ユーノのボーダー活動日記   作:ZEROⅡ

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ようやくユーノさんが本格的に物語に絡んでいけそう。


空閑遊真

 

 

 

 

 

 

「おお~、いい感じのところだな」

 

 

「そうかな。」

 

 

「なるほど、ここならばほとんど人が来ることはないな」

 

 

 

修と迅たちと別れたディアーチェ、遊真、千佳の3人は警戒区域内にある神社に来ていた。その神社はすでに放棄され、場所も目立たないがゆえに人がまったく寄り付かない。なので千佳は時々この場所を隠れ家として使わせてもらっているらしい。

 

 

「迅とメガネが来るまでは、まずは腹ごしらえだな。ほら食え、我のおごりだ」

 

 

「ほうほう、これはこれはごちそうになります」

 

 

「すみません、私の分まで」

 

 

「気にするな」

 

 

そう言いながらディアーチェはここに来る道中で立ち寄ったバーガーショップで購入した食事を2人に差し出す。それを遊真はかしこまりながら、千佳は申し訳なさそうにしながら受け取った。

 

 

「王様は食べないの?」

 

 

「我はあまりそういったジャンクフードは好まん。これだけで十分よ」

 

 

ハンバーガーを咀嚼しながらそう問い掛けてくる遊真に対して、ディアーチェはバニラシェイクを飲みながら答える。

 

 

「遊真くんって……本当に近界民(ネイバー)なんだよね?」

 

 

()うだよ。あ、でもおれはこの街を襲ってるやつらとはカンケーないよ」

 

 

「うん、修くんにそう聞いた…………あのね、遊真くんに聞きたいことがあるんだけど……」

 

 

「ふむ?」

 

 

近界民(ネイバー)にさらわれた人は、近界民(ネイバー)の戦争に使われるって言ってたでしょ? それって……どんなふうに使われるの?」

 

 

「ほう、それは我も興味があるな。どうなのだ? 空閑」

 

 

千佳のそんな質問にディアーチェも興味を持ち、遊真に問い掛ける。

 

 

「ふーむ、それはさらわれた『国』によるかな」

 

 

「国……!?」

 

 

「そう。あっちの世界にもたくさんの国があって、それぞれの国でスタイルが違うんだよ。こっちの世界に来てる近界民(ネイバー)も、同じに見えて別々の国の近界民(ネイバー)だったりする。だからさらわれてった国の状況……戦争に勝ってるか負けてるか、兵隊を鍛える余裕があるかないか、司令官がデキるやつかダメなやつか、いろんな事情で話は変わってくるけど、トリオン能力が高い人間は向こうでも貴重だから、ほとんどの場合は戦力して結構大事にされてると思うよ。チカとか超大事にされるかも」

 

 

「じゃ……じゃあ、さらわれた人が向こうで生きてるってことも……」

 

 

「普通にあると思うよ」

 

 

「そっか……そうなんだ……」

 

 

遊真の話を聞いて、安堵したようにそう呟く千佳。

 

 

「なんだ? 誰か知り合いがさらわれたのか?」

 

 

「……ううん、違うの。ちょっと気になっただけ」

 

 

「……おまえ、つまんないウソつくね」

 

 

「えっ」

 

 

遊真にそう言われて千佳はギクリと身を強張らせる。

 

 

「こっちだけにしゃべらせてそっちはヒミツかー。まあいいや、あとでオサムに聞こう」

 

 

「ええ!? わあごめん、待って待って!」

 

 

「(……こやつ意外といい性格しておるな)」

 

 

遊真と千佳のやり取りを黙って静観していたディアーチェは、ある程度の事情は修に聞いているにも関わらず、改めて本人の口から聞き出そうとする遊真に対してそんな印象を抱いていた。

 

 

それから千佳は自身のことを語り始めた。廃駅で見た通り常人ならざるトリオン能力の持ち主である彼女は、今まで度々近界民(ネイバー)に狙われていた。普通であればボーダーに助けを請うのだが、かつて友人と兄を近界民(ネイバー)に攫われたことにより、誰にも迷惑をかけないように他人に頼らず、自分だけで逃げ延び続けてきたらしい。

 

 

「雨取も苦労しておるな」

 

 

「いえ、そんな……」

 

 

そう言いながら頭を撫でてくるディアーチェに、千佳は恥ずかしそうに頬を染める。しかし……

 

 

「……と言いたいところだが」

 

 

「へ?」

 

 

