ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い   作:ヤマタノオロチ

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お待たせ致しました。
今回はポケットモンスターXYの12話からの話です。この小説のもう1人のヒロインであるシノンが大活躍します。彼女の強さと優しさに皆さん、楽しんでください。

1万字超える程長くなってしまうとは・・・


ポケモンバイヤーを捕まえろ!

次の目的地に向かって広々とした草原のような道を歩いていたカイト達、すると突然ピカチュウが耳を立ててキョロキョロと辺りを見渡し、サトシも足を止めて立ち止まる。

 

 

「何だ・・・今の音・・・?」

 

「えっ、何・・・?」

 

「音だと・・・?」

 

 

全員が立ち止まって耳を澄ませてみるが、特に変わった音はしなかった。

 

 

「何も聞こえませんけど・・・」

 

「うん・・・」

 

「気のせいじゃない?」

 

「いや、確かに何か聞こえたんだって!」

 

 

ぐうぅ~~~・・・!!

 

 

そう言った時、サトシとピカチュウのお腹が大きな音を出しつつ鳴った。これを聞いてセレナ達は呆れつつも笑ってツッコミをいれた。サトシ達も恥ずかしそうに赤くなって頭を搔く。だがカイトとシノンは険しく真剣な表情のまま前方を見つめていた。それに気が付いたサトシが問い掛ける。

 

 

「どうした2人とも?」

 

「静かにしろサトシ・・・何かがこっちに近づいてくる」

 

「この音は車・・・ッ!?危ない!!」

 

 

冷静に音の正体をシノンが言うと周りに響くようなエンジン音を噴かせつつ、前方から猛スピードでジープが走り抜けた。シノンが大声で言ったおかげで全員避ける事ができた。そして通り過ぎたジープに乗っていたのは丸い体型の男と1匹のポケモンだった。

 

 

「危ないなぁ・・・」

 

「何なのよ、アイツ・・・!」

 

「退いて退いてーー!!」

 

 

轢かれそうになってサトシとセレナが怒りを表しながらジープが去った方向を睨んでいると今度はジュンサーの乗ったバイクが走り抜けていった。

 

 

「ジュンサーさんが追い掛けていると言う事は・・・」

 

「あのジープに乗っている奴は悪者よ!」

 

「何か事件かも!」

 

「どうしますか?」

 

「俺達も行ってみよう!」

 

「まぁ、見てしまった以上行くしかないな」

 

 

カイト達は来た道を走って戻って行き、ジュンサーの後を追い掛ける。だが人の足ではバイクとジープに追いつけるわけがなかった。距離はどんどん離れていき、さらにシトロンが限界を迎えて立ち止まってしまう。

 

 

「もう・・・ダメ・・・」

 

「お兄ちゃん・・・しっかりしてよ」

 

「大丈夫?シトロン」

 

「大丈夫か?」

 

 

四つん這い姿勢のまま動けないシトロンをサトシ達は心配して駆け寄る。カイトも駆け寄ろうとしたが、突然近くの茂みの方へ歩き出すシノンに気が付く。

 

 

「どうしたシノン?」

 

「何かが・・・そこに・・・」

 

 

警戒しつつゆっくり歩くシノンの傍でキュウコンが彼女を守りながら一緒に近寄る。

茂みに落ちていたのは紫色のケージで、その中から黒い小さな虫ポケモンが出てきた。初めて見るポケモンでサトシが図鑑を開いて調べる。

 

 

『コフキムシ。粉吹きポケモン。鳥ポケモンに襲われると黒い粉をまき散らす。体を覆う粉は体温を調整する』

 

「・・・コーフ!」

 

 

図鑑の説明を聞いて再び視線を戻すとコフキムシは体から黒い粉を飛び散らして警戒する。それを見て一番近くにいたシノンが優しく微笑んで、刺激を与えないようにしながら手を差し出す。

 

 

「大丈夫。私達は貴方の敵じゃないわ」

 

「コンコーン」

 

 

微笑みながら優しく語り掛けるシノンの今の姿はまるでシロ姉と同じ女神のような感じだとカイトは内心思った。しかしコフキムシは突然その場に倒れてしまった。

 

 

「大丈夫!?」

 

 

シノンは慌ててコフキムシを両手で抱き抱える。よく様子を見てみるとかなり弱っていた。

このままでは危険と判断して急いで近くのポケモンセンターに向かった。幸運な事にポケモンセンターとの距離はそう離れていなかったのですぐに辿り着けて、ジョーイにコフキムシを見せる。

