ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

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ep.3

ソフィアが部屋から出ていき暫くすると膨大な量の魔力が噴出した。

あまりに濃密な魔力は私達悪魔にとって毒になりうる。悪魔は魔力や悪意に敏感であり、そのため大き過ぎる魔力の波動は悪魔の体感を(むしば)み狂わしてしまう。現にさっきの魔力の波動により何人かの力の弱い使用人悪魔は気を失ってしまった。

ソフィアは今回それを間近で受けてしまった。今(まで)もそれ近い物を受けて、本人は気づいていないようだったが、その影響は体に徐々に表れていた。自身の体感が崩れているためか筋肉の付き方が左右でかなり異なってしまい、一般的に言えば歩くのも難しいだろう。しかしソフィアは自力で歩いてしまっている。これは自身の軸が完全に傾いている証拠である。だがそんな影響は些細な物であり、私が最も恐れている事はソフィアの心である。身体に現れた負傷など堕天使や天使などの『光』でつけられた物以外、我々悪魔にとってはあまり関係なく軽視する傾向にある。要は私達には回復魔法があるから体の負傷は簡単に治ります、と言うことだ。問題は心の方である。ソフィアは大人びているように見えるが、実際はまだまだ子供である。そんな彼がこれ程までに巨大で凶悪な魔力の持ち主が眼前にいるのだ。その事がソフィアの心にどのような影響を与えるのかが、私は心配で仕方がない。

 

「ソフィア・・・・・どうか無事でいてください」

 

今の私にはソフィアが無事に戻ってくることを信じるしか出来ない。また今回も、私がソフィアにしてあげられる事はない。

 

ギィー―――

 

 

「ソフィア!」

 

扉の前にある魔力の反応でソフィアだと確認した私はソフィアを扉のすぐ近くで待っていたため、彼女が今どんな状態かを直ぐに確認する事が出来た。どうやら先ほど考えていたよりも最悪の状況に陥ってしまったようだ。体は生まれたばかりの仔鹿(こじか)のように震えて立って歩くのも辛そうであり、所々に血が滲んでいる姿は痛ましい。外傷は酷いがそれよりも心の状態が酷い。さっきから話しかけているが、全然こちらの事に気づいていない。ふらふら行動している姿はまるで屍のようだ。

 

「ソフィア!ねぇ、大丈夫なの?何か言ってよ」

 

いくら呼び掛けても反応がなく、ソフィアの瞳はこちらを見ているようでも実際には虚空を見つめている。

最悪の結果だ。初めての恐怖で心が完全に折れてしまっている。ソフィアは大人っぽいが、まだ10歳の子供だ。あれほどの魔力を内包している化け物が眼前に現れたのだ、この結果は必然的だ。

心ここにあらずの状態でソフィアはいつも通りとは言わずもてきぱきと着替えてベッドの上に横になってしまう。直ぐにソフィアは寝てしまった。いや、この場合は気を失うと言った方が正しいかもしれない。ソフィアはそれほどまでに追い詰められて疲れてしまっていた。私はそれを思うと悲しくなり、そんなソフィアに対して申し訳なくなる。

 

「ねぇ、ソフィア・・・・・あなたはいつになったら自由を手に入れて私のためでなく自分のために生きることが出来るの?あなたの今の生き方はあまりにも報われない」

 

寝ているソフィアを起こさないように寄り添い同じ布団の中に入る。

 

「うっ・・・あっ」

 

寝ているソフィアの寝息はいつもと規則正しい物ではなく、恐怖からか呻き声のようなものが聞こえてくる。そんなソフィアを安心させるために私は彼を後ろから抱きしめて優しく頭を撫でてあげる。すると安心したのか穏やかな寝息に変わる。

その様子に安堵した私は襲いかかってくる睡魔に身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァ、ハァ、ハァ―――

 

森の中を一心不乱に駆け巡る。心臓はもう限界だと、訴えてくる。しかし立ち止まる訳にはいかなく、更に体を酷使する。立ち止まれば直ぐに追い付かれて捕食されるだろう。森の中で走っているからか距離と時間の感覚が麻痺(まひ)してしまい、その事が余計に限界の近い体に負担を掛ける。この時は体の疲労よりも奴から少しでも離れないと殺されるという恐怖が勝ちまだ動ける。

 

「ッ!」

 

 

ドスン―――

 

 

「イタッ」

 

暗闇の中で足元を疎かにしていたためか、木の幹に(つまず)いてしまった。

 

