魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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この話からタイトルを付けました。
それに、ここからはNOSに投稿していた物を変えたり、まったく新しくしたものです


とある日の日常

 

 

 

 

気持ちのいい眠りから目覚め、微睡の中で軽い重みと暖かさと生温さを感じて、俺は被っている布団を捲った。布団の中に視線を移し、その視線を左に移した。可愛らしい枕しかない。

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

 

溜め息を吐き、布団を元に戻す。生温い理由は、お腹の上で寝ている幼女の仕業だった。子供がどうしてお腹の上で寝るのかは解らないが、せめて涎は垂らさないでくれないか。もう一度ため息を吐いて、窓から射しこんでくる光を腕で目を隠すことで遮った。

 

 

 

 

小さくなった副作用で俺から離れられない様になってしまい俺の家で生活するようになったのだが、色々と問題が発生した。まず、本当に離れられない。三メートルも離れてしまえばリインフォースのリンカーコアが不安定になり激痛を伴う。そのために、離れられない。

 

 

 

 

だいぶ動きが制限されてしまった。学校にも行けない。けれども、それはそれで楽でいい。

元々、二度目と言う事で殆ど行っていない学校だ。そもそも、中学に行かなくても高校は卒業できるし、大学にだって入れる。抜け道はあるものだ。

 

 

 

 

「そ~っと」

 

 

 

 

ゆっくりと動き、リインフォースをお腹の上ではなくベッドに寝かせて俺はベッドから起き上がった。リインフォースが俺の家に来てから、寝室には物が増えた。なにせ三メートルしか動けないのだから、仕方がない。もともとあった俺のベッドを使っていない部屋に放り込んで、クイーンサイズのベッドを買ったのだ。これならリインフォースの寝相が酷くても落ちる心配は一切ない。

 

 

 

 

ベッドの脇に置いてある水で喉を潤しながら、今日はどうしようかと考える。左手首に括り付けてある赤い紐の先には、同じく紐を括り付けてあるリインフォース左手首。長さは二メートル強。あとどれくらいの時間が経過すれば起きるか分からない。涎を垂らしているリインフォースを見ればわかる。精神は、まぁ大人だろう。たぶん。体は完全に幼女だ。幼女の他に何に見える。

 

 

 

 

だけど、持っている知識は膨大だ。リインフォースが使える魔法は数えるのもバカになってしまう程だ。ベルカ戦乱の時代から現代まで生き続けているのだから、当然と言えば当然なのだが。それでも射撃魔法の敵性が壊滅な俺は羨ましいと思ってしまう。遠距離魔法が無くても、中距離魔法と近接武器があれば十分なのだが。

 

 

 

 

それはさておき。

 

 

 

 

どういう訳か、リインフォースは歳相応の生活リズムになってしまった。遅起き早寝という変則なものだけど。煙草を咥えてベッドに座って時計を見ると、時刻は十時を回っている。昨日の夜は、リインフォースが十時前に眠ってしまって、そのまま俺は本を読み始めた。よく読む作家が書いたこともあり、そのままノンストップで読んでしまったのが悪かった。読み終わった時間は、確か午前二時を回っていたくらいで、そのままベッドにジャンプして眠ったのだ。

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 

よくよく考えてみると、横で寝ている幼女は何時間眠るんだ?もう十二時間は寝ている。あれ、子供ってこんなに眠るんだったけ。この年頃の子供は夜の九時に寝て、朝の八時に起きてウ○トラマンやら五色の全身タイツの特撮を見ていた気がする。

……俺が悪いのだろうか。寝る時間はバラバラ。起きる時間も不規則。食事は同じ時間帯に食べてはいるが、決まっているのはソレだけじゃないだろうか。

 

 

 

 

「育児本でも買うかな」

 

 

 

 

今回の、はやてとヴォルケンリッター、俺が起こした事件は「闇の書事件」と名づけられた。そして、その主犯格と言ってもいい俺自身の罪は軽いモノだった。三カ月の執務官による監視付きの自宅謹慎。なぜこれだけ罪が軽いのか。勿論、理由がある。少し、管理局の暗い部分に触れてしまうが。夜天の書を、その主ごと消滅させようとしていたグレアム提督。提督と言う地位は、管理局で確固たるものであり、情報は常に耳に入ってくる。優秀な使い魔が居れば、それは尚更だ。

 

 

 

 

