ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い   作:ヤマタノオロチ

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皆様、お待たせしました。
今年最後の投稿として結構長い話です。


対決!少年忍者&パルファム宮殿に響く笛の音

カロスリーグに出場する為に次のジムがあるショウヨウシティに向かってカイト達は旅を続けている。旅の途中でいろいろな事があった。

ある日は古びた屋敷で雨宿りするとじせいポケモンのニャスパーに出会い、その子の思い出話を聞いて新しい友達と心を繋げる思いに触れる事ができた。

次の日は食べ過ぎで太ったハリマロンをダイエットさせる為にグラエナ達の技特訓(?)の相手をさせて痩せさせる事に成功した。(だがハリマロンは暫くの間ずっと青い顔をしていた)

その次の日には、とあるトレーナーのピチューとユリーカのデデンネが入れ替わる騒動が起きた。必要品を買う為に1人別行動をしていたカイトがデデンネと一緒にいた女の子を見つけて保護し、スピアー達から守ってあげたら「お兄ちゃん」と呼ぶくらい懐いてしまった。それを見てシノンが不機嫌になって暫くご機嫌を直す破目になった。

 

 

 

それから2日後、近くに滝がある場所でカイトはサトシ達を鍛えながら特訓しているとケロマツの進化形のゲコガシラを連れた忍者サンペイと出会い、バトルする事になった。

サトシはケロマツで挑むが良いところまで行って負けてしまった。次にカイトがバトルする事になり、ヒトツキを出してバトルを開始した。

 

 

「今度もそっちから来るでござる」

 

「(舐められたものだ。ちょっと本気を出すか!)・・・では遠慮なく。ヒトツキ、切り裂く!」

 

「ヒートト!」

 

「なっ、速い!?煙幕で避けるでござる!」

 

「ゲロ!」

 

 

鋼タイプだからスピードが遅いと思っていたサンペイにとって、カイトのヒトツキが普通よりも素早い動きをするのを見て動揺するが、なんとか指示を出して攻撃を避ける。しかし、その安心した隙をカイトは見逃さない。

 

 

「ヒトツキ、相手が着地した瞬間に金属音!」

 

 

着地した瞬間で一瞬動きが止まったタイミングでヒトツキは『金属音』を放つ。それによりゲコガシラは膝をついて苦しむだけでなく、強烈な音でサンペイの指示が聞こえなくなってしまった。

 

 

「だいぶ効いたようだな。ヒトツキ、連続斬り!」

 

「ヒート!」

 

 

ようやく『金属音』から解放されたゲコガシラだが、ヒトツキの『連続斬り』でダメージを受けてそのまま木に叩きつけられる。しかも何度も斬って攻撃が当たる度に威力が倍増する技なので、ゲコガシラのダメージは相当深いものだった。

 

 

「まだまだ負けないでござる。ゲコガシラ、泡から電光石火!」

 

「ガ、ガラー!!」

 

 

フラフラしながらも立ち上がったゲコガシラは口から大量の『泡』を放った後、素早い動きでヒトツキに向かった。

だが先程のダメージのせいかゲコガシラの動きが最初より落ちているのに見て気がつく。

 

 

「(あの程度の速さなら俺のヒトツキは十分反撃できる)ヒトツキ、鞘を地面に突き刺して回転切りで泡を防げ!」

 

 

指示に従ってヒトツキは持っていた鞘を地面に突き刺してそのまま回り始めて『切り裂く』で『泡』を全て切って攻撃を防いだ。このままゲコガシラにも攻撃するよう伝えようとした時、ヒトツキの体が僅かに光っていることに気がつく。あの光はもしかして・・・試してみるか!

