何て事もない、普通の日常。デバイス関係の研究も一通り落ち着いたら纏まった休暇が出来た。
護衛任務の方も、月に一回くらいのペースで次元世界での式典に出席するために付いて行ったりする程度。これで給料が貰えるんだから儲けものというやつだ。そこいらの公務員よりも給料はいいし待遇はいいしで、新しく作った口座には結構な額が貯金されている。
「ロード、主はやてが言っていたのですが、あちらではゲームが流行っているそうです」
「うん、そうみたいだな」
首都を歩きながら、自販機で買ったコーヒーのプルタブを開けて一口飲んだ。缶特有の甘さは、何時飲んでも美味いとは感じられない。隣を歩くリインを見れば、同じ様にオレンジジュースを飲んでいた。今日は、本当に暇でたまたま首都に出てきただけなのだ。少し時間を潰して、今日は家に帰って寝る。暇だからこそ、こんな方向性のない予定が出来上がってしまった。予定と言ってもいいのか解らない予定だけど。
「あ、あの」
「うん?」
リインが俺の服の袖を握りながら、その身長差を使って上目使いで口を開いた。
「魔法少女リリカル☆マテリアルを買ってください。後、本体もお願いします」
「シャッターチャーンス」
「なぁ!?人が頼んでいるのにっ……い、いえ、私の方が頼んでいる方なのですし年上なのです」
「え、ヒルデ魔法学院のパンフレットあるんだけど、もしかしていらない?」
「い、いりません!」
このパンフレットは、何度か聖王教会に足を運んでいたら貰ったものだ。それに、何故か知らないが「特務機動部隊A-00」は教導隊であると勘違いされて戦闘技能講習と称された講義に出席を求められたりしている。いや、一応は護衛任務の関係上で秘匿部隊になっている筈なんだけど。まぁ、制服を着る義務すらないから俺とリインが管理局に所属しているってわかる人間は一握りの人間だけだ。
「じゃあ、明日にでも買いに行こうか?」
「はい!お願いします」
『ご主人様、そろそろ私も整備してほしいのですが』
「んー、誰に頼もうかな?」
『私は聖王教会がいいと思います』
確かに、聖王教会ならベルカ式のデバイスを扱っているか。それに、騎士も多いし古い家も多い。大丈夫そうだ。
「整備は次に来た時でいいか?」
『はい、構いません』
暇な時間は暇なりに考えれば予定が出来てくるものである。適当に歩いたら、小腹が減ってしまった。どこかの店に入ろうか、何て考えながら少なくなったコーヒーを煽った。これは、家に帰ってから淹れようと思ってしまうほどの不味さだ。いや、缶コーヒーもそれなりにいいのだが、やはり味は違ってくる。
「リイン、何が食べた、いィ!?」
「どうしたのですかロード」
リインを見ようとするなら、その視線は上から下へと移動する。リインの身長が原因だが、『それ』が視界に入ったのはリインのおかげともいえる。とある本屋。どこにでも在りそうなチェーン店のアウトドア展示品に、衝撃の雑誌が置いてある。見出しは『期待の美少女エース達!今後の活動に注目!』である。表紙を飾ってあるのは、少し頬が赤い見慣れた三人組。高町なのは(10歳)フェイト・T・テスタロッサ(10歳)八神はやて(10歳)の3人組。吹いた。盛大に吹いた。
「こ、これは!?」
リインも気づいた様で、雑誌を手に取りレジに向かう。購入は決定しているし、丁度いい暇つぶしの種を見つけた。値段は日本円で525円。普通の雑誌と同程度の値段であるが、そんなものは関係ない。この表紙は、後のネタとして取っておかなければならない。いや、いやいやいやいや。内容も気になる。リインはもう読み始めている。他のページなんてどうでもいい。
「さぁ、適当に喫茶店でも入るか」
「わかりました」
高町なのはの場合
高町なのはさん(10歳)にインタビューです。
Q.期待のエースとして、貴女の名前が挙げられましたがどんな気持ちですか?
A.えぇっと、嬉しいです
Q.魔法には何歳の時に出会ったのですか?
A.9歳です。ユーノ君……えっと、ユーノ・スクライア君に習いました!
:スクライア一族の……チェックね
:え?
Q.これから何をしていきたいですか?
A.皆の役に立つような魔法使いになりたいです!
フェイトT・テスタロッサの場合
フェイト・T・テスタロッサさん(10歳)にインタビューです。
Q.管理局最速の魔導師に貴女の名前が挙げられましたが、どういう気持ちですか?
A.ふぁ、ふれしいです!