まず、グレアム提督は自分が管理局を辞職することで俺たちの罪を軽減した。

それでも、確実に禁錮刑が妥当であると言われてしまう。そして、グレアム提督が行っていた闇の書に関するデータ。そして、その持ち主である八神はやての身柄。夜天の書。ヴォルケンリッター。これだけ強大な力を、管理局が逃すはずもなく、飢えたハイエナの様に我先にとソレらを欲しがった。

 

 

 

 

これだけの強大な力だ。持っていれば管理局で絶大な発言力を手に入れる事が出来る。

将来は美人になるであろうその容姿にも惹かれたのであろう。そして、もう完成しているシグナムとシャマルにも惹かれたのだ。だけど、それを見越していたグレアム提督と優秀な使い魔は、彼ら、あるいは彼女ら、あるいは管理局そのものがやってきた暗い部分をカードにソレを食い止め、さらには罪の軽減までしてくれたのだ。

 

 

 

 

闇取引。これが一番合っている。汚いやり方だけど、貰える物は貰っておけばいい。罪が軽減するならば、それだけで大助かりなのだ。そして、その結果が三カ月の執務官による監視付き謹慎。付け加えるなら、聖王教会からの召喚。管理局とて、聖王教会と敵対関係に陥るのは裂けたい。そんな内部抗争があり、この処分だ。

 

 

 

 

そんなこんなで、今は自宅に居られるのだ。この時間なら、そろそろ来るはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温かい恰好で、温かいザフィーラに乗って、私は悠也とリインフォースの家に向かっていた。

隣で歩いているヴィータも、嬉しそうに押してくれている。シグナムとシャマル、ザフィーラでさえ嬉しそうにしているみたいや。私達が家族でいられて、今までみたいに生活できるのも悠也のお蔭やってシグナムに聞かされた。それでも、二日に一回はなのはちゃんとフェイトちゃんが家に来てお喋りをして帰っていく。学校のこととかやったり、魔法のことやったり。とにかく、時間の許す限り喋る。

 

 

 

 

これが最近の、八神家の日常風景。ちょっと前までやったら考えられへんかった。シャマルなんて、なのはちゃんにお菓子作りなんて教えてもらってたりする。ヴィータは、リインフォースに姉って呼ばれようとして頑張ってるんやけど、結果は著しくないみたいや。ザフィーラは、何て言うたらいいんかな。ダンディー、になった気がする。家の中じゃ、狼の状態やけど外に出るときは青年の状態で皆を守ってくれてる。

 

 

 

 

この前何て、シャマルにナンパしてきた男達を一言、二言、言葉を発しただけで逃げていってしもうた。それでいて、子供たちには優しいし……。多分、モテモテになるんちゃうかなって思うてしまう。ザフィーラが外に行ったら、の話やけど。あれ、それやった悠也もモテるんとちゃうか?中学二年生やけど、桃子さんに言わせたら大人。見た目は子供やけど、中身は大人らしい。どこの探偵やって突っ込んでしもうたけど、考えれば考える程に大人に見えてくる。優しいし、我が儘言うても聞いてくれるし、一緒に寝てくれるし、本だって読んでくれるし。

 

 

 

 

「主はやて、先ほどから何を考えているのですか?」

 

 

 

 

どんな顔をしていたんやろうか。シグナムが、ううん。三人とも私の顔を覗き込んでいる。だから、私は素直に言った。

 

 

 

 

「んー、悠也って大人っぽなぁって」

 

 

 

 

少し間をおいて、シグナムが口を開いた。シャマルとヴィータは、何やら笑っている。

 

 

 

 

 

「確かに、騎士悠也は年齢に反して大人びていますね」

 

 

 

 

「せやろ?なんでかなぁ」

 

 

 

 

「別にいいじゃんか、悠也が大人っぽくても」

 

 

 

 

ヴィータの方を見ると、そこには笑顔があった。悠也に買ってもらったマフラーを小さな首に巻いて、ピン、と二本の耳がある白いニット帽を被って暖かそうにしている。デザインは兎。

 

 

 

 

「なんでなん?」

 

 

 

 

「だって、優しいし……な、なんだよシャマル!そんな目で見るんじゃねぇ!」

 

 

 

 

あらあらうふふ、とシャマルは小さな拳をひょいひょいと避けて、最終的には抱き上げてしまった。顔を赤くしているヴィータを見ると、恥ずかしかったんやろう。ヴィータは、本間は優しい子やし。

 

 

 

 

『騎士悠也は、このままでいいのではないでしょうかと思います』

 

 

 

 

もう念話に慌てることもなく、少し余裕が出来たかなって思いながら念話を返す。基本的な魔法は習得済み。

 

 

 

 

『そか。やっぱり、悠也はこのままが一番やな』

 