突然撫でていたその手でガシッと頭を鷲掴みにされ、千佳はそのままグリンと首を回され強制的にディアーチェと向き合う形にされる。

 

 

「あまりボーダーを甘く見るでないぞ。我々ボーダーはうぬらのような市民を守るために戦っておる。たかだか小娘が1人助けを求めてきたところで拒みはせんし、迷惑などとは決して思わん。だからもし次に近界民(ネイバー)に襲われることがあったら、遠慮なくボーダーを頼れ」

 

 

「で…でも……」

 

 

「だがそれでもまだボーダーに頼ることに抵抗があるのならば……今度は我に頼れ」

 

 

「え……?」

 

 

「我はうぬの事情を知った、つまりもう巻き込まれておるわけだ。これからは気兼ねなく我を頼るといい。そうすれば、我が必ずうぬを守る。あのメガネはいまいち頼りないしな」

 

 

「あ…ありがとう……えっと…ディアちゃん?」

 

 

「ふっ、それでよい。迅にそう呼ばれるよりマシだ」

 

 

ディアーチェの言葉を聞いた千佳は、若干戸惑いながらも嬉しそうに感謝の意を告げた。それに対してディアーチェも満足そうに笑ったのであった。

 

 

「王様、意外とすげーいい人じゃん。オサムと同じくらいに面倒見の鬼だな」

 

 

「……それは褒めておるのか?」

 

 

遊真から微妙な肩書をつけられたディアーチェは、ジト目で遊真を軽く睨む。

 

 

「でも、おれはチカの気持ちはわからんでもないけどなー。おれも今回、オサムとチカを巻き込んだし……おれと一緒にいたせいでオサムの出世をふいにしたかもしれん。だとしたらもうしわけない」

 

 

「それは大丈夫だよ。修くんはたぶんそんなこと気にしてない。『自分の意志でやったことだ、お前が気にすることじゃない』……って言うよたぶん」

 

 

「うーむ、言いそう」

 

 

まだ付き合いの短い遊真でも、確かに修ならそう言いそうだと思った。

 

 

「修くんはさっきも、自分じゃなくて遊真くんの心配をしてたよ」

 

 

「あいつは他人の心配と自分の心配のバランスがおかしいからな。そもそもおれを心配する理由なんかないのに」

 

 

「え、でも、ボーダーの人が遊真くんを狙って来るんでしょ?」

 

 

「ボーダーが何人で来ようと、本気でやればおれとレプリカが負けるような相手はいないよ」

 

 

「ほう、ずいぶんと大きく出たな空閑。ならば我が、今度は本気で相手をしてやろうか?」

 

 

「えんりょしておきます」

 

 

そんなディアーチェの申し出を、遊真は首を横に振りながら丁重にお断りした。

 

 

「……いや、1人だけいるか」

 

 

「………迅のやつか」

 

 

「あのおでこにサングラスの人……?」

 

 

「そう。迅さんはたぶん相当強い。勝てるかどうかはやってみなきゃわかんないな」

 

 

「確かにあやつの強さはボーダーの中でも指折りだ。数少ないS級隊員だしな」

 

 

「じゃああの人が追っ手になったら……!」

 

 

遊真がそこまで言う迅が相当な実力者だと判断した千佳は、もしかしたらその迅が敵に回るのではないかという懸念を抱く。

 

 

「……いいや──そうはならないよ」

 

 

しかし遊真はそれに対して、どこか確信に満ちた言葉でそう断言したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7話

『空閑遊真』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会議は終わりだ。速やかに任務を遂行しろ」

 

 

一方その頃……城戸によって遊真の(ブラック)トリガー奪取を命じられてしまった迅。しかし彼の返答は……

 

 

「それはできません」

 

 

なんと拒否の言葉であった。当然そんな予想外の返答に、城戸だけでなく幹部の面々も驚愕する。

 

 

「何ィ!?」

 

 

「どういうことかね? 迅くん。最高司令官の命令に従えないと?」

 

 

「おれは玉狛支部の人間です。城戸司令に直接の指揮権はありません。おれを使いたいなら、林藤支部長を通してください」

 

 

ボーダーは命令の重複を避けるために、直属の上官のみが部下に命令できる指揮系統になっている。つまり玉狛支部所属である迅に命令できるのは、玉狛支部の支部長である林藤だけなのである。

 

 

「何をまどろっこしいことを……結局は同じことだろうが」

 

 

「……林藤支部長、命令したまえ」

 

 

「やれやれ……支部長命令だ迅、(ブラック)トリガーを捕まえてこい」

 

 