 

 

「ヒトツキ、燕返し!」

 

「ツーキ!」

 

 

ゲコガシラの『電光石火』が当たる寸前で『燕返し』のカウンター。これを腹に受けたゲコガシラはゆっくりと倒れた。

 

 

「ゲコガシラ戦闘不能!よってこの勝負、ヒトツキの勝ちです!」

 

 

やはりさっきの技は『燕返し』だったか。何度も見てきた技だったからすぐにどんなものか分かった。新しい技を覚えた上に勝利できたのは久しぶりだ。

 

 

「ご苦労だったなヒトツキ。お前も順調に強くなっているから次のジム戦に出してやるよ」

 

「ヒト!?ツキキ!」

 

 

カイトに褒められた上にジム戦に出られると言われたヒトツキは普段ならあり得ない程に喜んだ。その様子を見て笑いながらサンペイ達の元に向かう。

木の実等でゲコガシラを回復させたサンペイは俺の先を読むのも含めた高い戦術で感服した様子で、またバトルをさせて欲しいと願ってきた。それを承諾した後サトシもケロマツと一緒に強くなりたいと言ってきたのでサンペイと協力して特訓を行い『影分身』と『電光石火』を覚えさせた。

 

 

 

それから次の日、カイト達はレンガで造られた伝統的な門を潜り抜けた先にある高台に建っている城と活気溢れている町にやって来た。この町はコボクタウンと言って、古い建造物が多く残っている歴史ある町だ。

貴族が使用していたマナーハウスが観光名所であって、『枯れた味わいのある町』と言う別名も持っている。その為にシノンのテンションがいつもより高かった。

 

 

「歴史が残っている町と言うのは、本当に心地良い感じですね兄様!」

 

「そうだな」

 

 

シノンが感じている事に俺も賛同した時、突如凄まじい騒音が聞こえてきた。それは低い唸り声に似た音で、その酷い音に全員が必死に耳を塞いだ。

 

 

「うるさーい!!」

 

「一体何の音なの!?」

 

「ココンー!」

 

「まるでハイパーボイスだな!」

 

「ガヴヴゥーッ!」

 

「頭割れそう!」

 

「酷い騒音ですね!」

 

「何処から聞こえてくるんだ!?」

 

「ピーカ!」

 

 

あまりの酷い音にその場から逃げようとした時に騒音はピタッと止まった。だが未だ耳の鼓膜の奥に残る音によって頭痛が続いたままだ。

 

 

「何だったんだろう・・・?」

 

「あのすみません、今の騒音は何だったんですか?」

 

 

先程の騒音についてシトロンが近くで掃き掃除をしている女性に声を掛ける。だが何故かこちらの声が全く聞こえていないようだ。耳が悪いのかと思った時にようやくこちらに気が付いた女性と視線が合った。

 

 

「あっ!ごめんなさい、ちょっと待ってね」

 

 

謝りながら女性が耳から抜いたのは耳栓だった。道理で聞こえない筈だと納得したのと同時にあの騒音をいつも聞いていると理解した。

 

 

「今凄い音がしてたんですけど、何の音だったんですか?」

 

「あぁ、あの音は・・・付いて来て」

 

 

苦笑しつつ案内する女性の後をカイト達は付いて行くと町の広場にやって来た。そして広場の中央にある4本の柱に支えられた三角屋根の下で巨大な体のポケモンがぐっすりと気持ち良く居眠りしているのに気が付いた。

 

 

「カビゴン!?」

 

「ピカピカァ!」

 

「初めて見た!」

 

「えーと、カビゴンは・・・」

 

『カビゴン。居眠りポケモン。満腹になると指すら動かすのが面倒になるので、お腹に乗っても大丈夫』

 

 

セレナがポケモン図鑑で調べた後、女性が騒音の原因がカビゴンである事、何故カビゴンがこの町の広場で眠っているのか教えてくれた。

 

 

「元々カビゴンとこの町は共生関係にあるの」

 

「共生?」

 

「助け合って生活していると言う事よ」

 

 

分からない言葉の意味に困っているサトシにシノンが分かりやすく教えてあげた。そして女性はカビゴンがこの季節になると山から下りてきて、収穫の終わった畑の作物の根を根こそぎ食べてしまって、根を掘り返された畑が耕されて良い作物が育つと話した。それを聞いてカイトは辺りの市場を見て納得したように頷いた。

 

 

「なるほど。それでこの町の市場には新鮮で大きく育った野菜や木の実が沢山揃っている訳ですね」

 

