魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第十五話

 

 

 

はやてが入院した。

 

 

 

この事実は、決して覆ることもなければ避けられる事ではなかった。

それに、この結果の原因は悠也、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。

五人にとっても身近なものだった。

 

 

 

   闇の書

 

 

 

正式な名前か、それとも誰かがつけた名前なのかすらわからない一冊の本。

それに、はやての体は蝕まれている。それは、死に至るまでに呪い。

悠也は八神家に来た時に知ったものではなく、一年半前に偶然に見つけたのだ。

が、解析しようにも知識がある筈がない。古代ベルカ式のデバイスであるアカレラでさえ知らない。そもそも、地球という限られた、それも魔法という文化が殆どない次元でこの知識を得ろと、ピンポイントに指定されても無茶という話だ。

確かに、悠也とアカレラは多かれ少なかれ魔法の知識を持っていた。

地球にも、遥か昔には魔術が存在した。世界を一瞬で自分の世界に取り込む魔術が存在し。小惑星を地球に落とす魔術が存在した。

魔女が存在した。吸血鬼が存在した。狼男が存在した。伝説の聖剣が存在した。

伝説の本が存在した。燃え盛る杖も存在した。天使と悪魔も存在した。世界の意思が王国を一晩のうちに滅ぼした話も存在する。英雄と呼ばれた王や半神半人も存在する。

悠也の様に、一瞬で空間を移動する人間も存在したのだ。例を挙げれば数えきれないそれは、全て本に記されていった。

 

 

 

遥か昔の事で、手に取った瞬間に塵と化した本も少なくは無いが、それが記されている本が実在する。

かつて、魔女狩りが行われた最中に魔女が残した本でさえ存在する。

バチカンの最下層にある本がそれだ。

 

 

 

なぜ悠也とアカレラが知っているかと言えば、過去に遡る。

知っている理由は至極簡単。潜り込んで、持ち帰って、解読した。

それに記されていた一部には、異国の風貌ではあるが主に仕え奇妙な魔術を使う最強の騎士がいたと記されていた。結局は滅ぼされた国なのだが。

 

 

 

話が逸れた。

 

 

 

悠也とアカレラが持つ知識を総動員しても、明確な解決結果は一つしか出てこなかった。

闇の書を破壊すれば守護騎士が消えてしまう。そればかりか、はやてがどうなるか解らない。だが、このまま残しておいては呪いに蝕まれて、はやては死んでしまう。

 

 

 

なら、ならどうするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Said シグナム

 

 

 

 

ただただ砂漠。見渡す限りの砂漠。そんな世界に、私とヴィータが居た。

 

 

 

 

「すいません主。我らヴォルケンリッターは命に背きます」

 

 

 

烈火の将・シグナムの動きは早い。主が死に瀕している。その理由を作ったのは誰か。

間違いなく私たちだ。本来なら呪いなど物騒なものは組み込まれて無かったはずの闇の書。

以前のシグナム達なら、間違いなく自身を犠牲にしてでも主の命を救うために本を消し飛ばす。

それをしないのは、優しい主をしったから。騎士たちの顔に、笑顔があったから。

第一、そんな事をしてしまえば悲しみ嘆き、泣いてしまうであろう我らが主はやてが安易に想像できたからだ。それに、騎士悠也が偶に持ってきてくれるケーキも食べれなくなってしまう。

思わず、口元が緩んでしまう。何を考えているのだろうか私は。

 

 

 

「どうしたんだよシグナム?」

 

 

 

「いや、少し考え事をな」

 

 

 

頼むぜ。とぶつくさ呟いているヴィータは、自身のグラーフアイゼンを振り下ろした。

そして動かなくなる、硬い皮膚に守られたカマキリのような生物。

ヴィータはそれに近づき、闇の書を片手にカマキリの体を貫いた。

数秒後には、ヴィータの掌の上には無色のリンカーコアがあった。

そして、そのリンカーコアは闇の書に吸収される。

 

 

 

「蒐集……………しょぼい」

 

 

 

埋まった項は、たったの五行。いや、これでも野生の魔法生物なら充分と言えるのだが時間が無いのだ。こく一刻と迫る主の死。

 

 

 

「行くぞヴィータ。早く収集を終えて帰らなければ、騎士悠也にバレてしまう」

 

 

 

「モンブランケーキが食べたいだけじゃないのかよ?」

 

 

 

ぐっ。確かに、モンブランケーキにはただならぬ魅力がある。私とて、好きなものがあるのだ。しかし、それは家族が居てからこその楽しみなのだ。

主はやてが居ない今では、そんなものは要らない。

 

 

 

「なら、アタシが食うからな」

 

 

 

「待て、騎士悠也から出された物を食べないわけにもいかない」

 

 

 

「結局は食いたいんじゃねーか」

 

