魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第九話

悠也とはやては、まるで恋人の様にピッタリと体を合わせてベッドに横たわっていた。

元々、はやてが眠るベッドは広いのだ。それも、悠也とはやてが二人で眠っても余裕はあるくらいに。だけど今日は悠也の隣で夢の世界に、今にも陥りそうなはやてが言ったのだ。

 

 

「今日だけは、こうやって一緒に寝よ?」

 

 

と。勿論、悠也はやんわりと断ったのだが次第に泣き顔に変わっていったはやてに落とされた。所謂、泣き落としだ。

 

 

『ご主人様も、そろそろお眠りになってください。明日はハイキングに行くのでしょう?』

 

 

『そうだな。そろそろ時間もいい頃だし。』

 

 

枕元にある目覚まし時計を見ると、もう少しで0時だ。手を少しだけ動かして、はやての頭に触る。サラサラとした髪は撫でていると気持ちがいい。笑い、というよりも幸せな笑いが顔に出る。それは、はやての直ぐ横に置いてあるネックレスだ。プレゼントした時など、見ていて気が抜ける程にはやては笑っていた。選んだ甲斐があるというものだ。

 

 

「おやすみ」

 

 

『おやすみなさい』

 

 

「ぅ……」

 

 

少し寒いのだろうか。はやてにタオルケットを深めに被せて、悠也は瞼を閉じた。

トクン、トクン、トクン。すぐ隣で寝ているはやての心臓の音が、まるで子供をあやす様なリズムで鳴っている。心地いいと感じるソレは、悠也を眠りへと誘っていく。

だが、その心地いいリズムは一瞬で崩れた。

 

 

それはまるで、マラソンのランナーが走った時の様な暴力的までのリズム。

直ぐにはやてを抱き上げるが、荒い息遣いに加えて体温が急激に上がり始めた。

 

 

「はやて!」

 

 

「……うぅ」

 

 

「バリアジャケット展開」

 

 

「アカレラ!?」

 

 

「後ろです!!」

 

 

バリアジャケットを展開された事に驚く暇もないまま後ろを振り向くと、本が浮いていた。

文字通り、本が浮いているのだ。あの本は、はやてが昔から家にあったと言って大事にしていた本だ。

 

 

「封印を解除します」

 

 

その本には、力ずくでも外れない鎖が巻かれていた。だが、その鎖は塵も残らずに弾け飛んだ。そして何もしていないのにも関わらずページがめくられていく。

その時、はやての体が震えた。

 

 

「起動」

 

 

「デバイス!?」

 

 

「ご主人様!はやて嬢が!?」

 

 

はやての胸から、白い球体だ出ていた。魔法を使う悠也が見間違える物ではなく、それはリンカーコアだった。リンカーコアは、悠也が手を伸ばすも届かずに本へと向かう。

そして、本の中に入った。

瞬間、はやての部屋は光に包まれ、光が収まると、そこには四人の人が片膝をついていた。

まるで主人の命令を待つかのような、騎士の礼儀作法に見えた。

 

 

 

「闇の書の起動確認しました」

 

 

 桃色の髪をポニーテールにした女性

 

 

「我ら闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士でございます」

 

 

 金髪の髪を肩あたりまで伸ばした女性

 

 

「夜天の主の元に集いし雲」

 

 

 犬の耳と尻尾を付けた白髪の男性

 

 

「ヴォルケンリッター、何なりと命令を」

 

 

最後に赤い髪を三つ編みで二つにわけた小さい女の子

 

 

『……アカレラ』

 

 

『なんでしょうか。』

 

 

『今からはやてに回復魔法かけるから補助して』

 

 

腕の中のはやては気絶していた。息遣いと高い体温は収まりつつもあるが、普通よりも高かった。はやてを乱れたベッドに寝かせなおしてタオルケットをかけた。

 

 

『畏まりました。』

 

 

「ふっ!」

 

 

三角形の魔法陣は、直径が二メートルほどの大きさだ。悠也が発動した魔法陣から薄い膜が悠也とはやてを包みこむ。ちょうど、床から半円形だ。

 

 

「……主?」

 

 

声は桃色の髪の女性、シグナムからだ。騎士らしく、主の許可なく頭を上げていない。

だが、赤毛の女の子、ヴィータはそわそわして今にも顔を上げそうだ。

 

 

「一つ質問してもいいかな?あぁ、顔は上げちゃだめだよ」

 

 

またピクリと動いたヴィータに苦笑いしながらも、悠也は動揺を上手く隠せていた。

当たり前だろう。いくら悠也が魔法を知っているからと言っても、本が勝手に浮かんでそこから三人の人間に加えて守護獣が召喚されたのだ。それに、この四人が言っている「主」は十中八九、悠也ではなくベッドで気絶……眠っているはやてだ。そう確証しているものの、それを言っていないのは状況が状況だからだ。

見た所、守護獣は体にピッタリとくっついているアンダーシャツは惜しげもなく筋肉を見せびらかせている。日に焼けた四肢も鍛え上げられている。

これだけでも、既に悠也にとっては脅威になっているのだ。この四人が召喚された時に展開されていたのはベルカ式の魔法陣だ。ベルカ式は、たとえデバイスを持っていなくとも体に直接魔力を流し込んで強化することが出来る。この四人が使う魔法は、恐らくベルカ式の魔法。

 

 

はやてがいる状況で、戦う事なんてもっての他。悠也の能力を使えば逃げる事が出来るが、はやてが「主」なら逃げる事なんて不可能だ。リンカーコアを通して繋がっている筈だ。

 

 

「えーっと、君たちは騎士なんだよね?」

 

 

「はい、我らはベルカの守護騎士です。」

 

