ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止 作:〇〇〇もげろ
――世界は美しいことで満ちている。
――世界は平等で誰にでも優しい。
――君が悲しい時はいつだって傍にいるよ。
――君が願えば世界は変わる。
どれも彼女が言った言葉・・・・・・・。
くだらない・・・・・・。
今思えば、偽善ばかりの言葉だ。
いつだって世界は汚く不平等だ。
僕は今、汚く不平等な世界を憎む。
数日後、僕は咲と一緒に登校していた。
「今日の一時間目の数学の宿題やった?」と、咲が話かけてきた。
会話はいつも通りなんの変哲のない会話だったが、いつもと違う所があった。
その違う所とは、咲の話し相手が僕ではなく、彼女の隣で歩いている吉田という男子生徒であることだ。
ちなみに並んで歩いている順番は、咲が真ん中を歩いてその両脇を僕達が挟んで歩いている。
「勿論やっているよ。宿題だからやって当たり前でしょ」と、吉田は言った。
彼、『
身長は高く顔も今時の女性が好みそうなイケメン顔で運動や勉強は得意という、なんでもそつなくこなし性格も良い完璧人間である。
はぁ―、奴の紹介なんかしていたら
僕は『吉田 良介』が妬ましく嫌いだ。
そして、吉田と話しているときの咲の笑顔がとても嫌いだ。
こんな醜い感情は彼女に知られてはいけないので、僕はこの感情を胸の内深くにそっと仕舞い込み、咲とほんの少し距離をとった。いや、とってしまった。
――この時、彼女ともっと積極に関わっていたならば、彼女の心の機微に気づけたかもしれないのに・・・・・。
そのようなことを考えながら歩いていると、あっという間に学校に着いてしまった。
さぁ、今日もまたイジメが始まる。
僕は漠然とそんな事を考えながら自分の教室に向かった。
教室に着いた僕はクラスメイトの視線が前の嫌悪する視線とは違うことに気づいた。
今の視線は、まるで僕に何かを期待していて面白がっているようである。
しかし、僕はその事をいつものようにくだらなく思いすぐに興味をなくした。
咲と別れ、自分の席に座るとすぐに授業開始のチャイムがなり、数学の先生が教室に入ってきた。
「吉田、挨拶頼む」
「起立、礼」
「「「お願いします」」」
「着席」
教室中には、先生の声とノートを書く音のみが響き渡る。
まるで下界と隔絶されたかのように、静寂が教室を支配する。
何で吉田が挨拶しているか、だって?理由は簡単なことだよ。奴が学級委員でクラスの代表だから「-い!」だよ。今日、朝の通学中に紹介した通り何でもそつなくこなす。「-! 聞-てい――か」本当に奴の事を考えると憂鬱にな『ドン!』
「へ?」
「おい、橘・・・・俺の授業はそんなに退屈か?」
顔を上げると目の前には額に怒りマークを浮かべた数学の先生がいた。
どうやら先生は大分怒っているらしい。
しまった。ここは素直に謝っておくべきか。
「いや、そう言う訳ではな「は・る・ちゃ~ん、ボーっとしていたのだからこの問題解りまちゅよね」
僕が言い訳をしているとクラスメイトから僕の神経を逆なでするような余計な言葉が聞こえてきた。
ちっ、本当に余計なことしか喋らないな。
僕が苛々していると、
「そうだな。じゃあ、橘この問題解いてみろ」
そう言って、先生は黒板に数学の問題を書き始めた。
なんだよ・・・こんな問題解けるわけないよ。
そして黒板に書かれている問題を僕は解くことが出来なかった。
そうすると小声で、
「ダッセー」「本当に気持ち悪い」「何で学校来ているの?」「クスクス」
などの僕に対しての悪口が聞こえてきた。
今の事は、考え事をしていた僕が完全に悪かったので居たたまれなくなり、咲のほうを、向いてしまった。
―――「本当に、キモチワルイ」―――
「えっ?」
僕は咲が言った事が直ぐに理解できなかった。
そんな僕は授業に集中出来るわけもなく、考え続ける。
(なぜ、咲まで僕にそんな事を言うの・・・・・・・・。
どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして?)
