ユーノのボーダー活動日記   作:ZEROⅡ

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邂逅編が終わるまではこっちに集中します。


シュテル・スクライア③

 

 

 

 

 

 

「オサムとシュテルはこのあとボーダー基地に行くのか?」

 

 

「そうだ、本部に出頭して処分を受ける。嵐山さんとの約束だからな」

 

 

「私も今回の件を報告しなければなりません」

 

 

「ふむ」

 

 

教室をあとにして下駄箱でクツを履き替え、そんな会話をしながら校庭へと出てきた遊真、修、シュテルの3人。するとそんな3人の目に、校門前にできた人だかりが映る。

 

 

「……ん? なんだ?」

 

 

その光景に疑問符を浮かべた3人が人だかりの方へと歩いて行くと、そこにいたのは……

 

 

「写真撮ってもいいですか?」

 

 

「あー悪いけど、そういうのはやめてくれる? 写真なんて正直迷惑なの。芸能人じゃあるまいし……」

 

 

などと言いながらも、しっかりとキメ顔を作って生徒たちに撮影されている木虎の姿であった。

 

 

「…………」

 

 

「なにやってんだ? こいつ……」

 

 

「……木虎……」

 

 

「はっ……!」

 

 

ポカンとする修と、(=ε=;)な顔をしている遊真と、呆れたような視線を送っているシュテルに気がついた木虎は我に返った。

 

 

「……待ってたわ。たしか……三雲くんだったわね」

 

 

我に返った木虎はコホンと咳払いをしながら、修に対して用件を告げた。

 

 

「私はボーダー本部所属、嵐山隊の木虎藍。本部基地まで同行するわ」

 

 

「A級隊員が三雲先輩を迎えに……!?」

「一緒にいるスクライア先輩もA級隊員なんだろ」

「三雲先輩すげー……!」

 

 

木虎の言い放った言葉に周囲の生徒たちが騒ぎ立てる中、修はというと……

 

 

「(なんなんだ、この展開は……)」

 

 

自身の身に起きている奇妙な展開に困惑していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話

『シュテル・スクライア③』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……木虎を加えたシュテルたち4人は、ボーダー本部へと向かう道を歩いていた。

 

 

「勘違いしないでほしいのだけれど、私はあなたをエスコートしに来たわけじゃないわ。あなたが逃げないように見張りに来たのよ」

 

 

「見張られなくたって逃げたりなんかしないよ」

 

 

「簡単にルールを破る人間の言葉が信用できる? もう少し自分の立場を自覚したほうがいいわね」

 

 

そう言って睨みながら修に厳しい言葉を浴びせる木虎。すると、そんな修にシュテルがコソッと声をかける。

 

 

「三雲くん、気を悪くしないでくださいね? 彼女は少しプライドが高くて、対抗心が強いだけですので」

 

 

「いや、それはいいんだけど……なんで木虎はC級のぼくにやたら絡んでくるんだろう?」

 

 

「おそらくあのモールモッドでしょうね。あの個体は一撃で正確に心臓部が破壊されていました。あのような鮮やかな芸当は、A級隊員でもできる人は中々いません。木虎はそれをやった三雲くんに対して、対抗心を燃やしているのでしょう」

 

 

「いや、あれはぼくじゃなくて空閑が……!」

 

 

思わず叫びそうになった修を、シュテルが「しー」っと自身の口元に指を当てながら制する。

 

 

「表向きには、です。真実はどうあれ今回の件は三雲くんがやった…ということになっていますから」

 

 

「うっ……」

 

 

シュテルの言葉に修は言葉を詰まらせ、諦めたようにがっくりと肩を落とした。

 

 

「大丈夫です。木虎のあれは一時的なものだと思いますし、今回の件を報告する時も、できるだけ私が三雲くんをフォローしておきますから」

 

 

「あ…ありがとうスクライアさん」

 

 

「シュテルで結構ですよ」

 

 

「あ、じゃあぼくも修でいいよ」

 

