ユーノのボーダー活動日記   作:ZEROⅡ

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どうもお久しぶりです。

突然ですがこの度、小説を一部書き直すことにしました。理由は、自分で読み返していて、あまりにも原作に沿いすぎてちょっとつまらなく感じたからです。特に黒トリガー争奪戦。

なので、一部設定を変更して1話から書き直しました。まぁ書き直したとは言っても、黒トリガー争奪戦までは、本当に少しだけ書き直した程度ですが。

あとシュテルのサイドエフェクトに関しても変更しました。『トリオン視覚感知』はどう考えても人間の能力という感じではなかったので。

という訳で、今回から書き直した『黒トリガー争奪戦編』です。オリジナル展開をかなり織り交ぜていく予定ですので、どうぞお楽しみください。


感想お待ちしております!!




争奪戦

 

 

 

 

 

 

夜の三門市内にある警戒区域の住宅街。そこでは迅とレヴィの2人が、太刀川と風間隊の3人と相対していた。

 

 

「やっぱりおれを追ってくるのは、アンタたちなんだな」

 

 

「やっぱり? サイドエフェクトで視えていたんだろ?」

 

 

「まぁね~」

 

 

飄々とした笑みを浮かべながら、太刀川とそんな問答をする迅。

 

 

「さてと、仕方ない。やろうか? 太刀川さん」

 

 

「……ああ。久しぶりだな、迅!」

 

 

そう言うと太刀川は、どこか嬉しそうな顔をしながら鞘から弧月を抜いて構えたのだった。それを見た風間も、右手にスコーピオンを出して構えるが……

 

 

「ソーヤの相手はボクだよ!」

 

 

そんな風間の前には、レヴィが立ちはだかった。

 

 

「レヴィか」

 

 

「久しぶりにソーヤと戦えるって聞いて楽しみだったんだ~! 今日は負けないもんねー!!」

 

 

そしてレヴィは腰の背面に携えた2本の弧月を鞘から引き抜き、構えながらそう言い放ったのだった。

 

 

「何あいつ? 年下のくせに風間さんに生意気だね」

 

 

「いやお前が言うか。というか風間さん、相変わらずレヴィに懐かれてますね」

 

 

「まぁ……あいつとは何だかんだで付き合いが長いからな」

 

 

すると風間は、スコーピオンを構えながら内部通信で歌川と菊地原に指示を出す。

 

 

《歌川、菊地原、お前たちは太刀川の援護にまわれ。レヴィの相手は俺がする》

 

 

《えー…そんなことしなくてもこんな頭悪そうなやつ、ぼくたちなら楽勝ですよ》

 

 

《ダメだ》

 

 

菊地原の言葉を一蹴し、風間は強く言い放つ。

 

 

《見た目と言動で相手を甘くみるな、菊地原。レヴィは攻撃手(アタッカー)ランク3位、実力は俺や太刀川と比べても遜色ない。迅と共闘されると厄介だ。俺がやつを引き付ける。お前たちは太刀川の援護だ、いいな?》

 

 

《歌川、了解》

 

 

《……菊地原、了解》

 

 

歌川は素直に了承し、菊地原も不服そうにしながら渋々了承した。それを確認した風間は、続けてどこかに身を隠している狙撃手(スナイパー)にも連絡を取る。

 

 

《当真、奈良坂、古寺、お前たちは戦況を見て迅とレヴィを狙撃しろ》

 

 

《当真、了解》

 

 

《奈良坂、了解》

 

 

《古寺、了解》

 

 

狙撃手(スナイパー)組へと指示を出してその了解を得たあと、風間は改めてレヴィに向き直る。

 

 

「始めるか……レヴィ」

 

 

「うん! それじゃー元気にいってみよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第12話

『争奪戦』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に動き出したのはレヴィだった。勢いよく地面を蹴って前へと飛び出し、その勢いのまま右手で持った弧月を風間に向かって左から右に横薙ぎに振り抜く。

 