「くそ、マズイ。動けよ、動いてくれよ、私の体」

 

この状況は本格にマズイ。確認した時には奴には眼が存在していなかったのに、今現在進行形で奴に見られている感覚がする。さながら今の状態を表すとすれば、ライオンに追いかけられているウサギだろう。ウサギがライオンに対してとれる行動などほとんどなく、奴との力の差はそれ程に開いている。相手もその事を理解しているのか、本当なら即座に獲物を仕留めることが出来るはずなのに奴は遊び半分で狩りをしている。

地面に倒れながら移動し、付近にある木にもたれ掛り息を(ひそ)める。もう既に立ち上がる力がない。

森の中が静寂に包まれ、生き物の鳴き声や動く音などの生物が鳴らす独自の音が聞こえてこない。周りの音が聞こえてこないためか自身の何時もより速い心音が大きく聞こえてくる。奴が何時現れても反応出来るようにするために耳を澄ませているが、一向に聞こえてこない。

その状態が(しば)らく続き、もしかしたら奴は見失ったのではないかと期待してしまった私は目をつぶる。

 

「まだ生きている、生きているぞ」

 

自身の生を実感するために自分に言い聞かせる。

早くこの場所か去らなくはならない、と思い行動に移そうとすると、頬に粘り気のある温かい液体が垂れてきた。恐る恐る目を開け上を見上げると巨大な口とびっしり敷き詰められた牙を見てしまった。

 

 

「ググギュワワワワヮヮヮ―――」

 

 

―――み~つけた―――

 

 

「アアアアアアウアアアア―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アアアアアアウアアアア―――」

 

 

部屋のなかに甲高い悲鳴が響く。声の発生源はソフィアである。そのあまりにも大きな叫び声でさっきまで寝ていた私の意識が覚醒する。

 

「死にたくない、死にたくない、死にたくない。こっちに来るな。いや、いや、イヤ、イヤァァァァ」

 

ソフィアは錯乱し自分の頭を抱え込み掻きむしり始めた。

 

「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて、お願いだから」

 

ソフィアの体を押さえつけて行動を封じる。頭は掻きむしったせいか、うっすらと血がにじんでいる。

 

「イヤ、イヤ、イヤ。来ないで僕を殺さないで。こんな無意味な死にかたなんて。ひっく・・・・・えぐ」

 

とうとう泣いてしまった。今回は相当(こた)えているようだ。『私』から『僕』に一人称が変わっている。

ソフィアの体を背後から抱きしめてあげるとあることに気づく。ソフィアはもう今年で10歳になろうと言うのにあまりにも体が華奢である。体は筋肉がほとんどついていなく、体重も羽毛のように軽い。これではまるで壊れ物同然ではないか。今も泣き続けるのでソフィアを抱っこし、背中をリズムよく叩きながら子守唄を歌う。

 

 

―――あなたは眠りに眠り

 

    今あなたは深い夢を漂う

 

     この世は深くこの世の嘆きは深い

 

      しかし喜びは確かに世界に広がっている

 

       だから私の愛しき子よ今は眠れよ、眠れよ

 

        次に目覚めたときにはきっと幸せが広がっているから

 

 

 

 

 

 

顔の近くから寝息が聞こえてくる。まだ体と心は休息を欲しているのでしょう。

 

「・・・・・すーすぅー・・すぅ」

 

「ふふっ、どうやら安心して寝てしまったようですね。それにしてもずいぶん大きな赤ちゃんですね」

 

私の腕の中でさっきとは違い安らかな寝顔をしているソフィアはまるで大きな赤ちゃんの様である。ソフィアをベッドに寝かそうとしてある事に気が付いた。ソフィアが私の腕を抱きかかえて離さないのである。

 

「ママ・・・・」

 

「まぁまぁ、ママですか。本当に可愛らしい子ですね、ソフィアは」

 

ソフィアは私の腕を放してくれない。じゃあどうするか、ソフィアを起こすという案は却下です。やっと安心して眠っているのにそれを起こしてしまうのは悪い気がしますし、今のソフィアにはきっと休息が必要であるはず・・・・・・・・決して、私が安心からか緩みまくった彼の顔見たい、なんて私欲は入ってませんからね。それではさっそく抱っこの状態で横になりましょう。

 

「おやすみなさい、ソフィア」

 

このまま寝たら腕がしびれてしまうのでは?という考えが頭に浮かんだが、ソフィアの匂いと寝顔の威力によって吹き飛んでしまった。

そして私たちは二度目の眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

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