ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

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ep.10

このままでは助からない。

私はソフィアの傷の程度を客観的に見てそう判断した。並みの治療ではもう駄目だ。それにここから本拠地まで離れている。たとえ私が全快の状態でもこの状況では無理だろう。だがこんな状況を引っ繰り返すことが出来る便利アイテムがある。

そんな便利アイテムとはフェニックスの涙である。

その万能薬はどんな傷でも完治させることが出来るらしい。らしい、と私が言う訳は私自身一度も使ったことがないからである。今の私にはフェニックスの涙以外に頼れる物がない。私はそれが欲しい。だが、そんな高価な物を一兵士である私が持っているはずがない。私の中でどのようにしたらフェニックスの涙が手に入るかは考えがある。

時間がありませんね。早く行動に移しましょうか。

 

「必ず助けますから」

 

私は残り少ない魔力を利用し再び戦場を駆ける。目指すは私たちのチームが散開した所だ。私の予想が正しければこの状況を打破する鍵はそこにある。

走るただ走る。小さな希望の光を求めて。

 

 

 

駆けること数分後目的の場所に着いた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ―――確かここのはず」

 

駆けること数分後、目的の場所に着いた。そこは争った跡が顕著に現れていた。大地は抉れ、空気はよどみ、今なお燃え続けている。私は注意深くその戦場を見た。

 

「うがぁ、あがが、ごほっ。痛い、痛い。誰かいないのか、誰かこの俺を助けろ」

 

いた。あの男だ。

そこには両腕をなくした私のチームメンバーが地面に仰向けになって倒れていた。着ていた華やかな衣装は所々破れ、自身の血で赤黒く染まっている。その男が、私が探していた男と一致したことを確認すると私は男の元まで赴いた。そしてこれ以上出血しないように男の傷を氷魔法で凍らせる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「な、に、が、大丈夫ですか、だ。見てわからないのか、痛い、とても痛いんだ。だからお前、俺を助けろ」

 

「助けろ、ですか。しかし私には回復させる手段などないのですか」

 

私に回復させる手段などがあれば、一々こんな所など来ずに私自らソフィアを治している。それにこの男の態度、この状態なのに何故こんなにも偉そうなのですか、自分の状態を把握していないのですか。

そんな男の態度が私をイライラさせる。

 

「ちっ、この役立たずが。仕方がない。おい、お前、俺の内ポッケトから薬を取れ」

 

「薬ですか・・・それでは失礼します」

 

男の血に触れる嫌悪感を我慢し服をまさぐる。すると指先に何か硬い物が触れる感触が伝わってきた。私はそれを手に取り男に確認を取る。

 

「これでいいのですか」

 

「ああ、それだ。早くそれを俺に使え」

 

「これは一体何なのですか。とても高価そうなのですが」

 

「聞いて驚け、そいつの名称はフェニックスの涙だ。俺がお父様に頼んで今回用意してもらった。お前みたいな奴には一生関係ない代物だ」

 

男の言葉を聞き、私の心は歓喜に震える。いつもポーカーフェイスな私ですら、この時はニヤニヤを表情に出さないのを我慢するのに一苦労だった。

予想通りですね。この男の服装を見る限り間違いなく貴族でしょう。そんな貴族の親たちが自身の息子に何も持たせていないはずがない。

 

「そうですか・・・・これがフェニックスの涙」

 

「いい加減にしろ。早く俺を治せ」

 

「分かりました、今楽にしてあげます」

 

「は?」

 

男の首が宙に舞う。浮かべている表情は何が起きたか理解出来ていないようだ。

なに、簡単なことですよ。私はフェニックスの涙がどうしても欲しい、そして男も必要としている。しかしフェニックスの涙は一つしかない。だから殺して奪うことにしました。殺す必要があったのか?と思ったかもしれませんが、あれは私なりの慈悲です。あの男がこれ以上生き恥を(さら)さないように、前もって処分して差し上げたまでのことです。

 

 

 

「これがあればソフィアを助けることが出来ます」

 

そう信じ、私は手に着いた男の血液を水魔法で浄化する。フェニックスの涙は私が思っていたよりもちゃちな見た目をしていた。

こんな物で本当にソフィアを助けることが出来るのでしょうか。いや、今はこれに縋るしかない。

 

「ソフィア、今お助けします」

 

ソフィアにフェニックスの涙を使う。瓶から液体がソフィアの体へ垂れ、傷が治癒されていく。致命傷である臓器の部分を重点に癒す。

致命傷は全て完治したと言ってもいい。ソフィアの呼吸も幾分か楽になったように感じる。後は四肢の再生のみで傷全てが完治するだろう。

あと少し、あと少しで治療が終わる。

今も再生しようと四肢から筋肉や神経の筋が伸びていく。フェニックスの涙の効果は絶大的だ。

 

「え?」

 

さっきまで安堵していた私は再び焦りに駆られる。さっきまで継続していた治癒が急激に終わりを迎えた。

 

「何で、何で。あと少し、あと少しだったじゃない」

 

これ以上の再生の兆候は見られず、その結果ソフィアの四肢は再生せずに失うことになってしまった。

この結果は私が原因である。私が弱かったせいで起きてしまった悲劇である。ソフィアはきっとそうは思わないだろうが、私はそう思わずにはいられなかった。

 

「これから、私はどのようにソフィアと向き合えばいいのよ!どうやって報いればいいの!お願いだから・・・・・誰か答えてよ」

 

誰も私の問いには答えてくれない。ここにいるのは私とソフィアだけ。両手両足がないという事は、以前の様な生活は過ごせないという事だ。それに今は戦時中であり死ぬ確率が飛躍的に上昇してしまった。