それに対して風間は、スコーピオンで受けると同時に刃で滑らせるようにしてその攻撃を受け流し、一瞬でレヴィの懐に潜り込む。そしてがら空きとなっているレヴィの腹部目掛けて、今度は風間がスコーピオンを振るうが……その瞬間、レヴィの姿が文字通り消えた。

 

 

「(『テレポーター』か)」

 

 

オプショントリガーの1つ『テレポーター』。その名の通り、瞬間移動を可能にするトリガーである。ただし移動先は、視線の方角数十メートルと決まっている。

 

 

「甘い」

 

 

テレポーターの特徴を理解している風間は、レヴィが消えた事にも動じることなく、すぐさま振り返って両手のスコーピオンを交差させるように構える。それとほぼ同時に、風間の背後に瞬間移動(テレポート)していたレヴィが右手で振るう弧月とスコーピオンが衝突した。

 

 

その衝突を皮切りに、両者の激しい攻防戦が始まった。

 

 

レヴィは両手に持った弧月を巧みに振るって、鋭い斬撃を休みなく放つ。それに対して風間も、レヴィの攻撃を耐久力で劣るスコーピオンで上手く受け流し、時には腕などから突出させた刃で反撃する。そんな両者共に息もつかせぬ攻防戦の中で痺れを切らしたのか、レヴィは後方に下がって右手の弧月を構える。

 

 

「旋空弧月!!」

 

 

そしてレヴィは右手の弧月を十字に振るい、同時に『旋空』によって拡張された広範囲の斬撃が放たれる。

 

 

「チッ」

 

 

だが風間は舌打ちをしながらも、空高く跳躍してレヴィの斬撃をかわすが、それでも膝あたりを僅かに斬られ、そこからトリオンが漏れ出す。

 

 

隠密(ステルス)ON」

 

 

するとその時、空中にいた風間の姿がまるで風景に溶け込むように消えていく。

 

 

隠密トリガー(カメレオン)……!」

 

 

『カメレオン』。オプショントリガーの1つで、トリオンを消費して風景に溶け込む隠密用のトリガーであり、主に奇襲に用いられる。中でも風間はその『カメレオン』と『スコーピオン』を使用したステルス戦法を得意としている。

 

 

「………………」

 

 

風間の姿が消えた後、レヴィは弧月を構えながら、周囲を警戒して視線をキョロキョロと動かす。

 

 

「! そこっ!」

 

 

すると、ピクリと何かを感じ取ったレヴィは自身の左後方に向かって左手の弧月を構える。その瞬間、姿を現した風間のスコーピオンによる奇襲を防いだ。

 

 

「……やはり、お前にはこの手の奇襲は通用しないか」

 

 

呟くようにそう言うと、風間は弾かれるように後方へと下がってレヴィから距離を取る。するとその時、物陰や屋根の上に身を潜めていた奈良坂と古寺の狙撃手(スナイパー)2人による狙撃が、レヴィ目掛けて放たれる

 

 

「よっ、ほっと」

 

 

だがレヴィは、まるでそれを察知していたかのように簡単に避けてしまった。

 

 

「ボクに狙撃は効かないよ~」

 

 

「……だろうな。相変わらず厄介なサイドエフェクトだ」

 

 

胸を張って得意気にそう言うレヴィに対し、風間は表情を変えず冷静にそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

《奈良坂さん、迅さんにもレヴィにも当たんないです!》

 

 

《いいから黙って撃て。迅さんもレヴィもサイドエフェクトがある。かわされるのは仕方ない。当てるんじゃなく動きを制限するつもりで撃て。2人の対処能力を攻撃の密度で上回るんだ》

 

 

《ふい~》

 

 

そう指示を出した奈良坂に返ってきたのは、古寺の返事ではなく、当真の気の抜けた声であった。

 

 

《当真さん、あんたも少しは撃ったらどうだ?》

 

 

《ああ~? 外れる弾なんか撃てるかよ。狙撃手(スナイパー)としてのプライドが許さねー。『かわされるのは仕方ない』? そんなだからシュテルにも勝てずにナンバー3なんだよお前は》