「そう。それで毎年カビゴンが根っこを全部食べ終わった頃、お礼の意味を込めて豊作祈願のお祭りを開くの。祭りのクライマックスでショボンヌ城の城主が吹くポケモンの笛の音が広場に響くとカビゴンはお供え物を食べて、踊りながら山へ帰って行くのよ」

 

「それじゃ、今年の祭りはこれからですか?」

 

 

話を聞いて祭りに参加したくなったサトシが訊ねると女性は曖昧な表情となって口を濁す。その訳を聞くとお祭りの準備はしているがポケモンの笛を吹くショボンヌ城の城主が来てくれない為に今年はまだ始められず、それによりカビゴンも山に帰る切っ掛けをなくして眠ったままだという。説明が終わった後再びカビゴンが大音量で鼾を搔き始めてしまい、全員耳を塞いだ。

 

 

「これ・・・とても耐えられないわね」

 

「耳がどうにかなっちゃいそう!」

 

「フフフッ、どうやら僕の出番のようですね!こうなったら科学の力でカビゴンを目覚めさせましょう!」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 

自慢の表情でシトロンが何か言っているが、全員耳を塞いでいるので全く聞こえなかった。そしてシトロンが鞄から取り出したのは目覚まし時計のような機械だった。

 

 

「サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!お寝坊さんのユリーカ用に開発しておいたナイスなマシン。名付けて、『ユリーカ強制目覚ましマシン』です!」

 

「何故!?」

 

 

目覚まし時計に手足が付いたマシンを見てユリーカが困惑の声を上げるが、カビゴンの鼾の為に聞こえなかった。そしてシトロンがマシンの音量を最大にして、ポケモン達を除いた全員が順番に縦に並んで前方に立つ相手の耳を押さえて実験が行われた。

両方から響く騒音を必死に我慢したのにも関わらず結果は失敗し、マシンは爆発して壊れてしまった。

 

 

「失敗したのか・・・?」

 

「でもこれだけの爆発音が響けばきっと目を覚ますでしょう!」

 

「あ~~悪いがシトロン。どうやらダメだったみたいだぜ」

 

 

カイトが溜め息をつきながら指を差す。その指先にはカビゴンが未だ気持ち良く眠っていた。まぁ、これで起きる筈がないと最初から思っていた。図鑑の説明文だけでなく、実際にこれまでの経験から野生のカビゴンが食事以外に起きているところは見た事がなかった。

するとシノンがカイトの傍に寄って提案して来た。

 

 

「ねぇ、兄様。兄様の笛の音で起こせませんか?」

 

「俺の?フム・・・物は試しにやってみるか」

 

 

バックから笛を取り出してカビゴンの近くで演奏を始めた。

 

 

(BGM:ポルカ・オ・ドルカ)

 

 

テンポ良く楽しい曲が流れ出すと誰もが楽しい気分になり、人もポケモンも踊り出したくなった。近くで聞かされていたカビゴンも同様で、暫く曲を聞いた後カビゴンは目を大きく開いて勢いよく屋根の下から転がり出て踊り始めた。

それにつられてピカチュウやグラエナ、他のポケモン達も踊り出した。

 

 

~♪~♪~~♪~♪~

 

 

曲に合わせてポケモン達は踊り、人々はその踊りと楽しい曲に魅入られる。そして笛の音が止まると周りからカイトに向けて盛大な拍手が響いた。素晴らしい曲を聞けた事とカビゴンを起こしてくれた事に町の人々は喜んでいるのだ。

 

 

「素敵です兄様!」

 

「流石カイトだぜ!」

 

「本当に良い曲ね!」

 

「素晴らしかったです!」

 

「私、聞いていて踊りたくなっちゃった~~!」

 

「ショボンヌ城の城主に負けない曲だったわ!」

 

 

シノン達からもお褒めの言葉を貰いながら俺はカビゴンの方に振り向く。元気よく踊って眠りから覚めたから用意されている木の実を食べに・・・向かわなかった。踊り終えたカビゴンはその場に座り込み、少し寂しそうな表情で俺に訴えてきた。

 

 

「うんうん・・・そうか」

 

「兄様、カビゴンは何て言っているのですか?」

 

