魔法少女リリカルなのはジャンパー   作:ファイター

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第八話

「…………ん?」

 

 

お腹への衝撃に、悠也は瞼を開けた。視界に入ってくるのは、当たり前の様に知っている天井。視線は下に。

 

 

「にゃあ」

 

 

気が抜ける。と言うのは、まさにこの事を言うのだろう。シオンが所謂、伏せの状態で悠也を見ているのだ。その瞳は「お腹すいた」「遊んでよ」と言いたげな視線だ。

確かに、最近は朝か夜しか遊んでやれなかった。はやての家に行けば、基本的に自宅に帰って来るのは零時を過ぎる。

 

 

「お前も来るか?」

 

 

「にぃ」

 

 

 

シオンを抱きかかえた悠也は、お散歩用バッグをクローゼットの奥から引っ張り出した。

 

 

 

 

 

=======

 

 

 

 

 

 

肩にかけたお散歩バッグから顔を出しているシオンを見やり、胸ポケットから煙草を取り出した。ジッポで火を点ける。黒いジーンズに、白いシャツ。シャツの上には黒いジャケットを着ている。六月だが、風が吹くと少し肌寒いのだ。時間は十時過ぎ。そして土曜日。この時間帯は、きっと今から行く店は少し混んでいるだろう。

 

 

ぷかぷかと口からでる紫煙と煙草から出る紫煙を揺らしながら十分程度歩くと、目的の店が見えてきた。予想道理、翠屋は外から見て分かるように席はお客さんで埋まっていた。

チリン、と音を立てて扉を開けると桃子さんが迎えてくれた。

 

 

「いらっしゃい。今日はどうしたの?」

 

 

「誕生日ケーキをお願いしたいんですけど、大丈夫ですか?」

 

 

「あら、誰の誕生日かしら?もしかして、彼女?」

 

 

「そんなんじゃありませんよ。知り合いの女の子です。」

 

 

「え~っと、確か……はやてちゃん?」

 

 

「今日が誕生日なんです。」

 

 

「そう。なら、まかしておいて。」

 

 

そう言って店の奥に入っていく桃子さんを尻目に、悠也は店を出た。誕生日ケーキは、だいたい五時には出来ているだろう。シオンの頭を一撫でして、悠也はデパートに足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デパートに入った悠也は、まずシオンを<ペットお預かりセンター>に預けた。

流石にデパートの中をシオンと一緒に見て回るのは警備員に止められてしまう。

シオンを預けた悠也は、エスカレータを使って二回に上がった。二階には、日常品の他にも色々な物が売っている。今日の買い物は殆どが終わった様なものだが、今から買うものが一番大事だ。誕生日プレゼント。悠也の場合は、僅か五歳にしてプレゼントは貰えない状態になった。と言っても、二度目の不思議な人生だ。不満は無い。

 

 

『アカレラ、はやての欲しかったモノって聞いたことあるか?』

 

 

『ありません。』

 

 

『だよなぁ……。男の子だったら仮面ライダーとかで大丈夫なんだろうけど。』

 

 

『はやて嬢は女の子です。九歳の女の子と言えば…………』

 

 

『言えば?』

 

 

『すいませんご主人様。現在、検索中です。』

 

 

念話をしながら色々物色していると、ある物が目に入った。

 

 

「お、これなんかいいんじゃないか?」

 

 

『流石に高いんじゃありませんか?』

 

 

「んま、いいじゃん。店員さーん」

 

 

 

 

 

 

=======

 

 

 

 

 

 

全ての買い物を終えた悠也は、チャイムを押した。

 

 

「はいは~い」

 

 

「悠也だけど、入っていいか?」

 

 

「あ、やっときた。ええよ~」

 

 

どことなく自分の名前を自分で言う事に恥ずかしさを覚えながら、悠也は八神家のドアを開いた。すると、まだ玄関だと言うのに料理の美味しそうな匂いが鼻孔を擽った。

八歳だと言うのに既に料理の腕は悠也を超えてしまった。教えたその日から、止まることなく腕が上がっていくのだ。

 

 

「おぉ」

 

 

「ふっふっふ」

 

 

テーブルを見た悠也に、はやてが自慢げに笑っている。テーブルには、華やかな料理の数々が置かれている。キッチンには、おそらくメインの……シチューだろうか。

どれもこれもが美味しそうで、口の中は勝手に唾液が量産される。

 

 

「上達したやろ?」

 

 

「本当に凄いな。さっそく一口」

 

 

フォークを取ろうとすると、横から出てきた手にヒョイと取られてしまった。

そのフォークを取ろうと手を伸ばすが、上手い具合に避けられてしまう。ならば、ともう一本のフォークを取ろうとしたが、フォークは勝手に浮かんではやての手に収まってしまった。

浮遊魔法だ。

 

 

「……こっちも上達したな」

 

 

「せやろ?」

 

 

「落ち込まにでくださいご主人様。」

 

 

これを落ち込むなと言う方が無理だ。魔法を教えて一か月も経ってないのにも関わらず浮遊魔法を今日9歳になった少女が、苦も無く使うのだ。本来なら、もっと時間をかけて習得する魔法だ。悠也は実際に時間をかけた。

 

 

「シオン、俺たちは向こうでテレビでも見よう」

 

 

「に」

 

 

お散歩用バッグから取り出したシオンを抱きかかえ、リモコンを持ってソファーに座る。

テレビを点けると、ドラマの再放送がやっていた。のんびりとシオンの頭を撫でながら、アカレラと念話をしてしまう。

 

 

『アカレラ、はやてのリンカーコアはどうなってる?』

 

 

『未だ確りとは確認できていません。魔力は間違いなくあるのですが……』

 

 

『だよなぁ……ま、使えるから問題ないのか?』

 

 

『そいですね。問題は無いと思いますが、スフィア等の魔法は使えないでしょう。』

 

 

『使えなくていいじゃないか。』

 

 

『その通りでした。すいません』

 

 

「悠也?」

 

 

没頭していたのか、はやての顔が真横にあった。

 

 

「ん?」

 

 

「シチューも出来たし、そろそろ食べよ」

 

 

テーブルには、湯気を出しているシチューが置かれていた。フォークも元の位置にある。

 

 

 

「よし、食べよう」

 

 

「うん!」

 

 

悠也はシオンを膝から降ろし、車いすを押して席に座る。レディーファーストだ。

リンカーコアの事は気にしない。忘れていよう。スフィアを作れなくてもいい。

はやてが戦う事なんてあるわけがないのだから。今は、この幸せを味わおう。

口に運ぶ料理を堪能しなが。目の前の少女の笑顔を見ながら。この幸せを……

 

 

「いただきます」

 

 

「いただきます」

 

 

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