ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

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今回は少し長めです。
戦闘書くの難しすぎ。
無茶苦茶なこと書いてるかもしれません。そこはスルーという事で・・・・・




ep.20

「それで、私はどれだけの時間を稼げばいいのですか」

 

マリアンヌが、詳細に自身がなすべき事を聞いてくる。私は迅速に転移魔法が完成する時間を予測して彼女に伝える。

 

「十五、いや十分で完成させてみます。だから、それまでドライグの足止めをお願いします」

 

無理難題を吹っかけている自覚はある。だが、魔方陣に登録されていない人を転移させるのには膨大な魔力を必要とする。だが、今の私達の魔力は風前の灯程度しか残っていない。だから、一から私たちの事を登録していかなくてはならない。

 

「そんな顔をしないで。ちゃんと分かっているわ、これは必要な事。だから今はあなたの仕事に集中しなさい。私も自分の役割を果たしてみせるから」

 

マリアンヌは、そう私に言い残し天に飛び出して行った。その後ろ姿を見送りながら、私もすべき事に集中する。

 

「それでは今から転移魔法の準備に移ります」

 

私、ガブリエル、レヴィアタン、ベルゼブブ、ルシファーの順に円を作り出すように手を繋ぐ。だが、そこには一つの空席が出来上がっていた。勿論そこはマリアンヌの席だ。ここにいる誰一人、彼女が役割を全うすることを疑う者などいなかった。

転移魔法の完成には私たちが作り出した円を完成させる必要がある。別にこの条件はマリアンヌを入れなくても円を完成させることは出来る。これは私の独断である。だが、私が取った行動に誰も反対などしなかった。

 

「私たちは成し遂げてみせます。だからあなたも必ず戻ってきてください。そうじゃないと私達も帰れませんから」

 

私達はマリアンヌの軌跡をたどるために、天を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空には炎が舞っている。だが、そのどれもがマリアンヌを捉えることが出来ずにいた。

マリアンヌは体を雷へと変化し空中を縦横無尽に駆け回る。光の速度にドライグは付いてくることが出来ずに、無闇矢鱈に火球を吐き続ける。

一見マリアンヌが有利かと思われるが、それは大きな間違いだ。マリアンヌはドライグの鱗を突破するための武器を持っていない。それに対してドライグの余力はまだまだ有り余っている。奴は一発、一発当てればマリアンヌを沈めることが可能だ。

今はまだ良い。だが、いずれはマリアンヌの魔力が限界を迎える。そうなれば彼女が纏っている雷の鎧は剥がれ落ち、その機動力は失われる。

ようは時間の問題である。

 

「ちっ。さっきから、ちょこまかと逃げ回りやがって。まるで羽虫の様だな」

 

「はぁはぁはぁ、そう言うあなたは、突進することしか出来ない猪の様で滑稽です、よっ!!!」

 

お互いがお互いの神経を逆撫でする。

マリアンヌは依然とドライグの体の周りを飛び回っている。

 

「ええい!!!いい加減に墜ちろ」

 

「あっ、そこ気を付けてくださいね」

 

 

 

 

 

 

ガァァァ―――ン!!!

 

 

 

 

 

 

突然、爆発音がドライグの体中から響き渡る。

よく目を凝らしてみると、ドライグの周囲には大量の魔方陣が設置されている。その一つ一つに籠められている魔力は微々たる物だが、如何せん音量と光量が激しい。

これらの魔法は威力を追求したものではなく、相手の三半規管を一時的に麻痺させることが目的だ。

 

「これだけの小規模の魔法を展開し続けるのも今の状態ですとかなり堪えますね。でも、今の私にはこれぐらいの事しか出来ない」

 

マリアンヌは、これぐらいの事などと言ったが、それは過小評価という物である。確かに数十の魔法を設置することならば、上級悪魔のほとんどが出来る。だが、今彼女が設置した数は数百個だ。これを維持するためにはかなりの集中力と魔力を必要とする。

