられた迅の言葉に、風間は「あくまで抵抗を選ぶか」と言って息を吐く。

 

 

「お前も当然知ってるだろうが、遠征部隊に選ばれるのは、(ブラック)トリガーに対抗出来ると判断された部隊だけだ。他の連中相手ならともかく、俺たちの部隊を相手にお前1人で勝てるつもりか?」

 

 

「おれはそこまで自惚れてないよ。遠征部隊の強さはよく知ってる。それに加えてA級の三輪隊。俺が(ブラック)トリガーを使ったとしてもいいとこ五分だろ――『おれ1人だったら』の話だけど」

 

 

「……!? 何……!?」

 

 

迅の含みのあるその言葉に、眉をひそめる風間。

 

 

「城戸さんから聞いてるよね? 今のおれには、すごく心強い味方がついてるってこと」

 

 

そして迅がそう言い放ったその時……タイミングを計ったようにすぐ近くの建物の屋根に、複数の人影が現れた。

 

 

そこに立っていたのは……全員が赤、青、紫、緑とそれぞれのイメージカラーが入った服装を身に纏った集団。

 

 

 

 

「スクライア隊現着!」

 

 

 

 

シュテル…レヴィ…ディアーチェ…そしてユーノ。ボーダーA級8位部隊……スクライア隊の4人であった。

 

 

「忍田本部長の命により、迅隊員の指揮の下、玉狛支部に加勢する」

 

 

「ユーノさん……!」

 

 

「スクライア隊……」

 

 

「やっぱそう来たか……!」

 

 

ユーノたちスクライア隊の登場に、混成チーム全体に動揺が走る。

 

 

「遅くなってごめんね、迅」

 

 

「いや、ナイスタイミングですよユーノ先生。で? そっちの仕込みは?」

 

 

「バッチリさ」

 

 

「さすが先生。ディアちゃんたちもよく来てくれたね」

 

 

「勘違いするな、貴様の為などではない。遊真や三雲に余計なちょっかいを出そうとするあやつらが気に食わぬだけよ」

 

 

「ええ、決して遊真たちの邪魔はさせません」

 

 

「ボクはソーヤたちと戦えるって聞いたから!」

 

 

若干1名ズレているが、どうやらシュテルたちも遊真たちの為にこの場に赴いたようである。

 

 

「ユーノ先生たちがいれば、はっきり言ってこっちが勝つよ。おれのサイドエフェクトがそう言ってる。おれだって別に本部とケンカしたいわけじゃない。退いてくれると嬉しいんだけどな、太刀川さん」

 

 

「なるほど、『未来視』のサイドエフェクトか。ここまで本気のお前は久しぶりにみるな。おもしろい」

 

 

そう言うと、太刀川は腰に差していた刀のような形状をしたブレード『弧月』をゆっくりと鞘から引き抜く。

 

 

「お前の予知を──覆したくなった」

 

 

「やれやれ──そういうだろうなと思ったよ」

 

 

そしてそれに対して迅も、腰に差した(ブラック)トリガー『風刃』を鞘から剣を抜いた。

 

 

それが開戦の合図となり……その場にいた全員が臨戦態勢に入ったのであった。

 

 

最初に動き出したのは……風間隊隊長の風間と、その部下である『菊地原(きくちはら)士郎《しろう》』と『歌川(うたがわ)遼《りょう》』の3人。3人は両手に持ったスコーピオンを構え、迅とユーノたちへと向かって駆け出して行く。

 

 

「「アステロイド」」

 

 

それに対してユーノは両手、ディアーチェは左手にトリオンキューブを展開し、それを細かく分割して弾丸を発射する。だが風間隊は防御用のオプショントリガーの『シールド』で防壁を張って、弾丸をガードしながら突き進む。そして歌川が迅の眼前へ迫った瞬間、スコーピオンを振るう。

 

 

「レヴィ!」

 

 

「はーい!」

 

 

だがそれよりも早く、歌川と迅の間に割って入ったレヴィが、自身の腰の背面に交差させるように差した2本の弧月のうち1本を抜いて、歌川のスコーピオンを受け止める。

 

 

「レヴィ……!」

 

 

「やっほー♪ うってぃー久しぶり~!」

 

 

そんな軽い挨拶をしながらも、レヴィはスコーピオンを弾いて押し返し、そのまま歌川に向かって弧月を振り下ろす。

 

 

「チッ……!」

 

 

それをスコーピオンで受け止めようとした歌川だが、耐久力で劣るスコーピオンでは受け切れずにレヴィの弧月によって砕かれ、そのまま肩に切り傷を負ってしまう。

 

 

「下がれ、歌川」

 

 

「!」

 

