魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第三十一話

 

 

 

 

建物を揺らす轟音に、はやては目を覚ました。

 

 

 

 

「なん……や」

 

 

 

 

飾ってあった写真が倒れ、花瓶は床に落ちて割れていた。

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

体を襲う寒気と、呑み込まれそうになる闇に、はやては頭を押さえた。

そして、体がバラバラになりそうな胸の痛みに、はやての意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

屋上では、シグナムとシャマルが着ていた服がそのまま残されていた。触ればまだ温かみのあるだろう服は、そこで起きている異常を物語っていた。

 

 

 

 

「あの三人は……なのはとフェイトの二人は大丈夫か?」

 

 

 

 

二人の仮面の男の目の前には、砕けた右のガントレットから見える骨と血を流しているザフィーラが横たわっていた。そして、その後ろには気を失っているヴィータをバインド縛って浮かしていた。

 

 

 

 

「四重のバインドにクリスタルケージだ。脱け出すには数分かかる。あの騎士も、魔法を失った状態でビルに突っ込んだ。致命傷だ」

 

 

 

 

「舞台は、整った」

 

 

 

 

「あぁ、舞台は整った」

 

 

 

 

二人はカードを取り出し、振った。

 

 

 

 

 

「闇の書の主……目覚めの時だ」

 

 

 

 

一瞬で容姿が変わり、一人はなのはに。

 

 

 

 

「いいや……因縁の、終了の時だ」

 

 

 

 

そしてもう一人はフェイトに。

 

 

 

 

目の前に魔法陣が展開される。そこには、胸を押さえたはやてが転送されてきた。

 

 

 

 

「なのはちゃん……フェイトちゃん……」

 

 

 

 

驚愕に目を見開いているはやての目の前には、二時間以上も前に帰った筈のなのはとフェイトがバリアジャケットを展開している。

 

 

 

 

 

「なんなん……なんなんこれ?」

 

 

 

 

だが、なのははその質問には答えずに、主役を舞台に上げた。

 

 

 

 

「君は病気なんだよ。闇の書の呪い、って病気」

 

 

 

 

「もうね、治らないんだ」

 

 

 

 

「え……え?」

 

 

 

 

笑顔で話すなのはとフェイトは怖く、はやては力の入らない手で後ろに下がろうとした。

だが、何かに阻まれたように、魔法陣からは出れなかった。

 

 

 

 

「闇の書が完成しても、助からない」

 

 

 

 

「君が救われる事は無いんだ」

 

 

 

 

友達から言われた事は、はやての胸を抉った。

 

 

 

 

「そんなん……そんなんえぇねん」

 

 

 

 

引き裂かれる様な胸の痛みを抑え、絞り出すように発した声は震えている。

 

 

 

 

「ヴィータを離して」

 

 

 

 

目の前に、まるで十字架に張り付けられた様に浮いているヴィータ。

 

 

 

 

「ザフィーラに、なにしたん」

 

 

 

 

飛び出た骨。そして水たまりになっている赤い血。

 

 

 

 

「はよ、治したらなあかんから……離して」

 

 

 

 

「この子たちね、もう壊れちゃってるの。私たちがこうする前から」

 

 

 

 

「とっくの昔に壊された闇の書の機能をまだ使えると思い込んで、無駄な努力を続けてたの」

 

 

 

 

「無駄ってなんや!……シグナムは、シャマルは」

 

 

 

 

無駄なわけが無い。シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、私を助けてくれた。

例えそれがプログラムであろうと、四人は家族だ。

 

 

 

 

フェイトの視線が、はやての後ろに向かった。それを追いかけるように、はやては振り返った。

 

 

 

 

 

「う……そ」

 

 

 

 

そこにはシグナムが着ていた服と、シャマルが着ていた服が置いてあった。服が人を通り抜けたかの様に、それは人の形を作っていた。

 

 

 

 

「壊れた機械は、役に立たないよね」

 

 

 

 

「だから、壊しちゃおう」

 

 

 

 

「や、やめ、止めてぇ!!」

 

 

 

 

なのはとフェイトは手にカードを持っていた。光輝く、怪しいカード。

 

 

 

 

「止めてほしかったら」

 

 

 

 

「力ずくで、どうぞ」

 

 

 

 

妖しく笑う二人。

 

 

 

 

「なんで、なんでそんなんすんねん!」

 

 

 

 

ぼやける視界の中、はやては前へ進む。服が汚れるのも気にせず、ただ家族を求めて。

 

 

 

 

「ねぇ、はやてちゃん……」

 

 

 

 

「運命って、残酷なんだよ」

 

 

 

 

「だめ!やめて、やめてぇええ!!」

 

 

 

 