「食べる時はポケモンの笛の音を聞きながら食べたいっとさ。余程好きなんだなその笛の音が・・・」

 

 

一体どんな音がするのだろうか?俺も一度聞いてみたいと思いつつ、シノン達と相談してショボンヌ城の城主を此処へ連れて来る事になった。女性から城の生き方を教えてもらって早速行こうとするのだが、突然カビゴンがカイトの服をギュッと掴んで離さなくなった。急にどうした?と理由を聞いてみるとさっきの曲をもう一度吹いて欲しいと言ってきた。

 

 

「仕方ない。シノン、サトシ!悪いがお前達だけで頼みに行ってくれないか?俺は見ての通り動けん」

 

「分かりました。すぐに連れてきますね兄様!」

 

 

このまま放っておいたらカビゴンがまた眠って鼾をしてしまう可能性もある為、カイトは広場に残る事になった。そしてショボンヌ城へはシノン達だけ向かう事になり、5人は急いで城へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

カイトが町に残った後、シノン達は走りながらショボンヌ城へ向かい少し経って辿り着いた。

 

 

「御免下さーい!」

 

「ピーカー!」

 

 

立派な門の前に立ったサトシが大声で叫ぶと跳ね橋がゆっくりと降りて来て、奥から初老の執事が迎え出て来た。

 

 

「いらっしゃいませ。当方の城に何か御用でございますか?」

 

「麓の町から至急城主さんにお伝えしたい事があって来ました!」

 

「これはわざわざ・・・どうぞ中へお入りくださいませ」

 

 

そう言って執事は私達を城の中へ招き入れ、城主の元へ案内してくれた。女性の方から聞いた事からてっきり門前払いされると思っていたので、簡単に入れた事に少し不思議に思いながらも私達は付いて行った。それから玉座の間に通されて、城主のショボンヌと対面した。

 

 

「ショボンヌ~。儂に何の用かね?」

 

「お願いです!今年もいつものように村祭りで笛を吹いてください!」

 

「ムム!?その事なら失礼するであります!」

 

 

笛の件を話した途端ショボンヌは顔色を変えて玉座から立ち去ろうとした。サトシ達が慌てて呼び止めて必死に頼むけど、ショボンヌはアレコレと理由を付けて言い訳をする。その様子を見て私はある可能性を推測した。

 

 

「失礼ながらショボンヌ様、もしかして此処にはポケモンの笛がないのでしょうか?」

 

「ショボ!!?そ、そんな事はありませんぞ・・・」

 

 

そう言っているショボンヌだけど、明らかに動揺して気まずそうに目を泳がせている。どうやら推測が当たっているようね。さらに訊ねようとした時、執事が1歩前に出て来た。

 

 

「ショボンヌ様。子供達にこれ以上嘘を重ねては、いくら当家の名誉の為とは言え必ずや後悔致します。それにこちらの娘さんはおよそ察しておりますし、ここは正直に仰るべきかと」

 

 

執事の言葉にショボンヌも納得してくれた。それに本人も罪悪感があったようで、哀愁を漂わせながら本当の理由を話し始めた。

ポケモンの笛は確かにショボンヌ城にあったのだが、隣村のパルファム宮殿からやって来たアリー姫と言う少女に気に入れられて強引に持って行かれてしまったとの事。

アリー姫は一度言い出したら人の言う事を聞かない我儘な性格の上に彼女の父親にショボンヌは世話になっているからポケモンの笛を取り戻せないとの事だった。

 

 

「いくらお世話になっている人の娘だからと言って、家宝であるポケモンの笛を黙って渡してしまうなんて・・・!!」

 

「シ、シノン落ち着いて(汗)」

 

「カイトが加わっている件ですから仕方ありませんけど・・・落ち着いて下さい!」

 

 

滝のように涙を流しながら話すショボンヌを見て内心怒り出すシノンにセレナとシトロンが必死に宥める。

 

 

「そう言う事なら分かりました。俺が笛を取り返してきます!だから村祭りでポケモンの笛を吹いて下さい!」

 

「おお!勿論でーす!喜んで吹かせてもらいまーす!」

 