 

シュテルと修がそんな会話をしていると、木虎の視線が2人へと注がれる。

 

 

「シュテルちゃんと三雲くんは、ずいぶん仲がいいのね?」

 

 

「クラスメイトですから当然ですよ。ですよね、修」

 

 

「あ、うん……シュテル」

 

 

「そ、そう……」

 

 

するとそれを聞いた木虎は、シュテルに対して口を開く。

 

 

「シュテルちゃん、せっかくだし私のことも藍って呼んで……」

 

 

「いえ結構です。そこまで木虎と仲良くした覚えはありませんし」

 

 

木虎の申し出をシュテルが速攻で却下すると、木虎のハートにビシリっと亀裂が入る。彼女の対人欲求は年上には『ナメられたくない』同い年には『負けたくない』年下には『慕われたい』なので、同学年でも年下であるシュテルに冷たくされ、かなりダメージを負ってしまった。そしてコレによってシュテルと名前で呼び合っている修に対しての対抗心がさらに燃え上がった木虎は、再び修に対して強く言い放つ。

 

 

「……三雲くん! あなた派手に活躍してヒーロー扱いされたからって調子に乗らないことね!!」

 

 

「い、いや……別に乗ってないよ。全然」

 

 

「ハッキリ言ってあなたがいなくても私たちの隊とシュテルちゃんが事態を収拾してたわ。あなたはたまたま現場の近くにいただけよ」

 

 

修に対して強くそう言い放つ木虎だが、そこへ今まで黙っていた遊真が口をはさんだ。

 

 

「いやいやムリだから。別に責めるつもりはないけど、おまえ全然間に合ってなかったから。ふつうに」

 

 

「なっ……!? なんなの!? あなたいきなり!」

 

 

「いきなりじゃないよ、ずっといたよ」

 

 

「何であなたがついて来ているわけ?」

 

 

「ついて来たのはおまえだろ。おれの方が先にいたんだよ。おれは近界民(ネイバー)が出たとき学校にいたけど、おまえらを待っていたら確実に何人か死んでたぞ? おまえはもっとオサムに感謝してもいいんじゃないの?」

 

 

「部外者は黙っててくれる? さっきも言ったけど彼のやったことはルール違反なの。きちんと評価されたいならルールを守ることね」

 

 

「ルール違反なのはオサムだって知ってたわけじゃん。戦っても褒められるどころか、むしろ怒られるのをわかってて。それでもやっぱり助けに行ったんだから逆にエラいんじゃないの?」

 

 

「それとこれとは……」

 

 

「なんかおまえ、オサムに対抗心燃やしてるみたいだけど、おまえとオサムじゃ勝負になんないよ」

 

 

「なっ……」

 

 

遊真のその言葉に、木虎はギクリと体を震わせる。

 

 

「バ、バカ言わないで! 私がC級に対抗心なんて……」

 

 

「遊真、あまりハッキリ言わないであげてください。木虎はA級隊員であることにプライドを持っているので」

 

 

「おれA級とかよく知らんもん」

 

 

「じゃあ覚えておきなさい! A級隊員はボーダー全隊員の5%を占める精鋭中の精鋭なの!!」

 

 

そう力説する木虎だが、そんな彼女を見る遊真の表情は訝しげだった。

 

 

「精……鋭……?」

 

 

「何よその疑いの目は!?」

 

 

そんな2人のやり取りを見ていたシュテルと修は、この2人の相性は最悪だなぁと悟ったのであった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「……そうだ、訊かなきゃいけないことがあったんだ。今日の学校の近界民(ネイバー)……あれは何だったんだ? なんで警戒区域の外に近界民(ネイバー)が……?」

 

 

「そういやそんなこと言ってたな。本当なら基地の周りにしか出ないはずなんだろ?」

 

 

「……部外者がいるから話せないわね」

 

 

今回の学校で発生した(ゲート)について尋ねる修と遊真だが、木虎は遊真を部外者だと言って話そうとしない。なので彼らはシュテルに聞くことにした。

 

