光と共に煙が舞う。それは、さっきヴィータが白い少女を追い詰めていた場所だった。
「新手、か」
さっきビルに突き刺さる様にして落ちて行った金色の髪の少女。それを見て、直ぐに駆けつけようとしたザフィーラだが、目の前の同じ狼を素体にした使い魔に邪魔をされていた。
「行かせやしないよ!」
守護獣と使い魔の素体は狼。狼は群の上位に位置する存在に従う。ザフィーラは主はやて。
アルフはご主人のフェイト。二人が争う事など、これだけで十分だった。
主の邪魔をさせないこと。
「私はザフィーラ。盾の守護獣だ」
「アタシはアルフ」
無言のまま二人は睨み合う。そして
「オオオォオ!!!」
「ハアアアァ!!!」
二人の拳がぶつかり合った。
ザフィーラとアルフが戦闘に入った頃、なのはとユーノは結界の端にいた。
そこには、ユーノの上着を枕にして寝転んでいるなのはがいた。まだ立つにはダメージが抜けきっていないのだ。
「なのははここにいて」
ユーノはそう言うと、なのはを中心に魔法陣を展開した。回復用の魔法陣だ。
「……うん」
痛みとダルさが少しずつ楽になるのが気持ちいのか、なのはの返事は遅い。
が、その視線の先にはフェイトとヴィータがいた。
「駄目だよ、なのは。ここにいて、クロノ達を待ってて」
そう言い残して、ユーノはアルフがいる方向に飛んで行った。
なのははそれを見ていることしか出来なかった。
「私は……」
ヴィータはアイゼンを振う。が、それは掠りもしないでフェイトに躱され、体制を崩したヴィータにバルディッシュを振う。だが、フェイトの攻撃はシールドに防がれた。
「キリがねぇ」
ヴィータの呟きはもっともだった。さっきから攻撃しては躱され、攻撃されても防ぐ。
相性が悪い、とも言える。高速戦闘が得意なフェイトに対して、ヴィータは一撃必殺。
当たらない攻撃と、与えられないダメージ。戦闘は一つの境目を迎えていた。
「フォトンランサー」
「Photon Lancer」
フェイトの周りに黄色の魔力球が浮かび上がり、ヴィータに殺到する。
「ハッ、そんなん当たるかよ!」
それを悉く躱し、撃ち落とす。そして、ヴィータは前へ出ようとして体を空間に縛り付けられた。手足に形成されていた設置型のバインド。逃げようにも逃げられない強力なバインドだ。
何とか魔力を放出して逃げようとするが、目の前に在る魔力刃がそれを許さなかった。
「これで終わりだよ。武装解除して」
「誰がするかよ!」
「なら、しかたないね」
フェイトはバルディッシュを持っている方とは逆の手をヴィータの首に当てた。
フェイトは魔力を雷に変換できる能力を持っている。それは幼い頃から持っていた力で、今では人を気絶させる程度に手加減も出来る。
「クソッ」
「大丈夫。気絶するだけだから」
フェイトの手に魔力が集まり始めた。バインドはビクともしないし、数秒もすれば気絶させられてしまう。
「(このまま捕まるくらいならッ!?)」
一気にリンカーコアを暴走させてしまおう。それなら時間はいらないし、運が良ければバインドから抜けられる。だが、メリットがあるならデメリットだって当然ある。失敗すれば体の内側から魔力が弾けて消し飛んでしまう。
だが、やらないとりはマシだ。
「はやて……悠也」
リンカーコアを暴走させようとした時だった。聞こえるはずのない声が聞こえたのは。
そして、首筋に冷たい感触を覚えたのは。
「呼んだか?」
「まったく。主に迷惑をかけるなヴィータ」
銀に光る剣と、黒い剣が正面からフェイトに向かって突き出されていた。
正面、と言うのだからヴィータの首筋に当たるか当たらないかギリギリのラインで突き出されていたのだ。
「危ないっ!?」
ヴィータの叫びは、目の前に展開されたシールドに魔力刃が当たる音で?き消された。