「「ユニゾン・イン!」」
リインフォースは、もう慣れた様子で。逆に、悠也は少し戸惑いながら。
そして、リインフォースは、自分の中でほつれていた糸がピンっと張られていくような感触に身を震わせた。
『んっ……ふぅ』
「すご……っ」
驚いている騎士悠也……、ロードの声が聞こえる。バリアジャケットの変化に加え、魔力量の増大。それだけじゃない。右手に持つアカレラ。そして、左手の近くに浮いている夜天の書。
そして、本来なら訓練しなければ使えない魔法が使える事。それが、ロードを驚かしていた。
『ロード』
「なぁ、そのロードって呼び方なんとかならないかな?」
リインフォースが消滅しようとした日から、既に一週間の月日が流れていた。
アースラの一室で、悠也とリインフォース。そしてクロノが机を挟んで座っていた。
コーヒーを啜り、クロノは二枚の書類を机の上に出した。
「まったく。少しは僕の事も考えてくれないか?」
「いや、ごめん」
「はぁ」
クロノが言っているのは、悠也とリインフォースの脱走騒ぎで自分に被害が来たことを言っているのだ。そうだ。そもそも、二人が脱走なんてしなければアースラスタッフに温かい目で見られる事もなかったのだ。あるスタッフには「お盛んですね」と言われ。またあるスタッフには「避妊はしなければ……いえ、高給取りなんですからいいですね」と言われたのだ。ぶっちゃけた話、この二人が原因で何とも言えない状況に陥ってしまったのだ。
それはさておき、クロノは手帳を取り出した。そして、悠也とリインフォースを一瞥して溜め息を吐いた。
「リインフォースの魔力衰退症状の原因は、暴走プログラムを切り離したリンカーコアの一部欠落」
暴走プログラムは、その強大な浸食性からリインフォースのリンカーコアを侵していた。
それを切り離したのだから、リインフォースのリンカーコアも欠けてしまったのだ。そして、リンカーコアの欠けた部分から魔力が漏れ出した。
「それによる自動再生プログラムの切り離し。守護騎士プログラムは自分で切り離したのか」
「騎士達は、これからも主と共に」
自動再背プログラムは、その名前の通り再生プログラムだ。人間が怪我をして、その傷が勝手に治るのと一緒で全てを元通りにしてしまうのだ。つまり、暴走プログラムも再生してしまう。だから、リインフォースは自動再生プログラムを切り離した。そして、守護騎士プログラムも切り離した。
「そしたらはやてに怒られた、と……拗ねるなよ」
「拗ねていません」
しょんぼり。と言った風にリインフォースは顔を伏せた。そう。リインフォースは、はやてにこっぴどく怒られたのだ。普通に怒られるのならば、何倍もマシだ。だが、はやては泣いたのだ。それも号泣。そんな主の姿を見て、リインフォースは折れた。
「話を戻すぞ」
「ごめん」
「すまない」
クロノのの視線が、ある一点へ向けられた。
「欠けた部分は治らない筈だったけど、神崎悠也のおかげで治っている、と」
現在、リインフォースのリンカーコアは順調に回復している。だが、普通の傷よりも治りは遅い。と言うよりも、リンカーコア自体が欠けてしまえば魔導師としても終わりで、常に激痛が伴い日常生活など送れない筈なのだが。リインフォースは、それを感じていない。
「むしろ、心地よい」
「いや、あのな?」
「まぁ、仲がいいのはいいことだがな」
「それは嫌味か?」
「さぁ?」
クロノは、悠也の膝の上に座る五歳程度の年のリインフォースを見ながら溜め息を吐いた。
悠也は考える。始まりは、いつだったろうか、と。
あれはリインフォースの手を取った時だった。いきなりリインフォースが縮んだ。縮んだのだ。18歳程度の年頃の女性が、いきなり五歳程度の幼女に。
「ロード。その、肩車をしてくれませんか」
「はいよ」
リインフォースの前でしゃがみ、跨りやすいようにしてやる。大人なのだ。リインフォースが。大人なのだ……。精神的には大人な筈なのだ。そうだと言ってくれ。
「なぁ、リインフォース」
「はい。なんでしょう」
視界に、逆さまのリインフォースの顔が入ってきた。銀色の長い髪。紅い瞳。間違いない。リインフォースだ。
「子供だよな?」
この姿になってから1週間。リインフォースは甘えてくる。悠也だけに甘える。いくらヴィータが姉さんだと言おうが、リインフォースは口で言い負かしてしまうのだ。その知識量は前の姿となんらかわりない。
「いいえ、ロード。私は大人です」
悠也だけに甘える理由は、2つある。一つは、リインフォースのリンカーコアが治るまで悠也とリインフォースは一定距離同じ空間にいなけらばならない。これをしなければ、リインフォースは消滅してしまう。
そして2つ目は、悠也が傷を負った時にリインフォースが治療したのだが、その治療方法は『リンカーコアを同調させて』治療するもので、リインフォースにとって悠也は家族であり兄弟であるのだ。
「どこが?」
「む。私のどこが子供なのですか」
頬を膨らませるリインフォースは、見ているだけで和んでしまう。
「ま、いいや。はやての所に行こうか」
「行きましょう」
『カメラはお任せください』
『…………』
胸元で、怪しく十字架が輝いていた。