 

 

《……!》

 

 

当真のその言葉に、僅かながら眉をひそめる奈良坂。

 

 

《そんなわけで、おれは三輪たちの方に行くぜ。迅さんとレヴィはお前らに任せた》

 

 

《……なんだと!?》

 

 

《いや、それでいい奈良坂。確かに当真はその方が活きる駒だ。でもお前らまでいなくなられたら困るぞ》

 

 

《………はい》

 

 

当真の勝手な行動に怒鳴りかけた奈良坂だが、太刀川の許しがでたことで黙るしかなくなったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「しかし……どうにもお前らしくないなレヴィ。なぜ『真空』や『虚空(こくう)』を使わない? お前は出し惜しみをするような性格ではないハズだ」

 

 

「むぅ…ボクだって使いたいけどさ、迅が作戦のために使っちゃダメだって」

 

 

「作戦?」

 

 

「あっ」

 

 

つい口を滑らしてしまったことに気づいたレヴィは、慌てたように両手で口を覆った。

 

 

「作戦とはなんだ?」

 

 

「ボ、ボク知らないよ~? 迅は何も企んでないよ~」

 

 

風間からそっぽ向きながら、ひゅーひゅーと下手な口笛を吹きながら白々しく知らないふりをするレヴィ。そんな彼女の態度を見た風間は、太刀川に内部通信を繋げる。

 

 

《太刀川》

 

 

《お? どうしました風間さん》

 

 

《そっちの迅のようすはどんな感じだ?》

 

 

《迅の? 一言でいえば消極的ですね。『風刃』も使わず、どんどん下がってる》

 

 

《……なるほど、そういうことか》

 

 

太刀川との通信で、風間は何かを悟ったように小さくそう呟く。

 

 

「悪いが……少し確かめることができた」

 

 

「!」

 

 

そう言うと同時に、再びカメレオンを起動して姿を消した。それを見たレヴィは弧月を構え直して周囲を警戒する。

 

 

「………………?」

 

 

だがいつまで経っても何も起きず、それどころか風間の気配すら感じない。それに気づいたレヴィは、声を大にして叫ぶ。

 

 

「あーーーっ!! 逃げられたーーっ!!」

 

 

カメレオンを使った奇襲と見せかけて、実はレヴィとの戦闘を離脱していた風間。

 

 

「待てーーー!! ソーヤァーーー!!!」」

 

 

そして彼が向かったであろう行き先をすぐに察したレヴィは、猛ダッシュでその場所へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、迅と戦っている太刀川と風間隊の2人は、多少のキズを負いながらも迅を追いつめていた。

 

 

「ずいぶんおとなしいな迅。昔の方がまだプレッシャーあったぞ」

 

 

「まともに戦う気なんかないんですよ。この人は単なる時間稼ぎ。今頃きっと玉狛の連中が近界民(ネイバー)を逃がしてるんだ」

 

 

「いいや」

 

 

「! 風間さん!?」

 

 

菊地原の言葉を否定しながら現れたのは、カメレオンを解除した風間であった。

 

 

「風間さん、まさかもうレヴィちゃんを倒してきちゃったの?」

 

 

「少し確認したことがあってな、置いてきた」

 

 

迅の問い掛けに対して風間が淡々と答えると……

 

 

「ソーーーヤーーー!!」

 

 

屋根の上を荒々しく走って追いついてきたレヴィが、そのまま屋根から飛び降りて迅の隣に勢いよく着地すると、そのまま若干涙目で風間をキッと睨んだ。

 

 

「もー!! ボクとの勝負の最中に逃げるなんてひどいよー!!」

 

 

「……迅は予知を使って守りに徹し、レヴィは本来の戦いをせずに、こちらのトリオンを確実に削ってる」

 

 

「無視!?」

 

 

弧月を持った両手をブンブンと振りながら怒るレヴィ。だが風間はそんなレヴィをスルーして、強引に話を戻した。

 

