ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止 作:〇〇〇もげろ
ep.1
「んっ・・あ」
懐かしい夢を見ていた。
まだ私が僕だったときの・・・辛い事はあったが、ほんの少しの幸福があったそんな世界の話を。
私が産まれてから3年の月日が経過しました。
何?一人称が僕から私に変わっているのは何故かって?
それはお母様のせいだよ。
私が自分の事を僕と言ったら、両親が「僕っ子ですか!」と私に迫ってきました。
あの時の両親の凄味に腰を抜かしそうになったのは秘密です。
この3年間は色々なことがありました。
まずは、この世界に転生は成功したけど、どうやら人間じゃなくて悪魔として産まれてしまったようだ。
普通の悪魔として産まれたのであれば、こんなに苦労しなかったのに・・・・・・なんと私は悪魔の中でも魔王の位置に座している『ルシファー』の名を持つ家に産まれてしまう。
別に魔王の血族に産まれたのはこの際どうでもよく、悪魔社会は実力主義なので寧ろよかった、と言えるだろう・・・・・例外を除いて。
その例外はどうやら私に当て嵌まってしまったようだ。
私には魔法、体術、剣術などの戦闘に関しての才能が全くなかった。
どうやら私は魔力を通す管が極端に細くて一度に取り出せる魔力量の絶対値が少ないらしい。
だから私はダルクに戦闘センスがないと判断された。
これは体術、剣術などの体を使った戦い方にも影響を及ぼした。
なんせ碌に身体強化の魔法も使えないことになるのだ、影響を及ばさないはずがない。
あるのは、親譲りの膨大な魔力とこの女の子と思うような容姿、そして転生する前の虫食い状態だが残っている記憶の残骸だけだ。
そんな私がルシファー家で厄介者となるのは当然の事であった。
最初の方は私を可愛がってくれた父親も今では嫌悪するような目で「お前はルシファー家の恥さらしだ」と
周りの使用人も表で何も言わないが裏では何かこそこそと言っている。
まったく私が気づいていないと思っているのか・・・・。
これでは前世と同じだ。
でもこんな日常でも私は生きていかなくてはならない。せっかく、トワに転生してもらったんだ。それにこんな私に今でも無償の愛を与えているお母様のためにも、全力で生きなくてはならない。
「・・ィア、ソ・ィア、ねぇ起きてよ」
草原の上で瞳を閉じて心地よい風を感じていた私に誰か声をかけてきた。
うっすらと目を開けるとそこには私と似ている、でも少し違う顔がそこにあった。
私の母の顔だ。
お母様の容姿はとても整っている、優しそうな顔、体型はすらりとして長身である。そして一番目を引くのは、うっすらと水色がかったとても美しい銀色の長髪である。
本当に私は母親に似ている。
私の方が少し厳しそうな顔をしているが、母親譲りの美しい長髪は私にも健在だ。
まだ、3歳という年齢だが本当に女の子みたいだ。まぁ、まだ3歳だからこれからに期待しよう。それにこの髪の色は気に入っている。これは彼女と同じ色だから。
「コラ!ソフィア起きているのでしょ」
どうやら考え事をしすぎたみたいだ。
眼前には頬っぺたをプクっと膨らましたお母様がいた。どうやら無視されていると思い
「何?お母様」
「ツーン、ママを無視するような子は知りませーん」
ツーンと、自分で言ったりするお母様はまるで子供のようだ。でもその行動一つ一つがとても大切で愛おしく感じる。
ここで素直に謝るのは釈然としないので、少しイタズラをしてみることにした。
「ごめんなさい。だから嫌わないで」と、泣きそうな声を出してお母様に抱きついた。
「あぁ、ママが悪かったからそんな悲しそうな顔をしないで。ママもう怒ってないから」
ソフィアの泣きそうな声を聞いてマリアンヌはあたふたする。
自分がどれ程ソフィアのことを愛しているかを表すために彼女の背中を撫でた。
「本当に?」
「ほんと、ほんと、もう怒ってないから」
相変わらずお母様はチョロいですね。
「今何か変な事考えましたか?」
お母様が私に対して黒い笑みを見せる。
「いえ、お母様はいつでも美しいと、思っていました」
いつもポワポワしているお母様、しかし、ときたまさっきのように鋭いときがるから気を抜けない。
「それよりもお母様、私に用事があったのではないでしょうか?」
「あっ!そうよ、ソフィアに用事があったの。私に着いてきて」
「分かりました」
そう言って無言でお母様の後ろに着いていく。
さっきの上目使いは反則だと思う。
今も私の後ろをトコトコと無言で付いてくる。その姿はとても可愛らしい。
私の息子のソフィアは
本当に3歳なのか疑う事がある。
いつもは無邪気だが、ときたま見せる達観したあの横顔が私にそう思わせる。
でも、ソフィアにとっては良いことかもしれない。
そうでなかったらソフィアは今の境遇に耐えることができなかったに違いない・・・・。
ルシファー家で生きていくにはソフィアはあまりにも脆弱すぎた。