マリアンヌの魔力はガス欠寸前である。そんな彼女がこれだけの魔法を展開しているのだ。

足りない。魔力が全くと言っていい程に不足している。不足しているのであれば補わなくてはならない。

では、一体何で補っている。彼女にこれ以上削れる物などない。いや、一つだけある。

生命エネルギーだ。

今、マリアンヌは自身の命を削ってまでドライグを翻弄している。

だが、それだけの覚悟と信念を込めた魔法であるのにも関わらずに、どうやらドライグの足止めにもならなかったようだ。

 

「グガガガガガァァァァアアアァァ!!!」

 

爆煙の中からドライグの紅の翼が突き抜ける。その翼から巻き起こる突風により煙は忽ち霧散してしまった。

 

「はぁ、あと八分ですか。本当に厳しいですね。でも行きますかっ!!」

 

マリアンヌは弱音を少し吐き出し、ドライグに突貫した。

後の事など考えない。常に限界まで振り絞れ。そこまでして初めてドライグの気を引くことができる。

万全の状態ではないことが悔やまれる。だが、悔やんでも仕方がない今出来る全てをつぎ込む。

マリアンヌの右手に雷の槍が発現する。それをドライグに矛先を向け、魔力で強化された腕力に任せて投擲する。

 

「この程度の攻撃なら受け止めてやる」

 

ドライグは両の腕を前に突出し槍を掴もうとする。その表情は余裕であり自身が最強であることを疑わない。

嗚呼、確かにドライグは最強に部類するのかもしない。だが、またそれはマリアンヌにも当てはまる。そんな彼女が単に効果の見込めない技を使うであろうか。

 

答えは否である。

 

「分かれて」

 

雷撃の雨が降り注ぐ。

 

「なっ!!!」

 

雷槍が幾重にも分かれる。その様はまるで雨のようだ。

ドライグの体を雷の力が込められた針が無数に打ち付ける。今回の攻撃は目くらましが用途ではない。

ドライグの体表は固すぎる。鱗を構成している細胞が幾重にも頑丈に交差し螺旋しているのだろう。だが、どんなに固くても綻びがあるはずだ。

 

「それを、この攻撃で見極めたいところね」

 

広範囲における極小の雷撃の雨がドライグの弱点を洗い流してくれるはずだ。そのために一時もの瞬きですら許されない。

目を凝らせ。どんな些細な事でも見逃すな。見逃せばその時点で死が確定する。どこか違いがあるはずだ。

だが、現実は非情である。

 

「こんな、俺にこんな攻撃が効くかぁぁぁぁぁああああああ・・・・・・!!!」

 

ドライグが魔力を体に纏わせる。それだけで絶対防御の完成だ。

最上級のドラゴンはその存在自体が反則級だと、誰かが言っていた。確かにこれは反則だろう。ドライグの技は全て一撃必殺、鱗は強固であり、どんな攻撃も通すことを許さない。

 

「これは予想以上ですね。どうしたらいいんだろう・・・・まぁ、やることは決まっていますか」

 

兎に角攻撃だ。兎に角、攻めて攻めて、ドライグに攻撃をさせてはいけない。再び雷槍を発現させ両手で握りしめる。

今の状態でどれだけやれるかは分からないが更に空中に数十個の魔力弾を作成し待機させておく。

 

「まだ諦めないのか。そのしぶとさに免じて一瞬で燃やし尽くしてやる。痛みは感じない、唯死という結果が付いてくるだけだ」

 

「それは遠慮しますね。私にもまだまだやりたい事がありますから」

 

熱を持った空気が重くなる。

マリアンヌの額から汗が滲み出る。瞼に汗が入ろうが、そんな事で集中を乱すほど彼女は愚者ではない。

あと、三回。大小関わらずに行使できる魔法の数。この制限を超えて行使するのであれば自身の死が決まる。

はぁ、本当に強者という立場は損な役割を回されますね。マリアンヌの本心は今すぐでも逃げたい。だが彼女の立場がそれを許してくれない。それにマリアンヌは仲間を見捨てて自分だけ助かるのを良しとしない。この状況でも彼女はその優しさを貫き通す。