 

「こいつらの狙いは──俺たちをトリオン切れで撤退させることだ」

 

 

「!」

 

 

「あらら……」

 

 

風間の言い放ったその言葉に、レヴィは図星を突かれたようにビクリと体をゆらし、迅は小さく声を漏らす。

 

 

「……なるほど、あくまで俺たちを帰らせる気か。『撃破』より『撤退』させたほうが、本部との摩擦が小さくて済む」

 

 

「戦闘中に後始末の心配とは、大した余裕だな」

 

 

迅の考えを見破った太刀川と風間がそう言うと、色々考えた菊地原が口を開く。

 

 

「風間さん、やっぱりこの人は無視して玉狛に直行しましょうよ。ぼくらの目標(ターゲット)は玉狛の(ブラック)トリガー。この人を追い回したって時間のムダだ」

 

 

そう言った菊地原の言葉を、迅の『逃げ』を封じる手だと解釈した風間は頷いた。

 

 

「……確かに、このまま戦っても埒が明かないな。玉狛に向かおう」

 

 

すると、それを聞いた迅の顔つきが変わった。

 

 

「やれやれ……やっぱこうなるか」

 

 

「「!!」」

 

 

その瞬間、迅の持つ風刃の刀身に、光る帯のようなものが出現し、それを見た太刀川と風間はすぐに武器を構えて警戒する。

 

 

そして迅がその風刃で隣の塀の壁を斬ると、その斬撃は壁を伝って、一番後ろにいた菊地原の首を飛ばした。

 

 

「え……」

 

 

《戦闘体活動限界──緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

首をはねられた菊地原のトリオン体は破裂し、一筋の光となって本部へと飛んで行った。

 

 

「出たな『風刃』」

 

 

「仕方ない──プランBだな」

 

 

光の帯を纏った風刃を構えながら、迅はそう言い放った。

 

 

「迅! プランBってことは……」

 

 

「ああ、もう手加減はしなくていいぞレヴィちゃん。太刀川さんたちには、きっちり負けて帰ってもらう」

 

 

「やった!」

 

 

迅の言葉を聞いて、嬉しそうな笑みを浮かべながらレヴィも弧月を構え直した。

 

 

《歌川、隠密(ステルス)戦闘を準備しろ》

 

 

《……! 狙撃手(スナイパー)との連携が取りづらくなりますが……》

 

 

《いいから急げ》

 

 

風間が内部通信で歌川に指示を出している間に、再び迅の風刃が振るわれ、今度は2本の斬撃が歌川と太刀川を襲った。それを太刀川は弧月でガードし、歌川は風間と共に跳躍して回避しようとしたが、間に合わずに左目から腹部にかけて縦一閃のキズを負ってしまう。

 

 

隠密(ステルス)ON!》

 

 

それでも戦闘不能は免れ、風間と共にカメレオンを起動して風景に溶け込む。そしてその間に、太刀川と迅が激突する。

 

 

「誰が負けて帰るって?」

 

 

「できれば全員がいいな」

 

 

その間に、風間と歌川は風景に溶け込みながら移動をはじめる。

 

 

「今のが話に聞いていた迅さんの……!?」

 

 

「そうだ、あれが迅の(ブラック)トリガー『風刃』の能力だ。物体に斬撃を伝播させ、目の届く範囲どこにでも攻撃ができる。迅のブレードから出る光の帯が見えるか? あれが『風刃』の残弾だ。残り8本、あれがゼロになると再装填(リロード)の隙がある。その隙を逃さず殺し切るぞ」

 

 

そう言って太刀川と斬り合っている迅を追いながら、彼を殺す隙を伺う風間と歌川。

 

 

だがその時……

 

 

 

 

 

真空弧月(しんくうこげつ)

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

風間の耳に、そんな声が聞こえてきた。

 

 

「歌川!!」

 

 

「え……!?」

 

 