 

 

 

『はい』

 

 

 

 

みんな、今の悠也が好きやから。今日も会いに行こう。シャマルとヴィータの賑やかな喋り声を聞きながら、マンションに歩いて行った。……私は歩いてないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口に広がるコーヒーの苦みを楽しみながら、隣で「幸せです!」とその顔で表現しているリインフォースの顔を写真に収めた。何と言うか、大人の時に見せていた凛とした表情とは違い、この小さなリインフォースは可愛らしい。数年前のはやて達を見ている様だ。はやての家に置いてあるアルバムには何枚も写真がある。それは、ここ数カ月で急激に増えた。コスプレ侍の写真が。

 

 

 

 

「む、どうしたのですかロード」

 

 

 

 

「いやぁ、平和だなー」

 

 

 

 

「あぁ、平和だな」

 

 

 

 

目の前には、クロノが同じくコーヒーを啜りながら書類を整理していた。十四歳にしてワーカーホリックであるクロノは、俺とリインフォースの監視のにいでに有給を取ったのだ。溜まりに溜まった四十五日間の有給は、クロノを前線から引かせて書類地獄に陥らせている。とは言え、書類整理はクロノが確実に目を通さなければならない物だけだから、楽と言えば楽なのだ。

 

 

 

 

「あぁ、そう言えば聖王教会からの召喚の件についてだけど、三か月は待ってもらう様にしてもらった」

 

 

 

 

「そっか。ありがとな」

 

 

 

 

「気にしないでくれ。これでも、数少ない友達の頼みだったからな」

 

 

 

 

自分で言って気恥ずかしいのか、クロノはコーヒーを啜った。ここ最近で、俺とクロノは友達と言える仲になっていた。何と言っても、俺とザフィーラ以外は女の子しかいないのだ。

それに、同年代と言えばもっと範囲は小さくなる。身長が低いからと言って、中身は大人なのだ。

 

 

 

 

「だけど、やっぱり教会側もかなり言い下がってきたよ」

 

 

 

 

「古代ベルカの使い手だから……だけじゃないよな?」

 

 

 

 

「夜天の書に、動いているユニゾンデバイスと使い手が二人もいるんだ。それに、ベルカ時代の歴史もわかるからね」

 

 

 

 

「面倒だなぁ。逃げてもいいか?」

 

 

 

 

「駄目に決まってるじゃないか」

 

 

 

 

本当に、面倒だ。今までの気楽な生活とは違うファンタジックな世界。だけど、そこにも組織は存在して、派閥もある。勿論、信用できない人間もいる訳で、目の前にいるクロノはその一人だ。寝室の机に置いてある二通の手紙の送り主も、信用できるかもしれない。とは言え、まだ会って話したこともない人間を信用できるほど、俺は出来た人間じゃない。

 

 

 

 

「ロード」

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

「私とロードがユニゾンしてしまえば勝てる相手など存在しないのだから、このまま構えておけばいいのです」

 

 

 

 

リインフォースの魔力ランクと魔力量はSS+と規格外であり、俺の魔力量もS+と規格外であり、ユニゾン率は100%という規格外。これもそれも、リンカーコアを同調させて治療したリインフォースのお蔭と言ってはなんだけど、奇跡の100%という数字を叩き出した。どれだけ相性がよかろうが、100%に到達できないという壁を、いとも簡単に破ったのだ。魔力ランクと魔力量SS+という結果を。

 

 

 

 

「お熱いことで」

 

 

 

 

「……お熱いことで」

 

 

 

 

そのまま言葉を返してやる。リインフォースをニヤニヤと笑ていたクロノが、ギョっとして俺を見てきた。俺は知っている。リンディ艦長とも、軽く喋る内に愚痴が零れたりするのだ。クロノとエイミィの関係など、親としては一番の関心ごとなのだろう。

 

 

 

 

「な、なにを言っているのかな?」

 

 

 

 

「お熱いことだ」

 

 

 

 

「あぁ、お熱いことだ」

 

 

 

 

「僕は何もしていない!」

 

 

 

 

「そうやって大声を出すことがお熱いんだよクロノ。避妊はしてるか?」

 

 

 

 

俺の放った直球の言葉に、クロノの頬に赤みが射した

 

 

 

 

「ばっ、子供がいる前でなんて事を言い出すんだ君は!」

 

 

 

 

「私は子供ではない。それに、その年齢なら別段おかしなことでは無いのだから、気にせずに励むと言い」

 

 

 

 

