ご注文は捻デレですか?   作:白乃兎

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これは一重に読者の皆様のおかげです。
これからも読者の皆様の期待を裏切らぬよう努力する所存でございます。


第十四羽

学校帰りに八幡は、今日のアルバイトが休みだということをチノから知らされた。

 

それにより、途中までラビットハウスまで足を運んでいたためにそのまま帰宅するのはもったいないと考え、ラビットハウスからさほど遠くない図書館へと足を運んだ。

 

「いつも思うけど、デケェなこの図書館」

 

各フロアごとの天井はなく吹き抜けのようになっていて、壁際の本棚もかなり高く積まれている。

 

八幡はこれでも文学少年。

本を読むときは基本的にここに足を運ぶ。

 

今回はテスト前の勉強のために足を運んだのだが、八幡にしては珍しく学生の味方サイゼではなく、図書館をチョイスした。

 

一階はそこそこ人が多かったので、二階へと上がり、テーブルに勉強道具を広げる。

 

八幡は文系特化型。

実際に八幡は私立文系の大学を目指しているので、理系はそこまで必要はないのだが、テストの点数が悪ければ留年の可能性もある。

そこで広げたのは数学。

 

渋い顔をしながらも、問題集の問題を解いていく。

 

 

 

数分後、八幡の手がピタリと止まった。

休憩ではなく、問題の途中。

つまりは問題が分からないわけだ。

 

仕方ないと八幡は解説を見ようとカバンに手を伸ばすが、

 

「あー、家に忘れたか」

 

カバンを漁っても問題集の答えはなかった。

 

「仕方ない、飛ばすか」

 

「よければお教えしましょうか?」

 

「はっ?」

 

後ろから突然声をかけられて驚きながら八幡は振り向く。

するとそこには神出鬼没の小説家青山ブルーマウンテンの姿があった。

 

「えっと……」

 

「こう見えて私、頭がいいんですよ」

 

「こう言っちゃアレですけど、意外ですね」

 

「あらあら、中々ストレートにおっしゃるんですね。傷つきます」

 

わざとらしくシクシクといった動作を取る青山さんに八幡は狼狽える。

青山さんはラビットハウスのメンバーや、千夜、シャロとはまた違ったトリッキーな性格をしているので、八幡には扱いきれない部分があるのだが、そこは青山さんも大人。

一方的に相手を振り回すようなことはしない。

 

「この問題でよろしいでしょうか?」

 

一通り八幡をからかうと、八幡の開いている問題集とノートにを目を落とす。

 

「あ、はい」

 

「ここはですね、先にこっちを計算してから、そこに代入するとーーーー」

 

青山さんは八幡の隣の席に座ると、教師のようなわかりやすい説明を展開していく。

 

そんな感じで、青山さんの説明は進んでいく。

小説家なのだから文系タイプの人かと八幡は思っていたが、万能タイプの人間だったらしく、八幡の頭の中にスラスラと説明の内容が入っていく。

 

「おぉ、解けた」

 

「よく出来ましたー」

 

パチパチと控えめに手を叩く青山さん。

 

「青山さんって文系だと思ってました」

 

「ふふっ小説家なんてやってますから、そう思われがちなのですが、意外に両方いけるんですよ?」

 

「頭いいんですね。……どうして小説家を目指したんですか?青山さんの頭だったらもっと職を選べたでしょうに」

 

ふと、八幡の頭に素朴な疑問が浮かび上がった。

実際その通りなのだ。

小説家のように売れなければ儲からないという不安定な職業を選んだのか。

 

「それはですね、ラビットハウスのマスターさんが背中を押してくれたんです」

 

「ラビットハウスのマスター?」

 

「はい、現在はいらっしゃらないようですが、私は学生時代からあそこの常連で、よく小説を書いてはマスターに感想を聞かせてもらっていたんです。それで、これは小説家になるしかないっ!てなったんですよ」

 

「最後雑でしたね」

 