空中にいた風間は咄嗟に歌川の腕をつかんで自身の方へ引き寄せる。その瞬間……どこからか飛来した三日月状の刃が、歌川の片腕を切り落とした。同時に2人のカメレオンも解除される。

 

 

「な…なにが……!?」

 

 

「レヴィだ! 警戒しろ!!」

 

 

強くそう言い放つ風間の視線の先には、彼らより数十メートル離れた民家の屋根の上で、右手の弧月を振り切った状態で立っているレヴィの姿があった。

 

 

「ありゃ? 外しちゃった……じゃあもう1発」

 

 

そう言うとレヴィは右手に持ち、居合のように構えた弧月のブレードを左手でなぞるように添えると、ブレードの水色の輝きが僅かに増す。そして……

 

 

「真空弧月!!」

 

 

その弧月を横一閃に振り抜くと、同時に三日月型の刃が風間と歌川に向かって放たれた。

 

 

「「隠密(ステルス)ON!」」

 

 

それに対して風間と歌川は、何とかその攻撃を回避し、再びカメレオンで姿を消した。

 

 

《飛ぶ斬撃……!? 風間さん、あれは一体……!?》

 

 

《あれがレヴィの弧月を用いた技の1つ……遠距離斬撃『真空』だ》

 

 

《『真空』……? そんなトリガー聞いたことが……》

 

 

《当然だ。あれは『旋空』のようなオプショントリガーではなく、レヴィが弧月とスコーピオンを組み合わせることで、独自に編み出した技だ》

 

 

《……!!》

 

 

内部通信による風間の説明を聞いて、歌川の顔が驚愕に変わる。

 

 

《タネとしては、右手(メイン)の弧月のブレードに左手(サブ)のスコーピオンを纏わせ、それを大きく振って射出しているという具合だな。仕掛けは単純で弱点はいくつかあるが、威力と射程の長さは厄介だ》

 

 

《そんなことが……!》

 

 

聞いたこともないトリガーの使い方に、ただただ驚嘆する歌川。するとそんな2人目掛けて、三度(みたび)レヴィの真空弧月が放たれ、風間と歌川はすぐさまそれを屋根の上から飛び降りることで回避し、そのままアスファルトの地面に着地した。

 

 

《加えてやつには……『強化直感』のサイドエフェクトがある》

 

 

 

 

 

レヴィのサイドエフェクト『強化直感』。

 

その能力を説明するなら「勘がいい」の一言に尽きる。

 

第六感とも呼ばれるレヴィのそれは『なにか来る』『なにかある』『なにかいる』などといった感覚が常人の5~6倍まで研ぎ澄まされており、物事の本質を感覚で見極めることができるのである。

 

 

 

 

 

つまり……レヴィはカメレオンで消えた相手の位置も、それによる奇襲や狙撃手(スナイパー)による狙撃も、その並外れた直観力で感じ取ることができるのである。

 

 

《無邪気ゆえに常識に囚われない自由な発想……それを実現させることができる技量……そして天性とも言える剣の腕……ボーダーNO.3攻撃手(アタッカー)、レヴィ・スクライア。才能だけで言えば、太刀川にも匹敵する天才だ》

 

 

ハッキリとそう言い切った風間のレヴィに対する評価を聞き、思わず息を呑んで戦慄する歌川。

 

 

《……とはいえ、実際はまだ13歳の少女だ。付け入る隙はいくらでもある》

 

 

そこまで言うと、風間は内部通信を奈良坂と古寺にまで繋げて指示を出す。

 

 

《狙撃手スナイパー、歌川と共に太刀川を援護しろ。レヴィは俺が仕留める》

 

 

《歌川、了解!》

 

 

《奈良坂、了解》

 

 

《古寺、了解!》

 

 

3人分の承諾の声が聞こえ、加えてカメレオンで姿を消したまま歌川がこの場を離れて行くのを感じた風間は、改めてレヴィの方へと視線を向ける。

 

 

「んー? 数が減った? 残ってるのはソーヤ? それともうってぃー?」

 

