魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第十一話

 

 

シグナムたちが、はやての家族になって数週間が過ぎたある日の事。

封鎖結界の中で、悠也はアカレラを振って伸びてくる蛇剣を弾き落としていた。

どうしてこうなった。そう心の中で呟き、迫る銀の煌きをジャンプして避け今朝のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、悠也にも用意したで!」

 

 

元気に言って、はやてが取り出したのは画用紙に描かれた悠也だった。

九歳が描くには上手いと言えるそれは、確かに悠也が描かれているのだが恰好が普通とはかけ離れているものだ。

 

 

「こんなのどうしたんだ?」

 

 

「ほら、シグナム達には鎧?っていうの作ってあげたけど、悠也には何もなかったやん?だから、作ってみてん」

 

 

ニコニコ笑って悠也が描かれた画用紙をテーブルの上に置いた。

改めてそれを見てみると、今まで悠也が使っていたバリアジャケットとは違い、騎士の様だった。今まで悠也が使っていたのはピッチリとしたインナーに、幾重にもベルトが巻かれたズボン。そして、全身を覆うローブだった。

だが、画用紙に描かれているのは全然違った。

 

 

幾重にも巻かれたズボンには、膝上まで鎧が付け加えられている。腕には肘上までガントレットが、そして胸から胴にかけては軽鎧が。それぞれ銀で統一されているが、他は全て黒だ。最後に、ローブの名残と言っていい外套が腰から踵まで着けられていた。

 

 

「結構カッコイイな」

 

 

「せやろ。図書館行ってきて考えたんや!」

 

 

ぱぁ、と花が咲くように表情が笑顔に変わる。こんな笑顔を見せられれば、見せなければならない。テーブルに置いてあった新しいバリアジャケットが描かれた絵を見て、空中にディスプレイを展開した。

 

 

「アカレラ、現在のバリアジャケットは残しておいてくれるか?」

 

 

「勿論でございます。では、新たなバリアジャケットの登録をしますので、そのまま待っていてください」

 

 

空中に展開されているディスプレイに、今まで使っていたバリアジャケットが浮かび上がる。ズボンやインナーはそのままに新しいモノが加えられる。

ガントレット、膝上から爪先まである足鎧。そして胸から胴にかけての軽鎧。

数十分の時間を置いてディスプレイには、はやてがデザインした騎士甲冑が完全に再現されていた。

 

 

「よし、じゃあ庭に移動しようか」

 

 

「うん」

 

 

はやての乗る車いすを移動させてテラスに出ると、シグナムが剣を振っていた。

ザフィーラは狼の姿になって日向ぼっこをしていた。昨日は、はやてとヴィータもザフィーラに交じって日向ぼっこしていた。出会ってから短い間、シグナム達とは誤解も解けて仲良くなっている。特にザフィーラとは喫煙仲間という形でなかなか仲がいい。

ヴィータともだ。勿論、ヴィータが煙草も吸う筈もなく新しい妹が出来た感じだ。

 

 

「主はやて、騎士悠也。どうしたのですか?」

 

 

「悠也の新しい騎士服のお披露目や」

 

 

「ほぉ、騎士悠也の甲冑ですか」

 

 

騎士悠也、とは勿論悠也のことだ。これは悠也が強制したことではないのは確かなのだが、気づけばシグナムがそう呼んでいたのだ。理由を聞いてみれば「貴方は主はやてを幼い頃から守ってくれたのだ。それを騎士と言わず何と言えばいい?」と逆に悠也に問いかけてくる。ザフィーラも最初は騎士悠也と呼んでいたのだが、頼みに頼み込んで普通に名前で呼んでもらえた。だが、シグナムは変える気がないらしく諦めるしかなかった。

 

 

「んじゃ、やりますか。封鎖結界」

 

 

縦に長い封鎖結界が展開される。

 

 

「主はやて、少し離れましょう」

 

 

「どんなんなるかなぁ~」

 

 

少し離れた位置にはやてとシグナムが立ち、悠也は庭の真ん中に立った。

 

 

「アカレラ」

 

 

「起動キーはどうしますか?」

 

 

「ちょっとだけ変えよう」

 

 