「はい」

 

 

林藤からの命令に、今度は素直に返事を返す迅。しかし……

 

 

「ただし、やり方はお前に任せる」

 

 

林藤のこの一言に幹部たちや修は目を見開き、迅は待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべる。

 

 

「了解、支部長(ボス)。実力派エリート迅、支部長の命令により任務を遂行します!」

 

 

そう言うと迅は、サングラスをかけながらその命令を受け取った。

 

 

「さあて行くか、メガネくん」

 

 

「……はい!」

 

 

迅の言葉に嬉しそうに声を上げる修。この時修は、迅は今まで会ってきた他のボーダー隊員とは違うことを実感した。

 

 

「やはり玉狛なんぞに任せてはおけん! 忍田くん、本部からも部隊を出せ!」

 

 

「城戸司令が決めたことだ。迅に任せればいいだろう」

 

 

「それはそうだが……」

 

 

納得のいかない鬼怒田がそう怒鳴るが、忍田の言葉に尻込みしてしまう。すると……

 

 

「待ってください忍田さん。鬼怒田さんの言うことにも一理あります」

 

 

「! ユーノ?」

 

 

意外な人物からの賛成意見に、忍田は疑問符を浮かべる。

 

 

「いくら迅が腕利きのS級隊員だとしても、相手は未知の(ブラック)トリガーです。迅1人に負担をかけるわけにはいきません」

 

 

「なにを……?」

 

 

「ですから……手の空いているA級部隊だけでも、迅の補佐につけたらどうでしょうか?」

 

 

「!」

 

 

ユーノの言葉に疑問を感じていた忍田だったが、その提案を聞いた瞬間に彼の言わんとすることが理解できた。

 

 

「……確かに、その通りだな。では本部長として命令する。スクライア隊隊長ユーノ・スクライア──キミの部隊には迅の指揮下のもと、彼の補佐についてもらう」

 

 

「了解です」

 

 

忍田からのそんな命令を受けたユーノは、快くその命令を受理しながら席を立ちあがった。

 

 

「忍田くん! 一体なにを……!?」

 

 

「あなた方の要望通り、本部からの部隊を出したまでだ」

 

 

「………!」

 

 

鬼怒田や根付が反論しようとするが、忍田によって封殺されてしまう。

 

 

「というわけで、僕も一緒に行くからよろしく」

 

 

「おおっ、ユーノ先生がついてくれるなら百人力だ」

 

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

そう言ってユーノを加えた迅と修は会議室を出ようとすると……

 

 

「三雲くん、ちょっといいかな?」

 

 

「……えっ? はい」

 

 

今までずっと黙って会議を静観していた唐沢が修を呼び止める。

 

 

「キミの友人の近界民(ネイバー)がこっちに来た目的は何なのか、キミは聞いてないか?」

 

 

「目的……ですか?」

 

 

「そうだ。相手が何を求めているか、それがわかれば交渉が可能だ。たとえ別世界の人間でも」

 

 

「交渉……!? 近界民(ネイバー)相手に何を悠長な……」

 

 

「排除するより、利用できないかと考えてしまうんですよ。根が欲張りなもので」

 

 

唐沢からの問い掛けにより、修は遊真がこちらの世界に来た理由を思い出した。

 

 

「目的……そういえば『父親の知り合いがボーダーにいる。その知り合いに会いに来た』……確かそう言ってました」

 

 

「ボーダーに知り合い……!? 誰のことだ?」

 

 

「いや、名前は聞いてないんですが……」

 

 

「曖昧すぎて何の足しにもならん話だな!」

 

 

「キミの作り話じゃないだろうねぇ?」

 

 

「その『父親』の名前は?……いや、キミの友人本人の名前でもいい」

 

 

「父親の名前はわかりませんが、本人の名前は………空閑遊真です」

 

 

そして修が遊真の名前を口にした瞬間……林藤が口に咥えていたタバコをテーブルの上に落とした。

 

 

「………『空閑』………!?」

 

 

「!!」

 

 

その反応を見て、修は遊真の父親の知り合いが林藤なのかと推測するが……

 

 

「『空閑』……!?」

 

 

「『空閑』……だと……!?」

 

 

林藤だけでなく、忍田や城戸までもが同様の反応を示したことに驚愕する修。

 

 

「(どうなってるんだ……!? 空閑の親父さんって……いったい何者……!?)」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻って遊真たちがいる廃神社。

 

 

「そういえば、遊真くんはどうしてこっちの世界に来たの?」

 

 

