ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止 作:〇〇〇もげろ
どうしたらいいんだろうか
悪魔、天使、堕天使が一体の白龍に群がる。その様はまるで街灯に群がる蛾のようである。
僕はその光景を戦闘が起きている場所よりも一歩遠くの場所に陣取り観察していた。相手の能力は未知数である。そんな相手に無謀に突撃するわけにはいかない。今のところは何か特別な事をしている気配はない。もしかしたら警戒のしすぎかもしれない。
いや、そんな甘い相手ではないだろう。初めてその巨体を見た瞬間に理解したはずだ。その美しすぎる白の龍は、僕たちよりも圧倒的な強者であることを。だから、少しでも相手の力を明らかにする。
そのために目立たないようにこそこそ隠れながら観察を続ける。
「おや、こんな所で会うなんて奇遇ですね」
唐突に背後から声がかかる。だが、誰かが背後に降り立っていたことに気が付いていたので、そこまで驚くことはない。それに聞き覚えのある声から誰かを判別することが容易だ。
「戦闘中なのに、声をかけてくるなんて随分余裕があるんですね?ミカエル様」
後ろを振り向くと、そこには微笑を浮かべた中性的な天使がいた。その姿は煤汚れているがそれでもなお神々しく神聖的だ。
「いえいえ、余裕なんて全くないですよ。あなたも気付いているはずです。あれでは無意味だという事が」
ミカエルが言っている事は正しい。こちらは派手に魔法で攻撃し相手にダメージが通っているかのように見えるが、実際はそうではない。
どの攻撃も何故か本来の威力を発揮せずにいる。あれではドラゴンの固い鱗に覆われている体表に傷を負わせることなど出来るはずがない。
どういった原理かは知らないが明らかに、行使している魔法本来の威力が発揮できていない。
「確かにあれでは勝てないのは事実ですが、今打てる手があれ以外ないのも事実・・・・・さて、どの様に攻めればいいのか分かりませんね」
「ふぅ・・・・まだまだですね、あなたは。これでは彼女に遠く及ばない」
ミカエルが溜息を零す。その態度に少しムッとする。彼が誰と比べているかなんて知らないが、声に出してまで言われると癇に障る。
「それでは、あなたには何か奇策があると言うのですか。それともないのにその様な事を言っているのでしたら、あなたは相当な愚者ですね」
ミカエルに今出来る最大の挑発をする。だが、彼はどこ吹く風といった様子でそれをかわす。
「いいえ、策などありませんよ。あれを打倒するには純粋に奴よりも力が上でないと話になりません。それでも何故私達の攻撃が全く効いていないかぐらいは気づいていますよ」
ミカエルは、原因は分かっていると言った。彼の実力は天使の中でも最上に位置している。そんな彼がこの状況を打倒せずに静観して機を待つしかないという事はこちらの陣営には今のところ打つ手がない事である。
「アルビオンは私たちの攻撃の威力を半減しているんですよ。それではいくら攻撃をしても、奴の固い鱗を貫くなんて事は出来ないでしょう」
知らない名前が出てきた。それがあの白い巨龍の名前なのだろうか。話の内容からしてそうなのだろう。
「ん?これは失礼しました。アルビオンとは、あのドラゴンの名前ですよ。私が試しに訪ねてみると、呆気なく答えてくれましたよ」
どうやらアルビオンにとって僕たちの存在なんて無いも同然なのだろう。常に余裕を持って此方に対応してくる。完全に舐められている。
そんな奴に一泡吹かせたくなった。足りない頭で作戦を練り上げる。
アルビオンはどれだけの攻撃を半減させることが出来る?
その限界は?
最大範囲は?
視野の外からの攻撃は?
どれだけの間隔で再度発動することが出来る?
いくらでも謎が出てくる。その一つ一つを観察した内容と照らし合わせて丁寧に解かしていく。だが観察だけでは解けない謎も同時に浮上する。
ならどうする?