 

 

「ジョーイさん、お願いします!」

 

「はい!プクリン、治療の準備をお願いね」

 

「プクゥ!」

 

 

預かったコフキムシはプクリンにより治療室に運ばれた。早く元気になるように願いながらカイト達は見送った。

 

 

「ありがとうございます。ジョーイさん」

 

「どういたしまして。ところであのコフキムシは、この地方のコフキムシではありませんね」

 

「えっ?そんな事が分かるんですか?」

 

「ええ、これを見てください」

 

 

受付の頭上に設置されてある大きなモニターの画面にジョーイは沢山のビビヨンの画像を映し出した。画面に表示されたビビヨン達はそれぞれ羽の模様が違っていた。

 

 

「ビビヨンは地方ごとに羽の模様が違うんです。この他にももっといろんな模様があるんですよ」

 

「すごーい!」

 

「だからコフキムシにもそれぞれ微妙な違いがあるんです」

 

「なるほど・・・」

 

 

ジョーイの説明を聞きながらカイトは前にハクダンジムのジムリーダー・ビオラが使っていたビビヨンを思い出した。あれは確か花園の模様の羽だったと思い出していたら突然背後から縄で腕を捕まえられてしまった。何が起こったのか分からなかったが、とにかく縄を外そうとした時にジュンサーと相棒のライボルトが目の前に現れて睨み付ける。

 

 

「観念しなさい!逃げようとしたり抵抗したりすると逮捕するわよ!」

 

「ライボォル!」

 

「・・・・・それ、言うの遅くないですか?」

 

 

普通なら縄を掛ける前に台詞を言うのではないかと内心ため息つきながら思った。

だがジュンサーは気にせずに縄をさらに引っ張る。カイトが踏ん張ろうと足に力を込めた時、腰に付けてあるモンスターボールの1つが勝手に開いて1体のポケモンが飛び出てきた。

 

 

「ツキ!ヒート」

 

「サンキュー、ヒトツキ!」

 

 

出て来たのはこの前仲間にしたヒトツキで、体を一振りして縄を斬ってくれた。解放された腕を擦りながらお礼を言うとヒトツキはカイトに怪我がないのを確認してから姿勢を整えて頭を下げる。ゲットしたから分かったが、こいつは形だけでなく性格までもが騎士なのだ。ゲットした時から主(カイト)を守って忠誠を尽こうとする家来のような行動にポケモン達も含めた全員が内心呆れているのは余談である。

 

 

「くっ!やるわね。けどポケモンバイヤー・ダズの仲間である貴方達は絶対に逃がさない。ライボルト、行くわよ!」

 

「ライボォ!」

 

「「ポケモンバイヤー!?」」

 

 

ジュンサーの言った“ポケモンバイヤー”という言葉を聞いてカイトとシノンは驚きの声を上げる。

 

 

「そうか。あの男はポケモンバイヤーだったのか」

 

「兄様、これは放っておく事はできません。あの男を捕まえなくては!」

 

「あぁ、あのコフキムシが元気になったらすぐに出掛けるとするか」

 

「貴方達・・・ダズの仲間じゃないの?」

 

「違います!誤解してますよ!」

 

 

2人の真剣な話し合いを見て、ジュンサーは疑問に思いつつ仲間ではないのかと尋ねる。それをシトロンが否定して必死に状況を説明する。それを聞いてジュンサーは俺達に謝罪する。

誤解が解けた事でその場の雰囲気は穏やかになり、それと同時に治療が終わって元気になったコフキムシをプクリンが運んできた。

 

 

「元気になりましたよ!」

 

「フムゥフムゥ!」

 

 

すっかり元気になったコフキムシは良い声を出し、それを聞いて全員安心した。喜び合っている中でコフキムシはじっとシノンを見つめて、それに気付いたシノンがにっこりと笑顔で「良かったね」と言うとコフキムシはさらに嬉しい表情になった。

その後カイト達とジュンサーは近くのテーブルに移動して椅子に座る。そしてサトシが代表してジュンサーにポケモンバイヤーについて問い掛け、ジュンサーが詳しく説明する。

ポケモンバイヤーとは、世界中のポケモンコレクターの為に各地でポケモンを捕獲し、ネットで売り捌く者達の事である。連中の中には他人のポケモンを奪って売る者、野生のポケモンを乱獲したりする者などがいる。