 

 

「食べたいのではない。出されたものは食べなければいけないのだ。主はやてからも言われているだろう?ピーマン」

 

 

 

「ぅぐ」

 

 

 

分が悪くなったのを解ってか、ヴィータはあっという間に飛んで行ってしまった。

ヴィータも変わった。何が、とは言わない。ただ言えることは、アイツも……

 

 

 

さて、私も追いかけるか。これ以上この無人世界で離されては追いつけない。

そう思い飛び立とうとした時だった。右側から魔力の反応を感じたのは。

 

 

 

「…………」

 

 

 

そいつは真っ黒なフードを被って、二振りの剣を構えていた。

いきなり現れた魔力反応に驚くが、それは表面に出さない。それをしてしまえば、次の瞬間にはどうなるかがわかるから。

最初に抱いた感想は隙が無い。そして、隙がある。それが次に思い浮かんだ感想。

矛盾。わかっているとも。だが、目の前にいる奴のはその二つが存在していた。

腕をだらんと垂らした構え。一見、隙だらけに見えるが熟練した剣士は初動を一切見せずに剣を振う。その領域に達しているからこそ、その構え。なるほど、強い。

 

 

レヴァンティンを鞘に納めたまま右手で柄を握る。足を開き中腰に構える。力は適度に抜き、いつでも動ける状態へ。だが、目は常に敵へ。

 

 

 

「どうした。こんのか?」

 

 

 

「クッ、居合の構えの間合いに入る奴がいるなら聞きたいものだ」

 

 

 

奴の声は、何かを通している様な声だ。恐らく、風が吹いてフードが揺れても何故か見えない顔が原因だろう。魔法で顔を見えなくしているから声が誰のものかわからず、さらに自分は正体を明かさない。なかなか魔法の方も使えるか……?

 

 

 

「だが」

 

 

 

奴の声が変わる。

 

 

 

「退くわけにもいくまい」

 

 

 

だらんと構えた双剣を、右の剣を左脇に抱くように構え、左の剣は右肩に乗せた構え。

ほぅ、私の居合の構えを見て構えたのか。右の剣で私の居合を受け止め、左の剣で首を薙ぐつもりか?

 

 

 

なめるなよ

 

 

 

私の剣は剛。故に一撃。故に必殺。

 

 

 

さぁ、こい。一撃のままに剣をへし折り沈めてやろう。

 

 

 

奴が音を置き去りに踏み込んだ。

振われる双剣は、狂わず私の首を狙う。

 

 

 

「おおぉぉぉあああ!!」

 

 

 

鞘から抜いたレヴァンティンも狂わず奴の胴を薙ぐために振う。

が、それを予期していた右の剣。全力で振った剣と、それを遊撃の為だけに振われた剣。

どちらが勝つと言われれば、どちらも勝つ。

全力故の必殺。それを理解できていたからこその全力の遊撃。

なら、勝敗をわけるのは?

 

 

 

力、技、剣の耐久、経験。今回は、その経験が、力が、技がシグナムにとって圧倒的と言っていいほどに優位だった。

 

 

 

一瞬の拮抗を見せたレヴァンティンと奴の剣は折れることはなかったものの、剣ごと奴に当たり自分を傷つけた。そして、そのまま吹き飛ばした。

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

 

 

まさか、一撃でこれほど体力を消費するとは微塵にも思わなかった。

気づけば首からは血が溢れていた。すぐさま治療魔法をかけ、奴が吹き飛んだ方を見る。

確かな骨を折る手ごたえと共に吹き飛ばした筈なのに、奴は吹き飛んだ衝撃で発生した砂塵を魔力で吹き飛ばし最初と同様に双剣を構えていた。

しかし、奴もダメージを負っていた。被っていたフードはそのままだが全身を包んだローブは右脇から腰にかけて切れていた。

 

 

 

『ヴィータ』

 

 

 

『なんだよ!?』

 

 

 

戦闘中なのか、声には余裕はなかった。

 

 

 

『いや、すまない。そっちには行けなくなった』

 

 

 

呼吸を整え、状況を把握する。奴は……間違いなく強い。この不安定な足場で、音を置き去りにする超加速。そして双剣を扱う腕。間違いなく、本気で戦わなければ殺される相手。

 

 

 

『はぁ!?』

 

 

 

『すまない。切るぞ』

 

 

 

『おいっ!?』

 

 

 

悪いなヴィータ。念話なんぞしている時間はなくなってしまった。奴が動いたのだ。

私も、動ける。動脈に達していた傷は直した。奴も、広大な砂漠に血を吐き出した。

肋骨が肺に刺さっていたのであろう。だが、今は痛がるそぶりも見せない。奴も回復魔法が仕えたのだな。

 

 

 

「我が名は烈火の将・シグナム!そちらの名を知りたい!」

 

 

 

これ程の相手だ。名を名乗り、名を聞いても損は無い。

が、これが間違いだったと、隣で私と一緒に正座しているヴィータと一緒に恨めしそうに目の前に置かれたモンブランケーキと溶けかかってきたアイスを見て過去の自分に言ってやりたい。そして悶絶してるシャマル。そして、とても、とってもいい笑顔をしている彼を視界に入れない様にモンブランケーキに集中する。集中するッ!