 

笛を取り返してくれると聞いた途端にショボンヌは泣き止んだ。全く仕方がない人と思いながら私達は隣村のパルファム宮殿へ向かう事になった。

けどこの時、誰もいなくなった玉座の間に置いてあった西洋甲冑の2つがよろよろとバランス悪く動いた事は誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

それから再び走り出した後、ようやく深い草むらと林が広がる道を抜けた先にある煌びやかな門と立派な生垣に囲まれているパルファム宮殿に辿り着いた。

最初門番にお願いして中に入れてもらうとしたけど1人もいなかった。どうしようか考えながら生垣の周りを歩いていた時、ユリーカが見つけた小さな抜け穴から入る事にした。悪い事だけど兄様の為だから分かって下さい!

中に入って体に付いた葉っぱを落としながら辺りを見渡すと目の前に広大な庭と庭の中央や池の間に掛かっている橋の近くに置いてあるゼクロムとレシラムの像だ。

 

 

「イッシュ地方で伝説のポケモンと言われるゼクロムとレシラムの像が何故此処に?もしかしてパルファム宮殿の王か、またはカロス地方の歴史と何か関係があるのかしら?」

 

 

此処へ着く前にセレナからパルファム宮殿とそれを造らせた王の事について教えてもらった為、ポケモン考古学者の血も騒いで私は瞳を輝かせつつ必死にメモを取る。

だがその時に庭の奥からやって来たポケモンの鳴き声を聞いて中断されてしまった。

 

 

「アン!アンアン」

 

「何だ、このポケモンは?」

 

「知ってるでしょ?これもトリミアンよ」

 

「えっ!?これもトリミアン!?」

 

 

サトシが驚いている中、私は前に取ったメモの内容を確認する。この姿の時は・・・マダムカットと言うのね。

 

 

「おやめ!トリミアン!」

 

 

突然どこからか発せられた幼くも高い声にトリミアンは威嚇を止めてその声の主の元に向かった。その方向へ私達も振り向いてみると数人のメイドに薔薇の花弁を舞わせながらトリミアンを撫でているピンク色のドレスを着た少女がいた。

 

 

「よしよし、落ちてるゴミをかじっちゃダメよ。お腹壊しちゃうでしょ?」

 

「・・・俺達ゴミ扱い?」

 

 

少女の言葉にサトシは少し不機嫌になる。けどサトシだけでなく、私もセレナ達も嫌な気持ちになる。

 

 

「あの~、貴女がひょっとしてアリー姫?」

 

「オーッホホホ!パルファム宮殿は私のお家。私こそアリー姫よ!」

 

「なんか取り戻すの難しいかも・・・」

 

「そうね。見た目やあの性格からきっとかなり我儘で自己中心的な考えの子でしょうね」

 

「コーン・・・」

 

 

高笑いして再び花弁を飛ばせながら自己紹介するアリー姫を見て私は瞬時にあの子の性格を理解し、そっと呟いたセレナに同じく呟いた。足元にいたキュウコンも同感で頷いた。

その後私が予想した通り、サトシ達がポケモンの笛を返してくれと必死にお願いしてもアリー姫は全く耳を貸さず、それどころかピカチュウを家宝にすると言って無理矢理奪うとした。

 

 

「ダメだよ!ピカチュウは誰にも渡すもんか!」

 

「ピカ!」

 

 

サトシはすぐにピカチュウを奪い返して抱き締める。するとアリー姫はメイドに沢山の金銀財宝を持って来させ、これと交換させようとする。けどサトシは首を横に振って誘惑に応じなかった。

 

 

「ダメに決まってんだろ!」

 

「チッ」

 

 

自分の思い通りにいかない事にアリー姫は舌打ちをし、メイドに財宝を撤去させた。でも彼女は簡単には諦めず、今度はバトルでピカチュウを自分の物にする作戦を出してきた。トリミアンとバトルして勝ったらポケモンの笛を返して上げると言う約束で。サトシとピカチュウのレベルなら負けるとは思えないが、大切なパートナーを賭けての勝負だと冷静な判断ができなくなる可能性がある。

 

 

