ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

6 / 28
ep.2

「ねぇ・・・・・またここに来てしまったの?流石に早過ぎない?」

 

声を掛けられるのと同時に意識を覚醒させる。眼前には黄金色の世界が広がる。この世界は私の世界であり、何者の侵されることのない不可侵領域。あの(おぞ)ましい繭から多大な感情が流れ込んだが、この世界は私が生きている限り不変で永遠だ。

 

「そうだね、まだここに到達するのは早すぎるな。だから()はもう行くよ」

 

声の主の方を振り向くことはしなかったが、今背後にいるのが誰かは分かる。会いたい人が後ろにいる、しかし今はまだ会う事を僕が許さない。

 

「そうだね、少し寂しくなるけどそれがいい」

 

僕は黄金に輝く海の方に足を向け、海の中に入っていく。

 

「僕は何百年、何千年()かっても君のいる所に行くよ。だから期待してその場所で待ってて」

 

僕が今言える事はこれ位しかない。でも、これだけの言葉で今は十分だ。

 

「そうね、期待して待っとくね」

 

その言葉を聞いて再度足を進める。完全に海に浸かり終ると意識が薄れていく。

さぁ、僕から私に戻りますか。

 

 

黄金色世界には銀の髪を(なび)かせた一人の少女が微笑ましそうな顔をしてポツンと立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」

 

現状を確認するために何となく使い古されている言葉を呟いてみる。すると隣から直ぐ近くから穏やかな寝息が聞こえてくるのと同時に温もりも感じ、とても安らぐ。どうやら今私はお母様に抱きかかえられて、その腕の中で寝ていたようだ。とても気持ちよさそうに寝ているのを起こすのは忍びないのでしばらくはお母様を観察してみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくするとお母様の瞼が徐々に開いていき大きな瞳が私を見つめる。

 

「おはようございます、お母様」

 

「おはよう、ソフィア。それで他に言う事があるんじゃないかしら」

 

お母様は誰もが見惚れるような笑顔を浮かべているのに背中から冷や汗が流れる。どうやら今回の件についてご立腹のようである。

 

「えっと・・・・・その、ごめんなさい?」

 

「なんで疑問形なのかは、この際聞きません。でもこれだけは覚えておいてください。あなたは私のたった一人の息子、この世で一番大切で愛おしい存在、だから今回のように自分自身を軽くみないで」

 

お母様の言葉で心が痛む、しかし今回の事は如何しようもなかった。私とお母様の立場はルシファー家で現在微妙な立ち位置である。その原因は無能な私にあり、そんな私を出産してしまったお母様は無能な母親というレッテルを張られてしまった。だから今の私たちは、どんな小さな功績も貪欲に求めなくてはならなくなってしまい、今回の依頼は断ることなど出来るわけもなかった。しかし何も損な事ばかりでなく、きちんと利益が存在し寧ろ私にとっては得をした方である。たとえ私の身に何か遭ったとしてもお母様が危険な目に遭わなければそれでいい、それに魔力が尽きかけている状態での魔力制御の練習はきっと役に立つだろう。

 

「私たちの立場が悪いのは理解しています。それでもあなたはまだ3歳の子供なの、だからあまり無理をしないで、本当にお願い」

 

お母様の縋り付いてくるような声にまた心が痛むが、どうやら私の心と体はこの生き方を変えるつもりはないようだ。しかしこの場ではお母様を安心させるために嘘をつこう。

 

「ごめんなさい、これからは気を付けます」

 

「うん、それでよろしい。今回の話はここまで」

そう言って私たちは日常に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6年間私は繭に魔力を注ぎ続けた。朝起きてご飯を食べそして魔力を注ぎ、また気絶して倒れる。この様な生活を送っていたせいか私自身やつれてしまい、頬がこけ目の下にクマができ、まだ9歳なのに常に疲れた表情をする子供になってしまった。だが、何もしていなかったわけではない。悪魔の世界は力が全てだ、ならそんな世の中で生きていくには如何したらいい?力だ、力が必要になってくる。なんてシンプルで残酷な答えなのだろう。私には才能という物は欠片も存在していなく、6年の月日の中で死にもの狂いで基礎の一つが出来るようになっただけだ。物体に自分の魔力を通すことによって強度や切れ味を底上げする、これが6年間の私の成果であり、あまりにも乏しい。だがこんな生活は終わりを迎えようとしている。なぜなら少し前から魔力を繭に注ぐと最初の時と比較して大きく脈打つようになり、中身が透けて見えるようになっている。これは繭が羽化しようとしているのだと私は考え、そうしたら私の役目は終わるだろう。

 

「ソフィア・・・・・」

 

「何?お母様」

 

最近はベッドから起き上がるのも億劫になってしまったが、寝たままの状態はお母様に失礼だと思い、自分の体に活を入れて起き上がる。

 

「ねぇ、もういい加減にやめない?」

 

私はお母様が何の事を言っているのかを理解した上で、とぼけることにした。

 

「何を止めると言うのです」

 

「ソフィア、あなたがあの禍々しい繭に魔力を供給して今の生活を維持出来ているのは確かな事です。このお願いは私の我儘なのは分かっている、でも、それでもあなたには元気でいて欲しいの」

 

お母様の心配はもっともである。しかし、今ここでこの任務を放棄する事は今までやってきたことが無駄になってしまう。功績をあげなくてはならない身の上でお母様の提案は受けいれ難い。だから辞めるわけにはいかない。

 

「お母様・・・・・・私はまだやれます。だから信じていてください、あなたの息子が無事に役割を果たすことを、それだけで百人力です」

 

「っひぐ・・・・ぅぐ、わか、ッん・・分かった。でもどうしても危ない時は自分の事を優先して」

 