 

 

 

 

「俺か?俺は」

 

 

 

フードを取り、見慣れた顔が現れ目を見張った。そして、何故と声が出そうになって彼の顔を見て体が固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Said 悠也

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの鈍痛に顔を歪めながら、そして最ッッ高に!いい笑顔をしながらシグナムを睨み付ける。

 

 

 

「お前たちのお叱り役の神崎悠也」

 

 

 

さぁ、お仕置きの……お叱りの時間だ。

 

 

 

「大人しく帰ろうか」

 

 

 

おいおい、どうしたシグナム。なんで、そんなに体を縮こまらせて兎の様になってんだ?

思わず、その可愛さに苛めたくなるじゃないか。

 

 

 

「ご主人様。騎士シグナム達は決して悪気があってやったわけではないのですから、少しは加減して上げてください」

 

 

 

「無理」

 

 

 

「しかし」

 

 

 

「はやてが入院してから三日経ってシグナムとかヴィータが塞ぎ込んでないかな、って思ってケーキとかアイスとか大量に買い込んだのに家に着いたら明らかにおかしいシャマル。

問いただしても教えないシグナムとヴィータの居場所。しかも、はやてが倒れた日にやってた話し合い。考えれば考える程に決まる答え。バインドして無理やり正座させてシャマルに吐かせたら。なに、砂漠で蒐集してます?はやてに言わず?俺に言わず?心配してるのに、楽しそうにカマキリみたいな化け物を斬ってイキイキして?水に入れた魚みたいに?

え?俺の心配って何?はやての心配って何?」

 

 

 

目の前でオロオロしてるシグナムは「あの」とか「ですが」とか言ってる。

取り敢えず、ポケットから取り出した煙草に火を点ける。

あぁあ、やっと吸えた煙草。一日目に続き二日目も病院で入院しているはやての傍にいて、二日目も傍にいて、三日目に着替えを取りに行ってシオンにご飯を食わして、そしてシグナム達の昼食と夕飯を作らなきゃいけないな。なんて考えて家に着いたら居ないわ、蒐集してるわ。はやても心配して帰りたいって言ってるから俺が行ったらいない?

 

俺とはやての心配を余所に?

 

 

 

アカレラ。俺と対峙した瞬間に笑顔を浮かべたシグナムに手加減なんているのかな?

 

 

 

「……騎士シグナム」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「諦めてください」

 

 

 

「ひぅっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Said ヴィータ

 

 

 

 

 

 

目の前のモグラみたいな化け物をブッ飛ばして、急いで蒐集する。

 

 

 

「シグナム!」

 

 

 

既に念話は通じなくなっていた。けど、最後の念話の後に一回だけ聞こえた声。

 

 

 

『ひぅっ』

 

 

 

シグナムからは到底、これっぽっちも想像がつかない怯えた声。

その声がアタシを焦らせる。あのシグナムが、怯えた声を出すなんて相手はいない。

例え格上であっても、自分の誇りが折れるまで戦った彼女からは怯えた声は出なかった。

あれ?なんでアタシはそれを知ってんだ?

 

 

 

けど、今はそんなことはどうでもいい。はやく、速くシグナムの元へ行く。

あの時アタシが一緒に移動していたら、こんな事にはならなかった。

後悔は遅い。けど、シグナムだって弱くない。それでも、速く行かなきゃいけない。

 

 

 

見つけた。

シグナムはペタンと座り込んでいる。その体面にいる、体格からして男はアタシに背中を見せている。

 

 

 

「おい!?シグナムに何したんだ!」

 

 

 

グラーフアイゼンで殴り掛かったけど、あの男は背中に目があるのかと思うくらい正確に剣で防いでいた。けど、よく見りゃ罅が入っている。ハッ!そんな状態の剣でアタシのアイゼンを防げると思うな!

 

 

 

「カートリッジローッ!!?」

 

 

 

男が振り向いた。

 

 

 

「よぉ」

 

 

 

殺気も何もない。無い筈なのに、体が委縮する。

 

 

 

「ヴィータ」

 

 

 

そこには、一度しか見たことない笑顔の悠也がいた。

 

 

 

「お仕……お叱りの時間だ」

 

 

 

た、助けてはやて!!