 

すると後ろから風間の指示が聞こえ、それを聞いた歌川は後ろに大きく飛んでレヴィから距離を取る。同時に、そんな歌川と入れ替わるように飛び出して来た風間がレヴィ目掛けてスコーピオンを振るった。当然、レヴィはそれを弧月で防ぐ。

 

 

「ソーヤ!!」

 

 

「邪魔をするな、レヴィ」

 

 

そう言いながら、風間はもう片方の手に握ったスコーピオンでレヴィに斬りかかる。だがレヴィも負けじと、もう1本の弧月を抜いてそれを受け止めた。そしてギリギリと鍔迫り合いをしたあと、お互いに弾かれるように後方へと飛び、地面に着地する。

 

 

「もらった」

 

 

「!」

 

 

するとそこへ、いつの間にか飛び上がっていた太刀川が、上空から落下しながらレヴィ目掛けて弧月を振り下ろした。

 

 

「おっと、そうはさせないよ太刀川さん」

 

 

だがその攻撃は、風刃を構えた迅によって受け止められた。

 

 

「迅……!」

 

 

太刀川はどこか嬉しそうに口角を吊り上げながら再び弧月を振るい、それに対して迅も同時に風刃を振るった。お互いのブレードが激突し、甲高い金属音が何度も響き渡る。

 

 

すると太刀川は、1歩後方に下がると、弧月を構え直す。そして……

 

 

「旋空弧月」

 

 

弧月専用のオプショントリガー『旋空』によって拡張された刃から放たれる斬撃が、迅とユーノを襲う。だが直前にそれを察知していた2人は大きく飛びあがって斬撃をかわした事で、その攻撃は放棄された民家を切り刻むだけに終わった。

 

 

「メテオラ」

 

 

するとユーノは右手に展開したトリオンキューブから、爆発によって広範囲を攻撃できる弾丸『炸裂弾(メテオラ)』を上空から地面に目掛けて放つ。そしてそれが着弾すると同時に凄まじい爆発が起き、瓦礫と砂煙を辺りに撒き散らす。どうやら攻撃ではなく、目くらましが目的らしい。事実、その爆発に乗じてシュテルたち3人も迅とユーノを追うように跳躍し、屋根の上に立って太刀川たちから距離を取っていた。

 

 

「うひー、さすが迅さんにユーノさん。イヤな地形選ぶぜ。射線が全然通んねーじゃん」

 

 

そんな中でイーグレットを持った当真が1人ごちる。彼らのような狙撃手(スナイパー)にとって、住宅が並ぶこの場所はとてもやり辛いのだろう。

 

 

「5人纏まってると、なかなか殺しきれないな」

 

 

「しかも迅はまだ『風刃』を1発も撃っていない。トリオンを温存する気だ」

 

 

「後手後手だな……」

 

 

《風間さん、こいつら無視して(ブラック)トリガー獲りに行っちゃダメなんですか? うちの隊だけでも》

 

 

「玉狛には木崎たちがいる。ここで戦力を分散するのは危険だ」

 

 

《なるほど……了解》

 

 

通信越しのそんな問いに、風間が理由を述べながら答えると、菊地原は納得して引き下がる。

 

 

「三輪、米屋と古寺はまだか?」

 

 

「もうすぐ合流します」

 

 

「出水」

 

 

「はいはい」

 

 

三輪に続いて太刀川に声をかけられたのは、彼の部下である『出水(いずみ)公平《こうへい》』。

 

 

「俺と風間隊と狙撃手(スナイパー)3人は、総攻撃で迅をやる。お前は三輪と米屋と組んでスクライア隊を足止めしろ」

 

 

「うげっ……マジですか。でもまぁ了解」

 

 

太刀川の指示に一瞬だけ顔をしかめた出水だが、すぐに承諾した。

 

 

「玉狛と忍田派が手を結んだという事は、(ブラック)トリガー2つと本部隊員の3分の1。戦力の上で完全に我々を上回ったという事だ。(ブラック)トリガーの奪取はより緊急性を増した。失敗は許されないぞ、三輪」

 

 

「わかってます、風間さん」

 

 

風間の言葉に対して、三輪は神妙な面持ちで頷いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方で太刀川たちから距離を置いた迅とユーノたちは、彼らの同行を伺いつつ、少し離れた場所にある民家の屋根の上で作戦会議を行っていた。

 

 

「……次はこっちを分断しに来そうだな。ユーノ先生なら、この先どう読みます?」

 

 

「そうだね……おそらく慶や蒼也の隊が狙撃手(スナイパー)と連携して迅を総攻撃、そして僕らの方には三輪隊と公平を使って足止めに来るだろうね」

 

