ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

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久々の投稿かな・・・・・・
時間は少しは確保出来ているんだが、モチベーションがなぁ。


今回はかなり無理があると思います。
それでもよければどうぞ。


ep.21

穏やかな風が頬を撫でる。それだけで感慨深い。

広々と広がる野原、所々に咲いている花々たち。それは決して華やかな光景ではないが、趣深く素朴なまた違った美しさを感じる。

 

「あぁ、この光景は何時まで経っても変わらないな」

 

その光景と比べて、僕達は変わってしまったのか、それとも変わっていないのか。恐らくだが変わってしまったのだろう。この戦争で僕は大人になった。そしてお母様はもういない。

瞳を閉じれば、仲睦まじい二人の親子が楽しそうに笑っているのが脳裏に焼け付く。少女のような少年が野原を駆け巡り、それを追いかける母親。優しく暖かい雰囲気を醸し出している。もう二度と叶いはしない遠い日の残骸だ。

ここは以前、よくお母様とピクニックに訪れたものだ。

ここに来たのは自分の決心を固くするためだ。

怖い、本当は逃げ出したいほど怖い。

グレイフィアの前では気丈に振る舞っていた。こんな情けない姿は主として曝してはいけない。だけど、何時までも気丈になんて振る舞えない。夜、寝る前には静寂が襲い掛かってくるようで一人だと満足に寝れない。耳元で誰かが呟いているようで怖くて寝れないんだ。こんな姿、無様以外のなにものでもない。自分で自分の滑稽な姿に憐れみすら覚えるぐらいだ。

だが、そんな生活ももう終わりだ。

あと一回の戦場で全てが終わる。僕たちが勝利をもぎ取り生き残るか、ドラゴンが勝利を収め僕たちが死ぬかだ。

 

 

 

 

 

 

 

『あまり無理しないでよね、春』

 

 

 

 

 

 

 

頭の中で女性の声が響く。

 

「大丈夫だよ。無理はしない。それにトワ(・・)も手伝ってくれるんでしょ?」

 

『それはそうだけど・・・・・。それでも心配なのよ』

 

頭の中でトワの心配している顔が手を取るように把握できる。思い浮かべた表情があまりにも彼女が普段浮かべている表情と不釣り合いなため、思わず苦笑してしまう。

 

ん?どうしてトワとそんなに簡単に意思疎通出来るのかって?

 

それは神様特典のお蔭だよ。トワはきちんと僕の願いを聞いてくれていたよ。ただ、トワの全てを流石に貰ったのではなく、彼女のほんの一部の力を貰い受けた。その力が僕の中で意志を持ち一人の人格として成長した。それが夢に出てきたトワの正体である。だから彼女はトワであってトワではない。

そんな彼女がどうしてこのタイミングで出てきたのかと言うと、端的に言えば僕の補助が目的である。

ここで一つ質問しよう。僕が手足を移植したのはほんの数日前である。そんな僕が自身の力だけで動くことが可能であろうか。

答えは簡単だ。勿論、否である。

だからトワに助けを頼んだ。それにこれは外面的問題ではなく、内面的問題なため彼女以外に頼ることが出来ない。

トワに頼んだ事は三つだ。

 

一つ目はこの体に残った、たった一つの魔法を構築し、僕の代わりに行使する事。その間僕は自身の体を動かすことに集中することが出来る。

 

二つ目は神様特典で手に入れた力の制御である。今まで僕は特典がどういった物か全然把握していなかったが、トワにどの様な力なのか、発動のための条件などを教わった。

まぁ、発動の条件は今の僕一人では満たされなかったが、そこはトワがカバーしてくれるらしい。

まぁ、どういった能力かは後々紹介するよ。きっと驚くものだと思うよ。

 

依然として僕は弱者のままである。

確かに僕はお母様の手足を移植したことにより魔力を通す管が太くなり魔法を使えるようになった。だが、未来永劫使える魔法はたったの一つだけだ。これは、これからの将来覆すことのない結果である。