 

 

「ジュンサーさんが追っているダズと言う男は後者のタイプなんですね」

 

「えぇ、そうよ。アイツはビビヨンを専門とするポケモンバイヤーで、各地のコフキムシやコフーライを大量に捕獲しているの!」

 

「じゃあ、そのダズって人のアジトにはその捕まったコフキムシやコフーライ達が・・・?」

 

「全て閉じ込められていて、ビビヨンに進化したら売り捌かれるの」

 

「何て言う奴だ・・・許せないな!」

 

「ピッカチュウ!」

 

 

ジュンサーの説明を聞いて皆が怒りを表している中、カイトとシノンは嫌そうな顔をして怒りを抑えながら溜息をつく。

 

 

「良い所だと思っていたカロス地方にもポケモンバイヤーと言う害虫がいるなんて、悲しい事だ」

 

「本当ですね。シンオウ地方ではかなり捕まえましたのに・・・」

 

「貴方達2人、さっきもそうだけど随分とバイヤーについて詳しいのね」

 

「えぇ、カロス地方に来る前・・・シンオウ地方にいた頃に何度か遭遇して捕まえてきましたから」

 

「確か・・・兄様と姉さんと私の3人で合わせて30人以上捕まえましたね」

 

「「「「「ええ!?」」」」」

 

 

シノンの言葉を聞いてサトシ達は驚く。多くのポケモンバイヤーを捕まえてきた事もあるが、特に驚いたのはシノンについてだ。これまで一緒に旅をしてきて、バトルや経験からカイトが強いと思っていた。だがまさかシノンも同じくらい力を持っていたとは・・・彼女の凄さをサトシ達は強く感じ取るのであった。皆がそう思っているとは知らないシノンは、テーブル上のコフキムシが気になって視線を移すと驚きの表情になる。

 

 

「あれ?コフキムシ、どうしたの?」

 

 

その言葉に反応してカイト達もコフキムシに視線を移す。コフキムシは落ち着きがなくテーブルの上を何度もぐるぐると動き回っていた。

そして突然動きを止めると小さな体が青く輝き始め、姿形が変化していった。どうやら進化が始まったのだ。光が収まった後、そこにいたのはコフキムシの時より大きくなって、黒い体が白い毛で覆われたポケモンだ。図鑑で調べてみるとコフーライと言うようだ。

進化の瞬間を見られた事に全員が興奮する。特にセレナとユリーカは初めてだったので、瞳を輝かせて感動すらしていた。

 

 

「良かったね。コフーライ」

 

「コフーー」

 

 

進化した事を喜びつつシノンはコフーライの頭を優しく撫でる。コフーライも嬉しそうな表情して鳴く。その鳴き声はポケモンがトレーナーに懐いている声と同じだった。

 

 

「(もしかしたらコフーライはシノンに・・・)」

 

 

これから起きる未来図を想像したカイトは嬉しそうに誰にも気づかれずに薄く笑う。すると突然服が引っ張られた感触に気が付いて振り向くとユリーカがこちらを見つめていた。

 

 

「どうしたユリーカ?」

 

「ねぇねぇ、カイトさん!折角だから進化について詳しく教えて!」

 

 

期待の籠った眼で見つめているユリーカ。別に俺じゃなくてシトロンやシノンに聞いても良かった気がする。サトシはどうだと?アイツだと分かりにくい説明をすると思う。まぁ、特に断る理由もないし、そう思って鞄からいろいろな物を取り出してから説明する。

 

 

「ポケモンの中には、一定の条件を満たすと別の形になる個体がいる。その事を進化と呼ぶんだ。その条件の例として、さっきのコフキムシのようにある程度まで育つと進化してコフーライになる。他にも今此処にある炎の石や水の石、月の石と言った進化の石を含めた特殊な道具を使ったり、特定の場所・時間帯で進化するポケモンもいるんだ。今俺の手持ちにいるヒトツキを育ててニダンギルに進化させた後、闇の石を使えばさらに進化させる事ができるんだ。一応ここまでだな」

 

 

カイトの進化の説明はとても分かりやすく、初めて聞くユリーカやセレナだけでなく他の者達も真剣に聞く。手持ちポケモンや先程鞄から取り出した進化の石を見せたりと工夫をして説明する。それが終わると皆から拍手が送られた。

