ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止 作:〇〇〇もげろ
死んだと思ったが、目を開けると目の前には雲がなく夕焼けでオレンジ色に染まった空と海岸が広がり海の波が穏やかに砂浜へ寄せている。あまりの幻想的で美しく悲しい景色に思わずため息が出る。
景色に心を奪われていると、背後から声を掛けられた。
「やぁやぁ。その様子だとこの世界を気に入ったようだね。この世界は春の心象風景を元に作られているんだ。だからこの世界が君の根幹なんだよ」
振り向かなくても、声の主が誰なのかが分かる。
声が、纏う雰囲気が彼女だと教えてくれる。
会いたかった人物が、今背後にいて我慢出来るほど僕は大人ではない。
彼女を見たい一心で後ろに振り向くと、初めに会った時よりも更に美しく感じる白銀の世界が広がり、その中で少女が微笑んでいた。
「ねぇ・・・・私の言った通り、また会えたでしょ」
「嗚呼、本当に会うことが出来て嬉しいよ。お礼を言わなくてはいけないと思っていたから」
「その様子だと願いは叶ったんだね。まだ世界は白黒のまま?」
「まだ白黒の世界だけど、そんな世界の中に価値のある綺麗な物を見つけた」
さっき体験したことを彼女に話すと、彼女はそれを楽しそうに聞いた。
それから色々な事を話す。休日はどのように過ごしていたとか、好きな食べ物とか、おいしい料理の店とか、取り留めの無い話の内容だったが笑いは途切れることはなかった。
お互いに話す内容が無くなるまで話すと、彼女は僕の名前を知っているが、僕は彼女の名前を未だ知らないことに気づき知りたくなり、彼女に聞いてみる。
「何時までも君とか、あなたとかで呼ぶのは嫌だから以前聞けなかった名前を教えてくれないかな」
「教えてあげたいけど、教えてあげることは出来ないかな」
彼女は少し残念そうな顔をして言う。
「今の私にはまだ名前がないんだ。生まれたばかりのヒヨッコだから真名がないんだ。」
「そうなんだ・・・・・でもそれって不便じゃないの?」
「そうなんだよ。だから私が初めて会った君に名前を付けて欲しいな」
急にそんな事を言われて困った態度をとった僕を見て、「私の名前を付けるのは嫌?」と、上目使いで話しかけてきた。
上目使いで見上げてくるのは反則だ。それに、そんな不安そうな顔されると断れないよ。
照れて彼女のほうを向くこと出来なく、今僕の顔は真っ赤だろう。
「名前・・・・・・名前か」
参考になるか分からないが、彼女のほうを見つめる。
やっぱり、綺麗だ。未来永劫、永遠に風化などしない圧倒的な美。ん?・・・・・・・そうか、彼女にぴったりの名前があるじゃないか。
「永遠・・・・・『トワ』」
「えっ」
本当に付けてもらえるとは思っていなっかたらしく、彼女は驚く。
「永遠にあり続けて欲しい。そんな僕の望みから考えて、『トワ』。君の名前は今から『トワ』」
「トワ・・・トワ・・・・。うん、今から私の名前は『トワ』」
どうやら気に入ってくれたようだ。これで変な名前を付けていたら如何なっていたことやら。
「春、名前を付けてくれてありがとう」
―――ボン
顔から熱が引かない。トワから直接名前と感謝の言葉を言われて、なんだか照れくさい。
今僕の顔は、みっともなくなっているに違いない。
「と、ところで僕をここに呼んだ理由は何?ただ単に話したかった、じゃないよね。」
僕は誤魔化すために、明らかに話を変えた。
「勿論、個人的に春には転生して欲しいけど、選択肢をあげる」
-1.神様転生:記憶などをそのままにして神様が選んだ世界で新しい人生を送る
-2.輪廻転生:記憶などを失うが、元いた世界で新しい人生を送る
-3.完全消滅:漢字の通り存在を完全消滅さして自分が存在していた痕跡を消す
「さぁ、この中のどれがいい。選んで」
トワは僕に3つの選択肢を用意してきたようだ。
「勿論、僕が選ぶのは1の神様転生だ」
「・・・・・・即答だね。春ならそれを選ぶって思っていたよ」
もし僕が僕でなくなったら、トワの事も忘れてしまう。その事だけはあってはならない。
「神様転生させる時には、転生特典をあげるのが決まりなので、春は一つだけ決めてね。本当だったら三つ四つ決めてもらうのだけど、私自身まだヒヨッコだか一つしか与えることが出来ないの。ごめんね」
そんな申し訳ない顔をしないでくれ。一つでもだから・・・・・・それに、その一つも決まった。
「僕が望む物は『トワ』。君が欲しい。」
少しの間を開けてトワは笑い出した。
「プッ、ぷふ・・・・あははははははははは、クスクス、本当に春ってば面白い。でも残念、それは出来ない。もっと他にないの?」
「他には特にないかな」
今僕はトワ以外に興味はない。
「春は無欲なんだね。じゃあ、私が決めてあげる」
「うん、お願いするよ」
僕がトワのアイデアを了承すると、彼女は僕の頭に手を置いた。
トワの掌から温かい何かが流れ込んでくる。それはとても落ち着く物で、心が安らぐ。
「はい、特典渡し終えたよ。ちなみに特典の内容は秘密ね」