以前の僕なら未熟、と言うよりは戦闘では使い物にならないが一応はかなりの種類の魔法を使用可であった。

だが、そんな未熟な魔法はこの戦争では決して役に立たない。なぜならば発動までにかなりの時間を有するからだ。だから僕はそれらを捨てることで役に立つ一つの魔法を手に入れた。

それはお母様の手足を移植する事により私に及ぶ影響のうちの一つである。

他にも僕の体を蝕むような影響があるが、それよりも利点の方が遥かに大きい。お母様の手足はまるで鉛のように重く、まだ僕自身が慣れきってはいない。だが、再び台地に踏みしめることが出来る。今はそれだけで十分だ。失ったものが蘇った、これ以上望んでいたら罰が当たる。

 

そして最後の三つ目。これが一番厄介で、トワが表に出てこなくてはならなくなった理由だ。

 

「トワ、今大体どれぐらい進行している?」

 

『大体、30%ぐらいだと思う。でも魔法を行使すればするほど悪化していくと思う。今は私が抑えているけど・・・・』

 

両手足の本来の持ち主が、持ち主の意志に反して僕を侵食してくる。

お母様の精神に僕の精神が引っ張られて僕が、僕ではなくなっていく感じがおぼろげながらもするのだ。

お母様の一人称は『私』、そして僕のついこの間までの一人称は『私』である。これでは僕とお母様の境界線が薄らいでしまう。

だから、一人称を『私』から『僕』へ変えた。それにもともとの一人称は『僕』

であったので、特に違和感など抱かずに戻すことが出来た。

だが、何も精神だけの問題でもなかった。体も本来の持ち主であるお母様の姿に引っ張られてきている。

以前、きちんと魔法が発動するかを調べるために行使した。

まぁ、不完全ながら発動はした。完全に発動するには今の僕では力不足である。

魔法を発動したために僕は全ての魔力を消費し、魔力欠乏症になった。それに発動し終わった後が最悪だ。あの時は流石に焦りまくったよ。

 

何が起きたのかって?聞いても誰も得なんてしないよ?それでも聞きたいと・・・・・・

はぁ、仕方ないな。教えてあげるよ。

 

 

 

 

―――女体化―――

 

 

 

 

どういう意味かって?

それは、まぁ簡単な事だよ。僕の愚息が綺麗さっぱりなくなって、控えめだけど確かに胸が主張してしまったんだよ。

今更そんな設定はいらなかったって?

僕もいらなかったよ。ただでさえ女みたいな姿をしているんだ。でもそれはまだ我慢できる。生物学的には男だもん。だが女体化は完全に女だ。いくら僕でも我慢の限界である。

魔力欠乏症のせいで僕は立ち眩みしていたが、一刻も早く元の体に戻るために色々な事を試した。例えば、水をかぶるとか。しかしどれも意味がなかった。このままこの成りかと思うと僕は意気消沈するしかなく、そのまま意識を失うかの如く寝てしまった。

次の日になっても依然と体は女のままだった。その姿をグレイフィアが見た時の驚きの顔は今でも脳裏に焼き付いている。ポカンとした彼女の顔を思い出すだけで笑いが込み上げてくる。

数日の間、女体化した体と魔力欠乏症に陥ったが、数日後の朝には男に戻っていた。それと魔力欠乏症も鳴りを潜めた。

その結果からこの原因は魔力の不足によるものではないかと僕は考えた。

僕の体は今、お母様であるマリアンヌに支配され侵食され続けている。だから体がとても不安定である。侵食を抑えているのは僕の魔力だ。それは常に拮抗状態にある。だから今回、僕の魔力は枯渇したため、この均衡が崩れ侵食の方に天秤が傾いた。その結果が女体化だ。

 

「はぁ、これからこの体質と付き合っていかなくてはならないのか」

 

気がめいる。今後一生女体化はしたくはない。だが、その望みが叶う事はないだろう。

 

『プッ―――くっ、くくく・・・・』

 

笑うのを必死になって我慢しているトワがいる。だが、全く我慢できていない。

 

「はぁ、トワ、いい加減勘弁してくれないか。僕はからかわれるのが嫌いなんだ。君は知っているだろう」

 

『ごめんごめん。でも、とっても可愛かったよ。私が思わず嫉妬してしまうぐらいには』

 

