ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い   作:ヤマタノオロチ

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待っていたポケモンファンの方々、大変長らくお待たせしました。ようやく投稿できた。
最近ポケモンに対してスランプ気味になっていましたが、ゲームで遊んだり、アニメ(昔の分も)を見直ししたりして再び目覚めました。
今回は悪タイプの中で恐ろしい能力を持つポケモンが登場します。



悪の陰謀!恐怖のカラマネロ登場!!

とある人気のない洞窟内の奥にて、ロケット団の5人は四角いメカから映し出されているピカチュウとグラエナの技を見て研究していた。

 

 

「10万ボルトにエレキボール、電光石火。そしてアイアンテール・・・」

 

「こちらは悪の波動に噛み砕く、焼き尽くす、氷のキバ、バークアウト。凄まじい一級品の技ばかりですな」

 

 

自分達が狙っているポケモンを調査する度にレア度が上がっていき、何としてもゲットしようと全員が決意して作戦を考え始めるが・・・。

 

 

「ところで・・・いつまで盗み聞きしているつもりじゃ~ん?」

 

「・・・ほぉ、気が付いておったか」

 

 

ミズナが後ろに向かって声を掛けると背後から薄ボロの布で姿を隠している者と1体のポケモンが現れた。

 

 

「話は聞かせてもらった。確かに使えそうなピカチュウとグラエナだね。気に入ったよ」

 

「ハッ!盗み聞きなんて趣味悪いね!何者!?」

 

 

その者は声からして女性の様だ。だがもしかしたら変声機を使っているかもしれない。

また、今一番問題なのは隣にいるポケモンだ。見た事のないポケモンでどんな能力を秘めているのか分からない。全員が2人の動きに警戒しつつ手持ちポケモンを全て出し、ムサシが代表して問い掛ける。

 

 

「私はマダムX。そしてこの子はカラマネロ」

 

「ネロネロ!カー!」

 

 

カラマネロと言うポケモンはニヤッと笑いながら胸の模様から光を放つ。

その光を見たロケット団は・・・。

 

 

 

 

 

一方その頃、カイト達はカロスリーグに出場する為に今日も次のジムがあるショウヨウシティに向かって旅をしていた。

森の中を歩いていた時、サトシが奥の方に建っている大きなパラポラアンテナを見つけた。

それを見たシトロンが、アレは宇宙から飛来する電波をキャッチして高性能な機器で全自動で瞬時に分析を行っている観測所であると説明した。と言ってもシトロンとカイトとシノン以外はあまり理解していない様子だった。

またシトロンが「今はもう使われていない」と言うからきっと野生ポケモン達の住処になっているなと俺は内心そう思った。

その後再び歩こうとした時、突然茂みが揺れて、中から顔に酷い怪我を負っているニャースが出て来た。

 

 

「ヘルプミーだニャア~~・・・」

 

 

必死に助けを求めながら倒れたニャースを見てカイト達はすぐに駆け寄った。

 

 

「ニャース!どうしたんだ!?」

 

「ピカピカ!?」

 

「酷い傷だな。これは何かに引っ掛かれた痕みたいだな。とにかく今は手当てをしよう。シノン、救急箱の用意だ」

 

「はい兄様!」

 

 

鞄から救急箱を取り出し、2人で手際よく回復薬や木の実で手当てしていく。

その手際の良さをセレナ達は後ろで見つめながら驚く。だがサトシだけはシンオウ地方で見ていたからそれ程驚かず、また2人のやり取りをイッシュ地方で自分が出会った伝説とも言えるポケモンを手当てしたチャンピオン・シロナと同じ姿に映ったのであった。

 

 

 

それから暫くして手当てが終わり、皆に大丈夫だと言って傷がなくなったニャースの意識が戻るのを待つ。するとニャースの瞼がゆっくり上がり始めた。

 

 

「・・・・・此処は・・・?」

 

「気が付いたようだなニャース」

 

「ガウガウ」

 

「ダ、ダークボーイ!?」

 

 

自分達が追っている標的が目の前にいた事に驚いたニャースはその場で飛び起きる。だがまだ傷が癒えていない状態では満足に立つ事は不可能であり、フラフラとすぐに座り込んだ。

 

 

「あぁ、ダメですよ!まだ大人しくしてなきゃ。さぁ、コレを飲んでください」

 

