魔導師たちによる空中ショーは、最後にフェイトによる超速飛行で幕を下ろした。魔力光を残して飛行した空にはカラフルな色が残っており、まるで虹の様だった。会場は盛り上がる。これで、次はいよいよなのはとシグナムの勝負だ。砲撃魔導師であるなのはと、騎士であるシグナムの勝負は予想がつかないモノになっている。
並の砲撃魔導師であればシグナムの甲冑を撃ち破ることが出来ない。だが、なのはの砲撃はシグナムの甲冑すらも撃ち破る高火力の砲撃がある。スターライトブレイカーなどが当たれば墜ちることは間違いがない。ディバインバスターでさえ、真面に当たってしまえば墜ちる可能性がある。まだ幼いながらも360°を見渡すマルチスキルは流石の一言に尽きる。
シグナムの甲冑は、魔力を練らなくともアクセルシューターを弾く程の硬さを持っている。その一太刀は、例え硬いシールドを持っていようが叩き斬る破壊力を持っている。速さもある。力もある。経験もある。近づいて斬るとは、シグナム本人が言っている必殺の一撃だが遠距離にも対応出来る力を持っている。
シグナムは、近づいて力ある一撃を加えればいい。
なのはは、中遠距離から力ある一撃を加えればいい。
第一試合・高町なのはVs八神シグナム
開始
こうして向かい合うのは、とても久しぶりに感じられる。初めて敵対したのは「闇の書事件」の時。ハッキリと戦った訳ではないのでけれど、それでもフェイトちゃんを援護した砲撃は悉く躱されて捕らえられなかった。ヴィータちゃんとも戦っていたし、それはそれで仕方がないのだろう。だけど、こうして管理局で働いていて少なくない数の魔導師を撃ち落としてきた今なら解る。シグナムさんを撃ち落とすのは難しい。ましてや、彼女は一対一なら負けることは無いと豪語しているベルカの騎士だ。
開始のゴングが鳴った。シグナムさんは剣を払い、笑った。
「こうして向かい合うのは、初めてだったか?」
「初めて、ですね」
「実はな、楽しみにしていたんだ」
「私も楽しみにしていました」
あぁ、この人の目は見たことがある。教導隊に所属する局員たちが持っている目だ。戦いたい。
そして、それを自分の糧にしたい。そんな目だ。
「良い目をしている」
「それは貴女も同じです」
笑い合う。
聞こえていた歓声が止んだ。
「さぁ、始めようか」
「All right」
「はい。始めましょう」
「Ja」
どちらが動いたのが先か、なんてのはもう忘れた。
無雑作に振われる剣。
それをシューティングモードのレイジングハートで弾く。
体勢を崩した隙に片手をシグナムさんの腹に当てようとして、直ぐに引き戻してシールドを展開。
予想以上に凄まじい威力に思わず距離を離した。否、吹き飛ばされた。
だけど、こちらとしては全く気にしてない。むしろ、こちらの方がいい。
まだシグナムさんは最初の位置から動いてない。
待て、良く見ろ。レヴァンティンの形状は、蛇腹剣。その斬先は、地面。
「ッ、レイジングハート!」
「Round Shield」
シールドを削る音が聞こえる。そのまま抵抗せずに上空に逃れる。蛇腹剣の間合いは、まだ正確にはわからない。だけど、おおよその間合いは把握した。
「今のを凌ぎきるか、高町」
「不意を突いた筈なんですけどね」
初めの突進。確実に不意を突いた筈だった。私のタイプを知っているシグナムさんには確実に不意打ちだった筈。それが、防がれた。
「なに、騎士悠也の対策に考えていたモノでな。たまたまそれが当たっただけだ」
「(それって、偶々じゃないと思うの)」
伸ばしていたレヴァンティンが通常の形態に戻った。上段に構えて、魔力が体から溢れ出している。
「こんどは私から行かせてもらう」
「負けません!」
シグナムさんが空に上がってくる。勿論、そんなチャンスを逃すわけにはいかない!
「アクセルシューター!」
「Fire」
20発のシューターが上下左右を縦横無尽に駆け回り標的を貫かんと殺到する。
が、20もあるシューターの隙間を駆け抜けて逆になのはの目の前に現れた。
そこで上段から振われる一撃を、何とかシールドで逸らしながら凌ぎ、レイジングハートを突き出す。それをシグナムは左のガントレットで滑らせて右のレヴァンティンでなのはを切り裂いた。
火花が散る。鮮血が舞う。白のバリアジャケットが舞う。
「届かん、か」
ガントレットに付いた傷を治しながら、今度は逆の位置になった高町を見た。斬られた肩を抑えながら楽しいと笑う姿は、とても少女のモノとは思えない。が、その笑顔が急にニヤリと変わった。
ガツン、頭に強い衝撃。
「なッ……にィ!?」
「ふふ、お返しなの」
思考が纏まらなくなる。当然だ。気を抜いたところに頭への、それも完全に入った一撃は意識を刈り取ろうとして放たれたものだ。そうだ、これが高町だ。例え今、自分がやられようとも次の自分をイメージして一手を放つ。だが、こんな楽しい舞台だ。これで終幕はありえない。ありえてはいけない!
「フ、ヌァ!!」
魔力解放。後先の考えない開放は、確実に最悪の一手だろうし現状を打破出来ても待っているのは敗北。だが、ここで諦めきれるか。否、諦めてたまるものか!
「飛龍―――一閃!」
「ッ、ディバインバスター!」
――轟音
――衝撃
――暗転
――明転
気が付けば、観客席に張られていたシールドに寄り掛かっていた。レヴァンティンは健在。鎧はリアクターパージにより吹き飛んでいた。それらを認識した瞬間、上空に巨大な魔力を感じた。
見上げれば、そこには桃色の魔力があった。
「集束……砲撃」
躱さなければ、間違いなく墜ちる。まだ硬直している体を動かそうとして、動けなかった。
ダメージもあるのだろう。だが、両手両足が一切動かせなかった。バインドだ。桃色のバインドがかかってある。
「この程度で、ッ」
右手に掛かったバインドを力ずくで破壊。左のバインドを破壊しようとした所で、間に合わないと判断した。どう考えても間に合わない。なら、防御。守るしかない。
「ハァッ!」
眼前に五重のシールドを張る。
『Starlight Breaker+』
「ハァッ、ハァッ。まだまだ、これから!カートリッジフルロード!!」
六発の空薬莢がレイジングハートから排出される。跳ね上がる魔力。現時点で、私の中で最強の出力を誇る砲撃魔法。鋭い痛みが走る右肩。だが、関係ない。利き腕の左手がアレば、この砲撃は放てる。十分に魔力は溜まった。後は、レイジングハートを振ればいいだけ!
「これが私の全力全開!スターライト・ブレイカーーー!!」
轟音がミッドチルダ全域に鳴り響いた。
―VIP席―
「なぁ、フェイトちゃん。あれ受けてみてどうやったん?」
隣に座っていたフェイトちゃんを見ると、アルフにしがみ付いていた。それに、小刻みに震えて
いる。
「あ、あはは……シグナムー!」
悟った。アレは人間が受けていい類のモノではないのだと。
直撃で街を破壊!?余波で島を粉砕!?威力は核と同等以上!?