その事実が私を傷つけた。

涙が止めどなく溢れ出してくる。

涙を流すなんていつ以来でしょうか。ソフィアに仕えて早数年、初めは嫌で仕方がなかったはずなのに、今振り返ればとても充実していましたね。

ふふふ、恋は盲目とはよく言ったものですね。

気を失っているソフィアの頭を膝に乗せて膝枕をする。

 

「ねぇーソフィア、聞こえてますか。私本当のところ初めあなたのことが嫌いで仕方がなかったわ」

 

脳裏に穏やかだったころの記憶が浮かんでは消える。あの頃の私は弱かったソフィアのことが何よりも気に食わなかった。

 

「でも、あなたの直向(ひたむ)きに努力する姿を私は買っていたのよ。あの頃からかな、私があなたを意識し始めたのは」

 

戦場だというのに穏やかな空気が流れ始める。周囲から隔離されたかのように私たちの周りが静かになり、声がよく響く。

 

「それからも色々ありました、本当に。それとソフィア、あの時のあなたは卑怯でしたよ。あんな状況で助けられたら誰だって惚れてしまいますよ」

 

思いを伝えるのは戦争が終わってからだと決めていたのに・・・・でも、もう止まれないし我慢できません。

思いが溢れて止まらない。今まではこの気持ちを制御出来ていたというのに。

 

 

 

 

 

「私は、あなたに助けられた時からあなたの事を愛していました」

 

 

 

 

 

言ってしまった。ソフィア、あなたはどう思いますか、こんな気を失っている想い人に告白をする意気地のない私のことを。卑怯と貶しますか、それとも嘲笑いますか。でも、仕方がなかったんですよ。だってそうでしょう?あなたを唯傷つけることしか出来ないような女が、あなたの寵愛を授かるなんておこがましい。それにあなたに直接拒まれるのが私にはとても恐ろしく思います。

 

 

 

だからこれが最後、最初で最後の告白。これが終われば私はあなたを諦め、この気持ちとも決着をつけます。

だから今だけは―――――

 

 

 

「愛しています」

 

ソフィアの唇に自分の唇を落とし、啄むように口づけをする。

 

「んっ、ちゅぅ、ちゅぷっ・・・・くちゅ!あむっ、ちゅぷっ、れろっ、んんっ!」

 

重ねる唇からソフィアの体温が感じられる。

ソフィアのことが愛おしい。

初めてのキスなのに、大胆に舌を突き出してソフィアの舌に絡ませる。

 

「ちゅぷっ、むちゅっ・・・・くちゅ、そふぃあぁ~、んあっ」

 

私の舌がソフィアの口内を犯していく。

いけない、この感覚はいけない。ソフィアから離れられなくなる。名残惜しいけど、このままでは私の決意が鈍ってしまいます。

 

「んぷっ!キスって凄いのね」

 

うん、これでいい。満足だ。これで私の心にも踏ん切りがつく。

もし、こんな私でもソフィアが愛してくれるのならその時は・・・・いや、そんな事など、まずあり得ませんね。

 

 

 

 

「さようなら、私の初恋」

 

 

 

 

この時の彼女の表情は年相応の物で、ひたすら悲嘆にくれている子供のようだ。皮肉にも、いつもポーカーフェイスな彼女が珍しく浮かべる表情は笑顔ではなく悲しみとなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えぇ!?

ちょっと待って。いつの間にこんな深刻な空気になっているの。それにグレイフィア近い、近い。

私の頭がグレイフィアの柔らかくていい匂いがする膝の上に乗っている。流石にこの状態は、いくら私でも恥ずかしく感じるので身動きを試みてみると、あることに気が付いた。

んっ、あれ?体が全くと言っていい程に動かない。

私の背中に冷汗が流れる。グレイフィアは今どうやら自分の世界に旅立っているようなので、彼女に気づかれないように薄く目を開けた。

これはひどい有様ですね。四肢が綺麗さっぱりなくなっているではありませんか。手足がないと食事も用を足すことも自分一人では出来ないなぁ。これからどうやって生きていこうか、いやそんな事よりもグレイフィアが無事だったことの方が重要だな。

何故、自分の手足がなくなったのにそれほどまでに落ち着けるのかだって?

実は私は案外早い段階で気が付いていたのだ。その時に確信はなかったが大体自分の状態を予想していた。だから実際に目にして、この真実を突き付けられても納得できた。この事をグレイフィアに伝えようとしたが、何故かこんなにも真剣になっている彼女を前にして起きるに起きれなくなってしまった。

それにまさかグレイフィアが私にそのような感情を抱いていたとは、些か驚きである。

最初の頃なんて、私のこと嫌い、嫌いだったのに。

そうか、グレイフィアは私のことが好きなんだ。

グレイフィアに口づけをされて鼓動が速くなる。

純粋な好意を向けられるのは、むず痒いがそれよりも嬉しい。でもグレイフィアの表情を見た瞬間に私の内から溢れ出していた歓喜は鳴りを潜めた。グレイフィアの浮かべている表情は告白などのドキドキしているような甘酸っぱい物でなく、悲哀に満ちている。

私が原因でグレイフィアが悲しんでいる。それはとても悲しいことで苦しい。グレイフィアに何て言葉を掛ければいいか分からない。

『大丈夫、この傷はグレイフィアのせいじゃないよ』とでも声を掛ければいいのか?

いや、そんな上辺だけの言葉では今のグレイフィアには届かないだろうし、より一層に彼女を傷つけ惨めにするだろう。だから今は彼女には何も言ってあげない。でもグレイフィアが心の整理が終わったらお互いに向き合おうと思う。

彼女はきっと嫌がると思うけど。まぁ、その時は力尽くで、向き合わせてみせるよ。

 

 

 

―――だから、そんな悲しそうな顔をしないで、私の大事な人よ

 

 

 

 

 

 

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