 

「どうなんだシュテル?」

 

 

「まだ詳しいことはわかっていませんが、ここ最近になってボーダーの誘導装置が効かないイレギュラーな(ゲート)が開き始めているんです」

 

 

「イレギュラーな(ゲート)……!?」

 

 

「ちょっとシュテルちゃん!?」

 

 

「木虎、彼らなら話しても大丈夫ですよ」

 

 

あっさりと話してしまったシュテルに声を荒げる木虎だが、シュテルにそう言って宥められる。

 

 

「今回のこと以外でも、警戒区域外に(ゲート)が開いて近界民(ネイバー)が出現するという事例が6件ほど報告されています。今までの6件は偶然非番の隊員が近くにいましたので犠牲者は出ませんでしたが、この先はどうなるかわかりません。パニックを避けるために公表はされていませんが、今この三門市はどこに近界民(ネイバー)が出現してもおかしくない状況にあるのです」

 

 

「そんな……! じゃあ早くどうにかしないと……!」

 

 

「今本部の技術者(エンジニア)たちが総出で原因を探ってるわ。私たちが騒いでもどうにもならないわ。私は防衛隊員。戦って市民を守るだけよ」

 

 

木虎がそう言うと同時に、遊真の服の下からレプリカの口が伸びてきた。

 

 

『……なるほど、キトラの言う通りのようだ』

 

 

「……え」

 

 

「おいおい、忙しい日だな」

 

 

レプリカが遊真と修、そしてシュテルにしか聞こえない声でそう言うと……その瞬間、彼らのすぐ近くで巨大な(ゲート)が開かれた。

 

 

《緊急警報! 緊急警報! (ゲート)が市街地に発生します! 市民の皆様は直ちに避難してください! 繰り返します! 市民の皆様は直ちに避難してください!》

 

 

そんな警報が鳴り響く中で(ゲート)から現れたのは、まるでクジラのように巨大な体格で空を泳ぐトリオン兵であった。

 

 

「何!? この近界民(ネイバー)……! こんなの見たことないわ……!」

 

 

「ええ。私も今まで視たことのないトリオン兵ですね」

 

 

どうやらシュテルや木虎でも、初めて見るトリオン兵のようである。

 

 

「空閑、こいつは……!?」

 

 

「イルガー……! 珍しいな。イルガーは、爆撃用のトリオン兵だ」

 

 

遊真が現れたトリオン兵『イルガー』に関してそう説明すると、同時にイルガーの腹の部分から爆弾が投下され、街に向かって爆撃を開始したのであった。

 

 

「街が……!!」

 

 

「他の部隊は待ってられないわね……私が行くわ」

 

 

「私も行きましょう」

 

 

「ぼくも行く」

 

 

街が破壊されるのを見て、シュテルと木虎、そして修が現場に向かおうとする。

 

 

「あなたまた出しゃばるつもり!? そもそもあなた、空の相手に何ができるの?」

 

 

「それは向こうで考える」

 

 

「言い争っているヒマはありません。行きますよ」

 

 

そして3人はトリガーを取り出して、同時に叫ぶ。

 

 

 

「「「トリガー起動(オン)!!」」」

 

 

 

トリガーを起動させると同時に、3人の体は戦闘体へと換装される。だが他の2人とは違って、修だけは武器が具現化されなかった。レプリカが言うには、どうやら学校の戦いで消耗し過ぎたため、武器を作るだけのトリオンがないらしい。

 

 

「……やっぱりC級ね。そこでおとなしく見てなさい。シュテルちゃんも、今回は下がってて言いわよ」

 

 

「?」

 

 

それを見た木虎は得意気に笑いながらそう言いながら、修だけでなくシュテルまで下がらせる。どうやら彼女は1人で戦うつもりらしい。

 

 

「キトラ、おまえ1人で大丈夫なのか? 初めて見る敵なんだろ?」

 

 