「どうしますの?笛を取り戻すチャンスを与えるのはこれっきりですのよ?」

 

「でも・・・」

 

「サトシ」

 

 

本来ならこんなバトル、絶対受けない筈なのだが笛を取り返すと約束しているから受けないといけない。頭で理解できても心が納得できずにいる。怒りで頬から電気をビリビリ出しているピカチュウを見つめつつもすぐに返事を出せずにいたサトシに私は冷静に声を掛けた。

 

 

「このバトル、私にやらせてくれない?」

 

「えっ?シノンが!?だけど・・・」

 

「そんな迷っている状態でバトルしても勝てないわ。大丈夫。私達を信じて」

 

 

そう言って私はアリー姫の前に立つ。この時私には分からなかったが、この場にいる全員が今のシノンを見て少し恐れを抱いていた。

普段の彼女からは想像がつかない程怒りのオーラが溢れていたからだ。大切なパートナーを物扱いして賭けの対象にさせるなんて・・・絶対に許さない!

 

 

 

「はじめましてアリー姫。私はシノンと申します。先程の提案なんですが、私のキュウコンで勝負してくれませんか?負けたらすぐにピカチュウをお渡ししますので」

 

「コンコーン!」

 

「よ、よろしいですわ。貴女如きすぐに倒してあげますわ!」

 

 

高い声で言うアリー姫だが、後ろに控えているメイド達共々シノンの気迫に圧倒されていた。

その後全員パルファム宮殿の中央に設立されているバトルフィールドに向かい、サトシ達は外野に立って観戦し、シノンとアリー姫は階段を少し下った先にある場所に立った。

 

 

「バトルはキュウコンとトリミアンの1本勝負!どちらかが戦闘不能になった時点でバトル終了!いいですね?」

 

「ええ」

 

「よろしくてよ!」

 

 

負けられない条件の元で、シノンとアリー姫のバトルは審判のシトロンの合図で始まった。

 

 

「行くよキュウコン!思念の頭突き!」

 

「コーン!」

 

「行きますわよトリミアン。オーッホホホ!」

 

 

勢いよく走り出して『思念の頭突き』を繰り出すキュウコンにトリミアンも走り出してほぼ同時に間合いを詰めて、擦れ違った時に後ろ足で蹴りを放つがキュウコンは9本の尻尾で防いだ。

 

 

「キュウコン!アイアンテール!」

 

「トリミアン!噛み付くですわ!」

 

 

シノンとアリー姫は同時に指示を出し、キュウコンとトリミアンは助走をつけて高くジャンプをしてそれぞれ技を出した。キュウコンの『アイアンテール』をトリミアンは『噛み付く』で防ぐが、この時トリミアンが噛み付いたのは9本の内たった1本だったので・・・。

 

 

「コーン!」

 

「ア!?アウゥゥーーー!!」

 

 

残った8本の尻尾に何度も攻撃された上にトリミアンはそのまま勢いよく地面に叩きつけられた。華麗に着地して余裕な表情のキュウコンとは対照的にトリミアンの体はダメージと汚れでボロボロになりつつあった。そんなトリミアンを見てアリー姫は狼狽えてしまうが、お姫様のプライドから何とか持ち堪える。

 

 

「な、中々良い攻撃ね。でも、ここまでよ!花は気高く咲いて、敵を美しく散らすのよ!トリミアン!チャージビーム!」

 

「アーン!」

 

 

トリミアンの口から強力な『チャージビーム』が一直線に放たれる。しかしシノンもキュウコンも慌てずに迎え撃つ。

 

 

「キュウコン!全力の火炎放射!」

 

「コーン!!」

 

 

尻尾を大きく広げた後キュウコンは全パワーを込めた『火炎放射』を放つ。その炎は『チャージビーム』をあっさり押し返し、そのままトリミアンも飲み込んでしまった。そして爆発で起きた黒煙が晴れた後、フィールドには真っ白で自慢の毛並みが無残な黒焦げになり、戦闘不能状態になっているトリミアンがいた。

 

 

「イヤーーーッ!!私のトリミアンがーーー!!?」

 

 

