ハイスクールD×D 黄昏で君ともう一度 更新停止   作:〇〇〇もげろ

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ep.5

使用人が私にもでき、日常が変化していった。使用人がいる事によって修行ばかりの日々に余裕ができると私は思っていたが、どうやらそうではないらしい。生活の改善になってはいるが精神的苦痛が襲い掛かってくる。これではいなかった時の方が断然に楽だったに違いない。今更悔やんでも仕方がないと割り切り、その原因の改善に努めることを、私は決断した。

そもそもの原因は何か?と聞かれたら、勿論今も私の後ろに待機している使用人のことである。

彼女の名前はグレイフィア・ルキフグス。『番外の悪魔』ルキフグス家産まれであり、私と近い年齢だが私と違い自在に魔法を使用することが出来る。グレイフィアの力を統計してみると、おそらく同年代の中で頭一つ分以上抜きん出ているだろう。そんな彼女はもともと私の義兄であるリゼヴィムの使用人候補の筆頭であったそうだ。

グレイフィアはまさに絵に描いたようなエリートであった。しかし今回の件で手柄を立てた私のせいでエリート道から転落してしまった。自分で言うのもなんだけど私はリゼヴィムと違い、魔法も(ろく)に扱うことが出来ない魔力だけしか取り柄がない落ちこぼれである。グレイフィアと比較しても私が勝っているのは魔力量だけであり、これでは主として立つ瀬がない。そんな私の使用人になったらお先真っ暗であろう。

その事が気に入らないのかグレイフィアはいつも不機嫌で無言の圧力をかけてくる。

想像してみてほしい、自分の後ろに自分以上の実力者がずっと無言で「私無茶苦茶不機嫌です」っていう顔して待機していたら気が滅入らない人はいないだろう。

はてさて、どのようにしてグレイフィアの機嫌を取ろうか。まぁ、まずは会話で打ち解けていこうか。

 

「ねぇ、グレイフィア」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

あれ?もしかして無視されているのかな。相当に私のことが気に入らないみたいだな。本当なら主人にそんな態度をとったら解雇か減給ものなんだぞ。そんな権限なんて今の私は持ってないんだけどね。それだけ私は侮られているのか。

しかしそんな事で私は挫けないぞ。

 

「ねぇったらぁ」

 

「ちっ」

 

今舌打ちしたよね。本当に使用人か疑うほどの態度の悪さだな。しかし今のグレイフィアの待遇を考えて、私は自身の内から湧き出る苛立ちを押さえつける。

 

「何か用ですか、ソフィア様。出会い頭に言ったはずですよ。私に話しかけるのは必要最低限にしてくださいと」

 

「そうは言うけど、私はあなたと仲良くしていきたいと思っています」

 

「私はソフィア様、あなたとは必要以上に仲良くなどしたくありません。それにあなたを私の主とは決して認めることはないでしょう」

 

グレイフィアの発する言葉には(とげ)があり辛辣(しんらつ)だ。それでも私は彼女とより良い関係になりたいと思ってしまう。嫌がる相手にこのような事を思う私は愚か者なのだろう。

 

「じゃあ、どうしたら私のことを主として認めてくれるの」

 

「そうですね・・・・・。私は自分よりも弱い者を主とは認めません。だから万が一ありえないけれども、私よりも強くなればソフィア様を主と認めましょう」

 

グレイフィアの言い分はもっともなことだ。使用人よりも弱い主など認めることなど出来るはずもない。しかし強くなれば認めるとグレイフィアは言った。ならば私がすべきことが明瞭に見えてきた。今の私よりも強く、それでも超えることが出来なければ更に強く。たとえ数十、数百年も掛かったとしてもグレイフィアを超えるために努力しよう。生憎(あいにく)と時間は腐るほどある。それにいつまでも女の子に負けているようでは男が(すた)るってもんだ。

 

「グレイフィア、それは本当の事ですか?」

 

「はい、勿論本当のことです」

 

言質(げんち)は取りましたからね。いつか必ずグレイフィアよりも強くなってみます」

 

「そうですか。その時をあまり期待せずに待っておきましょう」

 