「はぁ、ほんと勘弁してよ」

 

最近、溜息の数が急増中だ。溜息をすると幸せが逃げていくというのが本当なら、きっと僕の幸せは日々減っていっている事だろう。

トワとそんなくだらないやり取りをするだけで心が落ち着く。どうしようもなかった心の震えが収まるのだ。だからトワには感謝してもしきれない。

まぁ、本人には言わないけど。これ以上からかわれるのはごめんだ。

 

『それで、覚悟は決まったかな。それとも怖気づいちゃった?』

 

「ああ、もう大丈夫だよ。これで後腐れなく戦うことが出来る」

 

そうだ。覚悟など、グレイフィアを守ると誓った時に既にし終わっている。ここに来た理由は他にある。ただ昔を懐かしみかったのだ。過去を振り返り、その記憶を再び脳裏に刻みつけたかった。

お母様との日々は代えのきかない大事な日々だった。それを振り返ると何とも言えない気持ちになり、心が締め付けられるように痛い。我慢が出来ないほどに辛いんだ。

だから---

 

「え?」

 

瞳から滴が零れ落ちる。

 

「涙は流さないと誓ったのではないのか。僕は何を泣いているんだ。もう限界なのか?立ち上がれないのか?そんな筈はない。僕にはまだやらなくてはならないことが、たくさんあるんだ!!だから―――!!!」

 

自身を叱咤するが、涙は止まることを知らない。感情のコントロールが上手くいかない。転生前でもここまで涙した事はないはずだ。

思いが溢れて止まらない。悲しい、辛い、などの感情に飲み込まれそうだ。

 

『ねぇ、春・・・・今が泣く時なんじゃないの。これを逃すときっと泣けなくなるよ。それはとても悲しい事だよ』

 

「でもっ!!!」

 

『あー、もうっ!!!いい加減うるさいうるさいうるさーい。いつまでグチグチ言っているのよ。よく聞いて、春は今まで頑張った。それはもう十分に。だからね、辛かったら泣いてもいいんだよ。もし他の誰もが許さなくても、神である私が許してあげる。それに此処には今誰もいないんだから誰に聞かれないわよ』

 

「本当?本当に泣いてもいいの?」

 

「ええ、勿論よ」

 

我ながら女々しいことだ。だが、今だけはこの瞬間だけは許してほしい。

此処には誰もいなくなってしまったけど、言わなくてはならない言葉がある。これを言ってしまったら永遠の離別だ。だが、言う、言わねばならない。お母様もきっとそれを望んでいるのだから。

 

 

 

「さようならっ、お母様」

 

 

 

 

 

穏やかな風が再び頬を撫でる。その風が僕の涙を拭ってくれる。その事に少しだけ頬を緩ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草原の入り口に当たる所に待機させているグレイフィアの元に歩み寄る。その足取りは先ほどよりも少し軽く感じた。

 

「ソフィア、もういいのですか?」

 

「うん、もういいよ」

 

「そうですか」

 

グレイフィアは何も聞いてこない。これは彼女なりの優しさなのだろう。

誰にだって踏み込んでほしくない所がある。勿論僕にだってある。それに気づいたであろうグレイフィアはその所へ無粋に踏み込むような事は絶対にしない。

 

「いよいよ明日ですね」

 

「そうか・・・・・もう明日なんだね」

 

お互いに沈黙する。明日の出陣の結果、最悪の事態がお互いに襲い掛かるかもしれないし、幸運が訪れるかもしれない。そんな不確かな状態な戦場に立つのだ。僕もグレイフィアも不安で仕方がない。だが、それでも行かなくてはならない。

 

「精一杯頑張ってみようと思う。誰かのためじゃなく自身のために。僕はグレイフィア、君以外のためには死ねない。だから―――」

 

「ええ、分かっています。私もあなた以外のためには死ねない。だから、二人そろって生き残りましょう」

 

グレイフィアが微笑む。

話している内容は何とも自分勝手だ。私はグレイフィア、グレイフィアは私以外では例え命の危機に陥っている他人がいようが絶対に助けない。自身が生き残る確率を高めるために他人を切り捨てる。これを自分勝手以外の表現を私は知らない。