アリー姫は絶叫し、サトシ達は小さく笑い声を出す。審判のシトロンも吹き出しそうになるのを我慢しながら勝敗を高らかに告げる。

 

 

「トリミアン戦闘不能!キュウコンの勝ちです!」

 

「やったー!流石シノンだぜ!」

 

「ピカチュー!」

 

「素敵よシノン!」

 

「キュウコンもカッコイイ!」

 

「デネネー!」

 

 

喜ぶサトシ達にシノンは笑顔で手を振り、駆け寄って来たキュウコンを何度も優しく撫でて褒め称えた。一方アリー姫は半泣きになりながらもメイド達にトリミアンをトリマーの元に連れて行くように命令する。そしてバトルに負けて不機嫌そうに頬を膨らませるアリー姫にシノンは近づいて話しかけた。

 

 

「バトルは私達の勝ちですねアリー姫。約束通りポケモンの笛を返してくれますか?」

 

「私が負けたのだからあげませんわ」

 

 

そう言って約束を反故にする少女にサトシ達は怒り出す。シノンもアリー姫のあまりの我儘ぷりにガツンと厳しい一言を言うとする前にシトロンが乗り出して説教し出した。

まるで妹を叱るように説教をするシトロンにアリー姫は涙目になって、持っていた扇で顔を隠す。だがすぐに扇を下ろした後彼女はとんでもない一言を発した。

 

 

「ポケモンの笛を返して差し上げます。けどその代わりに・・・シトロン様を置いていって!」

 

「ぼ、ぼ・・・僕を!!?」

 

 

あまりの衝撃の言葉にシトロンは驚いてその場に立ったままになり、シノンとサトシは呆然としてしまう。それはセレナとユリーカも一緒だったが、途中2人は耳打ちをしてこれまた予想外の言葉を言った。

 

 

「お兄ちゃんだったらどうぞどうぞ!」

 

「ちょっ、そんな無責任な!」

 

「ではよろしいですわね?」

 

 

話が勝手に進んでいく中、シノンは慌ててセレナ達の元に駆け寄る。

 

 

「セ、セレナ。どういうつもりなの?このままだとシトロンが・・・」

 

「大丈夫よシノン。これは振りよ。せっかく良いチャンスが巡って来たんだから。シトロンはカビゴンを満足させた後、助けに行けばいいんだし」

 

「そうだよ。お兄ちゃんなら大丈夫だよ」

 

「そ、そう。凄い子ねユリーカは・・・」

 

 

大切な兄を簡単に差し出せるなんて・・・本当に凄い子だ。隣で聞いていたサトシも女の子の柔軟さに凄いと感心していた。

この時シノンは、ウインクしながらそう言う2人が少し小悪魔のように見えたのは余談である。

その後無事にポケモンの笛を取り戻したシノン達はアリー姫と残ったシトロンに別れ(?)の挨拶を済ませてパルファム宮殿を後にし、急いでコボクタウンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

シノン達が町に辿り着いた時にはすでに夕方だった。お祭りの準備も終えているから早く届けないと思い、4人は休む暇もなく走り続けた。この時シノンは町の広場に向かっていた途中ある違和感を感じた。それは広場に近づくにつれてカイトが吹いている筈の笛の音が時々変な音で聞こえてくるのだ。一体どうしたんだろうと思いながら走り続けて広場に辿り着いた時、驚きの光景が目の前に映った。

 

 

「に、兄様!?」

 

「「「カイト/さん!?」」」

 

 

そこには未だ楽しそうに踊り続けているカビゴンとその傍に積み上げられている木の実の近くで、顔が真っ青で疲労感たっぷりな状態で寝ているカイトと彼を心配するグラエナとショボンヌ達がいた。

シノン達が出かけた後カイトはカビゴンを眠らせない為にずっと笛を吹き続けていた。途中ショボンヌ達が来てポケモンの笛が吹けない事情を理解した後も吹いていたが、流石に疲れが出て休もうとするがその度にカビゴンにお願いされてしまった。そして気づけば長時間吹き続ける事になって体力が限界に達してしまい、カイトは完全にダウンしてしまったのだ。そんな彼を見てシノンはこれまでの疲れの事なんか忘れて、すぐさま駆け寄った。