「愚問ね。私はA級隊員よ。あの近界民(ネイバー)は──私が始末するわ」

 

 

遊真の問いに対して木虎は、自信満々な態度でそう言い放ち、イルガーへと向かって駆け出して行ったのであった。

 

 

「キトラ行っちまったぞ。どうすんだ? オサム」

 

 

「……ぼくも現場に向かう」

 

 

「本気ですか? 武器を作るトリオンすらない状態です。そんな状態で戦闘行為は危険ですよ」

 

 

そう言いながら、3人も街へと向かって駆け出す。

 

 

「わかってる。学校の時みたいな無茶はしない。今回はA級の木虎とシュテルがいる。近界民(ネイバー)は木虎とシュテルに任せる。ぼくは街の人を助けに行く。武器がなくてもやれることはあるはずだ」

 

 

「ふむ、それがいいな。シュテルはどうすんだ? キトラからは来るなって言われてたけど」

 

 

「仕方ありません。木虎は一度言い出すと聞きませんから、戦闘は彼女に任せます。私はこれ以上の街への被害を阻止するとしましょう」

 

 

「よし、じゃあおれはオサムを手伝うか?」

 

 

「……いや、空閑は木虎に付いてくれ」

 

 

遊真に対してそう言い放った修の言葉に、遊真とシュテルは意外そうな表情を浮かべる。

 

 

「木虎もシュテルも初めて見る近界民(ネイバー)だ。いくらA級でも1人じゃ手に負えないかもしれない。木虎がもしやばそうだったら、バレない程度に手を貸してやってくれ」

 

 

「え~~~、本人が『自分でやる』って言ってんだから、放っといてもいいんじゃないの?」

 

 

「頼む」

 

 

最初は渋った遊真だが、修に真剣な表情でそう頼み込まれると「ふぃー…」と溜息をついた。その様子を見ていたシュテルも、思わずクスリと笑ってしまった。

 

 

「やれやれ、オサムは面倒見の鬼だな。自分はすぐ無鉄砲に突撃するくせに」

 

 

「そこが彼の美点なのでしょう。ただもう少し自分を大切にすることも覚えた方がいいとも思えますが」

 

 

「ぐっ……」

 

 

2人して修の痛い所を突きながらも、遊真は彼の頼みを了承した。

 

 

「レプリカ」

 

 

《心得た》

 

 

すると、遊真の言葉に応じたレプリカが、自身の体の一部を切り離して小さなレプリカを作り出して、修に渡した。

 

 

《持って行けオサム。私の分身だ。私を介してユーマとやりとりできる》

 

 

「困った時はすぐ呼べよ」

 

 

「わかった」

 

 

「行きましょう」

 

 

そう言うと修は街の方へ……遊真とシュテルは河原の方へと向かって駆け出して行ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……遊真、この辺りでいいでしょう」

 

 

「お、そうか?」

 

 

それからしばらくして、イルガーも街も見渡せる場所に移動したシュテルと遊真はその場で立ち止まる。

 

 

「ところで、シュテルは街の被害を阻止するって言ってたけど、どうすんだ?」

 

 

「簡単です。街を襲う爆弾を1つ残らず撃ち落とします……ライトニング」

 

 

遊真の問い掛けに答えながら、シュテルはその手に具現化させた、弾速と速射性能を誇る『ライトニング』を構える。だがその標準はイルガー本体ではなく、敵が落とす複数の爆弾に向けられていた。

 

 

「……シュート」

 

 

そしてシュテルがそう呟くと同時に引き金が連続で3度引かれ、3発の弾丸が発射される。

その弾丸はそれぞれ一直線に飛んで行き、見事に爆弾を貫いて、瞬く間に計3発もの爆弾を爆散させたのであった。

 

 

「おー! すごいな、一気に3つも落としたぞ」

 

 

『どうやらシュテルは、精密射撃に長けた狙撃手(スナイパー)のようだな』

 

 