「親父が死んだから」

 

 

「えっ」

 

 

「!」

 

 

何気なく訊いてみた千佳だが、遊真の返答に固まり、隣で聞いていたディアーチェも片眉を動かして反応していた。

 

 

「ご…ごめん」

 

 

「いいよ別にそんな。ちっちゃい頃から親父と2人であちこちの国まわってて、たしかおれが11の時親父が死んだ。『もしオレが死んだら日本に行け。オレの知り合いがボーダーって組織にいるはずだ』。親父がよくそう言ってたから日本に来たんだ。親父はボーダーのことを、こっちの世界と近界民(ネイバー)をつなぐ橋になる組織だって言ってたけど、実際にこっちに来てみたら、近界民(ネイバー)はこっちの人間を派手に襲ってるし、ボーダーは近界民(ネイバー)を目のカタキにしてるし、親父に聞いてた話とはだいぶ違うな」

 

 

遊真はこちらの世界に来ることになった経緯を説明しながら、父親から聞いていたボーダーの話がまるで違うことに疑問を抱いていた。そんな遊真に、今度はディアーチェが問い掛ける。

 

 

「うぬの父親とはどういう人物だったのだ?」

 

 

「変な人だったよ……たとえばおれが6歳の時に聞かされた親父の『3つの教え』ってのがあるんだけど」

 

 

「『3つの教え』……?」

 

 

そう言いながら、遊真はまず1本の指を立てながら説明する。

 

 

「その1『自分のことは自分で守れ』。親はいつでもお前を守れるわけじゃない。自分を鍛えるなり、頭をひねるなり、自分でどうにかしろ。自分がどうにかできないものには近づくな、想像力を働かせて危険を避けろ」

 

 

次に遊真は2本目の指を立てる。

 

 

「その2『正解は1つじゃない』。物事には色んな解決法がある。逆に解決法がない時もある。ひとつのやり方に捉われるな」

 

 

そして最後に3本目の指を立てて、3つ目の教えを言い放つ。

 

 

「そしてその3──『親の言うことが正しいと思うな』」

 

 

「……!?」

 

 

「は……?」

 

 

最後の最後で今までの教えを否定するかのような言葉に、ディアーチェと千佳は疑問符を浮かべることしかできず、そんな2人の反応を見て遊真は「な?」と言葉をかけた。

 

 

「たしかに変わったお父さんだね」

 

 

「よくわからんお方だな、空閑の父上は」

 

 

「だろ? まあそういう親父だったから、こっちの世界が親父の話と違っててもそんなにびっくりはしなかったよ。問題は……『親父の知り合い』がまだボーダーにいるかどうか、だな」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は再びボーダー本部の会議室。

 

 

「『空閑』……『空閑(くが)有吾《ゆうご》』か……!?」

 

 

城戸の口から出てきた遊真の父と思われる男の名……その名を聞いて、林藤と忍田も反応する。

 

 

「クガ……? 何者ですかな、そのクガとやらは?」

 

 

「我々にもご説明願いたいですねぇ」

 

 

一方で『空閑有吾』という名を知らない鬼怒田と根付の問い掛けに対して、忍田が静かに口を開く。

 

 

「空閑有吾……有吾さんは……4年半前にボーダーの存在が公になる以前から活動していた、言わば旧ボーダーの創設に関わった人間。ボーダー最初期のメンバーの1人だ。私と林藤にとっては先輩にあたり、城戸さんにとっては同輩にあたる」

 

 

「…………」

 

 

忍田の説明を聞いて、修は絶句する。遊真からは父親はボーダーとは関係ないと聞かされていたのに、実際はその創設に関わったメンバーだったのだ。

 

 

「有吾さんは……その子の父親は今どこに? キミは聞いてないか?」

 

 

忍田にそう問い掛けられた修は、一瞬だけ言葉に詰まったが、正直に答える。

 

 

「空閑の親父さんは……亡くなったと聞いています」

 

 

「「「!?」」」

 

 

その言葉を聞いて……忍田、城戸、林藤の3人が反応する。

 

 

「……そうか……しかしそういうことなら、これ以上部隊を繰り出す必要はないな。有吾さんの子と争う理由などない」

 

 

「……まだ空閑の子と確認できたわけではない。名を騙っている可能性もある」

 

 

「それはあとで調べればわかることだ。迅、ユーノ、三雲くん、つなぎをよろしく頼むぞ」

 

 

「……はい!」

 

 

「了解!」

 

 

「そのつもりです、忍田さん」

 

 