 

シトロンから差し出されたコップをニャースは素早く受け取り、一気に水を飲み干した。飲んだ事で一息ついたニャースはコップをシトロンに返してからお礼を言う。

 

 

「生き返ったニャ・・・おミャーらは命の恩人。感謝感激だニャ!」

 

「本当に~?どうせまた悪い事を企んでるんじゃないの?」

 

「デネネ?」

 

「ピ~カ?」

 

「滅相もニャい!今日はそんなつもりはないのニャ!おミャーらに危険を知らせに来たのニャ」

 

「危険ですって?」

 

「コン?」

 

「どういう事です?」

 

「詳しく話してくれよ」

 

「ピカピーカ」

 

「そ、それは・・・思い出すだけでも身震いするニャ!」

 

 

表情を青くさせて冷や汗を掻きながらニャースは何が起きたのかをカイト達に説明する。

読者の皆様にしか詳しく分からない冒頭での出来事の後、カラマネロの光を見てロケット団とポケモン達は意識を奪われて操られてしまった。だがニャースだけは一番後ろにいた事とコジロウとミズナの影にいた事で光をはっきり見ず、そして瞬時に自分の爪で顔を引っ掻いて痛みを与えたおかげで意識を保つ事に成功した。

しかしマダムXとカラマネロの支配下に落ちたニャース以外のロケット団全員が捕まえようとしてきた為、ニャースは必死に逃げ出してカイト達の元に辿り着いたらしい。

 

 

「成程、それであんなボロボロの状態だったんですね・・・」

 

「しかしニャース、悪いけど今の話を完全に信じる事はできない。理由は貴方がロケット団でこれまで私達を何度も騙してきたんですもの!」

 

「そ、そんな!誤解だニャ!さっきニャーが話した事は事実ニャ!こんなところでグズグズしているとマダムX達がやって来るニャ。アイツはピカチュウとグラエナを狙っているのニャ!」

 

「とか何とか言って、私達を騙してピカチュウとグラエナを奪う作戦なんじゃないの?」

 

「ネネー!」

 

「やっぱりね。その手には引っ掛からないわよ」

 

「本当に誤解だニャ!ニャーの言葉を信じて欲しいニャ!」

 

 

必死に弁明するニャースだが、シノンの言う通りこれまで何度も言葉巧みに自分達を騙してきた。シノン達だけでなく、ピカチュウ達も信じられないと頷く。

 

 

「・・・カイト、どうする?」

 

「そうだな・・・」

 

 

困った表情をしながら訊ねるサトシを見た後カイトはじっくり考える。

先程ニャースを手当てしたが、顔の傷は紛れもなく本物だった。だがこのようなケースはシンオウ地方で旅していた時度々行われていた。やっぱり嘘かなと思い込んだ時、ニャースの背後からロケット団4人とポケモン達が現れた。

 

 

「ニャース、何をやっている?」

 

「早くピカチュウとグラエナを捕まえるのよ」

 

「そして我々の一員にするのです」

 

「・・・じゃ~ん」

 

 

現れたロケット団はゆっくりと近づいてくる。彼らとポケモン達の様子を見て俺はある事に気が付く。

 

 

「(何だアイツらの目は?全員光が灯っていない。それにポケモン達の声が全く聞こえない!?)」

 

 

どうやらニャースの言っていた事は正しい様だ。それに今の彼の表情は仲間に対して再会の喜びや様々な場所で披露していた時みたいの演技ではなく、本当に怖がっており後退りする。

 

 

「・・・皆、急いで逃げるぞ。ニャースの言った通りロケット団は操られている!」

 

 

カイトの声とロケット団から感じる只ならぬ迫力にサトシはピカチュウを肩に乗せてセレナの手を掴み、シトロンはユリーカを慌てて抱くようにして、カイトは隣にいたシノンの手を掴んで一斉に後ろを向いて走り出そうとするが、いつの間にか背後にはフードを被った女性とポケモンが立っていた。2人を見てニャースが叫ぶ。

 

 

「出たー!マダムXとカラマネロだニャ!」

 

「こいつがカラマネロ?」

 

『カラマネロ。逆転ポケモン。マーイーカの進化形。ポケモンで一番強力な催眠術を使う。催眠術で相手を意のままに操る事ができる』

 