遊真とレプリカが感心している間にも、シュテルはイルガーが落とす爆弾を着弾前に撃墜を繰り返していく。それからしばらくすると、イルガーの爆撃が止んだ。

 

 

「おっ、止まったな」

 

 

「相手はどうやら周回軌道で徘徊して、街の上空に来た時のみ爆撃しているようですね」

 

 

イルガーの動きを観察していたシュテルがそう説明すると、木虎が鉄橋の上を走って川の上にまで飛んで来ていたイルガーの背中に飛び乗った。

 

 

「木虎がイルガーの背中に飛び移りました」

 

 

「ふむ。空を飛んでいるだけあって、上はがら空き………とか、キトラが考えてたらやばいな」

 

 

『そう考えても不思議はない』

 

 

「え?」

 

 

遊真とレプリカの言葉に疑問符を浮かべたシュテルは、ライトニングのスコープ越しに木虎の様子を確認した。

 

すると、木虎が背中に乗ったのを察知したのか、イルガーの背中の装甲の下から何本もの触手のようなものが出現する。そして次の瞬間……その触手の先端に備えられていた爆弾が、一斉に大爆発を起こした。

 

 

「「!」」

 

 

その光景を見て、木虎の身を案じる遊真とシュテルだが……

 

 

「この程度?」

 

 

木虎はシールドのトリガーを全方位に張って、爆発から身を守っていた。

 

それから木虎はすぐさまスコーピオンでイルガーの装甲を斬り剥がすと、露出した生身の本体にハンドガンで弾丸を何発も撃ち込んでいく。そしてやがて耐え切れなくなったイルガーの体から、黒い煙が噴出する。

 

 

「キトラ、思ったよりやるな。イルガー落としたぞ」

 

 

「そのようですね。あとは街の人たちの救助を……」

 

 

『いや……まずいな』

 

 

「うん、まずい」

 

 

「え……?」

 

 

イルガーを落としたのにも関わらず、まずいと言った遊真とレプリカの言葉に首を傾げるシュテル。

 

すると……突然イルガーが目の部分を閉じたかと思うと、背中から何本もの小さな柱のようなものを生やし始めた。そしてそれを視たシュテルは驚愕する。

 

 

「何ですか…!? あのトリオンの密度は……!? 今にも暴発しそうです! まさかこのまま街に堕ちるつもりですか!!?」

 

 

イルガーの背中から生えた柱は、1本1本が凄まじいトリオンを秘めており、シュテルはそれが爆弾であると認識できた。さらにイルガーの飛んで行く先が街の方へ向いているのを見て、最悪の事態を想像する。

 

 

「オサムの頼みだ。行くぞレプリカ!」

 

 

『承知した』

 

 

するとその時……シュテルの隣にいた遊真の姿が黒一色の鎧を装着したような姿へと変わり、レプリカは遊真の左腕の部分と融合した。

 

 

「(! これが遊真のトリガー……ですがこのトリオンの感じはまさか……いえ、今は置いておきましょう)」

 

 

シュテルは初めて見る遊真のトリガーを視て、ある事に気がついたが、今は口に出すのを控えておいた。

 

 

《イルガーは大きなダメージを受けると、付近で最も巻き込める人間の覆い場所目掛けて落下。全ての内臓トリオンを使って自爆する》

 

 

「わかってる。だから落ちる前に空中でドンだろ。キトラに見つかんないようにしなきゃな」

 

 

『いや、それではダメだ』

 

 

「……!?」

 

 

『トリガーで何かを破壊すれば、そのトリガー固有のトリオン反応が発生する。繰り返すほどボーダーに感知されやすくなるぞ』

 

 

そんなレプリカの説明を聞いていたシュテルは、先日起きた正体不明のトリガーによってバラバラにされた近界民(ネイバー)を発見したとう報告が本部に届いていたのを思い出した。

 

 

「遊真、もしや先日、そのトリガーを使ってバムスターをバラバラに破壊しませんでしたか?」

 

 

「うん? したよ」

 

 