 

「じゃあ、武器を持っていない人にいきなり襲い掛かったりなんてしない?」

 

 

「当たり前です。」

 

 

「騎士として誓ってくれる?」

 

 

「レヴァンティンに誓います」

 

 

「グラーフアイゼンに誓います」

 

 

「クラールヴィントに誓います」

 

 

「主を守る盾に誓います」

 

 

「じゃあ、顔を上げて」

 

 

緊張が走る。さっきの言葉が嘘なら、悠也はどうなるかわからない。だが、良くないことが起こるのは確実だろう。騎士ならば、本当の騎士ならばさっきの言葉は守ってくれる。

そう信じ、顔を上げる四人を慎重に見た。

 

 

「主……じゃない!?」

 

 

「テメェ!」

 

 

「主はそっちの女の子!」

 

 

悠也を見た三人は、身構えたが守護獣の手に遮られた。

 

 

「どうして止める!?」

 

 

「そうだザフィーラ!なんで止めやがる!」

 

 

「あの男が主の命を握っているのよ!?」

 

 

だが、ザフィーラは悠也と目を合わせたまま微動だにしない。悠也もまた、視線を外すことは無かった。

 

 

「我ら守護騎士は誓ったのだ。武器を持たぬ相手には手を出さないと、己の誇りに」

 

 

それを聞いてシグナムとヴィータは腰を落とした。だが、何時でも動ける状態だ。

シャマルは何やらベッドで眠っているはやてをじっと見ている。

 

 

「……ベルカの騎士に聞きたい。主はどうしたのだ?」

 

 

「いきなり気絶した」

 

 

座っていた二人は目を見開き、悠也を睨んだ。が、行動には出ない。いや、出れないの方が正しい。例え知らず知らずの内にも誓ってしまったのだ。襲い掛かれるわけがない。

 

 

「ベルカの騎士さん。そっちに行って主をみてもいいですか?」

 

 

「どうして?」

 

 

「私は治療魔法が使えます。恐らく、貴方よりも使えるでしょう」

 

 

「さっきの誓いが守れるなら」

 

 

「誓います」

 

 

「シャマル!」

 

 

即答したシャマルに声を荒げたのはヴィータだ。隣に座っているシグナムは何故か目を瞑って瞑想している。

 

 

「大丈夫よヴィータ。だけど、その前に私からも要求があります。バリアジャケットを解除してください」

 

 

シャマルの言う事はもっともだった。自分たちは武器もバリアジャケットも展開していないのにも拘わらず、相手はバリアジャケットを展開していて武器もすぐに手に取れる状態じゃ、誓いもへったくれもない。

 

 

「アカレラ」

 

 

「しかし……」

 

 

「彼女が言っていることは正しい」

 

 

「畏まりました」

 

 

静かにバリアジャケットは解除され、ジャージにTシャツ姿のラフな恰好になった。

そして悠也は発動していた治療魔法を止め、シャマルに場所を譲った。

場所を譲った悠也は、そのまま部屋を出て行こうとしたが当然の如く呼び止められた。

 

 

「待て、どこに行くんだ?」

 

 

「あんまり動くな」

 

 

「そうは言っても、はやて。あ~、お前たちの主の服がビショビショで、このままじゃ風邪ひくぞ?」

 

 

これでもか!と言うほど悠也を睨んでいた目が揺らぎ、少し弱くなったものの睨む。

 

 

「では、俺がついて行く。シグナムとヴィータはこのまま主の傍に」

 

 

部屋を出ると、ザフィーラが遅れて出てきた。監視のためと、もしもの為だろう。

悠也も、アカレラに頼んでザフィーラと部屋に残っている三人を監視してもらっている。

流石に、はやての事を「主」と呼んでいようが信用なんて出来ない。

それはヴォルケンリッターも同じことだ。気絶した「主」を治療して、バリアジャケットを解除していても信用何てもってのほか。それどころか、悠也はベルカ式魔法を使えてデバイスが在ろうが無かろうが体を強化して戦えるのだから。

 

 

リビングに入ると、シオンが足にすり寄ってきた。ごめんな、と一言。抱き上げて、テーブルの下に置いてあったバッグに入れて鍵をかけた。シオンにかまってられないのである。

ザフィーラが悠也を注意深く監視している中、悠也はパジャマを選ぶ。なかなかにシュールだ。男が女物のパジャマを選んで、その後ろから鍛え上げられた体の獣耳の男が監視する。

やっぱりシュール。

 

 

パジャマを選んだ悠也は、次に洗面器にお湯を溜めて清潔なタオルも準備した。汗で濡れたまま新しい服を着れば、気持ち悪いのは至極当然の事。幸いにも、部屋には女性がいる。彼女たちに任せよう。そうして、部屋に戻ろうとした時だった。

二階から悲鳴が聞こえたのだ。

 

 

「アカレラ!」

 

 

「あっ、お待ちくだ―――」

 

 

アカレラが何かを言い終わる前にジャンプする。頭の中に思い浮かべているのは、はやての部屋。一瞬で悠也の見ていた風景―ザフィーラの驚く顔―は消えて、次に目にしたのはシグナムとヴィータ、それにシャマルがはやてに指を指されて目を見開いている状態だった。

 

 

「あ、悠也……」

 

 

はやてが何かを言う前に、ザフィーラが扉を蹴り破る勢いで部屋に入ってきた音で遮られた。それに驚いたはやてがまた声を上げて、ヴォルケンリッターはわたわたと慌てる。

今度はカオスだ。

 

 

「なんなんこれ?」

 

 

慌てているヴォルケンリッターを睨む悠也を見て、はやては当然の事を口にした。

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