マリアンヌのなけなしの魔力では先ほどの超高速戦闘はほんの数秒が限界だ。だからここぞという所以外の場面で使用すること出来ない。

一撃もくらわずに、更に使用できる魔法の残数は後三回が限度、速さを生かした戦闘は出来ない。戦闘に対する制約がマリアンヌを縛っていく。

それでもやる。やらなくてはならない。足りないものが多すぎるが、それでも彼女は進み続ける。

ドライグの紅い巨体と白がぶつかり合う。いや、あれがぶつかり合うなんて烏滸(おこ)がましい。あれでは巨大な岩を楊枝(ようじ)で突いていると同じではないか。

先ほどまでのスピードがないマリアンヌは着実に追い詰められていく。

だが、それでもマリアンヌは自身の周りに滞空している魔力弾を使いドライグを翻弄する。

魔力弾が狙うのはドライグの目と口である。ドライグの目にぶつかる前に魔力弾は強烈な光を発しドライグの視界を奪う。その間にマリアンヌは雷槍を使いドライグの翼膜を傷つけ続ける。

 

「離れろぉぉおおおお」

 

ドライグが体の体温を急上昇させる。明らかに生物が絶えられる温度ではない。マリアンヌは離れようとするが体が鉛のように重く、思うように動かない。そんな彼女に対し無情に襲い掛かる熱風。

 

「ツっ!!!」

 

何とかドライグから離れることが出来たが、やはり無傷とはいかなかった。

マリアンヌの美しかった顔の左半分が焼け爛れているのだ。その傷は熱を持ち赤黒く痛々しい。

だがそんな傷を負っているというのにマリアンヌ自身は冷静である。

不味い状態になった。右の視野がかなり狭まってしまった。さっきの熱風で右目の眼球にダメージが通ったのだろう。それに右半身の感覚が無い。これが今だけなのかそれとも一生ずっとこのままなのかは分からないが今は気にする暇はない。

左目だけでドライグを見つめる。相手より遅く行動していては命がいくらあって足りない。集中しろ、相手の初動を見逃すな。

 

「いい加減に燃え尽きろォォォォオオオオ!!!」

 

ドライグが全方位無差別に炎を出す。紅蓮の炎がマリアンヌに襲い掛かる。威力はそこまで高くはない。十分に防げる防壁を張ることが可能だ。だが、マリアンヌに残された魔法使用可能回数はたったの二回(・・)である。それなのにおいそれと使用しても良いものか。いや、いい筈がない。

だから、マリアンヌは己の体のみで炎を防ぐ。

 

「ぐっ、アアアアアアァァァァァァ―――」

 

肉が焼ける音が聞こえる。肉が焦げる臭いがする。痛いという感情しか頭の中に浮かばない。それでもこの炎に耐えなくてはならない。だが、このままではいくらなんでも耐える事など出来ずに燃えカスになってしまうだろう。だから彼女はこのタイミングで使うことにした。

 

 

 

―――フェニックスの涙

 

 

 

これは決して回復アイテムなどではない。これは再生アイテムだ。回復アイテムを使用しても腕は生えてこない。原則として無くした物は返ってこない。だがフェニックスの涙は肉体の再生点でのみ、その奇跡を起こすことが出来る。

しかしこれを使うという事は炎による消失と、フェニックスの涙による再生を連続的に行われるという事を示す。それはマリアンヌに激痛を及ぼす。

この身にはただ一度の敗走すら許されない。だからそうなるのを理解しながら、それでもマリアンヌは前に進むのを止めない。

マリアンヌは懐から小さな赤い瓶を取り出す。その瓶の中は透明ながらも確かに液体が入っていた。

マリアンヌは瓶の先端を親指でへし折り内容物を口に入れる。

 

「んっ、ん・・・・ゴク。これで暫くはもつでしょう」

 

