魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第三十六話

 

 

 

 

魔力を放出させて、闇の書の暴走プログラムに突っ込む。

怖いと聞かれれば、怖いって答える。痛いと聞かれれば、痛いって答える。何故戦うのと聞かれれば、意地になってるって答える。

 

 

 

 

奇跡のような二度目の人生。元は普通のサラリーマンだった俺が、どうしてこんな戦争みたいなことをしているのだろう。社会のルールも知っている。世界がどうなっていくのかも知っている。華やかな二度目の人生を過ごそうと思えば過ごせる。だけど、なんでそれをしなかったのだろう。

 

 

 

 

魔法は、奇跡の様な二度目の人生の中でも、本当に奇跡の様だった。魔法使いみたいに空を飛べるし、透明人間の様にもなれる。誰にだって変身できた。剣だって初めて使った。

素人が振った剣は下手くそで、安定なんてしなかったけど、力を入れて、敵の近くに行って斬れば勝利。そんなゲームの様な一撃。

 

 

 

 

 

どこかの国で指名手配された事もあった。世界を自由に行き来できる力は、異質だった。

超能力を使って、世界中を見て回った。夢だった世界遺産も、資金に困ることなく行けた。

お金なんて必要なかった。行って、見て、家に帰る。それができたから。

 

 

 

 

 

あの日、偶然通りかかった公園で出会ったはやて。只の気まぐれだった。一緒に遊んだのだって、本当は何もすることがなかったから。それから、だ。何か刺激が欲しかったのかもしれない。普通では味わえない様な非日常の刺激。だから、はやてと一緒に遊んだり喫茶店なんて行ってコーヒー飲んだりケーキを食べたり。

 

 

 

 

 

戦いなんて、子供の時に見た正義の味方みたいに、敵を倒せば終わり。そんな感じに思っていた。けど、非日常の現実はそんなんじゃなかった。命を狙われた事がある。そんなアニメ的マンガ的展開。望んでたものとは全然違うソレは、確かに刺激的だった。映画の様にハンドガンなんてものを使ったり。けど、全然当たらなかったし、当たったら敵は倒れて二度と動かなくなった。

 

 

 

 

不思議なアクセサリーは、自分をアカレラって言った。刺激的だった。男の子は歳をとっても剣とか魔法とかに憧れる。そして、その力で悪を倒すことにも憧れる。そんな物語にはヒロインが付きものなんだけど、誰が十代前半の男なんてものに見向きするのだろうか。けど、それでよかった。

 

 

 

 

二度目の人生を振り返れば、たった十四年しかない。もっと長く思っていたのに、刺激が強すぎたのかもしれない。前の人生では、兄妹や子供なんていなかったけど、こっちの人生なら、はやてが自分の子供や妹の様に見えてきたりもした。守ってあげなくちゃ、とか。子供を守るのは大人の役目。そんな感じに思っていた。

 

 

 

 

毎日のように入りしたっていた八神家。遊びに行っている間は、ずっとはやてと一緒にいた。図書館に行ったり、水族館に行ったり、ピクニックに行ったり。家ではトランプやゲームをした。一年もすれば、そんな感じで仲が良くなっていた。はやての誕生日には、はやての家族がやってきた。

 

 

 

 

烈火の将シグナムは真っ直ぐな奴でクールな奴。剣を使えると知った途端に勝負をしかけてきた。少しからかうと、意外な一面を見せてくれたりする。剣を振って、筋肉が付いている筈なのに柔らかいのは、やっぱり女の子なんだな、って思う。

はやてにとって、シグナムは一つの目標かもしれない。俺は、少しシグナムの剣に憧れている。

 

 

 

 

 

紅の鉄騎ヴィータは、少し口が悪いけど素直な女の子。一番初めにはやてと仲良くなった。

見た目通りの年齢じゃないけど、やっぱり子供っぽい。というよりも子供。けど、意外と力が強くて、はやてと一緒にお風呂に入ったり車いすを押したり。お年寄りの方と一緒にゲートボールしたりするけど、甘いものが大好きな、はやての妹の様な存在。俺にとっても、妹のような存在。