 

強化直感によって自分を狙っている敵が減り、尚且つその場に1人だけ残っているのを感じ取ったレヴィは小首を傾げる。

 

 

「!」

 

 

その直後、その残っている人物が自分に急接近しているのを察知し、レヴィはそれに向かって弧月を振り下ろす。その瞬間、×字に交差させた2本のスコーピオンでそれを受け止めた風間が姿を現す。

 

 

「ソーヤ!!」

 

 

その姿を認識したレヴィは嬉しそうに顔を笑顔を浮かべる。だが対して風間は冷たい表情のまま、弾かれるようにして後方へと大きく跳躍し、地面に着地する。

 

 

「今度は逃がさないからね!」

 

 

「逃げるつもりはない。おまえはここで、確実に仕留める」

 

 

鋭い目つきでレヴィを睨みながら、二対のスコーピオンを構える風間。その瞬間、彼の小柄な体からは想像がつかないような冷たい殺気が放たれ、それを感じたレヴィの頬に一筋の冷汗が伝う。

 

だがその殺気にレヴィは臆する事無く、それどころかニィっと口角を吊り上げて嬉しそうに笑った。

 

 

「いいね。さすがソーヤ。それでこそボクのライバル!」

 

 

喜々とした表情で二対の弧月を構えるレヴィ。その瞳は無邪気に輝きながらも、静かに燃える闘志が秘められていた。

 

 

両者が放つ殺気と闘志がぶつかり合い、ピリッと張り詰めた空気がこの場を支配する。もしもこの場に第三者が存在すれば、この空気に慄くことだろう。

 

 

「どっちが強いか、今日この場でハッキリさせるよ」

 

 

「俺は任務遂行の障害を排除する。ただそれだけだ」

 

 

そんな短い会話を交わした直後、目の前の敵へと向かって駆け出した2人は、その手に握る刃をそれぞれ振るったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

《行くぞ章平、太刀川さんの援護だ》

 

 

《はい!》

 

 

風間の指示通りに迅と戦っている太刀川を援護する為、新たな狙撃ポイントへと移動を開始する三輪隊の狙撃手(スナイパー)、奈良坂と古寺。レーダーから姿を消すトリガー『バッグワーム』を身に着けた2人はそれぞれ別ルートで素早く住宅街を駆けて行く。

 

 

だがその時……一筋の流れ星のようなものが、ズドンっとという轟音と共に落ちた。

 

 

《がっ……!!》

 

 

《!? 章平!?》

 

 

同時に奈良坂の耳に聞こえたのは、古寺の悲鳴に近いくぐもったような声。次の瞬間、緊急脱出(ベイルアウト)の光が夜空へと舞い上がって本部へと向かって行くのを見て、古寺がやられて離脱したのだと確信した。

 

 

《警戒! 敵の狙撃で古寺くんが緊急脱出(ベイルアウト)したわ。狙撃地点は奈良坂くんの場所から見て2時の方角よ》

 

 

「狙撃だと……!?」

 

 

三輪隊のオペレーター『月見(つきみ)(れん)』からの通信を聞いて、奈良坂は舌打ちをしながら物陰に身を潜める。

 

住宅街が並ぶこの場所は、まったくと言っていいほど射線が通らない。にも関わらず、的確に古寺を狙撃したということは、住宅と住宅の間にある僅かな隙間を抜けて撃ったという事になる。そして奈良坂は、そんな針の穴を通すような所業が可能な狙撃手(スナイパー)に3人ほど心当たりがあった。1人はボーダーNO,1狙撃手(スナイパー)の当真。もう1人は奈良坂自身。そしてもう1人……

 

 

 

 

 

だがその人物の顔が脳裏に浮かんだその瞬間……凄まじい破壊力を持った弾丸が、廃棄された住宅や塀などの障害物を破壊し、そのまま身を潜めていた奈良坂の体を貫いた。

 

 

 

 

 

「なっ……!?」

 

 