 

「それでは、遅くなる前に屋敷へ戻りましょうか」

 

「分かった」

 

グレイフィアが先を進む。その後ろ姿を見つめる私はどうしてもこの懐かしい景色を見たくて振り返ってしまう。そこには、もう既に思い出の残滓などは感じられなかったが、それでも心に来るものが確かにあった。

 

「この景色も、これで見納めかもしれないな。次見ることがあればそれは生き残った時だけか」

 

誰にも聞こえないように小さい声で呟く。案の定、グレイフィアには聞こえず先を行く。だが、その言葉には確かに寂寥感が含まれていた。

それを紛らわせるために、急いでグレイフィアの隣に並び立つ。

 

「どうしましたか?」

 

グレイフィアが訝しげな表情を浮かべる。その表情をさせたのが僕だと思うとなんだか嬉しくなり、グレイフィアの前に踊りだした。

 

「なんでもないよ。唯、嬉しかっただけ」

 

グレイフィアに微笑みかける。彼女への愛情が積み重なっていく。それが嬉しく感じたのだ。

グレイフィアと共に並び仲良く歩き出す。お互い何も喋る事はなかったが、その沈黙がただただ今は快いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒野を数百人以上の悪魔が駆ける。その中のほとんどの者が何処かしらに傷を負っている。だと言うのに彼らは止まることを知らない。

勝つ。勝たなくてはいけない。

確かに死ぬのは怖い。だが、それよりも負ける事の方が怖い。ここまでの犠牲を払ったのだ。負けました、では通じない。それではあまりにも死んでいった者達が報われない。彼らの死を無駄にさせてはいけない。恐怖心で心を震わせる。

その集団の中に僕もいる。

今の僕は身体強化の魔法すら使用することが出来ないため、生まれながらの悪魔のスペックのみで駆けなくてはならない。そんな僕も彼らと同じで恐怖している。

自身よりも各上の相手に無策で突っ込むのは愚かすぎる。確かに普通ならその考えは正しいのかもしれない。だが、今回に至っては別だ。

相手は理不尽なほどの暴力の塊である。はたして、そんな相手に策など通用するものなのか。それに僕には奴に通用するような策は全くと言っていい程に思いつかない。

誰かが風の魔法を放つ。

風に乗り荒れ果てた荒野の砂煙が舞い僕たちの姿を隠す。外部から眺めると単なる砂煙にしか見えない筈だ。今から戦う相手とは出来るだけ僕たちの存在に気づかれたくない。僕たちの攻撃の範囲外からブレスなどを放たれてはひとたまりもない。だから、可能な限り近づかなくてはならない。

息を潜めてただただ走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて視界が晴れ渡る。

眼前には一匹の白い巨龍。そして天使、堕天使の混合軍隊。その二つは激突し合い、その余波は空気を震わせる。

その戦いに今、悪魔も加わろうとしている。

 

「皆の者!!!最強なのはドラゴンか天使か、それとも堕天使かァァァ―――!!??」

 

隻腕の男が大声を上げる。

 

「「「「最強は俺たち悪魔だ!!!」」」」

 

「そうだ。最強は俺たちだ!!!」

 

男の掛け声は悪魔達の恐怖を僅かながら払拭した。恐怖による震えは鳴りを潜め、目に闘志を宿す。

皆、男の開戦の狼煙を今か、今かと待つ。眼前の光景を目に焼き付け、己の敵を睨み付ける。

 

 

「敵は最強と言われたドラゴンだ。相手にとって不足はなかろう。己の武を見せつけろオオォォォォォ―――!!!」

 

 

 

 

―――オオオオオオオオオオォォォォ!!!―――

 

 

 

 

悪魔達は命など投げ捨てて白き巨龍に牙を突き立てる。

この瞬間をもって、戦場に悪魔が躍り出た。彼らのほとんどの運命は決まっている。だが、それでも足掻いて足掻きぬく。少しでも傷を負わせ、足止めをする為だけに数百人の悪魔が命を捨てるのだ。

彼らの命はそれほどまでに、この戦場で軽かった。

 

 

 

 

 

 

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