魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第二十四話

 

 

 

 

 

次元空間航行艦船アースラでは、嘱託魔導師フェイト・テスタロッサとその使い魔アルフ。

そして、民間協力魔導師の高町なのはとユーノ・スクライアが撃墜された事で警戒態勢を取っていた。

常に武装隊員が控室かブリーフィングルームに待機している状態だ。

さらに、ブリッジでは一つのマンションを監視していた。

 

 

 

 

「艦長代理。書類です」

 

 

 

 

「艦長って仕事してたんだ……」

 

 

 

 

執務室では、エイミィが目の前に積み上げられた書類の高さに引きながらも手元の書類にハンコを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠屋ではなく、高町家の道場でリンディ・ハラオウン艦長とクロノ・ハラオウン執務官が高町士郎と向かい合っていた。

その士郎の傍らには、鞘に入った二振りの小刀が置いてある。

 

 

 

 

「私は管理局所属のリンディ・ハラオウンです。こちらが」

 

 

 

 

「同じく管理局所属のクロノハラオウンです」

 

 

 

 

名刺と、自分のIDカードを二人の前に出した。二人とも、だ。

 

 

 

 

「今回、なのはちゃんが怪我をしたのは私たちの不手際です。申し訳ありませんでした」

 

 

 

 

「執務官の僕が判断を誤り、怪我をさせてしまいました。申しあけありませんでした」

 

 

 

 

正座をした状態で、床に手を着いて頭を下げた。

数秒か、それとも数分間経ったかもしれない。

沈黙が道場を支配していた。

 

 

 

 

 

「頭を上げてください」

 

 

 

 

その沈黙を破ったのは士郎だった。

二人が顔を上げて見た士郎の表情には、厳しくも優しい表情があった。

 

 

 

 

「なのはは大丈夫なんですね?」

 

 

 

 

「はい。今は眠っていますが、一度 目を覚ましました」

 

 

 

 

「今もアースラの精鋭医療班が付いています」

 

 

 

 

「そうですか」

 

 

 

 

安堵の息を吐く士郎に対し、リンディとクロノも息を吐いた。二人とも緊張していたのだ。

なにせ、目の前にいる士郎が纏っていたのは殺気や怒気だ。戦場に居るかのような錯覚に陥るのだ。だが、次の士郎の一言で冷や汗をかいてしまう。

 

 

 

 

「二人がこうでよかったよ」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「もし、二人が違う要件を先に聞いていたら利き腕は貰ってたよ」

 

 

 

 

「あ、あはは」

 

 

 

 

乾いた笑い声しか出ないリンディとクロノを余所に、士郎は妻の桃子から人数分のお茶を受け取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Saidクロノ

 

 

 

 

場所は変わって、翠屋でクロノはコーヒーをちびちびと飲んでいた。

母のリンディは士郎と奥の部屋で話している。

時刻は既に四時を過ぎていた。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

目の前には甘さ控えめのコーヒーケーキ。コーヒー片手にコーヒーケーキを食べる。

なかなかシュールなのではないのだろうか。

 

 

 

 

「(……誰か助けてくれないかなぁ)」

 

 

 

 

店の端っこにある席に座っているのに、周りの女性客からの視線が厳しい。厳しいというよりも、見られている。チラチラと見る女性もいれば、ジッと見てくる女性もいる。

僕が何をしたんだよ。

 

 

 

クロノの服装は特徴的な執務官の制服だ。周りから見れば、コスプレしている様に見えてしまう。

 

 

 

 

忙しそうに働いている桃子さんを目で追いかけながら、頭の中で違う事を考える。

昨日の夜。フェイトとなのはが一度だけ目を覚ました。

フェイトは、寝ぼけて傍で寝ていたアルフの耳を噛んでまた寝たけど、なのはの方は酷かった。

起きて自分がどこにいるか解ると、直ぐにある友達の所に行こうとした。

だが、直ぐに医療班に軽く怒られた後にベッドに戻されていた。その後も、僕と母さんが医務室に行くまでに、それは五回も繰り返されていたらしい。

 

 

 

 

「(名前は……神崎悠也。歳は十四歳で中学二年生。身長は165cm程度。容姿は日本人特有の黒髪黒目で、髪は少し長いくらい……か)」

 

 

 

 

これって普通の中学生じゃないか。いや、闇の書の主の時点で最悪だ。魔力量もAAランクあるし、謎のレアスキルもある。

闇の書が完成すると一つの世界を破壊できる力がある。

必ず、完成を阻止しなくちゃいけないものだ。

 

 

 

