魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第三十三話

 

「ハアアァァ!!」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

フェイトは、闇の書の意思とぶつかり合っていた。闇の書の意思が持つデバイスは剣と本。

血の付いた剣は一撃一撃が重く、早く、一瞬でも気を抜けば落とされてしまうかもしれない戦いだ。だが、フェイトにはこれしかなかった。最初に闇の書の意思が放った、あの空間攻撃。

離れれば、一方的に落とされる。それに、時間稼ぎの目的もある。

 

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

「ふぅっ!」

 

 

 

 

ユーノから、鎖型のバインドが放たれ闇の書の意思の足を絡め捕った。

そして、アルフが剣を持つ腕をバインドで拘束した。

 

 

 

 

「……砕け」

 

 

 

 

「Breaker」

 

 

 

 

だが、それも一瞬のこと。次の瞬間には、バインドは跡形もなく消された。しかし、その一瞬は無駄ではない。

 

 

 

 

「Plasma Smashe」

 

 

 

 

「ファイア!」

 

 

 

 

フェイトの砲撃を溜める一瞬を生みだし。

 

 

 

 

「Divine Buster Extension」

 

 

 

 

「シューート!」

 

 

 

 

なのはのシールドを貫通する砲撃を溜める時間を生み出した。

 

 

 

 

桃色の閃光と金色の閃光。その砲撃は、狙い道理に、なのはとフェイトの間に居る闇の書の意思に向かって放たれた。

 

 

 

 

「盾」

 

 

 

 

「Tank Shield」

 

 

 

 

だが、その一撃は闇の書の意思に展開されたシールドに、片手で防がれた。

 

 

 

 

「刃以て、血に染めよ」

 

 

 

 

「Bloody Dagger」

 

 

 

 

「穿て、ブラッディ―ダガー」

 

 

 

 

闇の書の周りに、並ぶ真紅の魔力で出来た短剣。

二つの砲撃を受け止めながら、自らが魔法を発動させる。普通なら制御できなくて不発に終わるが、闇の書はそれをやってのけた。そして、それは一瞬でなのはとフェイトに当たった。

 

 

 

 

砲撃が止み、闇の書の意思は手を前に翳した。なのはを狙う訳でもなく、フェイトを狙う訳でもない。

 

 

 

 

「咎人達に、滅びの光を」

 

 

 

 

ベルカ式の魔法陣ではなく、展開された魔法陣はミッド式。そして、色は桃色だった。

収束される残留魔法。威力の高い魔法が連発された、結界の中にある全ての残留魔力をかき集め収束してゆく。

 

 

 

 

「ま、まさか」

 

 

 

 

「あれは……」

 

 

 

 

「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」

 

 

 

 

なのはの目が驚愕に見開かれる。だが、それはこの場にいる全員がそうだ。

なのはと一緒に居れば、見たことのある代物。なのはの切り札。

 

 

 

 

「スターライト……ブレイカー?」

 

 

 

 

「アルフ、ユーノ!」

 

 

 

 

フェイトの声に、アルフとユーノはこの場を一時的に離脱した。でないと、落とされるからだ。だが、そうしている間にも闇の書の意思の手の先には収束されてゆく残留魔力。

既に闇の書の意思の体の何倍にも膨れ上がったそれは恐怖を生み出す。

 

 

 

 

「貫け、閃光」

 

 

 

 

離脱する間も、闇の書の意思を見ているユーノは背筋が寒くなった。それは隣にいるアルフも同じだ。

 

 

 

「なのはの魔法を使うなんて!」

 

 

 

 

「なのはは一度蒐集されている。その時にコピーされたんだ」

 

 

 

 

その二人を追って、なのはとフェイトも離脱していた。

 

 

 

 

「フェイトちゃん。こんなに離れなくても……」

 

 

 

 

「至近で喰らったら、防御の上からでも落とされる。回避の距離を取らなきゃ」

 

 

 

 

一度食らっただけに、あの魔法の恐らしさは身を持って体験している。あの時は十分離れていても、五重のシールドを張っても落とされた。カートリッジが無い時に。

 

 

 

 

既に数百メートルは離れた位置にいるのに、結界の終わりが見えない。

 

 

 

 

「Sir,ther are noncombatants on the left at three hundred yards」

 

 

 