いくら考えてもその答えは分からなかった。いや、分かりたくなかった。
そんな事をし続けていると、あっという間に放課後になってしまった。
僕はその事に気づき、咲の元まで行こうとしたが、教室には誰もいない。
その空間の中で、僕はポツリと呟く。
「何故なんだ・・・・・・咲・・・・・・・」
そんな彼の姿はまるで親に見捨てられた哀れな子供の姿と重なって見えた。
このままでは、いけないと思い、咲に電話を掛けると、直ぐに彼女が出る。
「もしもし、春だけど今時間空いてる?空いているなら今から会えるかな?」と、
僕は少し緊張して言う。掌には汗がにじんでいた。
「うん、私まだ学校にいるからいいよ。場所はどこがいい?」
「真剣な話をするから、できれば人があまり来ない所がいいな。どこか良い所ない?」
「じゃあ、音楽室なんてどう?」
彼女が無難な所を提案してくる。
「うん。この時間な音楽室に生徒は殆ど来ないね」
「じゃあ、今から音楽室に向かって待っているね」
そう言って彼女は電話を切った。
咲の態度が普段通りだったから、少し安心してしまう。
僕も音楽室に行くために、教室をでる。
「がっ!」
ガツンと大きな音が廊下に響くと同時に、頭に強烈な衝撃を受けて僕の意識が途切れていく。
今から咲に会わなくてはいけないのに。何故、こうも上手くいかないんだ・・・・。
―――ごめん咲。―――
そして僕の意識は完全に途切れた。
目が覚めるとそこは、目を凝らせばやっと見える位の暗い場所だった。
「つっ!ここは一体どこだ?僕は確か咲と会うために教室を出たはず・・・」
急激な頭の痛みにボートっとしていた頭が覚醒する。
まずは、自分の状態を確認すると、手と足が縄みたいな物に縛られて身動きがなかなか出来なくなっていた。
次に周りの状況を確認すると、微かな女の喘ぐ声が聞こえてくる。
「これは流石にヤバそうだな。早く如何にかして、此処から出ないと」
まだ頭が痛むが、今自分がいる所は危険な所だと判断した僕は両手足が縛られているので、匍匐前進しながら部屋の中を移動してみることにした。
部屋を移動してみて気づいた事は、僕が今いる部屋はあまり大きくなく、大体四畳半で窓はなく更に部屋の出口となりそうな扉は、今も喘ぎ声が聞こえてくる扉のみである。
この部屋から出るために、あの扉から出なくてはいけない。
はっきり言って、とても嫌な予感がしている。しかし使える扉はこれしかないので、行くしかない。
「よし、行くか」と、誰もいない部屋ので、自分自身で勇気づけた。
ズルズルと自分の体を引きずって扉に近づいて行く。
あと少し、あと少し、と思いながら進んで行く。
ガチャ―――
僕が扉の近くまで行くと、扉が開く音が聞こえてきた。
そして、僕にとって以外な人物が扉を開けて部屋の中に入ってきた。
「よぉ~。橘ぁ~、元気にしていたかぁ~?」
―――吉田 良介―――
「何でお前がここにいる?」
「あれあれ?橘君、なんかキャラ違うくね?」
吉田は、いつものような清々しい笑顔でなく、人をどこまでも馬鹿した笑みを浮かべている。
「そんな事は、どうでもいい。僕の質問に答えろ」
ドン―――
急にお腹に強烈な痛みが走る。
「ゲホガフ、ゴホッゴホッ、エグウグ・・・・・おえぇ」
その強烈な衝撃のせいで僕は咳ごみ、我慢できなくなり嘔吐してしまった。さっきの、僕の態度がよほど気に入らなかったのか更に蹴られ続ける。
「橘、今自分の立場理解しているのかな?」
「お前みたいなクズ野郎に捕まった哀れな子羊ってところか・・・」
「ちっ!」
ドス―――
舌打ちと同時に蹴られたが、今回は蹴られるのが分かっていたから、なとか我慢でき睨みつける。
「まぁ~別に、いっか。お前の質問に答えてやるよ。お前にある物を見せるためだよ」
そう言って、奴は僕の襟を掴んで引きずりながら移動させた。