勿論解き明かすまでだ。
だから僕は苦肉の策を切る。こちらから弱みを見せるのはかなり嫌だが、仕方ない。こうしている間にも仲間である悪魔は刻一刻と息絶えようとしている。だが、それは天使、堕天使にも当てはまる。
ミカエルもこの状況を打倒したいはずだ。ならば、その焦りを利用しない手はない。
「ミカエル様、頼みがあるんですけどいいですか」
出来るだけ、損失の少ない作戦を彼に伝える。それを承諾してくれるかは彼次第だが、受ける以外に彼は選択肢がないはずだ。
それだけ戦場は迅速に突き進んでいる。
「分かりました。その案を受け入れましょう。唯し条件があります。それではこちらの損害が大きすぎます。だから―――」
「分かっています。こちらの陣営の全てを巻き込んでやってください」
「あなたは・・・・・。いえ、いいでしょう。それでは私は役目を果たしに行きましょう」
ミカエルはそう言い残し、戦場に舞い戻る。その後ろ姿を一瞥し戦場を隈なく観察する。
天使だけが犠牲になってしまっては天秤が傾いてしまう。それをミカエルは認めようとはしない。
当然だ。
彼は天使であり、その根幹はやはり善なのだ。
だが、僕は違う。
僕は悪魔であり、その根幹はやはり悪である。それを僕は自覚している。どうしようもなく愚かで愚図な私は犠牲を許容できてしまう。
嗚呼、僕はつくづく矮小な存在だ。
グレイフィアと明日を迎えるために、他人をいくらでも蹴り落とす。それが、僕が抱いた決意だ。
この決意は誰もが糾弾するだろう。それを大人しく引き受けてやる。だから僕に彼女と歩く明日をくれ。
悪魔、天使、堕天使が一斉に魔法を放つ。魔法の大群がアルビオンを隙間なく埋め尽くす。
「ふん。これしきの攻撃に何の意味がある」
―――ガガガアアアアァァァァ―――
あまりの巨大な咆哮に鼓膜が軋む。歯が砕けるほど噛みしめ、その爆音に耐え忍ぶ。
アルビオンが半減を発動させる。それだけで見る見るうちに魔弾はその威力を収縮させてしまう。
「まったく・・・・。これだけの魔法を発動させるためにどれだけの損害を被ったか。それもこの有様ではあんまりでしょう」
右耳の中に生暖かい感触がじわりじわりと広がっていく。右耳から音が拾えない。どうやら右の鼓膜が耐え切れずに破れてしまったようだ。
その原因である相手を睨めつける。
相手の能力の厄介さにとことんうんざりする。
数が多いだけの攻撃は意味がなく、威力が強くても中途半端なものでは駄目。
たった一度、連携し魔法を発動するために、半分の部下には犠牲になってもらった。そして残る半分には全魔力を用いらせ可能な数だけ魔法を発動させた。
完全な手詰まりである。
此方に残る戦力は私とガブリエルとソフィアのみ。
「でも、役割は果たしましたよ。後の事はお願いしてもよろしいのですか」
「勿論だ」
聞こえてきたのは了承の一言だけ。
だが、今はその一言だけが信じられた。余計な言葉など飾りにしかならない。
元よりソフィアとは敵同士なのだ。今回のようなケースに陥らない限り協力などしないだろう。
少年が荒野を駆け抜ける。その後ろ姿はまるで少女のように頼りない。
だが、眩しい。今にも燃え尽きそうな蝋燭の如く危うく儚い。それでも、いやだからこそなのか、その光が後ろ姿が眩しくて仕方がない。
まるで
「まったく、悪魔なのに、なんであなた達はそんなに眩しいのでしょうか。これでは私達天使の立つ瀬がありませんね。あなたはどう思いますか?」
背後に降り立ったガブリエルに尋ねる。
彼女の姿も悲惨なものだ。純白の羽は煤汚れ、天界随一と言われたその美貌にも影が差していた。
「んー・・・・難しい質問ですね。あの短い共闘の間で私は彼女に憬れてしまいました。その息子である彼にもやはり何か思う所があるようですね」
両手を組み自身の胸に押し当てる。その時、彼女の表情はなぜか複雑であった。
「そんな贔屓目でしか見れない私の答えですけどいいですか?」
「それでも別にいいですよ。むしろ好都合です」
彼に対して特別な感情を抱いているのは私も同じなのだ。ガブリエルの答えは私のためにもなるだろう。