今私がやるべき事は決まった。

魔法の修行をいくらしても確実にグレイフィアに勝つことが出来ないだろう。だから私はその差を埋めるために槍術を修めようと思う。槍は才能がない私が唯一まともに使用でき得物だ。まぁ、その槍術もかなりの量の反復練習をこなして初めて一人前、精々二流になれるかどうかというほどだが。

 

 

 

「そうだ。私の大切なものを二度と奪わせないためにも、もっと力を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ!」

 

屋敷の広場から風切り音が響いてくる。ここ数日の間、毎日聞こえてくる音である。広場で何をしているのか見当が付いている私は広場までの道のりをゆったりとした足取りで歩いて行った。

予想通りですね。

広場には一人の少年が一心不乱に木製の槍を振るっている光景が広がっていた。突く、払う、斬る、などの基本動作を繰り返し行っている。毎日彼の修行を観察していると私は一つの結論に辿り着いた。

ソフィアは予想以上に弱すぎる。槍の使い方がまるでなっていない。あれではいくら槍を振るっても意味がないだろう。槍を振るう以前に体作りの基礎が全くできていない。あれでは体を壊すのも時間の問題である。

問題に気が付いているのに、教えなかった事で倒れられたら夢見が悪くなってしまいますね。今回だけ教えてさしあげましょうか。そう私は自身に言い訳をして、ソフィアの元に行く。

 

「ソフィア様、少しよろしいですか」

 

「どうしたの、グレイフィア」

 

ソフィアは私が話しかけると、即座に修行を中断し私の所まで来て見上げた。ソフィアは私よりも身長が小さく見上げるようにしないと私の顔を見ることが出来ない。普段私から話しかける事はないので不穏な雰囲気が流れ、その中で私とソフィアは互いに見つめ合う。

身長小さいですね、それにまつ毛長い、これで本当に男なのでしょうか?それに私とほとんど同じ銀色の髪なのに何度見ても綺麗な髪ですね。

そこで私は初めてソフィアに女性として嫉妬している事に気付いた。

 

「――ぇ、ね――、ねぇ、グレイフィア!どうしたの」

 

「え?・・・・・あぁ、別に何でもありません」

 

「そう、それで私に何か用があったのではないのですか」

 

どうやらソフィアの容姿に見とれてしまったようだ。私はその事実に釈然とせず、その事をソフィアに知られたくなかった私は彼に要件を即座に話そうとした。

 

「差し出がましいと思いますが、一つだけ忠告してさせてもらいます。今ソフィア様がしている修行は全て無駄です。大方、何度も何度も反復して同じことをすると上達すると、あなたは思っているのかもしれませんが、それは全然理に適っていません」

 

ソフィアにとってかなり厳しい事を言っているのを自覚して更に私は言葉を発する。

 

「あなたは体の基礎が全くできていません。その状態で毎日これ程激しい運動をすると、そう遠くない未来であなたは必ず体を壊すでしょう。だからまずはランニングなどをして体の下地を強固な物にすることを勧めますよ」

 

私はここまで言うつもりなどなかったのに、ソフィアの修行中の姿を見ていると、どうしてもお節介を焼かずにはいられなかった。

いけませんね、私ともあろうものが、ソフィアに感情移入し過ぎている。でも不思議と最初の頃より不快感はない。

 

「そうですか・・・・・・、分かりました。ここはグレイフィアの言う通りにしておきますね。それにしても、グレイフィアから話し掛けてくるなんて珍しいですね」

 

「そっ、それは・・・・たまたまです。そう、たまたま気の迷いで声を掛けたにすぎません。決してソフィア様のことを心配したわけではありません」

 

必死に言い訳を並べる私の姿は何とも哀れに感じてきた。早くここから立ち去りたい。

 

「ふふふ、そうですか。たまたま(・・・・)ですか。それでも、ありがとう、グレイフィア」

 

「ッ!」

 

ソフィアの笑顔を見た瞬間に私は恥ずかしくて全力でその場を離脱してしまった。

 

 

 

 

私はしばらく走り続けて誰もいない私の部屋に逃げ込んだ。

 

「ハァハァ・・・」

 

ソフィアの笑顔を見てから顔の熱が引かなく、ドクドクといつもより鼓動が速くなっている。私は恥ずかしいはずなのに何故かこの状態が心地よく感じた。

 

 

 

 

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