ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止 作:〇〇〇もげろ
クチャクチャと粘液質な音が響く。血の生臭い臭いが場を支配し、私たちに対して不快感と嫌悪感を植え付けた。
食べている。
そう、この音は捕食している音である。
では、一体何が食べ、食べられているのか。
その、質疑の回答は今私の目の前に広がっている。
今ここで強者と弱者が入れ替わった。
赤い鱗が無残にも剥ぎ取られ、その間から見えている肉を貪られている。
赤い龍であるドライグは先ほどから全く反応がなく生きているかも分からない。そしてドライグの肉を貪っているのは、一応こちらの有する戦力であるヨルムンガンドである。
圧倒的に強者であるドライグに対して、ヨルムンガンドは一方的に搾取を繰り返した。
理屈は理解できないが、ドライグの倍加の力を片っ端から吸収しそれを利用し奴は成長した。
いや、あれは成長とは言えない。あれでは進化と言った方が適切だ。
ドライグの血肉を啜るたびにヨルムンガンドの体表が剥がれ落ち、変化が公になった。
ヨルムンガンドの外形は芋虫みたいなワームであった。それに所々破れている両翼が申し訳ない程度に付随していた。とてもドラゴンとは言い難いものであった。
だが、今の奴は正しくドラゴンである。
ブヨブヨの体だった物は固く緑色の鱗を纏い、背のボロボロだった両翼は力強い巨大な翼へと変化した。唯一残っている面影は口ぐらいであろう。赤く大きな口の中にはのこぎりの様に大小の歯が並び立っている。
「あー・・・・は、ら減った」
一番の変化は言語能力だろう。ヨルムンガンドは私たちが日頃から使用している言語を使った。
学習能力がとてつもない程高いのか、それともドライグを捕食し奴の知能すら吸収しているのか分からないがそれでもヨルムンガンドは危険な生物だという事だけは判断できる。
このまま奴が進化し続けていけばどこまでの知能と力を蓄え、私たちの想像範囲外まで進化してしまっては私達悪魔に制御などはたして出来るのだろか。
強者が弱者に従う事などある筈がいない。この心理は絶対的なものであり覆されることはまず言ってないだろう。
そのことが天使、堕天使側も理解しているのだろう。先ほどから悪魔側である私たちに怪訝な視線を向けてくる。
誰も動けない中私はいち早く後方へと駆ける。 何が起きても自分が生き残れるように。
プライド、矜持などはないのかって?
命とそれらを天秤に乗せても針は命の方に傾くのだ。死んでしまったら何が残ると言うの?
何も残らない。死という結末しか残らない。私はそんな結末など望まない。私が望むのは彼との平穏な日々だけである。それ以外望みはしない。これ以上の望みは重りにしかない。
「ここまで来たら、さすがに大丈夫でしょう」
戦場全てが見渡せるほど遠く離れ、戦況確認を行う。
悪魔、天使、堕天使側はそれぞれ驚愕により沈黙を続けその場で固まっている。
ヨルムンガンドはドライグの捕食に飽きたのか捕食を中断し視線を彷徨わせている。
ドライグに動きは見られずに、生死は不明である。
「っ!!」
突然悪寒が体に走る。怒りが込められた視線を感じる。
誰かに見られている?いや、この視線は私だけを対象にしたものではない。この場にいる全員を対象としている。
「まさか!!」
―――
魔力で編んだ障壁を全方向に展開する。
それと同時に地面から無数の火柱が立ち上り、戦場を赤く侵していく。
燃える、燃える、ただただ燃える。無差別に全て燃えカスへと変じられる。
ジュウジュウと障壁が溶け出す。穴が開いた場所から順に魔力を再び込め修復に取り掛かる。
私の障壁一枚では防ぎきる事は叶わない。
だったら―――
「はぁぁぁぁあああああ!!!」
一枚で足りないのであればもう一枚。それでも足りなければもう一枚。
障壁の中に障壁を張り巡らす。この障壁にほとんどの魔力をつぎ込む。それでも防ぎきれない熱が私の皮膚を焼いていく。
やがて火柱は収まり、赤く燃え上がった台地が顔を見せる。
「はぁ、はぁ、っ・・・・・みんな、は!!」
状況を確認するために翼を広げ飛翔する。
熱気と水蒸気が体を焼くが、それを気にできるほどの余裕はない。
大量の水蒸気でできた雲を超え紫色の空を目に収める。
戦争であっても魔界の空は変わらずにいる。だが、地上は刻一刻と変化を続ける。
私は変わらない空に少しの寂寥を胸に宿しながら視線を空から台地へと移した。
―――悲惨―――
それ以外の言葉が見当たらない。
台地はあまりの高温のせいで融解しマグマへと変化し、そこは生物の気配がしない死の台地だ。