 

 

 

「ひぅっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Said―――

 

 

 

 

 

 

 

 

あの灼熱地獄で、汗は全て蒸発したものの体は気持ち悪かったのでシャワーを浴びた。

それはシグナムもヴィータも一緒だ。

 

 

 

「さて」

 

 

 

悠也の言葉に肩を震わせる二人。ザフィーラは知っていたものの、実行犯じゃないから煙草を没収した上に病室ではやての許しがでるまで正座。はやてなら十分もすれば許してくれるだろう。

だけど、悠也は許さない。許さないったら許さない。

シャマルはもういい。十分に遊べたし。今はソファでコーヒーを飲んでるけど、ついさっきまではビクビク悶絶して「足が取れちゃいます!」とか言ってたし。

 

 

 

「どうしてくれよう?」

 

 

 

「いや、勝手に蒐集しに出かけたのはアタシ達が悪かったんだろうけどさ、ここまで怒る必要はなくないか?」

 

 

 

「ヴィータの言う通りだ騎士悠也。あのまま続けていれば両方、無傷とはいかなかった」

 

 

 

「だから、自分たちは悪くないと正当化するのか?」

 

 

 

確かに、やりすぎた感じもある。何度も意味不明な場所にジャンプしてストレスがバカにならないほどに高まっていたことも相まって、魔力でブーストしてまで攻撃する必要は無かった。

だが、シグナムの居合の構えを見た瞬間に、このまま突っ立ってても何れは間合いに踏み込まれて殺される。なら、全力で必殺の一撃を遊撃して気絶させて連れ帰ろう。

そう思っていた。そう思っていたけど、結果は吹き飛ばされ肋骨を三本もへし折られ、内二本が吹き飛ばされ着地した瞬間に肺に刺さった。

 

 

 

あ~、これは止められないな。そう思っていたとこでシグナムが名乗りを上げた。

これが無ければ、間違いなく死闘が始まっていただろうし、怪我では済まなかったかもしれない。

けど、悠也には言いたいことがある。

 

 

 

 

「なぁ」

 

 

 

「…………はい」

 

 

 

「俺が怒ってるのは蒐集に行った事でもないんだ」

 

 

 

そう、怒っている理由は一つ。

 

 

 

「なんで俺に何も言わなかったんだ?言ってくれればリンカーコアなんていくらでも差し出す」

 

 

 

 

どうして何も言わずに飛び出していったんだ。と言う事だ。せめて一言だけでも声をかけてくれれば喜んで蒐集を手伝った。よろこんでリンカーコアを差し出した。それに心配もした。

勿論、シグナムとヴィータの戦闘能力は知っている。知っていても、身近な、家族の様に大切な人達は心配なのだ。

 

 

 

「俺の大切なものは魔法でも何でもないんだ。はやても含めて俺の身近な人が大切なんだ」

 

 

 

シグナムとシャマルが目を見開いた。

 

 

 

「それは、私たちもですか?」

 

 

 

「そりゃな。シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。出会ってからの時間は短いかもしれない。けど、俺にしちゃ大切なもんなんだよ」

 

 

 

出会いは最悪だった。けど、それから一緒に過ごした時間は最高のものだった。

もう、悠也にとっては忘れることが出来ない思い出。大切な家族な様な物。

 

 

 

 

「あぁ、そうか。俺は―――――」

 

 

 

 

悠也は座っていた椅子から立ち上がり、リュックサックを持ってリビングから出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Said 家に残された騎士達

 

 

 

 

 

悠也が呟くようにして出て行ったのを何も言えずに見送ってしまった。

だが、それを止められることは出来なかった。悠也の顔が、何かを悟った様な。そんな表情だったからだ。

 

 

 

「ねぇ、私達の大切なものってなに?」

 

 

 

「それは……主はやて」

 

 

 

「けど、悠也も大切だ」

 

 

 

前の私たちなら大切なものは?

と言われれば主はやて。そう直ぐに答える事が出来た。

だけど、今は違う。優しい主はやてが好きだ。そんな優しい主を支えてくれて、何時も我らヴォルケンリッターにも優しく接してくれる悠也。守るものが増えてしまった。そうシグナムは思う。

なら、悠也も私たちを守るものとして見てくれているのだろうか?

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

「む、どうした?」

 

 

 

「シグナム、顔に出てるわよ」

 

 

 

シャマルはおかしそうに笑いながら、コートを羽織った。それから、シグナムとヴィータの分の上着も持ってきた。

 

 

 

「早く行かないと、悠也君が許してくれないかもね」

 

 

 

「それは駄目だな。早く行かないと」

 

 

 

シグナムもコートを羽織、ヴィータにも子供用のコートを渡そうとして固まった。

視線の先には、アイスを食べ終え今にもモンブランケーキにフォークを刺そうとしているヴィータの姿があったからだ。

 

 

 

「ヴィータ!」

 

 

 

「早いもん勝ち!」

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