:ちょっと恥ずかしがり屋さんですね
:す、すいません
Q.そのバリアジャケットは貴女が設定したんですか?
A.はい。なるべく速く動けたらいいなぁ~って思って
Q.では、好きな人はいますか?
A.うーん、お兄ちゃん?お母さん?
八神はやて
八神はやて(10歳)にインタビューです。
Q.なのはさんとフェイトさん、執務官と極秘部隊の4人と相対して勝てるって本当ですか
?
A.いやいや、そんなんリインがおらな無理に決まってるやん。それよか、極秘部隊員って誰な
ん?
Q.その噂の極秘部隊員と知り合いって噂があるんですが、心当たりはありますか?
A.うーん、いやー、うーん?
Q.最後に、守護騎士達について教えてください
A.皆、優しくて強くて可愛くてカッコえぇ最高の家族!
コーヒーを啜る。やっぱり、缶コーヒーよりも目の前で淹れたコーヒーの方が数倍も美味く感じる。さて、この雑誌、酷くないか?はやてなんか思いっきり怪しがってるじゃないか。フェイトは照れまくってるし、写真の隅にオレンジの耳が写ってる。なのはは、うん。いいネタの提供者になれそうじゃないか。
「この極秘部隊って、私たちの事でしょうか?」
「そうだろうなぁ」
頬の緩んだリイン。あれか、リインは主に必要にされているって解釈したのか。まぁ、はやては制御系は苦手だからなぁ。初心者級の魔法は出来るんだけど、基本になると出来なくなる。制御が全然、出来ないせいだ。デバイスも無いから、仕方のないことだが。
「リイン、デバイス作れるか?」
「私には劣りますがユニゾンデバイスを作成できます」
「はぁ?」
「どうか、した、のですか?」
旗の刺さったオムライスを何の疑いもなく食べるリインは、さも当たり前の様に驚きの事実を言い放った。ユニゾンデバイスを創れる?目の前でお子様ランチを頬張っている小さな少女が?そうだ、そうだった。彼女は夜天の書であり中枢プログラムであり最強でもあるのだ。その彼女が、ユニゾンデバイスを創れないことは無い。ユニゾンデバイスの成功例は、稼働中のユニゾンデバイスは、他ならぬ自分自身なのだから。
「はやてにデバイス創ってやれないか?」
「ユニゾンデバイスならば主はやてに合せたものが創れますが、主に合ったインテリジェントデバイスは創れません」
「あー、はやての魔力って凄まじいからな」
「(それは貴方も同じでは?いえ、そもそもアカレラを複製できればいいのですが)」
インテリジェントデバイスがはやての魔力に耐えられないのならば……。あれ、ちょっと待ってくれ。なんでリインが俺のユニゾンデバイスの様になっているんだ?元来、リインは夜天の主であるはやてのユニゾンデバイスだ。
「リイン、リンカーコアが治ったらはやての所には行かないのか?」
「主はやての所、ですか?」
最後のプチトマトを咀嚼して、ナプキンで汚れた口周りを拭き、オレンジジュースを飲んだ。
「現状で、私の主にあたる人間は主はやてとロード悠也の二人になります」
「うん」
「こうなった場合、戦力の乏しいロード悠也の方に行くのは当然と考えます」
「……うん」
「それに、今はリンカーコアの修復がありますから」
うん。はやては守護騎士四人に加えて、リインが居れば大出力の広域魔法が使える。俺は近接戦だけ。魔力を撃つことに対して全くの適性がないのだ。まぁ、色々と能力を使えば単騎相手なら圧勝する事が出来る。けど、相手がAAクラスの魔導師で連携が取れた二人組とかなら駄目だ。
「しかし、リンカーコアの修復が終われば主はやてに恩返しをしたいと思っています」
「へー、どんな感じの?」
「主はやては魔力制御が苦手なので、それを補助するためのユニゾンデバイスを」
そ、それは俺も何かを送らなければならないのでは?例えば、新型のデバイスとか。
「それじゃ、そろそろ行くか?」
「はい」
腕時計を見ると、丁度いい時間帯。今から帰って晩御飯を作れば7時には食べられるだろう。そこから色々として、寝るのは10時くらい。さて、地球に戻ったら雑誌ネタで弄らなければいけないなぁ。
「ふぁ!なんで悠也さんがそれ持ってるの!?」
「ちょ、ちょっと待ってぇな悠也!機密部隊とか何も話してないやんか!って、私のケーキ!」
「お、お兄ちゃんにもバレてないのに!?」
最近、洋画を視まして空母が空中に浮くという「馬鹿なッ!?」な状況がありました。
いやぁ、なのはの世界観ならいけるな(笑)