目を見開いてリインフォースを見た後、クロノはジト目でこちらに視線を移した。俺を見ても、何も言えない。というよりも答えられない。

 

 

 

 

「おい悠也。君はリインフォースにナニを教えたんだ」

 

 

 

 

「別に何も」

 

 

 

 

そもそも、教える事なんて一つもない。家事も出来て料理も出来る。一般常識だってあるし、魔法だって超一級だ。逆に教えてもらう側に俺たちはいるのだから、何も言う事は無い。

 

 

 

 

「それじゃあこの知識はどこから沸いてきた!?」

 

 

 

 

「教えてあげようか?」

 

 

 

 

「いや、君はそのままでいい。と言うよりも、その年頃の女の子が言う台詞ではない」

 

 

 

 

「失礼な。私は大人だと言っているでしょう。お姉さんが教えてあげましょう」

 

 

 

 

無い胸を張り、リインフォースはどこから出したかわからない夜天の書を開いた。

 

 

 

 

「ちょっ、なんでいきなりデバイスをっ!?」

 

 

 

 

「いいですか、よく見なさい。これぎゃ……噛みました」

 

 

 

 

これ以上は拙いので、リンフォースの頭にチョップを落とした。ナニを言おうとしたこの幼女は。クロノなんて顔が真っ赤だ。夜天の書を机の上に置き、リインフォースを抱きかかえて玄関に向かう。さっき、ピンポーンとベルが鳴ったのだ。多分はやて達だ。この二人は会話をしていて気付かなかったんだろうけど、ゆっくりと煙草を吹かしながらコーヒーを啜っていた俺には聞こえた。勿論、リインフォースが展開した空中ディスプレイも見えた。見えてしまった。

 

 

 

 

ガチャリ、と玄関を開くと冷たい冷気が肌を刺した。部屋の中は暖かいので、余計に寒い。だからと言ってはなんだけど、リインフォースを抱きかかえている。子供は暖かいのだ。

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

 

 

 

「良く来ましたね、はやて」

 

 

 

 

下に向けていた視線を上に修正して、はやてと顔を合わせた。いきなりはやての顔の位置が変わっていたのには驚いたけど、車いすに乗ってきていないのだから、移動手段は限られてくる。シグナムかザフィーラに抱っこしてもらうのだ。

 

 

 

 

「おじゃまします」

 

 

 

 

「おじゃまします」

 

 

 

 

「あ、これお土産」

 

 

 

 

「おじゃまするぜ~」

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

 

四人いれば、それだけ性格が違うのだから当たり前だと思う。はやてとシグナム、シャマルは礼儀正しく。ヴィータは寒いから靴を直ぐに脱いで炬燵のある部屋に駆けだす。それを見てザフィーラはため息を吐く。そしてリビングから聞こえる喧嘩声に、今度は全員がため息を吐いた。

 

 

 

 

「賑やなぁ」

 

 

 

 

「賑やかすぎて困るよ」

 

 

 

 

「楽しければいいじゃないですか」

 

 

 

 

「お前、そんな性格だったか?」

 

 

 

 

「小さくなって性格が変わっちゃったんじゃないの?」

 

 

 

 

「そうかもしれんな」

 

 

 

 

賑やかだ、本当に。何時までも冷たい冷気を部屋に入れるわけにもいかず、扉を閉めて皆を中に入れる。それぞれが思い思いの場所に座り、シャマルが持ってきたケーキを人数分に切り分けた。コーヒーも淹れ直して、ココアも作る。ミルクティーも作れば、シャマルの顔が綻び、それを見てシグナムの口角が上がる。家にあるカップも、いつの間にか増えていた。

 

 

 

 

「ご主人様」

 

 

 

 

「ん~?」

 

 

 

 

「私もフルメンテをお願いしたいのですが」

 

 

 

 

「今度、アースラに行った時に聞いてみるよ」

 

 

 

 

「ありがとうございます。あと、カメラは任してください」

 

 

 

 

ピカピカと妖しく点滅する十字架は、多分今も写真とビデオを撮っているのだろう。笑うはやてを。ケーキを食べて顔を綻ばせているリインフォースとヴィータとシグナムとシャマルを。コーヒーを啜り、どこか嬉しそうに笑うクロノを。離れた場所でコーヒー片手に煙草を吹かしているザフィーラを。

 

 

 

 

「ん、おいしい」

 

 

 

 

ケーキは甘く、コーヒを啜るとちょうどいい苦みになった。




Fateの原作やって泣いた。燃えたし萌えた。
セイバーが可愛い。バーサーカーが強い。アーチャーが熱い。士郎も熱い
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