「でしたらレプリカの言う通り、そのトリガーで戦うのはやめた方がよいかと。そのバムスターから正体不明のトリガー反応が検出されたと、本部に報告が上がっていましたから」

 

 

「マジか……それってつまり、敵を殴ったらボーダーに見つかるってことか? じゃあバレずにやるのはムリじゃん」

 

 

『そうでもない。キトラがイルガーを自爆状態まで追い込んでくれた。今なら攻撃しなくともイルガーは倒せる』

 

 

「あ、そっかじゃあ人がいない所に落とせばいいのか。じゃあやることは決まったな。頼むぞレプリカ」

 

 

『了解だ』

 

 

方針が決まったのか、遊真の左腕からレプリカが分離して、レプリカ単体でイルガーへと向かって飛んで行く。

 

 

「(見せてもらいますよ遊真……あなたのトリガーの力を)」

 

 

その様子を、シュテルは観察するように見守っていた。

 

 

『鎖』印(チェイン)三重(トリプル)

 

 

そう呟くと、遊真の手のひらとレプリカの口から〝(いん)〟と呼ばれる(しるし)が出現し、同時に遊真の手のひらの印と、レプリカがイルガーの腹部に設置した印から、トリオンで構築された鎖が出現する。そしてその2つの鎖は、尖端同士がガチンと合わさって1つになる。

 

 

「よしつかまえた。『強』印(ブースト)七重(セブタ)

 

 

それを確認した遊真は、今度は自身の背中にトリオン体を強化する印を出現させると、イルガーと繋がった鎖を掴む。

 

 

「……っせ──────のっ!!!」

 

 

そして遊真はその鎖を引っ張り、まるで一本釣りのようにイルガーを引き戻し、そのまま川へと叩き落したのであった。その直後にイルガーは自爆したが、場所が川だったので事なきを得た。

 

 

「よし、任務完了」

 

 

「見事な一本釣りでしたよ、遊真」

 

 

「いえいえ、それほどでも」

 

 

自爆を確認した遊真が満足気にそう言うと、シュテルが賞賛の言葉を送り、遊真は(=ε=)な顔をしながらそれを受け取った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「げほっ、げほっ」

 

 

一方…イルガーと共に川に落とされてしまった木虎は、川から上がりながら先ほど起きた出来事に疑念を抱いていた。

 

 

「(なんなのさっきの……近界民(ネイバー)が川に引きずり落とされた……!? あのまま行けば間違いなく街に堕ちていたはず。誰かに助けられたの……? A級の私が……)」

 

 

そんな事を考えながら河原まで上がると、木虎の目に街の市民たちに囲まれて称賛されている修の姿が映った。

 

 

「あのまま生き埋めかと思った」

「キミのおかげで助かったよ」

「ありがとうございます!」

 

 

「いえぼくは当たり前のことをしただけで……そんな大したことは……」

 

 

救助した市民たちからの感謝に対して困ったような反応をしている修を、木虎はひどく冷たい眼差しで見つめていた。

 

 

「(私が戦ってる間に、また市民相手にポイント稼ぎ……優等生ぶって、そんなに人気者になりたいわけ?)」

 

 

木虎の目には、修は市民を相手に好感度を上げて人気者になろうとする目立ちたがり屋にしか映らなかった。だがその認識は……木虎の存在に気付いた修の一言によって覆される。

 

 

「あっ、彼女です皆さん。彼女が近界民(ネイバー)を倒してくれたんです!」

 

 

「…………!」

 

 

そう言って修が木虎を差すと、市民の視線が木虎へと集まる。

 

 

「そうなのか!?」

「あっ、あれ嵐山隊の木虎じゃん!」

「ありがとう! さすがA級隊員だ!」

「命の恩人だな!」

 

 

「……………」

 

 

あのまま自分のものにできたはずの手柄を、あっさりと木虎に渡した修の行動に、木虎は呆然としていた。するとそこへ、合流した遊真とシュテルが口を開く。

 

 

「ほらな? 言っただろ? おまえとオサムじゃ勝負になんないって」

 