 

このまま、結界の端に逃げれば、何とかなるかもしれない。だが、バルディッシュが言った事でなのはとフェイトはその足を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様。私から離れないでください」

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

「わかりました」

 

 

 

 

鮫島は、車を乗り捨ててアリサとすずかを護るようにして道を進んでいた。老いた体でも、この二人は守りきる。例え命に代えても。

 

 

 

 

「いいですか、二人とも。なにかあっても、この鮫島が守ってみせます。ですので、安心してください」

 

 

 

 

急に人が居なくなる異常現象。それに、この異質な空間で聞こえてくる、何かを吸収している様な音。頭を上げれば桃色の球体が浮かんでいる。あれが元凶だろう。そう仮説を組み立てて、なるべく遠くへ逃げる。後ろの二人は手を繋いでいる。

 

 

 

 

そこへ、声が響いた。

 

 

 

 

「あの、すいません!危ないですから、そこでじっとしていてください!」

 

 

 

 

恐らくお嬢様と同じ年くらいの女の子の声。そして、聞いたことのある声。

 

 

 

 

「なのはお嬢様ですか」

 

 

 

 

「え……」

 

 

 

 

「なのは?」

 

 

 

 

アリサとすずかが声のした方を振り向くと、そこには白い制服の様な物を着て、手には機械的な杖を持ってこちらを見ていた。そして、ふと視線を上げるとスクール水着の様な物を着て、黒いマントを羽織っているフェイトがいた。

 

 

 

 

だが、驚いている時間はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スターライト・ブレイカー」

 

 

 

 

闇の書の意思が腕を振り下ろした。そして放たれた閃光は、街を襲う。あれだけの魔力が放出されれば、直撃でなくとも、その余波だけでも人は吹き飛ばせる。ダメージも食らう。直撃するよりもましだが、それでも強力な魔法だ。

 

 

 

 

『フェイトちゃん。アリサちゃんたちを!』

 

 

 

 

『うん』

 

 

 

 

バルディッシュがカートリッジをロードする。

 

 

 

 

「三人とも、そこでじっとして」

 

 

 

 

「Defenser Plus」

 

 

 

 

自らを盾にするように、鮫島が二人を抱き込んだ。その三人を囲むように、シールドが張られ、フェイトもその前でシールドを展開した。

 

 

 

 

「レイジングハート!」

 

 

 

 

「Wide area protection」

 

 

 

 

範囲の広いシールドがなのはの目の前に展開される。

なのはとフェイトは、アリサとすずかの直線状にシールドを張り、余波が来るのを待ち構えた。

 

 

 

 

「きたっ!!」

 

 

 

 

『なのは、大丈夫?』

 

 

 

 

『フェイト、フェイトっ』

 

 

 

 

『大丈夫では、あるんだけど』

 

 

 

 

カートリッジを使ったシールドは、そう破られるものではない。

 

 

 

 

 

『アリサとすずかが、結界内に取り残されているんだ!』

 

 

 

 

『なんだって!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、大丈夫です」

 

 

 

 

「すぐ安全な場所に運んでもらうから、もう少しじっとしててね!」

 

 

 

 

余波が消えると、急いで避難の用意を始めた。

 

 

 

 

「これは……一体」

 

 

 

 

「なのはちゃん」

 

 

 

 

「フェイトちゃん」

 

 

 

 

現れた魔法陣は、鮫島とアリサとすずかを囲んだ。

 

 

 

 

「お嬢様!」

 

 

 

 

また鮫島が二人を抱き込んだが、直ぐに離れた位置にある私立聖祥大附属小学校転送された。

 

 

 

 

「見られちゃった、ね」

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

『ユーノ君、ゴメン。二人の方を護ってもらえるかな』

 

 

 

 

『アルフも、お願い』

 

 

 

 

『わかった』

 

 

 

 

『でも!』

 

 

 

 

念話から、二人が心配してくれるのを感じる。

 

 

 

 

『なのはちゃん、フェイトちゃん!クロノ君から連絡。闇の書の主に、はやてちゃんに投降と停止を呼びかけて、って!それと、神崎悠也君の居場所も見つけてくれ、って!』

 

 

 

 

エイミィから聞いた事に、なのはとフェイトは念話の範囲を広げてはやてと闇の書の意思に呼びかけた。

 