 

「あら悠也君。いらっしゃい」

 

 

 

 

「こんにちは桃子さん」

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

思わず声を出しそうになったのを、なんとか止める。

そして視線をカウンターに、自然に近い形で向けると、一人の少年が楽しそうに桃子と話していた。日本人特有の黒髪で少し長め。そして、学校帰りだから着ている学ラン。

そしてさっき桃子が少年の事を『悠也』と呼んだこと。

 

 

 

 

「……S2U、記録開始だ」

 

 

 

 

一枚の黒いカードを取り出して机に置く。クロノの杖型デバイスの待機状態だ。

そしてクロノも、さりげなく会話に耳を傾ける。もう目で見ようなんて大胆な事はしない。仮にも、彼は闇の書の主なのだ。

 

 

 

 

「今日はどれにするの?」

 

 

 

 

「え~っと、苺のショート三つと、モンブランと、生クリームの乗った大人のプリンと、レアチーズとガトーショコラで。あ、あとコーヒー豆十キロください」

 

 

 

 

「あら、もうなくなったの?」

 

 

 

 

「友達がコーヒー好きで」

 

 

 

 

「そう。ちょっと奥の方に豆が合った筈だから……」

 

 

 

 

「そんな目で見ないでください。士郎さんに怒られますよ」

 

 

 

 

「ふふ。お願いね」

 

 

 

 

そこで会話は終わった。S2Uにはそのまま記録を続行させて、クロノは視線をカウンターに向けた。

 

 

 

 

「(いない!?)」

 

 

 

 

つい数秒前にいた場所にいない。慌てて席を立ちあがろうとしたが、直ぐに背もたれにもたれ掛った。

彼はカウンターに置いてあるケーキを取っていたのだ。

 

 

 

 

「いやいやいや、おかしいだろ」

 

 

 

 

だが、これで話は聞けるようになった。

無断で店の商品を箱に入れているのだ。犯罪だ。

S2Uを胸ポケットに入れ、クロノは席を立とうと足に力を入れそこなった。

 

 

 

 

「ごめんね悠也君。はい、これ五キロ増しよ」

 

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

店員である桃子がフレンドリーにしているのだ。いかに親しい人でも他人は他人だろう?

そう問いかけたいクロノだったが、次の瞬間には手を前に出していた。

 

 

 

 

彼がクロノを見て口角を上げたのだ。

 

 

 

 

「それじゃ、帰ります」

 

 

 

 

「また来てね」

 

 

 

 

少し呆けていたクロノだったが、直ぐに立ち上がり彼が出て行ったドアを開けた。

 

 

 

 

「いない!?」

 

 

 

 

翠屋の前の道は住宅街なので見通しはいい。一本道と言ってもいい。

だが、どこにも彼はいなかった。

手に持っていたS2Uをまたポケットに戻す。

 

 

 

 

これで何回目の戦闘態勢だ。

 

 

 

 

『クロノ。彼がマンションに帰ったみたい』

 

 

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

 

翠屋に戻ろうとしたクロノは、突然リンディからの念話に声が裏返った。

 

 

 

 

Said Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓から夕日が見える。

悠也は自分の部屋にいた。

 

 

 

 

「アカレラ」

 

 

 

 

「見られていますね。恐らく管理局でしょう」

 

 

 

 

「恐らくも何も、確実だろ」

 

 

 

 

さっき見た黒い服の少年。肩の装飾品は特徴的過ぎて、自分が管理局員と言っているようなものだ。

 

 

 

 

「シオン~~」

 

 

 

 

「にゃ~」

 

 

 

 

悠也の目的は、シオンだ。なのはを撃墜したのだから、この家は当然見張られている。

悠也は家に帰ることが難しくなる。なら、自分が食べるご飯も用意できない家族はどうなるのか。餓死してしまうだろう。

 

 

 

 

「ちょっとの間だけここに入っててくれ、な?」

 

 

 

 

「に~」

 

 

 

 

足にすり寄っていたシオンを抱えて、お散歩バッグに入れた。そして、少し大きめのバッグをクローゼットから取り出して可愛くらしく『しおん』と彫られた皿を入れる。

洗面所からはシオンのトイレを持ってくる。なかなか大きいが、バラせば問題ない。

 

 

 

 

「行くぞ」

 

 

 

 

「にゃっ!」

 

 

 

 

お散歩用バッグから顔を出していたシオンを抱きかかえるようにして、悠也はジャンプした。部屋に残ったのは、まるで泥棒に荒らされたみたいに散らかっていた。

 

 

 

 

 

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