トワがイタズラ顔で僕を見てくると、急に眠気に襲われた。
「あ~あ、もう限界か。どこに転生するかは分からないけど、もしかしたら転生した世界に春と違う転生者が存在して邪魔してくるかもしれない。でも、春は絶対に負けないよ」
とても眠たい。トワの声がまるで子守唄の様に聞こえてくる。
このまま眠ってしまいたいけど、トワに如何しても聞きたいことがある。これを聞かないと後悔する、と感じた僕は彼女に質問した。
「もう一度会えるかな?」
心に不安が積もがトワの次の言葉を聞いて不安など一瞬で吹き飛んだ。
「一度きりじゃない、何度も何度も春と私は巡り合う。だから安心し眠りなさい」
トワが微笑む、それだけで嬉しい、安心する。
「行ってきます、トワ・・・・・・・」
「行ってらっしゃい、春」
安心しきった僕は眠りについた。
―――こうして、僕の新しい人生が始まる。
とある病室で新しい命が芽吹こうとしていた。
「ん、くっ、あ~っつ」
病室ないでは一人の女性がハァハァと、息を荒げて
周りの担当医と看護婦が苦しんでいる女性を押さえつけて彼女に声をかけ続けている。
しかし女性はその言葉を聞くことができない。それほどの痛みが女性に襲い掛かっていた。
「イタイいたいイタい。あぁぁぁぁー」
あまりの痛さに女性は叫び出す。
病室の外ではおそらく彼女の夫だと思われる男性が病室の中の彼女を心配そうに見ていた。
しばらくの間、女性の叫び声が病室に響き渡っていたが、突然その声は違う声によって聞こえなくなった。
オギャー、オギャー、オギャー
彼女の叫びの代わりに赤ん坊の泣き声が病室の中に響く。
今このとき新しい小さな命が芽吹いた。
「おめでとうございます。元気な男の子が産まれましたよ。」
看護婦はそう言って、抱き抱えたあかんぼうを女性に渡そうとする。
女性は赤ん坊を出産したばかりで衰弱していたが微笑みながら赤ん坊を抱き締める。
「私の赤ちゃん。産まれてきてくれてありがとう」
赤ん坊を撫でる手はとても優しく、女性の顔は一人の母親の顔であった。
「オギャー、オギャー、オギャー」
トワに転生してもらって、初めて見る景色は真っ暗であった。それに赤ん坊として産まれたのかまだ目が見えず、言葉を発することができない。これでは何も出来ない。さてどうしたものか・・・・・まぁー赤ん坊として産まれてしまったのは仕方がない。これからのことは、また今度考えることにしよう。赤ん坊になったからか、とてもじゃないが起きていられない。
意識が薄れて、うとうとしているときに、まるで壊れ物かのように優しく抱き抱えられた。多分僕を産んでくれた母親だろうと予想する。
抱き抱えられている間はとても安らぎ安心した。
やはり母親は偉大だ。
そんな事を考えているとふと、母親だと思われる女性が言葉を発した。
「私の赤ちゃん。産まれてきてくれてありがとう。」
このとき、僕は感動した。
こちらこそ僕を産んでくれてありがとう。
この世界は前の世界と違って少しは僕に優しいのかも知れない。
「あらあら、眠っちゃった」
女性は赤ん坊の頭を撫でながら言った。
「そうだね。泣き疲れちゃったのかな?」
すると、いつの間にか女性の横には男性が座っており、女性に同意する。
「そうね。こんなに小さな体であんなにもいっぱい泣いたもんね。ふふっ、頬っぺたが、プニプニしていて気持ちいいわ」
「本当かい?俺にも触らしてくれよ」
男性は触りたいのかさっきからウズウズしている。
「ダーメ、あまりつつきすぎると起きちゃうわ」
そう言いながらも赤ん坊の頬っぺたを綺麗な人差し指でつつくのを止めない。
「いいじゃんかよ。少しくらいなら」
「ダメです。それよりもこの子の名前考えましたか?」
女性が男性に聞くと、男性は胸を張る。
「勿論さ!この子の名前は「やっぱり別にいいです」・・・・・えっ!」
女性は男性が話している間に割って入った 。
「あなたが考えた名前はいつも中二病臭いんです。だから私が考えました」
どうやら女性の方は初めから男性に期待していなかったようだ。
「それはいくらなんでも酷いんじゃないのかな!俺だって真剣なんだって。だからお願いだよ、マリアンヌ」
「いいえ、ダメです。今回は私が付けます。ダルクは前付けたでしょ」
どうやら女性の方はマリアンヌ、男性の方はダルクと言う名前らしい。
「だが、名前とは何回付けてもいい物なんだ。だから俺に付け「却下です」ぐっ・・・・、分かった」
「分かればよろしいのです」
病室内で自分が勝ったと、どや顔するマリアンヌとくやしそうな顔をするダルク、どちらが勝ったと言われれば勿論マリアンヌだろう。
「この子の名前はソフィア・・・・『ソフィア・ルシファー』」
「なんだか女の子ぽくないかその名前」
男の子が産まれたのに女の子みたいな名前を付けたのに苦笑いするダルク。
「いいの、別に・・・・。この子は私似なんだから将来はきっと綺麗な子になると思うの」
「それは男としてどうなんだ?」
「まぁー、それは気にしないと言う事で」
「「ふふっ、ふふふふ」」
お互いにおかしくて笑い合う。
病室の中は温かな雰囲気に包まれていた。