たったの数秒でこの有様だ。冥界の一部分を一瞬にして焦土と化した。
それを引き起こした張本人であるドライグはマグマの中で沈んでいる。周りには数人の人影が見える。実質こちらは壊滅的だ。
唯一の幸運はドライグが戦闘不可能な状態で、その近くにいたヨルムンガンドはどうやら跡形なく焼失したことだろう。
これで私たちの勝利は確かな物になったはずだ。
生き残った者達が集まろうとしている。これからの事を話し合おうとしているのかもしれない。
私は空中を蹴り加速し集まりの場へと向かう。
「ダルク様!!!戦況はどうなっているのですか?」
「グレイフィアか・・・・・見てわからないのか。最悪だよ。何百もの悪魔、天使、堕天使が一瞬にして蒸発してしまった。恐らく生存者はここにいる数十人しかいない」
ドライグが戦闘不可能という事は私たちの勝ちだ、とはとてもではないが言えない。
犠牲が多すぎたのだ。老若男女のほとんどが犠牲となった。その中には将来有望である人材も多くいた。これでは戦後の発達は難しいだろう。
だが、それでも今は生き残ったことに感謝する。
どの陣営も犠牲の数が多いため、これ以上の戦争は臨めないだろう。
だというのに、胸の不安が拭えない。
終わりが呆気なさすぎる。
確かに多くの犠牲者はでたかもしれないが、実質ドライグと戦ったのはヨルムンガンドだけである。私たちは高みの見物である。
「本当に、これで終わりなのかしら」
不安がしこりとなって頭の片隅に溜まっていく。
この感情を抱いているのは私だけではない筈だ。
だが、そんな物は気にしないといった様に撤退の合図を各々が出す。これ以上の恐怖はないと皆々自身に言い聞かせ現実を見ようとしていない。仕方がないと言えばそれで終わりだが、これでは何か起きた時、対抗など出来るはずがない。
ドライグの戦闘はこちらの勝利で終わったが、まだ片一方の戦闘が残っているかもしれない。
あちらに送った悪魔はお世辞にも戦える状態の者などほとんどいなかった。
きっとまだ戦っているはずだ。
私は次の戦いに向けて、戦意を研ぎ澄ます。
焦る気持ちを抑えながらソフィアの元に駆け付けようとする。
「おいし、そうだなぁ―――」
最凶が私たちを襲った。
喰われる。皆、食べられていく。残りカスすら残らず、丸呑みにされる。絶叫が響き渡る。
死にたくない、死にたくない。
唯それだけを願って皆叫びだす。先ほどまで協力していた相手を蹴落とし自分が助かろうとする。
悪魔が天使、堕天使を攻撃しヨルムンガンドへの餌へとする。それは天使、堕天使も変わらない。いや、この場にもう天使などほとんど存在していない。
過度のストレスにより皆堕天使へと変わってしまった。そんな成りたての堕天使を味方と考えずに堕天使は見殺しにする。
味方が味方の足を引っ張り死に絶えていく。
「兎に角、私も此処から離れないと」
残り少ない魔力を使い己の身体能力を底上げする。
私は皆が固まっている方角とは逆方向へと駆けだした。
これは見殺しとは違う。私一人が駆け付けたところで意味などない。死体が一つ増え、それを糧にヨルムンガンドの力が増してしまう。
そのような事をするよりも、今はソフィアの所へ行くことが重要だ。
それに此処には魔王達と神が揃っているのだ。彼らならば上手くこの場を鎮めてくれるだろう。
もし、彼らが失敗してもソフィアを連れて逃げればいい。
冥界から逃げた後は、人間界にでも逃げ込むとしましょうか。文明レベルはお世辞にも高いとは言えませんが、それでもまだ私達悪魔にとっては比較的危険度が低く安全だ。
それにソフィアが、彼がいればそれでいい。二人っきりで誰も私たちを知らない地へと赴く。なかなか幸せな未来ですね。二人っきりなので、多少のつまみ食いは―――
おっと、これ以上はいけませんね。それにまだ私とソフィアは恋人というわけではないのだ。それでも少しぐらい夢を見てもいいはずだ。
「この臭いは・・・・」
血の匂いが多くなるにつれて味方の死体が多くなる。死体は破損が酷く、臓物が散乱し赤黒い血を吐きだしている。
こちらの戦闘では私達の所と違って、血臭がかなり酷い。
進めば進むほどむせ返るほどの匂いと、死体が私の進路を妨害する。
その中から巨大な肉塊を見つけた。鱗はないがドラゴンの外形は残っている。恐らく白い方のドラゴンのものだと判断できる。
体の全ての鱗がなくなり肉と神経がむき出しになっているが、まだアルビオンは辛うじて生きているのだろう。浅くだが呼吸をし、神経が反射的にまだ動いている。だが、それも後少しだろう。この肉体はもう死んでいる。