射線も何も関係なく放たれた1発によって、トリオン体に風穴を開けられた奈良坂は、驚愕しながら狙撃が飛んできた方角を睨み付ける。

 

 

「『アイビス』による壁抜き狙撃(スナイプ)……すでに俺の位置も捉えていたのか……シュテルめ」

 

 

《戦闘体活動限界──緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

最後に自分を撃ち抜いた人物の名前を呟きながら、奈良坂のトリオン体は破裂し、緊急脱出(ベイルアウト)していったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そんな奈良坂から数十キロ離れた住宅マンションの屋上。そこには、バッグワームのフードを深く被り、体をうつ伏せに寝かせた体勢で構えた、アイビスのスコープを覗き込んでいるシュテルの姿があった。

 

 

「古寺さんと奈良坂先輩の緊急脱出(ベイルアウト)を確認。オールクリアです」

 

 

《お見事ですシュテル》

 

 

「いえ、今回はたまたま奇襲が上手くいっただけです。これで奈良坂先輩を落とせたのは幸運と言っていいでしょう。もし撃ち合いになっていれば、お互いにタダでは済みませんでした」

 

 

《運も実力の内ですよ! この調子で当真さんもやっつけちゃいましょう!》

 

 

「無茶を言いますね、ユーリ。当真先輩はNO,1狙撃手(スナイパー)に恥じない技術とセンスを持っています。そう簡単に落とせる相手ではありません」

 

 

ユーリとの通信で苦笑を零すシュテル。だがその眼には、並々ならぬ対抗心が静かに燃え盛っている。

 

 

「しかし──負けるつもりはありませんがね」

 

 

ボーダーNO,2狙撃手(スナイパー)、シュテル・スクライア。冷静沈着な表情からでは分かり辛いが、かなりの負けず嫌いな少女である。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方で迅と太刀川の2人は、風刃と弧月で激しく斬りあっていた。

 

 

狙撃手(スナイパー)2人が落とされた……シュテルか」

 

 

「正解。シュテルちゃんのサイドエフェクトと狙撃の組み合わせは、相性抜群だからね」

 

 

互いにそんな口をききながらも、ブレードを振るう手は休めない。それどころか、ブレードが更に激しく衝突し合って火花を散らしている。

だがどちらが押しているかというと、やはり攻撃手(アタッカー)ランク、個人(ソロ)ランク共に1位の太刀川である。

 

 

「『風刃』の怖さは遠隔斬撃。距離を詰めれば、ただのブレードと同じだ」

 

 

「なかなか研究してるじゃん、太刀川さん」

 

 

それでも余裕そうな口調でそう言いながらも、なんとか太刀川の剣を捌く迅。そしてそんな太刀川の剣から逃れるように迅が逃げ込んだのは、住宅が保有するガレージの中だった。

 

 

「もう逃げ場はないぞ、(ブラック)トリガー」

 

 

とうとう迅を追い込んだ太刀川は、トドメと言わんばかりに二刀の弧月を振るう。

 

 

しかし……

 

 

「逃げられないのはそっちだよ」

 

 

「!!」

 

 

迅は風刃で太刀川の剣を受け流すと同時に地面を斬り付け、その斬撃を地面から壁へ、壁から天井へと伝播させて、頭上からの斬撃で太刀川を斬り付けた。

 

 

一見、太刀川が迅を逃げ場のないガレージに追い込んだように見えるが、その実……追い込んだように見せかけて、風刃の能力を発揮できるガレージに誘い込んだのは迅の方だったのである。

 

 

「珍しく熱くなりすぎたな、太刀川さん」

 

 

そして次の瞬間……迅が放った風刃による5つの斬撃が、一斉に太刀川の体を切り刻んだ。

 

 

 

 

 

――ハズだった。

 

 

 

 

 

「残念だったな……迅」

 

 

「!?」

 

 

斬撃が当たるその瞬間、太刀川の姿が消えた。

 

 

「消えた……!?」

 

 