 

「あちゃー、やっぱり風間さんはこっち来るか。予想はしてたから問題ないけど」

 

 

「うん、だから僕としてはこのまま迅とスクライア隊で分かれて迎え撃つのもいいと思うんだけど……」

 

 

「ヤダ!! ボクはソーヤと戦いたい!!」

 

 

「ってレヴィが言うから、迅はレヴィと一緒に行動ね」

 

 

「いいですよ、風間さんの相手をしてくれるだけで大助かりだ」

 

 

「シュテルは……」

 

 

「はい。相手狙撃手(スナイパー)の足止め……ですね?」

 

 

「頼むよ」

 

 

「父上、来たぞ」

 

 

大まかな作戦が決まったところで、太刀川たちに動きがあったのを確認したディアーチェがそう告げる。それを聞いた迅とユーノは、各々の役目を果たす為に動き出す。

 

 

「じゃあうまいことお願いしますよ、ユーノ先生」

 

 

「そっちもね、迅」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後……狙撃場所の確保に向かったシュテルを除き、ユーノとディアーチェの2人は出水と三輪、そして後から合流した米屋と相対していた。

 

 

「やあ公平、久しぶりだね」

 

 

「お久しぶりです、ユーノ師匠。まさか師匠とやり合う日が来るとは思わなかった」

 

 

苦笑を浮かべながらユーノを師と呼ぶ出水。どうやらこの2人は師弟関係にあるようである。

 

 

「おっ、そういやお前ってユーノさんの弟子だったよな」

 

 

「おれだけじゃねーよ。二宮さんや那須……ボーダーで名の通った射手(シューター)は大体あの人の弟子だ。例外は加古さんくらいかな」

 

 

「弾バカ族の生みの親だな」

 

 

「誰が弾バカだ、槍バカ」

 

 

出水と米屋がそんな会話をしていると……三輪がユーノたちを憎々し気に睨みながら口を開く。

 

 

「スクライア隊……なぜ玉狛と手を組んだ? 玉狛は近界民(ネイバー)を使って何を企んでいる?」

 

 

「別に玉狛は何も企んでないよ。ただ、キミが近界民(ネイバー)と呼ぶ少年とウチのシュテルが同級生で仲が良くてね、彼を守ってあげたいそうなんだ。僕は父親として、そんな娘の手伝いをしてあげてるだけだよ」

 

 

ユーノのその言葉を聞いた三輪はさらに目つきを鋭くしながら、大声で叫ぶ。

 

 

「そんなくだらない理由で近界民(ネイバー)を庇うのか!? 近界民(ネイバー)の排除がボーダーの責務だぞ!!」

 

 

「三輪くん、キミが近界民(ネイバー)を憎む理由は知ってる。恨みを捨てろなんて無責任なことは言わないよ。だけど……殺し合うだけが『戦い』じゃない。僕たちは僕たちの、迅は迅なりの考え方で戦っているってことさ。それでも納得できないなら、気の済むまで相手してあげるよ」

 

 

「……………」

 

 

不敵な笑みを浮かべながらそう語るユーノを、無言で睨む三輪。

 

 

「戦るならさっさと始めようぜ、師匠」

 

 

「!」

 

 

「早くこっちを片付けて、太刀川さんに加勢しなきゃなんないからな」

 

 

そう言うと出水は、両手にトリオンキューブを展開して攻撃態勢に入る。

 

 

「やれやれ、せっかちな弟子だね」

 

 

それに対してユーノも、細かく分散したトリオンキューブを自身の身体の周りを巡回させるような形で攻撃態勢に入った。

 

 

「陽介、上からユーノさんの裏側へまわれ。挟み撃ちにするぞ」

 

 

「オッケー」

 

 

三輪の指示を聞いた米屋は民家の屋根を伝ってユーノの後ろに回り込むために、その場から大きく跳躍する。

 

 

「させると思うたか?」

 

 

「!?」

 

 

するとそんな米屋を追う形でディアーチェも飛び上がり、2人はマンションに沿うかたちで跳躍しながら向かい合う。

 

 

「オラ!」

 

 

「ぬっ……!」

 

 

それを見た米屋はすぐさま標的をディアーチェへと変更し、彼女目掛けて槍型の弧月を振るう。それに対してディアーチェはレイガストのブレードでそれをいなすが、勢いに押されてそのまま窓を破り、2人そろってマンションの部屋へと雪崩れ込んでしまった。

 

 

「おいこら王様、勝手に人んちに入っていいのか?」

 

 

「窓を割ったのはうぬであろう」

 

 

部屋の中で対面するディアーチェと米屋は、お互いに不敵な笑みを浮かべながらそう言い放ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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