「気にしないでくださいな」

 

八幡にはそのラビットハウスのマスターが誰だかわからなかったが、青山さんには青山さんなりの理由があって今の仕事をやっている、ということはよくわかった。

 

「八幡さんは最近はどうですか?」

 

今度は青山さんの方から質問が投げかけられた。

 

「どう、と言うと?」

 

「そうですねぇ、花の高校生活ですから、恋愛とかどうでしょう?」

 

その質問を聞くと、自虐モードに入った八幡は自らの目を指差して口を開く。

 

「この目で恋愛とかできると思います?」

 

そんな八幡のいつも通りの自虐。

青山さんは予想外の答えを出した。

 

「そんなことないですよ。思慮深さ、周りをよく観察しているようなちゃんとした目です」

 

ズイッと八幡の目を顔を近づけて覗き込む青山さん。

青山さんの目には八幡が映っている。

八幡は青山さんの目に映る自分、普段の距離からではあまり気にしていなかったが、白く綺麗な肌。

 

それらを一通り見てから、八幡は現状に気がついた。

 

「ちょっ、ち、近いです」

 

「………ぁ」

 

ガタッと椅子を引いて離れる八幡。

青山さんの方も自分が何をしていたのかに気がつき顔を赤くする。

 

「す、すいません。つい」

 

「い、いや、別に、なんとも」

 

二人の間に妙な空気が生まれてしまった。

八幡は今ので、青山さんを年上の女性として認識してしまった。

 

惚れる、とまではいかないが、青山さんの少し幼さが残る大人な魅力にやられてしまった、ということなのだ。

 

対する青山さんも青山さんで、八幡の目、顔をしっかりと目に焼き付けた。

 

青山さんが通っていた高校はリゼやシャロと同じく女子校。

つまりは男との関わりをあまり持たなかった青山さんはこのようなことに対しての耐性があまりない。

 

そして八幡の顔はなかなかにイケメン。

青山さんから言わせれば、八幡の澱んだ目もマイナスポイントにはなり得ない。

 

年下とはいえ、耐性のない青山さんに意識するなという方が無理である。

 

つまるところ、青山さんも八幡を恋に落ちたとまではいかなくとも、八幡を男性として認識してしまったのだ。

 

「やっぱり八幡さん、目、悪くないじゃないですか」

 

「この目をそんな風に言ってくれるのは青山さんぐらいですよ」

 

……………。

 

気まずい。

あんなことがあった後に会話が長く続くわけもなく、当然無言の空間が出来上がる。

 

「えと、青山さんが、平塚静先生と知り合いって本当ですか?」

 

いつかタカヒロから聞いたことでこの無言の空間を打破した八幡。

コミュ障元ぼっちにしては中々のファインプレーである。

 

「ああ、静先輩ですか?ええ、私と同じ高校で、仲良くさせていただきました。なんとも男らしい人でした。よくラビットハウスで奢って頂いたんです」

 

「男より男らしくてモテないんですよね、あの人」

 

「ふふっ、静先輩らしいですね」

 

互いに同じ知り合いがいるとその人の会話で盛り上がる法則。

それにより、気まずい空気が取り払われる。

 

だが、ここで八幡はやらかしてしまう。

 

「青山さんは恋愛方面はどうなんですか?流石に平塚先生みたいに合コンとか全敗とかは……」

 

自ら地雷を踏みに行く八幡。

青山さんはピシッと固まり、頰が引きつる。

 

「え、えぇと、小説家というのは、出会いが無い職業でして。私、女子校出身ですし……」

 

「すっ、すいません」

 

目に見えて落胆する青山さんにペコペコと頭をさげる八幡。

平塚先生のようにそのことに触れられて殴ったりはしないが、やはり婚活、というのは一部の人間からしたらなんとも高いハードルのようだ。

 

「お、俺が二十歳になったら一緒に飲みに行きましょう!」

 

「その頃私はアラサー……はぁ」

 