 

 

 

『はやてちゃん、闇の書さん!ヴィータちゃん達を傷つけたのは私達じゃないんです』

 

 

 

 

『シグナム達と、私たちは……』

 

 

 

 

『我が主は、この世界、が自分の愛する者を奪った世界が、悪い夢であってほしいと願った。我は只、それを叶えるのみ。主には、穏やかな眠りで、永久の眠りを』

 

 

 

 

『そして、愛する騎士達と黒騎士を奪った者たちには』

 

 

 

 

剣を構え、魔法陣を展開する。

 

 

 

 

「永久の闇を」

 

 

 

 

「闇の書さん!」

 

 

 

 

既に数十メートル先に居る闇の書の意思。

 

 

 

 

「お前も……その名で、私を呼ぶのだな」

 

 

 

 

コンクリートが破壊され、中から出てきた触手になのはとフェイトは拘束された。

 

 

 

 

「それでもいい」

 

 

 

 

闇の書を捲る。

 

 

 

 

「私は、主の願いを叶えるだけだ」

 

 

 

 

「願いを、叶えるだけ?そんな事を叶えて、はやてちゃんは本当に喜ぶの!?」

 

 

 

 

今日会った彼女は、笑っていた。

 

 

 

 

「心を閉ざして、主の願いを叶えるだけの道具でいて、貴女は!それでいいの!?」

 

 

 

 

「我は魔導書。只の道具だ」

 

 

 

 

闇の書の意思の頬に、涙がこぼれ出た。

 

 

 

 

「だけど、言葉を使えるでしょ!心があるでしょ!そでなきゃおかしいよ、泣いたりなんかしないよ!」

 

 

 

 

なのはとフェイトの目の前には、涙が止まることなく零れ出る闇の書の意思が居る。

 

 

 

 

 

「この涙は、主の涙。私は道具だ。悲しみなど……ない」

 

 

 

 

「バリアジャケット、パージ」

 

 

 

 

「Sonic From」

 

 

 

 

 

俯いた闇の書の意思を見たフェイトが、バリアジャケットをパージして触手を弾き飛ばした。

 

 

 

 

「悲しみなどない?そんな言葉……そんな、悲しい顔で言ったって、誰が信じるもんか!」

 

 

 

 

「貴女にも心があるんだよ。悲しいって言ったっていいんだよ!貴女のマスターは、はやてち

ゃんはきっと、それに答えてくれる優しいこだよ!」

 

 

 

 

「だから、はやてを開放して。武装を解いて。お願い!」

 

 

 

 

説得する二人に、闇の書の意思は何も答えない。

 

 

 

 

 

その時、結界内に地震が起きた。そして、地面からは炎が噴き出した。

 

 

 

 

「早いな。もう崩壊が始まったか。私も直、意識をなくす。そうなれば、直ぐに暴走が始まる。意識のあるうちに……主の望みを叶えたい」

 

 

 

 

「Bloody Dagger」

 

 

 

 

なのはとフェイトを囲むようにして現れた紅い短剣。

 

 

 

 

「闇に、沈め」

 

 

 

 

直撃と共に爆風を生み出した。なのはとフェイトは抱き合う様に互いの身を守り切った。

 

 

 

 

「この、駄々っ子!」

 

 

 

 

「Sonic Drive」

 

 

 

 

バルディッシュを構える。

 

 

 

 

「言う事」

 

 

 

 

「Ignition」

 

 

 

 

「聞けぇ!!」

 

 

 

 

闇の書の意思に向かって飛び上がったフェイトは、バリアジャケットが薄くなり速くなっていた。だが、その分だけ直線的な動きにもなっている。

 

 

 

 

「お前も、騎士悠也の様に、我が内で眠るといい」

 

 

 

 

「ハアァァアア!!」

 

 

 

 

闇の書を前に出し、シールドを展開してぶつかり合った。

 

 

 

 

「ぇ……え?」

 

 

 

 

フェイトが淡い光に包まれ、力を失って魔法が解けた。

 

 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 

 

 

そして、跡形もなく消えた。

 

 

 

 

「Absorption」

 

 

 

 

開いていた闇の書は閉じられた。

 

 

 

 

「全ては、安らかな眠りの内に……」

 

 

 

 

 

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