魔力は私譲りの膨大な魔力があるが、それ以外の才能が皆無、努力し続けて精々二流止まりである。
そんなソフィアが実力主義の中でこれからも生きていけるのか、そんな事を心配していると、袖が小さな力で引っ張られる感じがした。
「お母様そんな難しそうな顔をしてどうしたの?」
息子に心配されるほど今の私の顔は酷いのか、そんな顔をする母親は失格だな。
「ううん、別に何でもないわよ。それよりも早く用事を終わらせてお昼ご飯にしましょう」
そう言って、息子と手を繋ぎ目的の場所に移動する。
私は現魔王をしている父上ことダルクの前に膝をつき座っている。
ダルクは、そんな私をなんの感慨もなく見下している。
今この部屋にいるのは私と兄の リゼヴィム、マリアンヌ、ダルク、そしてルシファー家に代々仕えている ルキフグス家の使用人だけである。
唐突だが、私には母親は違うが歳の離れた兄が一人いる。
兄の名前は『リゼヴィム・リヴァン・ルシファー』。
いつも何を考えているのか分からなく、ふざけた口調と態度が特徴である。しかし、私の勘が「こいつは危険だ」と警笛を鳴らしている。
「今日お前達に集まってもらった理由は伝えておかなくてはいけない重要な事があるからだ」
リゼヴィムの警戒をしていると、ダルクが話し始めた。
「この悪魔の世の中は基本実力主義の社会だ。私もその考えには納得し寧ろ賛成もしている。しかし今の悪魔の世の中に反対している悪魔がいる。」
「ご主人様、恐縮ですが、質問させていただいてもよろしいでしょうか?」
今まで沈黙を貫いていたルキフグス家の使用人が言葉を発した。
「よい、許可する」
「ありがとうございます。それでは遠慮なく聞かせて貰います。ルシファー家は実力主義の中でもトップクラスの力を代々持ち魔王の地位に就いております。そのような反対勢力の弱小悪魔などいつでも粛清できるはずです。などに問題など何所にあると言うのです」
ルキフグス家の使用人の言う通りである。ルシファー家の力は強大だ。現魔王の座に就いているダルクは、歴代の魔王より優秀と言い難いが、それでも一騎当千できる位の力は有している。ダルクにかかれば、反乱分子など瞬く間にこの世から消すことが出来るだろう。
「確かにお前の言う通りだ。あの程度の反乱分子なら私一人で十分殲滅することができるだろう。しかし奴らの中には悪魔の中でもそれ相応の貴族悪魔が多々所属していようだ」
貴族悪魔の中には力を持たない悪魔も存在している。もしそんな貴族を殲滅してしまったらルシファー家の外聞が悪くなるだろう。
それがダルクには気に入らないようだ。
「だから俺たちは他の魔王が奴らを殲滅し始めたら、それに便乗する。おそらく本格的に動き出すのはもうしばらく先になるだろう」
ダルクが何か他に話しているが耳に入ってこない。
どうやら悪魔同士で戦争が起こるらしい。さて、どうやって切り抜けるか・・・・それが問題になってくる。私の力は魔力だけは膨大だが、他がからっきしなので戦闘が始まったら、このままだとおそらく生き残れないだろう。
しばらく考えていると、妙案を思い付いた。
今重要なことは私とお母様が無事に生き残ることである。他の奴らなど、どうなっても構わない。しかし戦って勝てる見込みがない。じゃあ、やることは一つであろう。
考えついた案とは、逃走である。
私が逃走することを決意すると、ふとダルクから声がかかった。
「おい、そこの塵屑。お前のその無駄な膨大な魔力を俺が上手に利用してやる。着いてこい」
どうやら逃亡は許されていないようだ。
大人しくダルクに着いていこうとすると、お母様がそれを阻止しようとした。
「ダルク、あなたソフィアに何をさせるつもりなの。ソフィアはまだ子供よ。それに魔力はあっても戦う力はないのよ」
お母様の顔には不安な気持ちが浮き上がっていく。しかしそんな些細な事を歯牙にかけずに私を連れていこうとする。
「この塵屑は一応俺の所有物だ。どう使おうが俺の自由だ。それにマリアンヌ、お前は勘違いをしている。こいつは息子などではなく物だ。俺は如何して君がそこまでこんな物に感情移入するか理解できない」
塵屑、物、実の父親か言われるが、私は何も感じない。初めの頃はこんなことはなかったと思うが、何度も何度も言われ続けた結果なのか次第に何も感じなくなってしまった。
ダルクの言い分に信じられないという顔をするお母様、しかし直ぐに反論した。
「ソフィアは物ではありません。嬉しい事があれば笑うし、悲しい事があれば涙を零します。それにその子は私の息子でもあります。だからあなたが勝手にソフィアの事を決めないでください」
しかしダルクは聞き入れることなく、私を連れて行く。背後をチラリと見るとそこには、下唇を噛み悔しそうな顔のお母様がいた。
今、俺はとても不愉快な思いをしている。その原因は後ろに付いてきている塵屑だ。いや今回はその膨大な魔力を利用するのだ少しは役に立つ塵屑にランクアップしてやろう。