もう既に虫の息だが、念には念を込めて確実に息の根を止めておきますか。
アルビオンの頭部に当たる場所へ魔方陣を形成する。
「おっと、少しだけ待ってもらえるかな」
魔方陣が強引に掻き消された。それと同時に二人の天使が視界の中に入り込んでくる。
「ミカエル様、それに・・・・・・」
ミカエルとは面識があるがもう一人の女性の天使とは会ったことがない。なのに、何故か彼女の事が気肉はない。
私が彼女に抱いた印象は完璧な美である。彼女とソフィアを会わせるのは何かよくないとビンビンと感じる。
私は女の天使を警戒し睨む。
それをどのように解釈したのかミカエルが突然自己紹介を女の天使に促した。
「お初にお目にかかります。私の名前はガブリエル。ミカエルと同じ四大熾天使の一人ですよ。これからよろしくお願いします」
ガブリエルは丁寧にお辞儀する。その所作一つ一つが完璧すぎて呆気にとられ見惚れる。悔しいがガブリエルは私よりも女性としては上の格らしい。
「・・・・・グレイフィア・ルキフグス。別にこれからよろしくしなくてもいいわ」
私は悪魔、ガブリエルは天使なのだ。関わりになる事はあまりないし、個人的によろしくはしたくない。
「ふふふっ―――」
「なに?」
ガブリエルが微笑を浮かべる。その行動に嘲笑の意味が込められているのがありありと伝わってくる。
そのことが癇に障り怒気を込めた視線を彼女に送る。
「いえ、失礼しました。別にこれといった意味はないので気にしないで。ただ・・・・彼の従者にしては、あなたがあまりにも子供ぽっくておか―――」
ガブリエルが台詞を言い終わる前に魔弾を叩きつける。彼女の言葉を聞いているとこちらまでイライラしてくる。
これで確定した。
「私、あなたの事が嫌いみたい。お願いだから消え―――」
体に衝撃と焼けるような痛みが走り倒れこむ。
何事と、周囲を見渡すと、煤汚れたガブリエルが光弾を放っていた。
急激な攻撃と魔力不足からの集中力低下のせいで私は魔力防壁を張ることが出来なかったようだ。
「私もあなたの事なんて大嫌いですよ。いえ、そもそも彼以外の悪魔の存在自体を認めてなどいません。いい機会です。今のうちに一人でも多くの悪魔を滅ぼしておきますか」
ガブリエルが光槍を顕現させる。
あんな物をくらえば死んでしまう。だが逃げようにも先ほどのダメージによりそもそも起き上がる事すらできない。
それでも諦め悪くガブリエルを睨み付ける。
一歩一歩彼女が近づいてくる。それに連れて死への恐怖が強まり固唾を飲んだ。
「はい、ここまでですよ。ガブリエル、彼女を殺してしまっては彼が悲しみますよ」
「・・・・・・・・・・分かりました。こちらも彼が悲しむのは喜ばしい事ではありません」
ミカエルがガブリエルを止めた。ガブリエルの顔はかなり不服そうだがこの場は引いてくれたみたいだ。
「すみませんね。彼女はかなりの悪魔嫌いでして。それにあなたとの相性も最悪みたいですね」
「そのようですね。それよりも、さっきは何故私の邪魔をしたんですか。あのドラゴンは私達共通の敵ではなかったのですか?」
ミカエルが何故私の妨害をしたのかが、依然謎なのである。死に体のドラゴンを殺す事を防いだとしても何の利点も無いはずだ。
分からないが、今、そんな事はどうでもいい。それよりも大事なことがあるのだ。
「そんな慌てなくても分かっていますよ。彼の事が気になっている事ぐらいは」
そうだ。天使側の理由など今は些細な事であり、重要な事はソフィアの安否である。
ミカエルは倒れこんだ私に肩をかし歩かす。その後ろを黙ってガブリエルが付いてくる。
一応、肩を貸してくれたお礼をすると、ミカエルは微笑んだ。
「いえいえ、もともとその怪我は此方のせいなのですからお礼は必要ありません。それよりもほら、そろそろ見えてきますよ」
血溜まりから少し離れた所まで歩き進めると、そこに彼はいた。
元の容姿よりも若干ではあるが女性らしさを含んでいるが、それでも彼に間違いない。
私はミカエルを突き飛ばし彼の元へ倒れこむように歩く。足が重いがしっかりとした足取りで進んで行きようやく彼の元へ帰って来れた。
立っていることが限界になり彼の胸元へ倒れこむ。
-――トクン、トクントクン―――
彼が生きている確かな音が聞こえる。その事実が嬉しく涙がこぼれる。
ああ、やっとたどり着いた。
「ただいま戻りました、ソフィア」
今回はいつもより少し早い投稿ですかね?
この調子でいきたいけど難しいです
次も頑張って投稿するのでよろしくお願いします
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