 

 

「カイトさん凄い!説明もとても分かりやすかった!」

 

「進化って何か神秘的!カイトのおかげでよく分かったわ」

 

「本当です。流石は兄様です!」

 

 

3人に、特にシノンから熱い気持ちで褒められて上手く言えて良かった嬉しく思う。

その時、隣にいたグラエナがコフーライの体に何かが付いていることに気が付いて、その部分に口を近づけて傷つけないようにしながら銜えてカイトに見せる。よーく見てみるとそれは赤い光を点滅している十字型の機械だった。

 

 

「これは・・・おそらく発信機だな」

 

「僕にも見せて下さい」

 

 

カイトから譲り受けたシトロンが虫眼鏡で見てその機械が電波を発信するチップであると言う。

それを聞いたジュンサーが、その機械は逃げた獲物を追跡するためにダズが付けた発信装置だと分かった。そして今も発信し続けていると言う事はダズが取り戻しにこっち向かっている筈だ。

 

 

「なら逆にこれを利用するか」

 

「えっ!?どういう意味だカイト?」

 

「あぁ、今までの話からダズはかなり強欲な奴だ。逃がしたコフーライを必ず取り戻しに来る。だから奴に囮を回収させてチップを発信する電波をついて行けば、奴のアジトを突き止められる。突き止めたら奴を捕まえ、他にいるかもしれないポケモン達を助け出す」

 

「なるほど!なら奴を捕まえるのは俺に任せてくれ」

 

 

カイトの作戦を聞いてサトシ達はやる気を起こし、さらにシトロンが作っておいた『全方位型電波探知マシン』で追跡も可能になった。あと残った問題は・・・。

 

 

「誰が囮になるかですよね」

 

「だったら囮は俺がやるぜ!」

 

「いやいや、サトシでは大きすぎる(汗)。コフーライと同じくらいの者でないとダメだ」

 

 

それから暫く話し合った結果、囮役はハリマロンに決まった。セレナのおかげで変装は完璧に仕上がり、何処からどう見てもコフーライにしか見えなかった。鳴き声も完璧である。

 

 

「とても似ている。セレナ、貴方良い腕を持っているね」

 

「あぁ、凄いぜセレナ!」

 

「う、うん///ありがとう///」

 

 

シノンとサトシに褒められて頬を赤く染めてセレナは嬉しそうになる。

そしてコフーライに変装したハリマロンをケージに入れて元の場所に戻し、カイト達は少し離れた茂みの中に隠れてダズが来るのを待った。暫く経つと案の定ダズがやって来てケージを回収してジープを走らせる。その後カイト達はシトロンのマシンを頼りに追跡を始めた。しかし期待を外さないシトロンのメカは途中で壊れ、ジュンサーとは別行動となった。カイト達はプテラ、ジバコイル、ヤヤコマ、ウォーグルを出して空からジープを捜索させて森の中を進む事にした。

暫くすると4体は引き返して来て、ダズのアジトが森を越えた岩肌の山を登った所にある倉庫だと分かった。倉庫の傍には乗っていたジープが停まっていた。

カイト達はプテラ達に労いの言葉をかけてからモンスターボールに戻し、周りの状況を確認する。

 

 

「見張りはいないようだな。ジュンサーさんは来たか?」

 

「まだ来ていないわ。取り合えず待機ね」

 

「待っている間に逃げられたらマズイ。行こうぜ!」

 

「待てサトシ。正面から行ったら捕まっているポケモン達が人質になる」

 

「今最も優先すべき事は、捕まっているコフーライ達の救出です!」

 

「じゃあ、どうすれないいんだ?」

 

「まずは中の様子を探ってから行くかどうか決めよう」

 

「分かった」

 

 

カイトの意見を聞いてサトシはケロマツを出す。

 

 

「ケロマツ、あの建物の中に人がいないか確かめて来てくれ。もし誰もいなかったら両手で丸のポーズをしてくれ」

 

「ケロ。ケーロ!」

 

 

指示を聞いた後ケロマツは素早く忍者のように気配を消しながら建物に向かう。それを見守っているとケロマツが合図のポーズをする。どうやらダズはいないようだ。

 

 

「よし!それじゃ全員音を立てず慎重にポケモン達を助けに行くぞ」

 

「「「「「おぉ~~」」」」」

 

 

