ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

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ep.9

「ソフィア様、任務が完了しましたので、他の者たちと早く合流しましょう」

 

「その案には賛成したいのですが、さっきの攻撃で体が動かないようです」

 

今私の体は致命傷こそないが、小さい傷が無数にできている状態だ。普通の傷なら身体強化の魔法でこの場を離れることができるが、なんせ今私が負っている傷は光産の物だ。傷口から体全体が食い破られるような痛みが襲っている。こいつのせいで、今の私は魔力が練ることが出来ずに強化魔法すら使用出来ない。

 

「どうやらその様ですね。私が背負い、移動させてもらいます。今はとにかく戦場から離脱するために行動しましょう」

 

グレイフィアが私のもとに歩み寄ってくる。

本来ならこの状況で安堵するはずなのに、今日は何故か気が緩むことがなかった。今回の相手はいつも相手しているのとは格が違った。計十枚の翼を持っていた堕天使を倒したという実感がいまいち湧かない。本当に倒せたのか、いつも通りの戦法で本当に良かったのか、私の心中に唯不安のみが募り、早くここから離脱したいという焦りが理性を蝕んでいく。

 

「どうかしましたか、ソフィア様。顔色が優れないようですが」

 

「いえ、大丈夫です。今はとりあえずここから急いで離れましょう」

 

不気味だ。冷汗が止まらない。標的は倒したというのに、奴の殺気がまだ戦場に(くすぶ)っいる。

 

「ソフィア様、当初の予定通りのポイントで他の悪魔たちと合流しましょう。そうすれば、その傷も癒すことが出来るでしょう」

 

「そうですね。さっきから体が痛くてたまりません」

 

グレイフィアに肩を貸してもらい移動を開始する。しかしお互いに疲労困憊(ひろうこんぱい)なため、進行速度は遅い。それでも一歩一歩確かな足取りで進んでいるのは、死への恐怖から一刻も早く抜け出したいという焦燥感からであろう。

 

「ねぇ、グレイフィア・・・・・・私たちって本当に勝ったのかな」

 

「・・・・・・えぇ、私たちは確かにあの堕天使を打ち取ることに成功しました。だから今は―――」

 

今、何か空で光ったような・・・・・。

 

 

 

ゾクリ―――

 

 

 

 

体中に悪寒が走った。

 

「グレイフィア!」

 

「えっ?」

 

無造作にグレイフィアを突き飛ばす。ほとんど無意識だった。次に同じことをしろ、と言われても恐らく出来ないだろう。それだけ今回取った行動は奇跡的だった。だが、ただで奇跡を起こすのは虫が良すぎるのだろう。例に漏れず私も犠牲を払った。

 

「あぁ、良かった。守ることが出来て」

 

私が最後に見た景色は真っ白な光に覆われていた。そして強烈な衝撃と轟音が襲い掛かり私は意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

私は何故か突然ソフィアに突き飛ばされた。このとき私の中の体感速度が遅くなり、実際は一瞬だったのであろう、しかし私にはこの世界がとても遅く感じた。そんな世界でソフィアの浮かべていた顔を見てしまった。ソフィアが浮かべていた顔は何かを悟り満足していた様子であった。

 

「ソフィア様、何故ですか」

 

私にはソフィアが何故そのような表情をしているのか分からなかった。だから私はこの遅くなった世界の中で本人に理由を聞いた。しかし答えは返ってくることはなかった。

 

 

 

ソフィアの体に光の槍が突き刺さる。それも一つどころの話でない。先ほど私がしたように大量の光の槍がソフィアに襲い掛かっている。

爆風と轟音が発生する。爆風により私は更に吹き飛ばされ、光の槍の影響が及ばない場所まで何度も転がり停止した。そのおかげで私は一度も光の槍に当たることはなかったが、あまりの爆発音により耳が正常に聞こえなくなってしまった。

 

「ソ、ソフィア!」

 

耳の調子が不調な私はまともに歩く事すら出来なくなっていた。

こんなはずではなかった。何故、使用人の私が主に庇われている。何故、こんなにもソフィアの元に行きたいと思っているのに私の体は動いてくれない。

 

「あああぁぁぁぁぁぁ―――動いてよ、私の体。ソフィアの元に行かなくてはいけないのよ」

 

恥も外聞も捨てて自身の足を叩く。しかし唯痛いだけで一向に状況の改善へとは繋がらなかった。

その姿はまるで癇癪(かんしゃく)を起こした子供の様であった。

自身の(てい)たらくさに悔しくて涙出てくる。

 

「ソフィア、ソフィアァァ―――」

 

私は爆心地まで這いつくばって向かう。舗装などされていない道のりを這いつくばって進むことにより、私の体は勝手に傷ついていく。しかしそんな小さな事を気にしている余裕など今の私にはない。一刻も早くソフィアの元に行きたい。唯それだけが私の頭の中を占領していた。