首にかけている十字架をモチーフにしたネックレスを右手で握りしめ、胸の前に持ってきた。緊張はない。目を瞑り、イメージする。魔法で大事なのはイメージだ。

 

 

 

「我が望みは一振りの剣(つるぎ)。全てを切り伏せ、全てを守り、全てを救う剣。新たな力をこの手に!アカレラ、セットアップ!!」

 

 

「畏まりました」

 

 

瞬間、悠也が光に包まれる。そして、光が収まると新しいバリアジャケットに身を包んだ悠也がいた。それは、はやてが描いていた通りの恰好。騎士と言うのに相応しい騎士甲冑。

時代が違えば主に用意してもらった騎士甲冑を着こんだ本物の騎士に見えるだろう。

それくらい、はやてが描いた騎士服は悠也に似合っていた。

 

 

悠也は、シグナムのレヴァンティンによく似た剣(アカレラ)を振う。上から下に。その勢いを生かして、下から上への切り上げ。そして剣を水平にして音速をもって横に薙ぎ払う。

 

 

 

「うわ、かっこいいな~」

 

 

「…………」

 

 

それはまるで、剣舞だった。悠也本人は新しいバリアジャケットの確認だったが、まだ九歳のはやてには綺麗に見えていたのだ。だが、シグナムには違う様に見ていた。

 

 

「主はやて、私も剣を振っていいですか?」

 

 

「ほぇ?」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「え、えぇっ!?」

 

 

返事を聞く前に、既にバリアジャケットを展開してシグナムは飛び出していた。

それは、騎士として悠也と戦いたいから。それと、主が悠也のことを褒めるから。

少しの嫉妬心を孕んだシグナムは、自身の血が滾るのを隠そうともせずに悠也の眼前に立った。

 

 

「騎士悠也。新しいバリアジャケットを慣らしたいとは思わんか?」

 

 

「いや、別に自分でやっても」

 

 

「ヴォルケンリッターが将 烈火の騎士シグナム。参るッ!」

 

 

「話くらい聞けよっ!?」

 

 

こうしてシグナムと悠也は模擬戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レヴァンティン!」

 

 

「Ja!」

 

 

レヴァンティンが悠也を狙って振り下ろされる。が、悠也は紙一重でそれを躱す。

そしてアカレラがシグナムに襲い掛かるが、シグナムもレヴァンティンで防ぐ。

 

 

「落ち着けシグナム!」

 

 

「私は、落ち着いて、いるっ!」

 

 

話している内にも斬りかかるシグナムに、悠也は後ろに飛んで距離を取った。

いきなり斬りかかってくる奴が落ち着いている筈がない。ない筈なのだが、シグナムの剣は迷いを知らない。確実に悠也を殺しにかかってきているのだ。いくら非殺傷設定であろうとも、怪我はするし気絶もする。純粋な魔法ダメージ、砲撃ならまだしも実態のある剣で斬られれば斬られるのだ。

 

 

「どうした騎士悠也。貴方の剣ならば私を仕留めることが出来るだろう」

 

 

「いきなりどうした?」

 

 

眼前に剣を構えながらシグナムを睨みつけるが、本人はどこ吹く風と再び踏み込んだ。

シグナムはレヴァンティン振う。それはプログラムされてか、全てが必殺の一撃になる。

振う振う振う。防ぐ防ぐ防ぐ。

攻めるシグナムに、悠也は剣で受け、逸らし、紙一重で避ける。

 

 

「クソッ!」

 

 

悠也は埒が明かないと、シグナムの間合いに踏み込んだ。勿論、それは悠也も同じだ。

そこに必殺の一撃が振るわれる。が、悠也は何の前触れもなく消えた。

 

 

「なっ!?」

 

 

「気絶でもしとけ」

 

 

消えた悠也はシグナムの後ろに現れ、首をキュッと絞めていた。

意識を失ったシグナムを支え、近くにきていたザフィーラに預けバリアジャケットを解いた。

そして、胸ポケットから煙草を取り出してジッポで火を点けた。

 

 

「これはお仕置きかな?」

 

 

心配そうにシグナムを見るはやてを見て、悠也は煙を吐き出した。

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