サトシが先頭で、俺が後ろから皆を守りつつ慎重に進む。その時、シノンの両腕に抱えられていたコフーライが何かに気が付いて鳴き声を出す。

 

 

「コフィ!」

 

「どうしたの?」

 

「ッ!?シノン!避けろ!!」

 

 

目の前にいたシノンをカイトは横に突き飛ばす。同時に足元から罠が発動し、シノンとコフーライ以外の全員が網によって吊るし上げられてしまった。

 

 

「あぁ!兄様!皆!」

 

「ありゃりゃ!1人と1体がこぼれてしまっただず」

 

「ダズ・・・!」

 

 

カイト達を心配するシノンの背後からダズが現れる。どうやらどこかに隠れていたようだ。ダズはシノンが自分の事を知っている事に驚きつつも睨み付け、対するシノンもダズを睨み付けて怒りを込めつつ言う。

 

 

「兄様達を今すぐ下ろしなさい!」

 

「喧しいわ!この儂を騙くらかしやがって!これはお前らの仕業だずな?」

 

 

そう言ってダズが見せてきた物はケージの中で変装が取れたハリマロンであった。

 

 

「ハリマロン!」

 

「リマ~~」

 

「ガタガタ道で変装が取れたんや。まぁええ、こいつも儂がしっかり売り捌いたるだず」

 

「そんなことさせません。貴方は私がここで捕まえる!」

 

 

普段なら絶対あり得ない程シノンは頭に血が上っている。しかしダズは余裕そうな表情のままである。

 

 

「煩い!さぁ、早うコフーライを渡すだず!」

 

「ホール!」

 

 

ダズが繰り出したのは最初にジープに乗っていたポケモンだった。サトシが網の中でポケモン図鑑を出して調べる。

 

 

『ホルード。穴掘りポケモン。ホルビーの進化形。大きな耳は1トンを超える岩を楽に持ち上げるパワーを持っている』

 

 

シノンは雄叫びを上げるホルードを冷静に見つめた後、コフーライを後ろに置いて腰に付けてあるモンスターボールからミミロップを出した。ミミロップは華麗に着地して決めポーズを決めた。

 

 

「ミミロップ。このバトル、絶対負けられない。全力で行くわよ!」

 

「ミミロ!」

 

 

シノンの期待に応えようとミミロップは気合いを込めて振り向きバトルに備える。しかしバトル相手のホルードは、ミミロップを見て目がハートマークになっていた。

 

 

「ホルホル~~!」

 

「ミミ?ミロ・・・ミロップ~~」

 

「ホルーーー!!」

 

 

相手が自分にメロメロである事が分かったミミロップはワザとらしくポーズを決めながらウインクをする。それを受けてホルードは完全にメロメロ状態となって、その場に倒れて骨抜きになってしまった。

 

 

「ホルード何やっているだず!さっさとアイツを倒すだず!!」

 

「ホル~~~」

 

 

ダズが怒りながら何度も言うがホルードは倒れたままだった。この光景を見てシノンだけでなく、サトシ達も呆れて苦笑した。

 

 

「どうなっているんだ?」

 

「見た通りホルードはミミロップの可愛さと美しさにメロメロになってしまったんだよ」

 

 

説明し終えたのと同時にダズがホルードをモンスターボールに戻す。戦えるポケモンがいなくなったと思ってシノンが降伏するように言う。

 

 

「手持ちポケモンが戦えない以上、貴方に勝ち目はない。諦めて捕まりなさい!」

 

「喧しいわ!儂にはまだこいつがおる。出てこいニドキング!」

 

「ニード!!」

 

 

ダズが出してきたポケモンは毒・地面タイプを持つドリルポケモンのニドキングだ。ホルードとは違ってニドキングはミミロップを睨み付ける。今度の敵は強敵だと感じたケロマツがシノン達の元に向かうが、シノンはケロマツにカイト達を助けるように言う。彼女の頼みとミミロップの気合十分な意志を受けてケロマツは素直に指示に従って、カイト達の元へと向かった。

これから本格的なバトルが行われると感じてサトシ達は不安定な体勢の中、シノンにエールを送る。

 

 

「シノン!負けるな!」

 

「相手は強敵です。気を付けて下さい!」

 

「シノンお姉ちゃん!頑張ってぇ!」

 

「そんな奴に絶対に負けないで!」

 

「ピカチュ!」

 

「ガウガーウッ!」

 

「コンコーン!」

 

 

