魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第十四話

 

 

カーテンが受け損ねた太陽の光が、まだ夢の中にいる少女に降り注いだ。

煩わしそうに体を捻るが、直ぐに障害物に当たってしまい体制を戻した。当たり前の様に再び直撃する光。

 

 

「くっ……ふぅ」

 

 

 

八神はやては隣に温もりを感じた。それは、人の温もりで決して自分の横で涎を垂らして寝ている少女がプログラムではないと確信できるものだ。

口元の涎をティッシュで拭いであげ、肩まで毛布をかける。胸に抱いている「のろいうさぎ」が可愛らしい。

寝ているヴィータの頭を一撫でしたはやて。少し名残惜しそうに車いすに座る。

時刻は、八時を少し過ぎたくらい。リビングに降りると、開け放たれた窓から心地よい朝の少し冷たい風が肌を刺激する。

テラスにはザフィーラが悠也から貰った煙草を吹かし、その先にはシグナムが剣を振っていた。

 

 

ザフィーラの獣耳がピクッと動いて、私に気づいて煙草を灰皿で揉み消した。シグナムも、私に気づいてレヴァンティンを待機状態に戻した。

 

 

 

「おはようございます。主はやて」

 

 

 

「おはようございます。良い夢は見れましたか?」

 

 

 

「おはよ~シグナム。ザフィーラ、夢は見れへんかったけどヴィータの寝顔やったら見れたよ」

 

 

 

そう言うと、二人は呆れたようにため息を吐いた。

二人が言うには、ヴィータは守護騎士としての役目は覚えているのかと。

主が起きたのに自分はどうした?とか言ってるのだが、この二人もあまり変わらないのかもしれない。

 

 

シグナムは悠也が偶に持ってくる翠屋のモンブランケーキと生チョコの使われているケーキが大好きだ。それも、少しもくれないし黙々と食べてしまう。酷い時なんて悠也の近くに行って誰にも取られない様に食べる。

ザフィーラは悠也の好みが移ったのか、コーヒーと煙草が好きだ。

悠也と仲良くなる前は、私が朝、起きれば狼の状態で部屋に入ってきてリビングまで乗せてくれたのに、今日みたいにのんびりと煙草を吹かしていたりする。

今度、煙草を隠してみようかと思ったり……。

 

 

 

「あ、今から朝ごはん作るから待っといてな~」

 

 

 

「はい。ありがとうございます」

 

 

 

「何時もありがとうございます」

 

 

 

そう言いながらも、ザフィーラは私が座る車いすを押してくれる。シグナムは、また庭の方に出てレヴァンティンを振うみたいだ。

 

 

冷蔵庫を開けると、卵を五個取り出してレタスも四分の一のカットされたものを取り出す。

ザフィーラには、フライパンと油を取り出してもらった。

 

 

 

「ありがとザフィーラ。あっち行っててええで」

 

 

 

「わかりました。何かあれば呼んでください。文字通り、飛んで駆けつけます」

 

 

 

「ふふ、じゃあ怪我とかしたらアカンなぁ」

 

 

 

「えぇ。ですが、もし怪我を負ったとしてもシャマルが完全に癒してくれます」

 

 

 

「せやな。闇の書でも、参謀兼衛生兵?やもんな」

 

 

 

そう言って、はやてとザフィーラは気づいた。

 

 

 

「「シャマルは?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り、煙草を吹かしながら制服のポケットから鍵を取り出す。

今日は夕飯の用意が全く出来ておらず、さらには冷蔵庫の中身が無い。そういうわけで悠也は、はやての家に来ている。要するに、晩御飯をここに食べに来たというわけだ。

そして、玄関のカギを開けドアを開いた。すると、そこには八神家の姉役であるシャマルがシクシクと泣きながら正座していた。

 

 

 

「……なぜだ」

 

 

 

「ふぇ、ふぇ~ん。悠也君助けてぇ~~」

 

 

 

「…………なぜだ」

 

 

 

取り敢えず、足を指で弾いておく。

 

 

 

「足が、足があぁ~~!?」

 

 

 

足を押さえてピクピクしているシャマルを余所にリビングに入ると、はやてはザフィーラに乗っかってキッチンでご飯を作っていた。シグナムは新聞を読み、ヴィータはアイスを舐めながらゲームに夢中になっているようだ。

 

 

 

「よ、皆」

 

 

 

声を出すと、恐ろしいくらいに皆が一緒に顔をこちらに向けてきた。

 

 

 

「あ、ゆうや。こんばんは~」

 

 

 

「騎士悠也。足音を消して近寄ってこないでください。流石に心臓に悪いです」

 

 

 

「悠也、ゲームしようぜ!」

 

 

 

足音を消していた覚えが無いんだが……。それよりもシャマルの悲鳴で普通は誰か来たなって気づくもんじゃないのか?