 

 

「兄様!しっかりして下さい!?」

 

「あ?・・・・・あぁ、シノンか。ポケモンの笛はどうした?」

 

「安心してください。サトシがショボンヌさんに渡しに行きましたから!」

 

 

涙目で自分の事を心配するシノンにカイトは内心嬉しく思いながらも彼女を安心させようと笑顔になって、ある程度回復したから起き上がろうとした時に突然隣から何かが落ちてきた。振り向いてみると木の実の中にショボンヌが埋もれていた。

 

 

「ショボンヌさん!?ど、どうしましたか?」

 

「あ、あの者達がポケモンの笛を!」

 

 

ショボンヌが指差す方向には、アーム型の機械でポケモンの笛を奪い取って喜んでいるロケット団の5人組がいた。

 

 

「出たなロケット団!」

 

「出たなロケット団!と言われたら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」

 

「「世界の平和と秩序を守るため!」」

 

「愛と真実の悪と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」

 

「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「ソォーナンス!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

お決まりの長い台詞を言った後ロケット団は奪ったポケモンの笛を使ってカビゴンをコントロールすると言い出す。

 

 

「アイツら何を言っているんだ?」

 

「おそらくポケモンの笛がカビゴンをコントロールできる物と勘違いしているのかと」

 

 

何とも単純な奴らと思っていた時、ムサシが試しにポケモンの笛を吹いてみた。すると笛から耳を塞ぎたくなるような酷い金切り声のような音が響いた。その音に踊っていたカビゴンは動きを止めて不機嫌な表情でロケット団を睨み、問答無用で『破壊光線』を発射してロケット団をブッ飛ばした。その後空から落ちてきたポケモンの笛を見事キャッチしたサトシがショボンヌに渡し、彼が吹く音が町に響いた。

 

 

「これは良い音だな」

 

「本当ですね」

 

「ガウ~」

 

「コ~ン」

 

 

美しい音にカイト達は耳を澄ませて楽しみ、カビゴンは木の実を美味しく食べ始めた。今年はカビゴンの踊りを2回も見られた町の人々はとても喜び、カイト達に何度もお礼を言うのであった。

いろいろトラブルがあって疲れたが祭りが無事開催でき、町の人々も山へ帰って行ったカビゴンも笑顔になって良かったと全員が感じた。

しかし、サトシ達はカイトの一言でまだ終わっていない事を思い出した。

 

 

「ところでさっきからシトロンがいないが、何処に行ったんだ?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

シトロンがいないとカイトが言った瞬間、サトシ達は表情が曇って青くなる。

 

「あ~~!お兄ちゃんの事忘れてた!!」

 

「「「あっ!」」」

 

「一体何があったんだ・・・?」

 

 

お祭りが無事に開催できた事からサトシ達はすっかりシトロンを助ける事を忘れていたのだ。唯一事情を知らないカイトが詳しく聞こうとした時、何処からか自分達を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

「ユリーカ!みんな~~~!!」

 

「シトロン!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 

フラフラと先程のカイトと同じように疲労感たっぷりのシトロンがこっちに向かって走って来た。だが何故か下着姿だった。

何があったのか知らないが、咄嗟にカイトはシノンの前に立って目に映らないようにする。またサトシにセレナにも同じ事をしてやれと言う。サトシはカイトの言葉に従ってすぐにセレナの前に立ってシトロンの姿を見えなくする。シノンとセレナは自分の前に立った愛する異性の背中に嬉しく思いながら顔を隠した。

 

 

「ハァハァ・・・酷い目に遭いました」

 

「どうしたんだ?その格好は」

 

「取り合えずさっさと服を着ろ。そのままだと変態に思われるぞ」

 

 

そう言われてシトロンも慌てて備えてあった自分の服を着る。そしてパルファム宮殿に自分そっくりのロボットを作って身代わりとして置いてきた事を説明した。

それと同時にパルファム宮殿の方から美しい花火が何度も上がり、カイト達はそれを見て今日の疲れを癒すのであった。

 

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