「そうですか。私の考えは、彼らは彼ら、そして私達は私達でしょうか。彼らの抱いていた誠も私達が抱いている誠もどちらも間違ってはいなかった。ただ、その方向性が違っただけ。だから彼らと比べるのは可笑しいのです。そもそも目指しているゴール地点が違うのですから」
ガブリエルが微笑みながら述べる。
「何ともシンプルな答えですね。そうですか、比べることが、そもそも間違いですか」
解なし。
これがこの問への答え。いささか納得いかないが、今はこれで満足しておきますか。
「では、私たちを悩ませるソフィアの戦いぶりを見ましょう。彼が負ければ私たちの負け。さぁその結末はいかように」
今まで多大な犠牲を払ってきた。こちらの怒りはピーク寸前だ。
許さない。許すわけにはいかない。
彼が勝つことを信じながら私たちは戦場に再び意識を没入させた。
―――さぁ、ここからが我々の逆襲劇だ―――
私たちの恨み嘆きを聞け。
彼らの犠牲のためにこれ以上は譲れない。
「トワ―――いくよ。魔法の補助をお願い」
『ええ、分かったわ。全力でいきましょう。後悔が残らないように』
体中に魔力を流し込む。体の末端が熱に侵されているかのようにピリピリと疼き始める。
手足の調子に問題はない。魔力も十分に充実している。
さぁ、駆けだそう。一番の見せ場だ。
勝てる見込みのある戦いだ。後は勝利の女神を自身の元に呼び寄せるだけだ。負けはしない。
僕の中に残った、たった一つの魔法を発動させる。
―――我が身を食らい尽くせ、この体は腐りきっている
役立たない我が身だが、貴様にくれてやろう
―――ならばこそ、その対価として穢れた牙をくれ。
―――我らはどうしようもない畜生だ
苦しみしかないこの世に貴様の牙を突き立てるのだ
-――
『「
体が軽くなる。思考が冴えわたる。
嗚呼、この感じだ。自分が自分でなくなってしまったような感じだ。自身の感情が希薄化する。全ての能力が強制的に引き上げられる感じ。
だが、嫌な感じなど微塵もしない。むしろ温かくて心地いい。
地面を軽く蹴る。それだけの行為のはずなのに体が信じられない程に加速する。
『春、雷を纏うわよ』
「うん、お願い」
雷が体を覆い尽くし、更なる加速を促す。目に映る景色が目まぐるしく移り変わる。
「これが、本当の魔法なのか」
今まで僕が使っていた魔法はなんて幼稚な代物だったんだろう。
思わず自傷してしまう。初めての魔法の使用により思わず高揚してしまう。
分かっている。これは自身の力などでは決してない。この体にはもう魔法など一つしか残っていないのだから。
『そんなに自分の事を卑下しなくていいと思うけどなぁ』
「いいや、もっと自分を戒めないと。これが本当に自分の力だと思い込んでしまうよ」
この力は一時的なものでしかない。
発動した魔法の名は「
効果は対象の人物を自身の体に交霊、憑依させ、その人物の戦闘能力に限りなく近づけさせる。
この魔法は、本来は不完全な代物だ。
憑依させるためには対象とする相手の記憶が鮮明になくてはならない。曖昧な記憶では正しく憑依されずに自身の人格が沸騰し蒸発する。
こんなリスクだらけの魔法を誰も使うはずがない。力に絶対的な自身を持つ悪魔なら猶更の事だ。
だが、運がいいだけの僕はその条件をクリアすることが出来た。
この手足は、元はお母様の物だ。体の一部にはその所有者の記憶が詰め込まれている。
だから手足を媒介として魔法を発動させている。
そのおかげで自身の意志が侵食されているのだけれども。
まぁ、簡単にまとめると魔法発動の間は、僕は僕だけれども
「さて、一発大きいのをくらわせますか!!!」
『おっけーい!!』
眼前にアルビオンの巨体が広がる。完全に視覚外の位置であり、まだアルビオンも気づいていない。
半減の暇など与えない。
「くらえっ――――――――!!!」
発動する技は勿論貫通に特化した技だ。
その真っ白な鱗を突破してやる。
―――
こんなはずではなかったのに・・・・・・・
主人公いきなり強くなりすぎな気がする
でも相手がアルビオンだし
どうしようもないね
もっと考えて描くべきだった(´ω`。)