 

「彼は手柄とか人気とか……そういうものとはまったく違うものを見ているのですよ」

 

 

「…………確かに、ただのC級隊員じゃなさそうね」

 

 

その言葉を聞いて、木虎自身も修に対する認識を改めたのであった。

 

 

「けどおまえも結構すごいな。あのサカナ1人で倒したもんな」

 

 

「違う。私は近界民(ネイバー)を止められなかった。誰かが手を貸してくれたのよ。私は自分がやっていないことまで、自分の手柄にする気はないわ」

 

 

「……なるほど、A級隊員か……」

 

 

そして遊真も、今までの木虎に対する認識を改めたのであった。

 

 

するとその時、救助された市民の一部から苦情の声が上がった。

 

 

「バカ言うな! 何が助かっただ! うちの店は壊されちまったんだぞ!」

「おれの家もだ!」

「うちのマンションも」

「ボーダーは何をやってる!?」

「何で街に近界民(ネイバー)が出るんだ!?」

 

 

「それは……」

 

 

市民たちからの苦情に修が口ごもっていると、木虎とシュテルが1歩前に出て代わりに応対する。

 

 

近界民(ネイバー)による新手の攻撃です。詳しくは近々ボーダーから発表があると思います」

 

 

「損害に関する話はその時に承ります。まず被害に遭われた方々は避難所へ移動してください。非常時ですので、ご協力をお願いします」

 

 

「!」

 

 

「C級隊員は下がってなさい。私たちが対応するわ」

 

 

「あ…ありがとう」

 

 

木虎とシュテルのお礼を述べながら、修は壊された街の有様を見て絶句する。

 

 

「街がこんなに壊されるなんて……こんな光景を見るのは4年半ぶりだ……」

 

 

『イレギュラーな(ゲート)をどうにかしない限り、また同じようなことが起こる可能性があるな』

 

 

「!」

 

 

ミニレプリカの言葉を聞いて、修は「まだ終わったわけじゃない」を気を引き締める。そんな修に、遊真が声をかける。

 

 

「あんまり考え込むなよ。イレギュラー(ゲート)はボーダーがどうにかするだろ。オサムたちはやれるだけのことはやったよ。」

 

 

「空閑」

 

 

「ここから先は──ボーダーのお手並み拝見だな」

 

 

遠くに見えるボーダー基地を見据えながら、そう言い放つ遊真。

 

 

「…………」

 

 

そんな彼の様子を遠目から見ていたシュテルは、ポケットからケータイを取り出すと、どこかに電話をかけ始めたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「~~~♪~~♪」

 

 

一方その頃、ボーダー本部の廊下では……色素の薄い金髪を腰辺りまで伸ばしてリボンで束ねてメガネをかけている青年が、資料のような紙の束を読みながら鼻歌まじりに歩いていた。

 

 

「おっ?」

 

 

すると、彼の胸元に入っていたケータイに着信が入り、それに気づいた青年はすぐにそれをとって応対する。

 

 

「はいもしもし?」

 

 

《あ…お父様、今大丈夫ですか?》

 

 

「うん、全然いいよ。どうしたんだいシュテル?」

 

 

《実は、折り入ってお願いが────》

 

 

「君がお願いだなんて珍しいね。どうしたんだい? うん…うん……なるほど……ん、わかった。いいよ。ちょうどこのあと、城戸さんから会議に呼ばれているからね」

 

 

《ではよろしくお願いいたします……お父様》

 

 

「了解了解。お父さんに任せておきなさい」

 

 

その言葉を最後に、青年は通話を切ってケータイを胸ポケットに戻すと、先ほどまでよりどこか軽い足取りで歩き始めた。

 

 

 

 

 

「さて、かわいい娘からの頼みだ……一肌脱ごうかな」

 

 

 

 

 

ユーノ・スクライア(25)

ボーダー本部所属

A級8位

スクライア隊 隊長

 

 

 

 

 

つづく

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