 

 

 

 

 

「ゴクッ」

 

ソフィアの元に辿り着いた私は目を見張り固唾を飲んだ。

致命傷だ。それ以外の言葉が出てこない。それだけソフィアの状態は最悪だった。どの四肢も欠損し、ある筈の場所に存在していなかった。しかしそれだけではここまで絶望することはなかっただろう。私たちは悪魔であり、四肢の欠損などでは死なない。問題となっているのは別にある。いくつかの重要器官が抉り取られ、今なおその傷が光によって焼かれている。

絶望的だ。手の施しようがない。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい。本当にごめんなさい、ソフィア。守ってもらってばかりで、どうしようもなく弱い私で」

 

コヒュー、コヒューと浅い呼吸を繰り返すソフィアに私は懺悔することしかできない。

 

 

 

パチパチパチ、パチパチ―――

 

 

 

何処からともなく手を叩く音が響いてくる。

 

「まさかあの状況で仲間を庇うとは、些か驚いたな。ん?何だ、その驚いた顔は」

 

声のする方に顔を向けるとそこには、倒したと思っていた堕天使が悠々と空中に停滞していた。私が放った魔力弾をあれだけ浴びたというのに堕天使が負っている傷はどれも決定打には成り得なかった。

 

「もしかして俺を倒せた、なんて思っていたのか。それならば傑作だな。お前ら下等な悪魔が、最強たるこの俺に勝ったなんて、思い上がったな」

 

堕天使が何か喋っているが耳に入ってこない。私の思考が絶望から怒りへと塗りつぶされていく。

何故、お前が生きて、ソフィアが死にそうになっている。私はそんな事実を認めない。拒絶する。殺してやる、この世界でお前の存在を認めてなるものか。

この憎悪が身勝手な物だと理解している。今は戦争中だ。()()られるかの世界だ。だが、ソフィアが死ぬ事だけは到底許容することが出来ない。

 

「ソフィア様、少しだけ待っていて下さいますか。すぐにあなたを助けてみせますから」

 

ソフィアの血で赤黒く固まってしまった髪に指を通し優しく頭を撫でる。今もソフィアの体から血が流れだし大地を赤く染める。どうやらあまり時間に猶予は無いようだ。短期決戦、それ以外に助かる手はないだろう、私も彼も。

 

「ほう、どうやってその悪魔を助けるとのだ。もしや俺を早急に倒して、お前たちの本拠地まで運び治療する。なんて考えていないだろうな」

 

「いいえ、その通りですよ。私はあなたを倒して、ソフィア様をお助けします」

 

「・・・・・・・ハハハッハハハハハッ。こいつは傑作だ。お前さっきの戦闘から何も学んでないんだな。お前が俺に勝つだぁ~?無理無理、絶対に無理だ。そんな事を未だ分からないとは、所詮ガキはガキか」

 

私はまだ奴が言うようにガキなのだろう。だけどそれの何処に悪い処があるというのだ。実際に私はまだほんの数年しか生きていない。だから私は大人ぶって諦めるのではなく、諦めの悪い子供になろう。

 

「お喋りはそれで終わりですか。私には時間がありませんので、早急に死んでもらいます」

 

「吠えたな、悪魔!その傲慢さに免じて全力で相手をしてやる」

 

私は四肢に魔力強化を施し大地を駆ける。奴の体の強度は私の魔法では致命傷を負わせることは出来ないだろう。ならば奴に勝つ方法はあれ(・・)しかない。

 

「おい、戦闘中に考え事か」

 

「・・・・・ちっ!」

 

無数の光弾が迫ってくる。かわせる光弾は体を捻り回避しそれ以外の物は魔力で覆われた手刀で薙ぎ払う。

 

「先ほどの小僧と違ってお前は武器を使わずに俺の攻撃を防ぐのだな」

 

「ええ。私はソフィア様よりも強いですから。それよりもお話をしていてもよろしいのですか?もう手が届きそうですよ」

 

私はさっきまで足に纏っていた魔力の量を多くし爆発的に加速し堕天使の眼前に躍り出る。

 

「ハァッ!!」

 

限界まで強度を高めた拳を振り下ろす。

込めた魔力により雷を纏う。

これだけ接近してしまえば相手も無闇矢鱈と光弾や光の槍は使えないはず。

 

「いい、いいぞ。戦いはこうでなくては!女、お前は何だ」

 

「ソフィア様の雄一無二の使用人であり、名前はグレイフィア・ルキフグス」

 

「そうか。気にいったぞ、グレイフィア」

 

「女性に対して一方的に名前を尋ねるなんて、ずいぶんと礼儀知らずな堕天使なんですね」

 