仲間や最愛のパートナーの言葉を聞いて心の底から勇気と力が湧いてくるシノンだが、まだ最愛の人からエールを送られていない。それに気が付いてシノンは自然に網の方を振り向く。するとその中で最愛の思い人・カイトと目が合う。

 

 

「シノン!俺はお前が勝つ事を絶対信じている!」

 

「!!・・・はい!兄様!」

 

 

その言葉を聞いてシノンは一番最高な力を貰った感じをしながらバトルに挑む。

 

 

「ミミロップ!ピヨピヨパンチよ!」

 

「ミミ!」

 

「ニドキング!行ってもうたれ!ヘドロ爆弾や!」

 

 

走り出すミミロップにニドキングは口から『ヘドロ爆弾』を放つ。ミミロップは素早い動きで全ての弾をかわしてパンチを当てる。しかしニドキングは両腕でガードしてダメージを軽減する。

 

 

「メガホーンだず!」

 

「ニドォ!」

 

 

額の角を大きくして光らせ、ニドキングは勢いよく突進する。ミミロップは再び素早い動きで避ける。それを見てダズは徐々イラつくと同時にある命令を出した。なんとミミロップではなく、後ろにいるシノンとコフーライに攻撃させたのだ。突然の事だったので2人は動けず、技が命中すると思った時、ミミロップが2人を守ろうと自ら飛び込んで『メガホーン』を受ける。それにより右足を痛めてしまった。

 

 

「ミミロップ!大丈夫?」

 

「ミ、ミミロ・・・」

 

「これでもうちょこまかと動き回る事はないだず。次は二度蹴りだず!」

 

 

足を痛めて動きにくくなったミミロップは『二度蹴り』を避けられず、腹と頭に直撃してしまう。効果抜群の技だが、ミミロップは戦闘不能にはならなかった。負けないと言っているかのようにダズ達を睨み付ける。

 

 

「そんな状態で随分粘るだずな。いい加減諦めたらどうだず?」

 

「いいえ、諦めません。私とミミロップは・・・どんな事が起きようと絶対やり遂げます!」

 

「ミミロ!」

 

「ヒュウ~~・・・」

 

 

2人の折れない心を見てコフーライは眼を輝かせる。対してダズは嫌そうな表情になり、一気に止めを刺そうとニドキングに指示を出した。

 

 

「これで終わりだず!ニドキング、大地の力!」

 

「ニードォ!」

 

 

命令を聞いたニドキングが腕を地面に突き刺すとそこから強力なエネルギーが地震を起こしながらミミロップに迫った。それを見てサトシ達は焦燥に満ちた声を出すが、カイトとグラエナだけは薄く笑っていた。シノンとミミロップの眼から闘志が消えていなかったからだ。

 

 

「ミミロップ!飛び跳ねるでかわして!」

 

「ミミーロ!」

 

 

右足の痛みを我慢しつつミミロップは技が決まる寸前大きくジャンプする。動けないと思っていたダズはこれを見て驚きのあまり指示を出すのを忘れてしまう。その隙をシノンは見逃さなかった。

 

 

「ミミロップ!そのまま冷凍ビームよ!」

 

 

空中から放たれる『冷凍ビーム』を受けてニドキングは凍り付いてしまう。さらにそのままミミロップの『飛び跳ねる』を食らう。強力なキックで氷は砕けるが、ダメージによりその場で膝をつく。

 

 

「ええい!ニドキング、さっさと立てヘドロ爆弾や!」

 

「ニ、ニドォ!ニード!」

 

 

必死に立ち上がってニドキングは技を放とうとする。しかしダメージにより動きが鈍い今絶好の攻撃のチャンスだがミミロップは攻撃しなかった。否、攻撃できなかった。先程の攻撃で右足の痛みが限界に達してしまったのだ。放たれる『ヘドロ爆弾』から守ろうとシノンは、動けないミミロップを庇うように前に立つ。

 

 

「シノン!ミミロップ!避けろ!!」

 

 

流石のカイトも焦り、高い声を出して2人に逃げるように叫ぶ。だが『ヘドロ爆弾』は勢いよく2人目掛けて放たれた。その時、シノンの影からコフーライが飛び出して『守る』を発動して2人を守った

 

 

「コフーライ・・・」

 

 