 

サトシがポケモン図鑑で調べた結果、とんでもない内容であった。いつもなら悪タイプだからすぐにゲット!と思う俺でも恐怖でゲットする事に戸惑った。

 

 

「そいつが噂のピカチュウとグラエナかい?成程、どちらも賢そうだね」

 

 

フードを深く被っているから表情がよく見えないが、とてつもなく嫌な視線を向けているに違いない。相手が何か仕掛ける前にこちらから攻撃しようとグラエナに指示を出そうとした時、突然グラエナが話し掛けてきた。

 

 

「どうしたグラエナ?」

 

「ガウガウ!グラガァ!」

 

「何だと!?それは本当か?」

 

 

グラエナの話を聞いてカイトが視線を逸らした時、マダムXがカラマネロに指示を出した。

 

 

「2体とも私の手下になってもらおうか。カラマネロ!」

 

「カアーー!」

 

「あの光を見ちゃダメニャ!奴に操られてしまうニャ!」

 

 

カラマネロの模様から放たれる光を見ないよう全員目を瞑ったり、背を向けたりする。そして光を止めようとカイトとサトシが同時に指示を出す。

 

 

「ピカチュウ!エレキボールで食い止めろ!」

 

「グラエナ!カラマネロの胸に悪の波動だ!」

 

「ピカ!ピカチュー!」

 

「ガウ!グーラ!」

 

 

高く飛び上がった2体が同時に『エレキボール』と『悪の波動』を放つ。2つの技は直撃しなかったが、マダムXとカラマネロは技を避ける為にその場から動いたから光を放つのを止める。また爆煙によって視界が悪くなった隙をついて逃走を図るが、『サイコキネシス』で囲むように移動されたロケット団によって逃げ道が塞がれてしまった。

 

 

「そうはさせないじゃ~ん」

 

「ピカチュウとグラエナにはポケモン軍団の一員になってもらう」

 

「何!?」

 

「無敵のポケモン軍団が世界を征服する」

 

「そして我らの偉大なるマダムXがその頂点に君臨するのです」

 

「ヤダヤダ!世界征服なんて反対!!」

 

 

世界征服と言う目的を聞いたユリーカが、セレナの腰元に抱き着きながら大声で反対する。

 

 

「その通りニャ!そんな目的の為にピカチュウ達を利用するニャんてとんでもない話だニャ!」

 

「それは貴方も同じです!」

 

「コンコーン!」

 

 

鋭い視線で睨みながらシノンとキュウコンがニャースに言う。ニャースも今までの自分達の行動を思い返して何も言えなくなり、ただ大量の汗を掻くしかできなかった。

目の前にいるロケット団の動きに警戒していた時、ふとサトシは違和感を感じた。先程に比べて自分の肩が軽くなったような、そう思って慌てて振り返ってみるといつの間にかピカチュウがカラマネロの『サイコキネシス』で捕まっていた。

 

 

「ピカ!ピカピー!」

 

「あぁ!?ピカチュウ!!」

 

「サトシ、此処は俺達に任せろ!グラエナ!もう一度カラマネロn「ゆけ、エアームド!」何!?」

 

 

捕まったピカチュウを取り戻そうとグラエナに『悪の波動』を放つよう指示を出そうとしたが、その前にマダムXが催眠術で操られているエアームドに攻撃するよう指示を出す。間一髪エアームドの攻撃を避けたグラエナだが、エアームドの体には同じく操られているイトマルが張り付いていて、グラエナとカイト目掛けて『毒針』を発射した。

 

 

「しまっ!ぐっ!?」

 

「グラッ!?」

 

 

突然の攻撃に2人は完全には避けられず、カイトは右腕に、グラエナはお腹に1本ずつ当たってしまった。

 

 

「兄様!」

 

「コーン!」

 

 

1本しか当たらなかったとはいえ、毒の影響で動きが鈍くなってその場に膝を付くカイトとグラエナにシノンとキュウコンが駆け寄り、毒を消そうと慌てて毒消しとモモンの実を取り出す。だがその瞬間、動けなくなった獲物をマダムX達が見逃すはずがなかった。カラマネロは2本の長い触手を伸ばし、グラエナの体に巻き付けて持ち上げる。