そして次の瞬間、消えた太刀川が迅の眼前に姿を現し、そのまま弧月を振り下ろす。

 

 

「くっ……読み逃した……!?」

 

 

その一太刀を、なんとか風刃で受け止める迅。

本来ならば、先ほどの攻撃で太刀川は致命傷を負う。それが迅が未来視で視た予知だった。しかしその予知に反して、太刀川が斬撃から逃れたことに、迅の表情から初めて余裕が消え去った。

 

 

するとそんな迅に追い打ちをかけるように、カメレオンで姿を消していた歌川が背後から迅に奇襲を仕掛ける。

 

 

「!!」

 

 

それに対して迅は咄嗟に風刃を使って、伝播させた斬撃で背後の歌川の体を真っ二つに切り裂く。

 

 

「太刀川さん! 0本です!」

 

 

《戦闘体活動限界──緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

最後にそう叫ぶと同時に、歌川のトリオン体が弾けて緊急脱出(ベイルアウト)する。

 

 

「よくやった、歌川」

 

 

その直後……再び姿を消した太刀川が、迅の背後に出現し、居合のように構えた弧月を振るおうとしていた。

 

 

「甘いよ、太刀川さん!」

 

 

だが迅は、予めガレージの壁に仕込んでいた、最後の8本目の斬撃でそれを迎え撃とうした。

 

 

「甘いのはおまえだ。一手遅いぞ……迅!」

 

 

その言葉と同時に振るわれた弧月の一閃。オプショントリガーである『旋空』を加えたその一太刀は、風刃の斬撃を弾き返し、迅にまで襲い掛かった。

 

 

「!!」

 

 

最後の風刃の斬撃を弾かれ、更には反撃も喰らった迅は、風刃でなんとかその一太刀を受け止めるもその威力に押されてガレージから追い出されてしまった。

 

 

「おいおい……マジかよ」

 

 

ありえないと言いたげに顔をしかめる迅。だがすぐに自身を落ち着かせるように「ふう…」と息を吐くと、ガレージの出入り口前に立っている太刀川へと視線を向けた。

 

 

「ちょっと太刀川さん、完全に読み逃したよ。いつの間に『テレポーター』とか使うようになったの?」

 

 

いつものように軽口で、だが余裕のない顔つきで太刀川を見据えながら、そう問い掛ける迅。

 

 

「3年前におまえとのランク戦を想定した戦術だ。それを風刃対策に応用しただけだ」

 

 

3年前……それはつまり、迅が風刃の所有者となる以前のこと。その時に太刀川は迅との戦いに備えて『テレポーター』を用いた戦術を考えついたが、それを披露することなく迅がS級隊員となってしまった為に、お蔵入りになってしまったらしい。

 

 

「なるほど。それでやっと、お披露目の機会が巡ってきたってわけね」

 

 

「そういうことだ。さて……覚悟しろよ、迅」

 

 

そして太刀川はゆっくりと持ち上げた弧月の鋭い切っ先を迅に向け、獲物を狙う獣のような目をしながら言い放つ。

 

 

 

「必ずおまえの予知を……覆してやるよ」

 

 

 

その言葉に迅は……思わず笑ってしまった。

 

 

「まいったな……さすが太刀川さん。確定してたハズの未来が動き出しちゃったよ」

 

 

だが……その笑みは決して余裕からくるものでもなければ、太刀川に委縮した訳でもない。

 

 

「でも……そう簡単に未来を変えられちゃ困る」

 

 

その笑みは、どことなく楽しそうで…それでいて嬉しそうで…そしてなにより──好戦的な笑みをしていた。

 

 

「アンタがおれの予知した未来を覆すって言うなら、おれは……」

 

 

そして迅は静かにそう言葉を紡ぎながら、師匠の形見である風刃の切っ先を、同じように太刀川へと向けて言い放つ。

 

 

 

「アンタを倒して──未来を守るよ」

 

 

 

 

 

つづく




太刀川さんが『テレポーター』を使うくだりは、ボーダレスミッションより引用しました。
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