「あの光景を見て、お前がどんな顔をするのか楽しみだよ」と、奴は耳元で言った。
それを聞いた僕の心は見てはいけないと、警報を鳴らし始めた。
引きずられている間に如何にかして逃げ出そうと考えたがアイディアが全然出てこない。
今僕がいる所はあまりにも生活感がなく、縛っている縄を切るための鋏すら置いてない。これ以上考えても埒が明かないと考えて大人しく引きずられることにした
しばらくの間引きずられると、ある一室の前まで連れてこられた。
「この部屋の中に見せたい者があるんだ」
部屋の中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。背中から嫌な汗があふれ出してきた。
ヤメロ・・・ヤメロ。ヤメロ、ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ。
今の僕の顔は、相当奴には
「アアアあアアあアアああああ嗚呼ああああアアアあアアアア嗚呼アアアアあああああああああああアアアアアアア嗚アアア嗚呼アアアアアアアアアアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああアアアアあああアアアアアアぁぁぁぁアアアアアア」
「そうだ!いつも、すまし顔をしていたお前の、そういう絶望した顔が見たかった。どうだ!!喜んでくれたかな?」
隣で奴が何か喋っているが、そんな事を気にしている暇はない。
部屋の中には地獄が広がっていた。
僕はその地獄を直視することが出来なく、目を閉じる。
この時、目を閉じることにより広がっている地獄の光景を強引に分からなくしようとした。
しかし、部屋に充満する匂い、知っている女性の声や何かを打ち付けている音で、嫌でも理解してしまう。
部屋では僕と付き合っている咲が見知らぬ男性に抱かれている光景が広がっていた。
その光景を理解していけばいくほどに、涙が出てきて、心が抉られているかのように痛い。
痛い、イタい・・・・イタイよ。心が引き裂かれるように痛い。こんなの耐えることなんてできない。心が壊れちゃう。
僕は彼女の行為が終わるまで、唯々見ていることしかできなかった。
行為が終わると咲がこちらにやって来る。
「あ、吉田君来てたんだ。夢中になり過ぎて気づかなかった。それにしても、遅かったね。残念だけど終わっちゃったよ」
「いや、今日は別件で来ただけだから」
そう言うと、咲は残念がった。
ふと顔を上げると、咲と目が合った。
「春ちゃんを連れて来たんだ・・・・・」
「なんだ、嫌だったか?」
「別に嫌じゃないよ。丁度私も話したかったし」
そう言って咲は、僕と同じ視線まで屈んだ。
「ね~、春ちゃんは私の事どう思ってる?」
「そんなの決まってるよ。咲は、僕の世界の全てで、とても大切な人。そして一番愛おしいと思える彼女だよ。咲も僕のことを、そう想ってくれていたんじゃないのか?」
僕は彼女の言う答えが薄々分かっていたが、そう聞かずにはいられなかった。
「私は勿論、初めから大嫌いだったよ。男なのにまるで女の子のような可愛い顔、さらさらの髪、大きな茶色の綺麗な目、華奢な体、その全てが大嫌いだった。これが私の本心。どう?酷い女でしょ、私」
「・・・・・・・・・・・・・・」
今僕の瞳に映る世界は色がなく白黒の世界でできていた。この世界では全ての事柄に無関心になる。何も言葉を発することが出来なかった。
ただ、咲の本心を聞いて僕の中の何かが決定的に壊れたことについては、ハッキリと分かった。
そこから、どうやって逃げ出し、またどうやって家まで辿り着いたかは、記憶にない。
ただ、言える事が一つある・・・・・・・・・・。
それは『橘 春』という少年の世界は意味の無い物になった、と言うことである。