「……では解散とする。進展があれば報告するように」

 

 

城戸のその言葉を最後に会議が終わり…ユーノ、迅、修に続いて忍田と林藤も会議室から退室する。そして会議室には、城戸、鬼怒田、根付、唐沢の4人が残っていた。

 

 

「……このままでよいのですかな? 城戸司令。クガとやらのことはようわからんが……」

 

 

「そうですねぇ、このまま玉狛と(ブラック)トリガーが手を結べば、ボーダー内のバランスが……」

 

 

「わかっている。空閑の息子かどうかは別問題として……(ブラック)トリガーは──必ず我々が手に入れる」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「空閑の親父さんが上層部の人と知り合いなら、空閑ももう大丈夫ですよね?」

 

 

「うーんどうかな」

 

 

「正直ちょっと難しいかもねー」

 

 

「えっ……」

 

 

会議室をあとにしてから、修の問いに対して迅とユーノは渋い顔をしながら答える。

 

 

「いやだって……さっき忍田本部長が……」

 

 

「うん、まあそうなんだけど。メガネくんもなんとなく気づいてると思うけど、今ボーダーは大きく分けて3つの派閥に割れてんだよね」

 

 

「派閥……?」

 

 

ボーダー内に派閥が存在するということに、修は疑問を抱く。

 

 

「そう。近界民(ネイバー)に恨みのある人間が多く集まった『近界民(ネイバー)は絶対許さないぞ主義』の城戸さん派」

 

 

「僕たちスクライア隊や嵐山隊のように、近界民(ネイバー)に恨みはないけど街を守るために戦う『街の平和が第一だよね主義』の忍田さん派」

 

 

「そして……『近界民(ネイバー)にもいいヤツいるから仲良くしようぜ主義』の我らが玉狛支部」

 

 

「……!!」

 

 

「で……まあ玉狛(ウチ)と城戸さんとこは考え方が正反対だから、あんまり仲がよろしくないわけ」

 

 

「なるほど……」

 

 

そこまで聞いて修は、三輪が迅や玉狛のことを『裏切り者』と言っていたことを思い出し、それがどういう意味だったのか納得した。

 

 

「まあ城戸さん派は一番でかい派閥だから、玉狛(ウチ)が何かやっても王者の余裕で見逃してもらえてたけど、もし遊真と玉狛(ウチ)が手を組んだら、たぶんそのパワーバランスがひっくり返る」

 

 

「……!? 空閑1人でそこまで……!?」

 

 

(ブラック)トリガーっていうのは、それほど強力なものなんだよ。だから城戸さん派の人たちは何としてもそれを避けたいだろうから、(ブラック)トリガーの奪取を諦めてはいないだろうね」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「おっ、来た来た。オサムと迅さんと………だれ?」

 

 

「我の父上だ」

 

 

その後……三門市内で修と迅とユーノの3人と合流した遊真たち。

 

 

「キミが噂の遊真くんだね。僕はユーノ・スクライア。そこにいるディアーチェと、キミのクラスメイトのシュテルの父親だよ。よろしくね」

 

 

「そうか、あんたがユーノせんせーか。おれは空閑遊真。よろしく、ユーノせんせー」

 

 

「あ…あの、雨取千佳です。よろしくお願いします」

 

 

「うん、よろしく」

 

 

さっそくユーノは遊真と千佳の2人と挨拶をかわし、そのまま迅に連れられるままに歩き始める。

 

 

「オサム、偉い人にしかられた?」

 

 

「いや……まあ叱られたけど、処分はひとまず保留になった」

 

 

「おーそりゃよかった、一安心だな」

 

 

「まだ安心じゃない。ボーダーがお前のトリガーを狙ってくる可能性があるんだ」

 

 

「ほう」

 

 

「……で、これからどうするのか、父上や迅は考えておるのか」

 

 

「うーん、そうだな」

 

 

ディアーチェの問い掛けに対して迅は顎に手を当てて考えるような素振りを見せながら、自身の考えを話し始める。

 

 

「いろいろ考えたけど、こういう場合はやっぱシンプルなやり方が一番だな」

 

 

「だね。僕もそれに賛成だ」

 

 

「シンプルな……」

 

 

「やり方……?」

 

 

修と遊真はそれぞれ首を傾げる。千佳とディアーチェも似たような反応をする中……迅は遊真に対してこう言い放った。

 

 

 

 

 

「うん。遊真おまえ………ボーダーに入んない?」

 

 

「おれが……!?」

 

 

 

 

 

つづく

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