こいつは俺の息子なのに魔力は膨大だが、魔法は全く使うことが出来ずにそれ以外も二流程度の才能しかない出来損ないである。こんなルシファー家の恥を俺の息子と認めるわけにはいかなく、何度も暗殺を試みたが全て失敗に終わった。
「ちっ、本当に目障りな奴だな」
だが、今回の問題でこいつを処分する目処が立った。
精々最後ぐらいは俺の役に立ってくれよ、この塵屑。
ダルクがある扉の前で立ち止まり扉を開けて中に入っていった。
どうやら目的の場所とはここの事らしい。部屋の中からそこはかとなく嫌な魔力を感じる。それも私の無駄に膨大な魔力より巨大な魔力を・・・・・、嫌な予感しかない。しかし入らないと言う選択は存在しないので、私は渋々部屋の中に入ることにした。
「うッ」
部屋の中に充満している魔力に思わず顔をしかめてしまう。その魔力は誰のものかが分からないほどに、色々な種類が混ざっており絶望の感情で濁っている。私はあれが体に良くない影響を及ぼすと即座に直感し同時に先に部屋に入ったダルクを探した。
「どうやら貴様もこいつの魔力の凄さを感じたようだな」
声が聞こえた方を振り向くとダルクと巨大な繭を発見した。
繭の大きさは約、縦4m横2mもあるが、ここでは重要ではなく問題は蓄えられている魔力だ。
「光栄に思え。今からお前に存在価値を与えてやろう。貴様に重要な任務を与える」
背中から冷や汗が止まらない。この状況からして厄介な任務だろう。
「貴様はこれから毎日魔力をこの繭に触れて送り込め。勿論、貴様に拒否権などない」
繭の方に視線を向ける、ドクンドクンと脈打っていている繭は直ぐに嫌悪の対象となった。
ダルクは必要な事は言ったとばかりに部屋を後にした。部屋には私と繭だけが残される状態となり、部屋から出られないようにするために魔力に反応する結界に覆われているようだ。どうやら魔力を全てこの繭に供給しなければ部屋から出ることが出来なさそうだ。
「仕方ないか・・・・・・。私の魔力をくれてやる」
―――怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨―――
「グッ」
魔力を供給するために繭に触れると嫌悪、憎悪、嫉妬、などの不快を抱く感情が流れ込み、その代わりに私の魔力が強引に吸収されていく。まるでソフィアという存在を書き換えられているような不快感が襲い掛かってくる。咄嗟に手を放そうとするが、まるで繭が逃がさないようにしているかの如く手が離れない。
「オェェェェェェ」
ピチャ、ピチャと部屋に音が響くと同時に酸性独特の臭いが広がる。流れ込んでくる感情の不快感と魔力を急激に失っていく喪失感で視界が回り、耐えきれずに嘔吐してしまったようだ。そんな状態なのに繭は魔力を全て食い尽くすように吸収していく。
「私のことをなめるなよ、繭の分際で」
行使できる魔法で数少ない内の一つの肉体強化を使い繭から手を引き離そうとする。しかし一向に離れる
しかし魔力が尽きそうになってから出来るようになったことがある。今迄は魔力が膨大で制御など出来なかったが、今の枯渇している状態ならコントロール出来たのだ。
そのような余計な事を考えていたせいか、いつの間にか気を失っていた。
ソフィアがダルクに連れられてどこかに行ってしまった。私はそれを阻止することはおろかダルクがソフィアに言った事を撤回させることすら出来なかった。これで私は母親と言えるのか、いや言えないだろう。何と言おうとも自分の息子を犠牲にして今の生活が成り立っているのだから。それを今容認してしまった私が恨めしく嫌いだ。
「本当に・・・・・ごめんなさい、ソフィア」
誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
しばらくの間自己嫌悪していたが、それどころではなくなった。ルキフグス家の使用人が私に直接報告し、それを聞いた私は大いに慌てた。自分の息子が倒れた、と聞いて落ち着いている母親などまずいないだろう。私は大慌てでソフィアが寝かされている部屋に赴いた。
ソフィアの部屋の中は簡素な物で飾り気が全くなく、必要最低限生活に使う物しかなかった。その部屋の中で唯一異彩を放っている巨大な全てが黒色なベッドが存在し、その中央にソフィアが眠っていた。その風景はまさに幻想的であり、思わず見つめてしまう。ベッドにはソフィアを中心にし、私と同じ薄く水色がかった銀髪が黒のベッドに広がって、まるで眠り姫のようだ。音を立てずにベッドの近くまで近づくと小さな可愛い寝息が聞こえてきて、それを聞いた私はソフィアの安全を確認でき安堵した。
「何も出来ないお母さんでごめんね。本当ならあなたはもっと楽しい生活を過ごしていたのに・・・・・・・悔しいよ、ソフィア。何も出来ない事がこんなに悔しいなんて」
涙が出るのを我慢しソフィアの頭を撫で続ける。
その姿はあまりにも儚く脆すぎた。部屋の中では、鼻の啜る音と悔しいと言う言葉が何度も響いている。