フェイントを混ぜながら的確に急所のみを狙い撃つ。それでも一向に攻撃は通ることはない。

こちらの方が攻撃に移るのが早いはずなのに、右腕を振り上げれば右腕のみで攻撃を反らされる。

雷の恩恵で服が焦げる。

 

「そうだったな。そちらばかりに名乗らせては不公平だな。よく聞いておけよ。俺の名前は『コカビエル』、偉大な堕天使だ。敬えよ、悪魔」

 

「嫌ですね。その上からな態度に虫唾が走るので、止めてくれませんか」

 

地面の砂を蹴り上げ目潰しをしようとするが、そんな小細工など通じるはずもなく、背中の黒翼によって砂を防がれた。

近接戦闘でもどうやら相手の方が上手らしい。こっちは限界ギリギリまで強化しているというのに、コカビエルにはまだ余力があるようだ。

 

「楽しいな。足元がお留守だぞ」

 

「はっ!」

 

地面から大量の小型の光の槍が突き出る。

一刻も早く地面から離れるために、悪魔の翼を出し空へと退避する。

 

「あーあ、折角詰めた距離なのに空いてしまったな。それでお前はこれから如何する。まさかこれで終わりと言うまい。俺をもっと楽しませてくれ」

 

もう一度接近戦に持ち込むのは恐らく無理だろう。だがその必要はもうない。もう既に準備は整った。

距離が開いたせいか光弾が降り注ぐ。

 

「ほらほら、避けろ避けろ。必死に動かないと当たっちまうぞ」

 

「馬鹿の一つ覚えみたいに先ほどから光弾、光弾と、いい加減に鬱陶しいですね」

 

「小娘が粋がるのもいいが減にしろ。そこまで言ったんだ、どうなっても知らないぞ」

 

コカビエルの右手に多量の光が集まる。あの馬鹿みたいに大きな光の槍を作ろうとしているのだろう。さすがに私でもあれは防ぎきれない。

 

「そうですか。ですがあなたがいくら強くてもこの戦いは私の勝ちです」

 

「逃げ回っているだけのお前の何処に勝機があるというのだ。もしかして、さっきみたいに魔力弾でもばら撒いているのか?無駄無駄ァァァ―――」

 

「そうですね。戦闘力で私はあなたに今は勝てません。ですが、私は別にあなたを倒す必要はありません。戦にはこういう勝ち方もあるんですよ」

 

 

 

「―――起動せよ」

 

 

 

コカビエルが立っている地面に巨大な魔法陣が形成されていく。

 

「また小細工か。いつの間にこれ程の大掛かりな魔法陣を描いた」

 

「さっきの殴り合いの時ですよ。本当に無警戒で助かりました」

 

コカビエルは魔法陣の外へ出ようと試みるが、魔法陣の中には強力な重力魔法が同時に発動しているためか動くことが出来ないでいる。

 

「それで、この魔法陣はどんな攻撃魔法だ?」

 

「いいえ、この魔法陣は攻撃用ではありません。先ほど私言いましたよね。私はあなたを倒す必要がないと」

 

コカビエルの表情が変化していく。どうやらこの魔法陣がどのような効果を持っているか薄々感づいたようだ。

 

「その様子からして気づいたようですね。でも、もう遅い。さようなら」

「待てきさ―――」

 

最後の言葉を言い終わる前にコカビエルは戦場から姿を消した。

戦場が再び静寂に覆われる。

 

 

 

そう、私が仕掛けた罠とは転移魔法だ。本来ならここまで大掛かりな魔法陣は必要ない。しかし今回の相手であるコカビエルは、私が普段使用している転移魔法に登録されていなく、転移させることが出来なかった。しかし大掛かりな魔法陣を使用し、一から転移魔法を起動させることによりコカビエルを転移可能にした。

私は初めからコカビエルを倒せるとは思っていなかった。だから私は一番成功率が高い手段を取った。

 

 

 

私は重い体を動かしソフィアの元行く。

今なお、浅い呼吸と微弱ながら聞こえてくる心音に、ほんの少し安堵してしまう。

まだ、まだ生きていてくれている。

それだけが今の私を支えてくれている。だが悠長にしている時間はない。今もソフィアの命は削られている。早く治療しなくては。そのためにもまずは―――

 

「ソフィア様戻りましょう、私たちの帰るべき場所に」

 

状況は最悪に近い形であるが、それでも私は諦めない、いや諦めたくない。必ず助けてみせる。

 

 

 

 

 

 




どうでしたか??
グレイフィアとコカビエルのキャラクター像がいまいち分からないので崩れているかも。
それでもいいと言う人は今後ともよろしくお願いします。
それでは感想お待ちしております。
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