ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止 作:〇〇〇もげろ
あの地獄の様な日から数十年もの年数が流れた。
僕は高校を卒業して、進学という道を選んだ。人間の適応力は凄まじく今まで通り大学でも、意味の無い日々を
そして大学を卒業して社会人になっても、このような日々は変わらなく、いつの間にか後少しで40歳である。
僕の世界は未だ白黒で、そして僕自身いつも一人でいる。
僕は今日も残業を終わらせ帰宅中にあるコンビニでお
普段使っている道を逸れて公園に入った。
「ねぇ、今の世界は楽しい?」
公園を歩いていると突然背後から声をかけられ驚く。
いやこの場合は声をかけられて驚いたのではなく、あまりにも美しく澄んだ声に驚いたのである。
僕は急いで後ろに振り向いた。
「えっ・・・・・・・・・・・・・・」
目の前に白銀の世界が広がる。
そう思わせるほどに背後にいる少女はこの世の物とは思えないほどに美しい。
誰にも侵されていない雪のように真っ白な癖のない髪、澄み切った海のような青い眼、そして病的なまでに白い肌をしている。
体格や顔を見ればまだ女性と言うには早く少女に近い、しかし彼女には圧倒的な何かがかんじられ、情けないことに僕は圧倒されて言葉を発することが出来なかった。
「ねぇ、今の世界は楽しい?」
彼女がもう一度同じ質問を聞いてくる。
「僕の見る世界には色がないんだ。みんな同じに見える。こんな世界が楽しいと言えるのだろうか。いや、言えはしないだろう。それに・・・・」
何故初めて会った人に自分の身の上話を素直に話しているのだろうか。いや、彼女だからこそ話すのだろう。
「それに、何?」
彼女の瞳が見つめてくる。その瞳には「嘘、偽りはいらない、ただ真実のみを話せ。それ以外は今必要ない。」と、語っている。
「それに、僕は今でも世界を―――」
自分で忘れ去ろうとしていた苦い記憶が脳裏にフラッシュバックした。
もう、顔すら曖昧になってしまった女性が、いつか言っていた。
――世界は美しいことで満ちている。
いいや、世界はこんなに色あせている。
――世界は平等で誰にでも優しい。
いいや、世界はいつでも僕に厳しかった。
――君が悲しい時はいつだって傍にいるよ。
もう君は僕の隣にいない。
――君が願えば世界は変わる。
僕一人の願いだけではこの大きな世界は変わらない。
「憎んでいる」
「そう。それがあなたの答えなのね」
彼女の顔が少し悲しそうに見えた。
「そうだ。これが僕の出した世界への答えだ」
「じゃあ君はそんな世界で何を望む」
これから言う事は彼女を不快にさせるかもしれないが、言わずにわいられなかった。
「僕は、もっと君のことが見たい。君の持つ白銀の色を見続けていたい」
周りの人から見たら完全な不審者である。なぜなら、あと少しで40歳となる大人が、まだ中学生位の少女に、「見たい」なでと言っているからだ。
「ぷっ、・・・・・くっくっく・・・・・・あはははっははっははははは」
どうやら今の言葉が相当にツボにはまったらしく、声を出して笑う。
「そうか、そうか・・・・私を見ていたいか。嬉しいぞ、とても。でもそれは正しくないな。あなたの本当にしたい事は色のある世界を見てみたいでしょ」
彼女の言葉を聞いて、僕は納得してしまった。
やはり、この少女はすごい。僕でさえ気づいていない本当の望みを言い当てたのだから。
「どうやったら、あなたの世界が色づくか教えてほしい?」
そう言われた瞬間、何を言っているか理解できなかったが、徐々に理解し彼女に教えを
「その方法とは、もっと人と関わって他人を助ける。たったこれだけの事でいいんだよ」
「本当にそれだけでいいのかな?」と、不安になり彼女に聞いた。
「私の事を信じなさい」
彼女は微笑みながら言う。その微笑みは、とても温かく聖母のようである。
「分かった。信じてみるよ。ところで、あなたの名前を教えてくれないだろうか」
「名前か・・・・・。次に会ったときに教えてあげる」
本当に次また彼女と会えるか不安になった。すると顔に出ていたのか「大丈夫、絶対にまた会えるよ。」と、言い残して彼女は僕の前から去って行った。
その日から僕は、彼女が言った通りに他人と関わりを持ち、助け続けた。
でも、世界は白黒のままである。それでも、彼女が言った言葉に今でも必死にしがみ付き続けてきたが、それもどうやら今日までのようだ。
目の前で車に轢かれそうな青年を助けるため、駆け出したときに僕はそう確信した。
次の瞬間体に衝撃が走った。
体中の感覚がなく、じわじわと死に近づいて行く感じがする。
あぁ、本当に思い通りにいかない世界だな。やっぱり失敗したか。
「あの大丈夫ですか!返事してください」
声の主を探すと、近くに高校生ぐらいの青年が座り込んでいた。
どうやら、助けることは出来たみたいだ。
眠い、本当に。
目を開けてられないほどの眠気が襲ってくる。
「誰か救急車呼んでください。お姉さん、目を開けてください」
失礼な奴だな。誰がお姉さんだよ。僕は男だよ。
体に残っている力を振り絞って目を開けてみると信じられない景色が広がっていた。
「だ・・・でs・・も・・で、きゅうk・・来ますか・・・」
もう青年の声は僕の耳には届いてこない。ただただ目に見える景色を脳裏に焼き付けるかのごとく見つめる。
世界はまだ白黒だが、その世界でも綺麗と思うことが出来る物を見つめる。
最後の最後で、意味の無い物を、やっと見ることができた。もっと見ていたいな、この景色を・・・・・。誰かを真剣に思った人間は本当に綺麗だ
そう思いながら目を閉じた。
こうして『橘 春』の人生は終わった。彼の死に際の顔は、まるで欲しい物が手に入った子供の様に幼く純粋だった。