傷が治り、また焼かれる。それの繰り返しの中にいる。

炎に焼かれる中でマリアンヌは次の行動に移る。先ほどまで瓶を握っていた手にはもう既に瓶がなく、その代わりに白色の魔方陣が発現していた。

魔方陣には青白い雷が徐々にだが集結し始めてる。だが、その雷撃も炎によって消されようとしている。そんなことをマリアンヌが許すはずがない。

彼女は自身の体を使い両腕を死守しようと試みた。

背中が熱い。ただ熱い。

だが、マリアンヌは必死に耐え続ける。己を削り技の完成を待つ。

後少しだ。あと少しで目的の基準まで達成する。

先ほどまではあまり目立たなかった雷撃が激しく輝き始める。雷撃を縮小し掌に集め、霧散することを防ぐ。少しずつ炎の勢いは衰え、遂に眼前の炎は取り払われた。

 

「今だ!!」

 

マリアンヌは蓄え続けた雷撃を周囲に放ち、ドライグを囲むように雷撃の檻を作った。格子の一つ一つに膨大な電力を蓄えられている。

だがこれでもまだ足りない。

 

「こんな物で、俺を捕らえたつもりか。愚かだな」

 

ドライグが嘲笑う。俺にこの程度の檻は何の意味も果たさない。そんなことはマリアンヌも承知の上だ。この程度の檻で閉じ込めておける程度の敵ならば最初から、そうしている。

だからマリアンヌは次の魔法を行使する。

再びマリアンヌの右腕に膨大な量の雷が収束する。雷が槍の形を形成し始める。今からマリアンヌが使用しようとしているのはダルクが使用した雷槍の魔法である。ダルクの魔法はお世辞にも成功とは言える状態ではなかった。だが、マリアンヌは完全にこの魔法を完成させようと魔力と言う名の生命エネルギーを燃焼し練り上げる。

 

「ええ、勿論理解しています。だから私はどうしたらあなたを倒せるか考えに考えました。あなたの鱗は今の私では到底貫ける物ではありません。では内部からならどうでしょうか」

 

マリアンヌの言葉にドライグが僅かにだが反応する。マリアンヌはその僅かな反応を見逃さなかった。

流石にドラゴンでも内臓は生身の状態だ。そこにダメージを与えることが出来れば少しは戦況が変わるかもしれない。その願いにマリアンヌは全てを賭ける。

 

「私の得意としている魔法は雷。それを生かした体内からの攻撃方法、あなたに分かりますか。まぁ、分かったとしても、もう下準備は全て終わっているので手遅れですけど」

 

ドライグが忌々しくマリアンヌを睨み付ける。それを露程も気にせずにマリアンヌは魔法の完成に努める。

槍の大きさが自身の体を優に超え大気を震わせる。ここら辺が限界である。これ以上維持できる余裕がマリアンヌにはもうない。

 

「限界ね。だからこれで決める」

 

 

 

 

―――電撃破槍(Donner Zersörung Speer)―――

 

 

 

 

マリアンヌは雷槍を投擲する。

ドライグはそれを止める事などしなかった。理解しているのだ。マリアンヌが投擲した槍ではこの鱗に傷をつける事は出来ても貫くことは出来ないことを。

だが、それはマリアンヌにも言える事である。だから、彼女が狙ったのはドライグではない。

 

「ガァァァァァァアアアア」

 

ドライグが吠え空気が震える。ドライグの体から黒い煙のようなものが体外へと放出する。

 

「これは、何だ!!!貴様何をした」

 

「やっと、効果が・・・表れましたか」

 

マリアンヌは額に汗で張り付いた白い髪を無造作にかきあげた。その表情は普段から病的に白かったが今は更に酷くなり土色をしている。呼吸も弱弱しい。無茶に無茶を重ねた体が悲鳴を上げる。それをマリアンヌは、後少しだ、と己の肉体に言い聞かせ動かす。

 

「何、簡単な事ですよ。よく己の体から出ている物を見てください」

 