「この人、めんどくせぇ」

 

青山さんには聞こえないよう八幡はそう呟いた。

普段はお気に入りの作家で、先ほども勉強も教えてもらったことから尊敬しているが、一度婚活系の話題を振ると自虐に走ってしまうようだ。

 

「今時は中高生からもう彼氏とか作ってるんですよ?そんな中私は彼氏いない歴=年齢。はぁ」

 

「だ、大丈夫っすよ!ほら、ラビットハウスでバイトしてるココア達もまだ彼氏とかいないって話ですし」

 

「あの可愛らしい方たちですか?」

 

「青山さんは美人なんだから出会いさえあれば、結婚できると思います」

 

なぜ八幡が青山さんを慰める方向になってしまったのか。

そして、青山さんも青山さんで、しょんぼりしてしまっている。

 

「私の周りの男性って、タカヒロさんと八幡さんしかいないんですけど……」

 

「ほら、合コンとかあるじゃないっすか。今時はネットも流行ってるし出会いだけならどうとでもなるんじゃ?」

 

八幡はそこまでして出会いを求めていないし、そもそもついこの間までぼっち街道をひた走っていたので、詳しくはないのだが、青山さんに元気を出させるだけならば問題はない。

 

「いいえ、出会い系サイト?みたいなのは怖いので嫌です」

 

「じゃあ、言いにくいですけど、タカヒロさん?」

 

タカヒロの妻、つまりチノの母を八幡は見ない。

ラビットハウスにはいないようなので、離婚したのか故人なのかは謎である。

 

「いえ、それはマスターにお叱りを受けそうですし、ここは八幡さんはどうでしょう?」

 

「えっ、いやいや、ほら、正気に戻って下さい。俺はまだ未成年ですよ?………いや、でもありなのか?青山さんは小説家として成功してるし、俺を専業主夫として養ってくれるのではー」

 

八幡のダメ人間モードのスイッチが入ってしまった。

青山さんはそれをニコニコと見つめている。

自虐モードは解除されたようである。

 

「ふふっ、悩んでくれてるんですか?」

 

悩んでいるということは、青山さんが八幡の恋人になれる可能性が少なからず存在しているということ。

 

「青山さん、からかうのはーー」

 

明らかにからかわれていることに気がついた八幡は青山さんに文句を言おうとする。

だが、そこに横槍が入る。

 

「あれっ?八幡くん、なんでここにいるの?」

 

「こんにちは、八幡さん」

 

ココアとチノ。

八幡はココアが図書館に来たことにひどく驚いた。

 

ココアはいかにも本を読んでいたらそのまま寝てしまうタイプなので図書館には足を運ぶような人ではないと思っていた。

 

青山さんは潮時と考えたのか、腰を上げて仕事に戻るようだ。

立ち上がる際に、八幡の耳に口を寄せて一言。

 

「八幡さんが二十歳になったら飲みに行きましょう」

 

それだけ言うと青山さんはそそくさと去ってしまった。

 

「何してたの?あの人は?」

 

「ラビットハウスの常連客だよ。勉強を教えてもらってた」

 

「八幡くんも?今、千夜ちゃんとシャロちゃんとで勉強会の最中なんだ。八幡くんも混ざろう!」

 

ココアは八幡の荷物をパパッと纏めると、移動の準備を済ませ、チノは座っている八幡に立つように促す。

 

「さぁ、みんなで私のテスト赤点回避を目指そう!」

 

「そんなことだろうと思った」

 

「ココアさんですから」

 

やれやれとため息を吐きながら、八幡はココアたちの後ろについていくのだった。

 

 

 




感想評価を待ってまーす。
感想評価の量に比例して更新速度も上がる……かも。

早くチマメのマメとモカさんをだしたいのだが、未だ原作一巻。
……モカさんが遠い。
もうオリジナルで一章、モカさんの一強時代(モカさん正ヒロインの話)を書こうかなぁとか思う今日この頃。
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