 

 

「これでよい。ではさらばじゃ。オーホホホホ!」

 

 

目的を果たしたマダムXはロケット団も『サイコキネシス』で浮かせると高笑いしながら空の彼方へ消えて行こうとする。

 

 

「ピカチュウ!ピカチュウウウウゥゥゥ!!」

 

 

必死に追い掛けるサトシだが、マダムX達はどんどん離れて行き、やがて完全に姿を見失ってしまった。

 

 

「グ、グラエナ・・・くそっ!!」

 

 

大切な相棒を守る事ができなかった事にカイトとサトシは悔しさのあまり手から血が出るほど強く握り、拳を地面に叩き付けた。2人の気持ちを感じ取ったシノンとセレナはそっとそれぞれの肩に手を置いて「大丈夫だよ」と落ち着かせる。その時シトロンが提案を出した。

 

 

「きっとマダムXにはアジトがある筈です!こんな場合こそ、サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア・オン!!このような危機を想定し製作しておいたナイスなマシン。名付けて、『全自動ピカチュウ追跡マシーン』です!」

 

「おぉ~!ロボピカチュウだ!」

 

「ピカチュウ追跡マシーン?」

 

「またそのまんまのネーミング」

 

「ネネ・・・」

 

「これはちょっと・・・」

 

「コーン・・・」

 

 

シノン達女の子は微妙な反応をしているが、男の子だったら絶対に憧れるロボットを見てサトシは目を輝かせる。そしてそれはカイトも同じであった。

 

 

「シトロン、ロボグラエナはないのか?」

 

「いや~~それは今設計中でして・・・」

 

「なら今度俺も製作に手を貸そう。最高のロボグラエナを頼むぜ!あと他にゾロアやアブソル、ヘルガーなど・・・」

 

「兄様!今はそんな事をしている場合ではありませんよ!?」

 

 

危機的状況で尚且つ、先程『毒針』を受けた筈なのに別の事に集中していく想い人にシノンは肩を強く握って揺らしながら堪らず声を上げた。そんなに激しく揺らしたらまだ残っているかもしれない毒が体に回ってしまう筈なのにカイトは無事である。一体どんな体をしているのやら。

その後ロボットの高評価を受けて満足したシトロンがロボピカチュウの鼻のスイッチを押して起動させる。すると後頭部からパラポラアンテナが長く伸びてピカチュウの電気エネルギーを探し始める。そして少し経つとロボピカチュウは反応がある方向に向かって走り出した。

全員が追い掛けて走り続けた後、ロボピカチュウは森から抜けて目の前にあった金網にぶつかっていた。

その後の展開は・・・皆さんもうご存知だろう。ロボピカチュウは爆発して木端微塵となり、その爆発によってカイト達の頭はアフロヘアーとなった。

 

 

「失敗は成功のマザー・・・そう信じたいものです・・・ね。ゴホッ!」

 

 

口から黒煙を吐き出しながらシトロンは崩れ落ちる。彼の発明が完璧になるのは・・・まだまだ先の事である。

その後シトロンが木端微塵となったロボピカチュウを修理している間、カイト達は爆発によって穴が開いた金網から中の様子を探る。

 

 

「此処って確か・・・電波の観測所だよね?」

 

「えぇ・・・と言う事は此処がマダムXのアジト?」

 

「フム、どうやらアレを見る限りそうみたいだ」

 

 

そう言ってカイトは観測所の端の部分を指差す。そこにはジュンサーのサイドカーが停まっていた。アレがあると言う事はやはり先程グラエナが言っていた通り、マダムXの正体はあの人なんだな。俺はその事を皆に話そうとするが・・・。

 

 

「よし、入ってみようぜ」

 

「うん!」

 

「兄様も早く!」

 

 

一刻も早くピカチュウ達を助けたいという気持ちが高まって冷静さを少し欠けているサトシが、躊躇なく金網を潜り抜ける。その後を続くようにシノン達も付いて行ってしまった。

 

 

「えっ!?あ、ま、待てお前ら!」

 

 

どんどん前に進んで行くサトシ達の後をカイトも慌てて追い掛ける。

だがこの時、カイト達は気付いていなかった。自分達の姿を金網の上に設置されている監視カメラによってマダムXにバレている事を。

 

 


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