マリアンヌはそう言い、ドライグはその言葉に従い黒い煙を凝視する。ドライグの目が見開かれる。この様子からすると、どうやら気づいたようだ、今自分の体を蝕んでいる物の正体を。

 

 

 

―――砂鉄

 

 

 

それが正体である。大量の砂鉄がドライグの体の血管やリンパ管などという管という管や内臓全てを傷つけながら体外へ吐き出さられているのだ。だが、何時の間にこれ程の量の砂鉄をドライグの体内へと侵入させたのだろか。

その謎の答えは魔法である。

マリアンヌの残り三回のうちの一つの魔法、それを使用し大量の砂鉄を生み出し、ドライグが気づかないように空中に薄く散布したり、魔力弾の中に圧縮した砂鉄をドライグの口へ放り込んだりした。そうして体内に取り込まれた砂鉄たちは肺へ行き肺胞を通じて毛細血管へと侵入する。もしくは胃の中に溜まっていくかのどちらかである。

そしてマリアンヌは自身が作った雷の檻を簡易的なコイルへと見立てた。電流の流れたコイルの中には磁界が存在し、それに砂鉄は引き寄せられる。

だが、問題が生じる。大量の砂鉄をかなりの速さで動かすためには檻の電流が足りていなかったのだ。

だからマリアンヌは雷槍をドライグに向けて投擲したのではなく、檻に向かって投擲した。そうすることによって強引に檻の電力を底上げしたのだ。

 

「・・・・・・私の負けですね」

 

「そうだな、貴様の負けだ」

 

なぜかマリアンヌが敗北の宣言をしている。

これだけしても駄目だったか。

眼前には確かに少し息が上がり、口から血を垂れ流しているが、それでもほとんどダメージを感じさせないドライグがいた。

どこからどう見てもマリアンヌの負けである。そんな状況だがマリアンヌは不敵に笑う。

 

「でも、勝利を掴んだのは私達(・・)です」

 

「それは、どうい―――」

 

「マリアンヌ!!!準備完了しました」

 

ドライグの声が掻き消される。突如マリアンヌの後ろにミカエルたちが表れる。どうやら転移魔法の準備が整ったらしい。それを認知したマリアンヌは急ぎミカエルとダルクの手を繋ぎ転移魔法を使用しようとする。

だがドライグも見す見す見逃すわけがなかった。ドライグの体から大量の魔力が溢れ出し、周辺のマリアンヌの魔力の波長を乱しにかかる。

そのせいかマリアンヌ達の転移魔法が発動するまでにタイムラグが出来てしまった。

その間にドライグが火球を放ってくる。

この攻撃をくらってしまったら転移魔法は失敗に終わる。だが、ここには防げる者などいない。全員、限界などはとうに超えているのだから。誰もが絶望した。

 

 

 

―――Protection―――

 

 

 

 

「あーあ、やってしまいました」

 

マリアンヌが炎の前に立ちはだかる。そして両腕を突出し白い魔法陣を展開している。

この時マリアンヌの何か重要な物が燃え尽きた。だがそれに構わずにマリアンヌは防壁を張り続ける。分かっているのだ、生命エネルギーを全て使い切った自分はもう死人だという事を。

転移魔法が発動し、マリアンヌ達を魔方陣が包み込み、光が溢れ出す。

それを確認しマリアンヌは瞳を閉じる。

これで自分の仕事は終わりであるかのように穏やかに耐えがたい睡魔に身を任せる。

心残りは沢山あるが、後悔ない人生だったに違いない。

こうしてマリアンヌは人生の舞台から退場することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が、私が知っているマリアンヌの最後です。それでどう思いましたか」

 

ミカエルが先ほどとは違い疲れた笑みを見せてくる。彼は悔いているのだろう。この様な結末を迎えてしまったことを。だが、悔いているが引きずってはいない。ミカエルの瞳には強い意志が籠っているのだ。

そんな彼に私は思わず感嘆してしまった。

 

「どう思うと言われましても、普段私に見せくれるお母様と違うのでただ驚きでいっぱいですよ」

 