振り下ろされたカードと手が、ヴィータに当たる瞬間、青い影が間に入った。

ざふぃらーは、砕けていない左のガントレッドでカードを受け止め、骨の飛び出している腕で手を受け止めた。

 

 

 

 

「やらせん!!」

 

 

 

 

だが、カードが光を増しガントレッドを切り裂いた。

 

 

 

 

「邪魔だよ」

 

 

 

 

既に右腕は斬り飛ばされ、もう一度振りかざされていた。

 

 

 

 

「お逃げください!主はやて!!!」

 

 

 

 

「ザフィーラ!!」

 

 

 

 

べしゃ、と何かが落ちた音を聞いたはやてはそれを見た。

 

 

 

 

「ぁ……」

 

 

 

 

瞬間、はやての足元に展開される筈のない白いベルカ式の魔法陣が浮かび上がった。

そして、目の前には闇の書が。

 

 

 

 

「Guten morgan,Meister」

 

 

 

 

白い魔法陣は、不気味な色を放つ黒い魔法陣へと変化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はやてちゃん!」

 

 

 

 

「はやて!」

 

 

 

 

魔力を高め、術式を破った二人は直ぐに屋上に転送されたはやての名前を呼んだ。

だが、それは届くことがなかった。

 

 

 

 

 

「ぁ……あぁ……あ、あああ、アアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

溢れ出る魔力に、仮面の男はニヤリと計画の成功を喜びながらも距離を取った。

これから起こる事は、世界を一つ吹き飛ばすことの出来るものだ。そして、我らの悲願。

 

 

 

 

「我は闇の書の主なり……この手に、力を」

 

 

 

 

赤く染まった瞳。その手には闇の書がある。

 

 

 

 

「封印、解放」

 

 

 

 

「Liberation」

 

 

 

 

闇の書から発せられた煙は、はやてを包みこんだ。そして、はやての体は急成長した。子供から大人に。そして髪の色は茶色から銀色に。四肢にはベルトが巻き付き、所々金色の線が走っている黒い騎士服を纏った。頭には小さな黒い羽が生え、背中には堕天使の様などこまでも黒い翼が存在していた。

 

 

 

 

それは、はやてとは余りにも、かけ離れている存在だった。

 

 

 

 

「また、全てが終わってしまった。…一体幾つ、こんな悲しみを繰り返せばいい」

 

 

 

 

「はやてちゃん!」

 

 

 

 

「はやて……」

 

 

 

 

「我は闇の書」

 

 

 

 

涙を流しながら、しかし、それを気にも留めずに闇の書に手を翳す。

 

 

 

 

「我が力の全ては……」

 

 

 

 

「Diabolic Emission」

 

 

 

 

闇の書が光り輝き、そしてその手には圧縮されて音が鳴っている魔力が膨らんでゆく。

 

 

 

 

「主の願いを、そのままに……ディアボリック・エミッション」

 

 

 

 

五メートルは超えている魔力球が直上に打ち上げられた。

 

 

 

 

「空間攻撃……!」

 

 

 

 

「Round Shield」

 

 

 

 

なのははフェイトの前に出た。そうしなければ、フェイトが落ちてしまうからだ。

 

 

 

 

「闇に染まれ」

 

 

 

 

「くぅっ……」

 

 

 

 

「なのはっ!」

 

 

 

 

二人を闇が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

離れた位置で、闇の書の戦闘を見ている二人の仮面の男は一枚のカードを手に持っていた。

 

 

 

 

「もつかな、あの二人」

 

 

 

 

「暴走開始の瞬間まで、持ってほしいな」

 

 

 

 

油断した瞬間、バインドが二人を縛り上げた。

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

「これは!」

 

 

 

 

「ストラブルバインド」

 

 

 

 

「相手を拘束しつつ、強化魔法を無効化する」

 

 

 

 

それは、こちらにくる瞬間までアースラから送られていた情報を見ていたクロノの一撃だった。

なのはとフェイトに変身したし、神崎悠也を蹴ったあの一撃も普通の人間が出せる力ではなかったから、使った魔法。

 

 

 

 

「余り使いどころのない魔法だけど、こういう時には役立つ」

 

 

 

 

S2Uの柄を、床に叩き付けた。

 

 

 

 

「変身魔法を、強制的に解除する」

 

 

 

 

仮面の男は女性に変わり、サイズの合わなくなった仮面が転がり落ちる。

現れたのは猫を元にした使い魔。クロノの魔法と体術の師匠であるリーゼアリアとリーゼロッテだった。

 

 

 

 

「クロノ、このぉ」

 

 

 

 

「こんな魔法、教えてなかったんだがなぁ」

 

 

 

 

「常に精進しろと言ったのは、君たちだろう。アリア、ロッテ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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