 

 

 

「こんばんは。はやて」

 

 

 

「今日はどないしたん?まさか、ご飯でも食べに来たんか?」

 

 

 

ブレザーをハンガーにかけて、皺にならない様にかけておく。

 

 

 

「そのまさか。今日は冷蔵庫の中身が空っぽなんだ」

 

 

 

「なら、私にまかしといて。もう一人分作るくらいおちゃのこさいさいや!」

 

 

 

無い胸を張って、はやてはザフィーラと一緒に再びキッチンへ。

と、そこへシャツの袖を引っ張られた。下に視線を向けると、ヴィータが頬を膨らませている。

 

 

 

「さっきからゲームしようぜ!って言ってるのに無視しやがって」

 

 

 

「悪い悪い。じゃ、なにする?」

 

 

 

テレビの前に移動して、コントローラを引っ張り出す。

ディスクは大乱闘スマッシャー。あるゲーム会社の出している主人公格のキャラが使えるという、まさに大乱闘に相応しいゲームだ。因みに、このゲームじゃはやてに負けたことは無い。

 

 

 

「んじゃ、私は赤い豆な。しかも石付きで」

 

 

 

「それは反則だろ!?」

 

 

 

「そうしないと勝てないんだよ!」

 

 

 

既に何十回とした勝負だが、一対一では負けたことが無い。

一対二でもだ。流石に一対三では負けてしまう方が多いが。

さっきヴィータが選んだキャラは、石と呼ばれる特殊アイテムで必殺技を溜めも回数制限も全てなくしてしまう、まさに反則チートな代物だ。

 

 

 

「なら、俺は世界の金ぴかな」

 

 

 

「それも反則!」

 

 

 

どっちが先にやった?

 

 

「スタート!」

 

 

 

「あぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十分後。障害物も何もないエリアを選択したため、勝負が始まった途端に無数の剣が悠也の背後から現れてヴィータを襲う。対するヴィータも、その場から動かずに剣や弾丸や槍やら爆発物を飛ばして対抗していた。が、この必殺技の連続は簡単に見えて簡単じゃない。

ヴィータは、せいぜい数回コマンドを入れるだけで後は技を繰り出す方向にカーソルを向けていればいいが、悠也は所謂チートを使っている。それも、コントローラーで打てる性質の悪いものだ。かなり指が死ねる。それはもう、一回の勝負で指が攣るくらい。

第三者から見れば、この勝負は悠也が不利だ。しかし、この勝負は悠也の勝利だった。

 

 

 

「ところで、シャマルはなんであぁなってんの?」

 

 

 

「あ~、あれは昼まで寝てたからシグナムとザフィーラに怒られて正座させられてれる」

 

 

 

負けたからか、少し顔をしかめながら答えてくれる。それにしても、昼まで寝てたから正座とは。悠也だったらどれだけ正座しなければいけないのだろうか。

ヴィータにもう一回やろうとセガマレるのを、はやてがかけた一声で何とか切り抜け席に座る。

夕飯が出来たそうだ。ザフィーラも人間の状態に戻って席に座っている。なかなかカジュアルな格好だ。だが、椅子は一つ空いている。シャマルの席だ。

 

 

 

「しゃーない。俺が行くよ。皆は食べててもいいよ」

 

 

 

後ろから色々と聞こえるが、流石に一人だけを除いて食べることなど出来ない。

 

 

 

「なぁ、アカレラ」

 

 

 

「なんでしょう?」

 

 

 

「何時間くらい正座してたと思う?」

 

 

 

「およそ四時間程度かと」

 

 

 

修行した坊さんが出来る離れ業じゃないかそれ?

 

 

 

目の前には、家に来たときと変わらない体制でシクシク泣いているシャマルが正座していた

。取り合えず、足を指で弾いてみる。

面白いくらいに悲鳴にならない声を上げて悶絶するシャマル。

なかなか面白いではないか。

 

 

 

「ほら、ご飯できたって」

 

 

 

「立てません~」

 

 

 

「もう一発いっとく?」

 

 

 

「……立てませ~~ん!」

 

 

 

もう一発、指で弾いてみた。本当に面白いではないか。普段は少しドジな姉の様なシャマルが、今は足を指で触っただけで意味不明な声を上げる。

なんと面白いことだ。

 

 

 

「はぁ、動かないでくれよ?」

 

 

 

「は、はいぃ」

 

 

 

「鬼畜ですね。ご主人様」

 

 

 

「うるさいぞ」

 

 

後に、シャマルは悪魔がいたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい食事が終わり、食器を片づけ時計を見ると零時に近かった。

はやてとヴィータは、既に風呂に入ってベットの中だ。それも一時間か二時間前の話で、既に夢の中だろう。

シャマルも既にベットの中。あれは守護騎士でも中々に堪えたらしい。

シグナムも剣を軽く振って、今は湯船につかっているだろう。あぁ見えて、お風呂が好きらしい。因みに、はやてに聞いた。

 

 

 

「はい、これ新箱」

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

今、リビングにいるのは悠也とザフィーラだ。そのザフィーラは、悠也から煙草を受け取り

嬉しそうに尻尾を振っていた。もう、犬だな。

 

 

二人そろって煙草に火を点ける。制服に匂いが付くことなど気にしない。

後で香水でも振り掛ければいいことだ。

そうして、口から肺に煙が入り、肺から口へと煙が出てゆく。

吐き出される煙は紫煙。

心が落ち着いてゆく。

 

 

「幸せだなぁ」

 

 

二度目の不思議な人生。一人ぼっちだと思っていた不思議な人生だが、相棒のアカレラがいて

猫で家族なシオンがいる。それに、妹のような八神はやてとヴィータもいる。

照れ屋で少々バトルジャンキーなシグナムもいる。ドジな姉の様なシャマルもいる。

喫煙仲間で、防御面でも師匠の様なザフィーラがいる。

 

 

もう一度、呟く。

 

 

「幸せだなぁ」

 

 

 

だけど、こんな小さな幸せを打ち砕く様に、運命は回り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はやてッ!」

 

 

 

 

回る廻る。既に決まっているかのように進む運命は、悲しみに向かって進み始める。

 

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