お母様は私が倒れてから涙脆くなってしまった。それ程に心配を掛けていたと思うと心が痛む。

 

「分かった、それでは今日のお勤めに行って参ります」

 

「ふふふ、何その言い回し。行ってらっしゃい」

 

ほんの少しの冗談を(はさ)んでその場の空気和らげる。そして、すっかり衰えてしまった体で繭の置かれている部屋まで移動する。その速度は遅く覚束(おぼつか)ないが、それでも私は行く、今日は何か良くない事が起こると予想して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も相変わらず辛気臭い部屋だな。まぁ、6年間も通い続けたらすっかり慣れてしまったな」

 

この行為が正しいかは分からない、しかし今出来る事はこれしかない。そう自分を鼓舞(こぶ)し、繭に触れて魔力を送りつけるのと同時に魔力制御の訓練も行う。

繭に魔力を送るといつもと違う違和感を感じ取った。魔力を送っても、それを吸収することなく霧散してしまう。それだけでなく繭の中身がもぞもぞと動き繭を破ろうとしている。どうやらここ暫く慣れのせいで機械的に行動していたため、そのような変化に気づいていなっかようだ。

 

ギチギチ―――

 

部屋の中に何かを引き千切る音が響く。中身が暴れて繭の形を変形させ強烈でどす黒い魔力を放出する。放出された魔力量は私と比較するのがおこがましい程に膨大だ。

 

「ふふふふ・・フッハハハハ、やっと羽化し始めたか。凄まじい魔力の波動だな、こいつの力があれば龍、神、天使、堕天使など恐れるに足りない」

 

現在進行形で発している魔力を感知してダルクが部屋にやって来たようだ。

 

「なぁ、お前もそう思うだろう?こいつはお前が育てたんだ、それも6年も掛けてだ。だから分かる筈だ、この怪物がどれ程の力を持っているかを」

 

そんな事分かっている、こいつがどれ程の化け物かなんて。それにさっきのダルクの発言には憎悪が込められていた。内容から言ってこの化け物を使って戦争を起こすつもりだろう、しかしそんな事を許すほど私は愚かではない。

 

では如何(どう)すればそのような暴挙を阻止出来るのか、答えは簡単だ・・・・こいつが完全に羽化する前に絶命させる。

 

なに、この化け物も一応は生物だ。それにどんな生物も羽化したばかりは表皮が柔らかいはずだ。同室にダルクがいるので、おそらくチャンスは一度きり。

そうと決まれば、さっそく行動に移し、今私が出来うる最善の手を選択する。全魔力を右腕に集め、羽化する瞬間を今か今かと待ちわびる。ダルクは如何やら部屋が魔力で充満しているので今のところは気づいていない。

 

 

ドクン―――

 

心臓の音がいつもより大きく聞こえてくる。

 

ドクン―――

 

集中しろ、今出来る最高の一撃を奴に叩き込む。

 

ドクン―――

 

後の事など考えるな、狙うは奴の命。最短距離で絶命させる。

 

 

まだか、まだか、時間の流れが遅く感じる。

 

「ガアアアァァァァァァァァァァ」

 

化け物の叫びが響き渡り、とうとう羽化してしまった。

 

「来たっ!」

 

私は今奴の背後に位置している、此方が完全に視覚の外だ。何も考えずに最短距離を突っ走る。衰弱している体を魔力強化で強引に動かす。

 

「何も感じずに絶命しろ!」

 

自分の全体重と魔力の(こも)った拳を振り下ろす。

 

ドッゴン―――

 

 

 

 

「えっ?」

 

何故か殴ったはずの私が床に仰向けに寝転がっている。強烈な痛みが襲い掛かってくるが、思考が追い付いてこない。

何故だ・・・・・タイミングや場所、その他諸々の条件を満たしていたのに。

 

「なぜだ・・・・・・」

 

「フン、先走りやがって、お前なんぞの力で此奴(こいつ)を傷つけることなんざ出来るわけないだろ。此奴の姿を見てみろよ」

 

ダルクに言われるがままに羽化したばかりの化け物の全容を確認する。

体はまだ羽化したばかりなのでそれ程大きくはなく姿形は龍に似ているが、決定的に違う所が存在している。ブヨブヨな余分な皮に表皮は白濁色で濁り翼と眼がない。これでは龍と言うよりも芋虫、いや物語などで出てくるワームと言われている生物が適当であろう。

成程そういう事か、奴は眼がないから視覚で私を(とら)えたのではなく、私が発する極僅かな空気の揺れなどを皮膚で感じて私のことをとらえたのか。冗談じゃない、どうやってこんな奴を倒せばいいんだ。心が折れそうになるのを必死に我慢し、せめてもの足掻(あが)きとして睨みつけてやると奴は反応しこちらに顔を向けた。

 

 

「グュウ、グァァァァァァァァァ!」

 

 

「ひっ」

 

どうやら私の睨みは敵対行動と認識されたらしく私に咆哮と殺気を浴びせてくる。この時心が遂に折れてしまった。この世界で初めて恐怖を感じてしまい失禁してしまう。

 

「その今にも死にそうで情けない表情を見るに、やっと自分の愚かさを理解したか。その惨めな顔に免じて今の件は不問としてやろう。それに今回の任務の報酬をくれてやる、遣いを出すからその時を楽しみにしていろ」

 

ダルクはそう言うと私に退出命令を下す。

逆らう気力がない今、私はふらふらと自室に戻り衣服を着替えて真っ黒なベッドに寝転がる。すると相当に疲れていたのか直ぐに意識を手放した。

 

「一体私はどうすればよっかたんだ・・・・」

 

その言葉だけが部屋の中に木霊(こだま)した。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。