ミカエルが語ったマリアンヌの印象が私の記憶しているお母様とあまりにも違う。

ミカエルが語ったマリアンヌは魔王の妻であり、前線に立ち続け自身を犠牲にし、ミカエル達を助けた勇敢な女性。

だが、私の中での彼女はそうではない。彼女は私に依存し、私も彼女に依存する関係を構築していた。お互いが支え合う。そう言えば聞こえは良いが、悪く言えば、私もお母様も弱く誰かに助けてもらわなくては生きていけない弱者である。

 

「そうですか。あなたから見て彼女はどの様に映っていましたか」

 

 

そんなの決まっている。

 

 

お母様と過ごした日々が蘇ってくる。それを一つ一つ大切に吟味し噛みしめる。これはもう二度と戻って来ない日常だ。彼女と過ごした日々はどうしようもなく甘く青臭かった。

お母様が笑い、泣き、少し困った顔をする。どれもこれも私の宝物である記憶である。

 

「とっても寂しがりやな唯の女の子ですよ」

 

「ふふふ、もしかしたらそちらの方が本当の彼女なのかもしれませんね。思いの丈の全てを飲み込み戦場に立っていたのかもしれない」

 

ミカエルが優しく微笑む。それにつられ私の頬も緩む。

周りの悪魔達はお母様の事を完璧だと揶揄するし私の印象を否定するかもしれないが、目の前のミカエルは肯定してくれた。それがたまらなく嬉しかった。

 

 

 

コンコン―――

 

 

 

扉が叩かれる音が聞こえる。どうやら誰か来たようだ。誰か、と言っても、この時間に此処を訪れるのは一人しかい。

 

「ソフィア様、昼食をお持ちしました」

 

彼女はそう言い部屋の中へと入ってくる。

 

「あなたは・・・・」

 

グレイフィアは私の部屋に天使がいることに警戒心を一気に引き上げる。それを私は左手を振ることで大丈夫だと、グレイフィアの警戒を解くように指示する。

 

「どうやら、お話はここまでのようだね」

 

ミカエルが椅子から立ち上がり部屋を後にしようとする。

話す雰囲気ではなくなったか、それとも話す事全てを語ったのだろうか。いや、どちらともだな。

 

「ああ、そうだ、最後に。私はマリアンヌと同じぐらい、彼女が愛したあなたを信用していますよ」

 

そう言い残しミカエルは部屋を後にし、それとは逆にグレイフィアがこちらに近づいてきた。

グレイフィアの表情は怪訝なものだったが、私の顔を見るなり優しく微笑んだ。

 

「ん?グレイフィア、私の顔に何か付いていますか」

 

「ええ、笑みが付いていますよ。何か良いことでもありましたか」

 

グレイフィアにしては珍しい問の返答だ。以前のグレイフィアならこんなことは絶対に言わない。これはいい方向に信頼関係を築けている証拠だな。

 

「そうだな。あったよ、良いことが」

 

私はそう言い。グレイフィアの手を握る。

少し寂しい。お母様の事を思い出しせいか、無性に心細く感じてしまう。もしかしたらグレイフィアもお母様と同じように私の前から消えてしまう時が来てしまうかもしれない。

だからグレイフィアの手を握り、確かにここにいる事を確かめる。

 

「そうですか。それはよかったです」

 

嗚呼、そうか。私がやるべき事、したい事は既に決まっていたんだ。

ただ、守りたい。グレイフィアを守りたい。この世界の全ての災厄から彼女を助けたい。

この時初めて彼女をきちんと見たような気がした。

もっとグレイフィアを見ていたい、感じていたい。

 

 

 

だから、もうこの体には敗走は許されない。一度で勝てないのならば、十度繰り返せばいい。十度繰り返して勝てないのならば、百度繰り返せばいい。そうして未来永劫、永遠に、勝つまで繰り返す。

 

 

 

 

 

 

 

―――永遠に勝つために―――

 

 

 

 

 

 




次からはソフィアが主人公です。
あれ??どんなキャラやったっけ??



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