 

 

 

 

 

風の癒し手シャマルは、おっとりとしたお姉さん。四人の中で、一番初めに世間に馴染んだ。

はやての事を常に考えていて、何かと世話をやいている。少し抜けた一面もある。料理をすれば、自分なりのアレンジを加えて駄目にしてしまったり。けど、守護騎士達の参謀役で、頭の回転は予想以上にいい。見えないところからのバインド責めには勝てたためしがない。

はやてにとっては、優しい姉。俺にしたら、少し手のかかる姉かな。

 

 

 

 

蒼き狼ザフィーラは、一家の大黒柱というか、どっしりと構えていて傍にいると安心できる存在。常に一歩後ろの位置に居て、危険を一番初めに察知出来て、皆を護る名前を体現している。肉弾戦では、その圧倒的な経験が導く先読みの様な、不思議な力が働いていて強い。模擬戦をやっても、普通じゃ勝てたためしがない。はやての、犬を飼いたいって夢の一つを叶えた、常に主の事を気にしている守護獣。はやてとは、よく一緒に日向ぼっこをしていたりして、気の許せる相手かな。俺からすれば、友達で、師匠かな。

 

 

 

 

 

 

どうして、こんな事を振り返っているのだろう。こんな事を考えているのに、血を流しすぎているのに、やけに思考はハッキリとしている。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

目の前に迫る触手に少しだけ触れ、そのままジャンプする。ジャンプすると、触っている物体も一緒にジャンプする。それは俺の許容範囲内だけ。人間で言えば、成人している人間を二人一緒にジャンプできる。それに、動いているモノだったらなんでもジャンプさせられる。車だって、バイクだって、大型バスだって大丈夫だ。

 

 

 

 

けど、それは動いているモノ限定。目の前の触手は、途中から抉られた様に千切れていた。

俺の手には、触手の先っぽがある。

 

 

 

 

「せめて、アカレラがあれば」

 

 

 

 

もうちょっとスマートな戦いが出来ると思う。中距離でも戦えるし、魔力を爆発させて、それを推進剤に剣速だって上がる。

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

もう、一分以上も全力で魔力を開放させて騎士甲冑の代わりにしているのに、魔力が全然減らない。減ってるけど、減っていない。不思議な感じ。けど、頭の痛みは酷い。

ジャンプするたびに、それは酷くなっていく。

 

 

 

 

「(まだか……)」

 

 

 

 

役目は、はやて達が目の前の暴走プログラムを消滅させる考えを出すまでの時間稼ぎ。

それまでは、止まる事すら許されない。止まったら死ぬ。それだけ。

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

目の前に大きな棘をジャンプして躱す。

 

 

 

 

「またッ!?」

 

 

 

 

ジャンプした先にも大きな棘があり、またジャンプして躱す。

何度も何度も繰り返す。気づけば、悠也の周りは大きな棘だらけだった。海中から出てくる棘は、どこから来るのかも全く予想できない。それでいて人間なんか簡単に貫くことのできる鋭さと大きさ。真面に当たれば即死。掠れば致命傷。

 

 

 

 

「やばっ」

 

 

 

 

ジャンプした所には既に大きな棘が何本もあり、海中から悠也めがけて棘が付き出てきた。

 

 

 

 

「やらせんっ!」

 

 

 

 

だが、それはザフィーラが横から殴り飛ばした。

 

 

 

 

「騎士悠也!離れてください!」

 

 

 

 

「もう、時間を稼がなくていいんだな?」

 

 

 

 

「もう大丈夫です」

 

 

 

 

なら、いいか。と、支えてくれるザフィーラに全体重を預けて、放出していた魔力も止める。

周りを見ると、はやて達が黒い淀みに総攻撃をかけている。

 

 

 

 

「頼む」

 

 

 

 

ザフィーラが何か叫んでいるけど、何も聞こえない。頭が痛い。胸が痛い。腹が痛い。腕が痛い。背中が痛い。足が痛い。体の中から何かが抜けていく。出るなと叫んでも、声が出ない。掠れている。

 

 

 

 

あぁ、もう駄目だ

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