驚くシノンの前でコフーライは、白い毛を逆立てて粉を飛ばして戦う意志を見せる。ダズはコフーライの回収を諦めてニドキングに攻撃をさせる。しかしコフーライは『守る』で攻撃を全て防いだ。そして次に『糸を吐く』でニドキングの体をグルグル巻きにするが、ニドキングは両腕に力を込めて強引に振り解いた。相手の攻撃に備えてシノンが2体に指示を出そうとした時、突然コフーライが激しく動き回り始める。それを見てシノンは察する。

 

 

「進化が始まる・・・!」

 

 

コフーライの体が光り出して形が徐々に変わっていく。触角と大きな羽が出て、優雅に羽ばたいて空へ飛ぶ。

 

 

「ビヨーン!」

 

「ビビヨンに進化した。しかもあの羽の色と模様・・・ビオラさんのビビヨンと違う」

 

 

このビビヨンの羽の色と模様はポケモンセンターで見た種類の1つの雅の模様であって、青紫色で不思議な模様に誰もが美しいと思った。

 

 

「これやぁ!この輝きがビビヨンの値段を吊り上げるんやぁ!コフキムシとコフーライはまさに金の生るポケモンだずなぁ!なはははh「黙りなさい」・・・あん?」

 

 

ポケモンバイヤーのダズにとってビビヨンの美しさは金儲けと言う自身の強欲を満たしてくれる材料しかない。それにシノンは腹の底から怒り出し、冷たい眼で睨みつつ言う。

 

 

「これ以上貴方の好きにさせないし、相手をする気もない。すぐに終わらせる」

 

「なんやとぉ!?やれるもんならやってみやがれ!ヘドロ爆弾や!」

 

 

ニドキングは口から再び毒の塊を撃ち出した。だがビビヨンが『神秘の守り』で防ぎ、素早く接近して羽を羽搏かせて『痺れ粉』をニドキングに浴びせる。麻痺状態になったニドキングは地面に倒れて動けなくなった。

 

 

「あぁ!?ニドキングが!ほんなら儂が捕まえたるだず!」

 

「ミミロップ!冷凍ビーム!」

 

 

懐から捕獲用ネットを取り出してビビヨンを捕まえようとするダズに容赦なく『冷凍ビーム』を放つ。それによりこの場に美しくないが見事な氷像ができた。それと同時にジュンサーがタイミング良く到着してダズは逮捕された。

 

 

 

その後夕陽が沈む時間帯になってカイト達を網から助けて、コフーライ達を全て檻から解放する事ができた。

仲間と嬉しそうに会話するビビヨンの声を聞いて、カイトは穏やかに気持ちになりながらサトシ達に通訳する。全員自分の事のように嬉しく思う。

するとコフーライ達の体が一斉に光り出して進化した。様々な色と模様が一気に目の前に広がって夕陽の彼方へ飛んでいく光景はまさに絶景だった。

 

 

「良い光景だな・・・」

 

「本当ですね兄様」

 

 

カイトの隣に立つシノンは両腕を彼の腕に組んで抱きつく。先程とは違い彼女のとても優しい表情を見てカイトはホッとする。ダズを氷像にした時の彼女を見てサトシ達が恐怖を感じて網の中で震えたのだ。彼らを落ち着かせるのは苦労する。

 

 

「ところでシノン・・・さっきから上でビビヨンが待っているぞ」

 

「えっ?」

 

 

シノンが顔を上げるとそこにはあのビビヨンが仲間を追わずその場にじっとしていて、彼女を見つめ続けていた。

 

 

「貴方は行かなくていいの?もう自由なのよ」

 

「ビヨーォ!ビビヨ」

 

「あの様子・・・言わなくても分かるなシノン?」

 

 

ビビヨンの眼差しとカイトの言葉の意味が分かったシノンは鞄から空のモンスターボールを取り出してビビヨンに見せる。

 

 

「私と一緒に行こう。ビビヨン」

 

「ビヨーォ!」

 

 

嬉しそうに鳴き声を上げるビビヨンの頭にシノンはそっとモンスターボールを当てる。そしてビビヨンが入った後すぐにモンスターボールは動きを止めた。

 

 

「ビビヨン!ゲットです!」

 

「コーン!」

 

「おめでとうシノン」

 

「ガウガウゥー!」

 

 

新しい仲間ができた事にカイト達から祝いの言葉を貰いつつ、シノンはビビヨンをボールから出して自身の頭に乗せながら友好を深めるのであった。

 

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