ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い 作:ヤマタノオロチ
今回はバトルがメインの話でございます。そして我らのダークマスター・カイトが久しぶりに本気のバトルを繰り広げます。
それと話に応じてあの人にもバトルをしてもらいます。どんな人なのかは気になる方、どうぞ楽しく読んで下さい。
ショウヨウシティに向かっていたカイト達はカロス地方で最も長い道とも言われるリビエールラインのポケモンセンターで休んでいた時、セレナが愛用のナビ付き電子ノートを見せながらある提案を出した。
「ねぇ、皆!この先にあるバトルシャトーに行ってみない?」
「バトルシャトー?」
初めて聞く単語に全員が首を傾ける。名前からにしてバトルをして何かを得られる所だと思うが、ジムとは違ってバッジが貰えると思えない。そう考えていた時、近くで話を聞いて二コラとテスラの兄弟がラップのような口調で爵位が貰えると教えてくれた。
「なぁ、悪いが爵位についてもっと詳しく・・・」
「お、このポケモンは!」
『ヒノヤコマ。火の粉ポケモン。ヤヤコマの進化形。お腹の炎袋の火力が強まるほど速く飛べるが、点火するまで時間がかかる』
「おいおい、サトシ・・・」
情報を聞き出そうとした時、新しく見るポケモンを調べようと図鑑を開くサトシのマイペースな行動に俺は苦笑しながら額に手を当てる。
その間にも2人の兄弟はラップ口調で話し続けるがいい加減ウザく感じたセレナとシノンがつい口に出してしまい、それにより2人が凍るように固まった事で静かになった。
「なぁ、爵位って?」
「(パキッ!)・・・ハッ、ぶっちゃけ説明面倒YO」
「俺達今から行くからYA!」
「一緒に来れば分かるのYO!」
「連れてってくれよ、バトルシャトー!ショウヨウジムにチャレンジする前に力の確認と勢いを付けたいんだ!カイトもそう思うだろう?」
「ピカチュー!」
「そうだな。せっかくだから付いて行くとしよう」
「ガウガウ!」
「ジム戦の前座になるかならないか!YO!YO!皆連れてってやるYO!」
「行ったら絶対ビックリYA!」
その後カイト達は自己紹介を済ませ、二コラとテスラの兄弟の案内の元でバトルシャトーに向かった。それから暫く歩いて辿り着き、遠くからでも分かるくらい大きく綺麗に整えられている城の入口には『バトルシャトー、その強さ、爵位で示せ』と書いてあった。
自然と心の底から湧き上がってくる戦いたい欲求を抑えながら門を潜って中に入るとピカピカに磨かれた床に両脇にある白い甲冑と目の前に飾られている肖像画の部屋で、1人のメイドが頭を下げて出迎えてくれた。
「バロン・二コラ様。バトルシャトーにお帰りなさいませ」
「バロン?」
「爵位階級の1つで1番下の位の呼び名よ」
初めて聞く単語にサトシ達は首を傾ける。そんな中で唯一意味を知っていたシノンが分かりやすく説明した。
そんな中二コラはテスラのデビュー戦の申し込みをお願いする。それを見てサトシとカイトも申し込みをお願いする。
「俺もバトルをお願いします!」
「俺もお願いします」
「あなた方様は・・・」
「カントーのマサラタウンから来ました、サトシって言います!」
「ピカチュー!」
「俺はシンオウのカンナギタウンから来ました、カイトと言います!」
「グッガウゥ!」
それぞれ自己紹介を終えた時、奥の通路からダンディな男性が現れた。此処バトルシャトーの当主のイッコンであった。イッコンは優雅に一礼をし、カイト達を歓迎してバトルの申し込みを承諾した。
「初めまして。カントーとシンオウからお客様を迎えるとは大変に嬉しく思います。また、お会いできて光栄でございます。ダークマスター・カイト様」
「「え、えええええええぇぇぇぇぇ!!?」」
イッコンの言った言葉を聞いて二コラとテスラは驚愕する。自分達の傍にいるカイトの正体が今カロス中でその名が広まっているダークマスターであるのだから無理はない。だがカイトは少し困った表情でイッコンに言う。
「申し訳ありませんイッコンさん。あまりダークマスターとは言わないでくれると助かります。いろいろと大変な事になりますから」
「これは失礼致しました。ですがカイト様の名はこちらの地方でも広く知られており、その強さはグランデュークの称号に相応しい程であります。貴方様の強さを是非味わせてもらいたいのですが・・・今はその話を後にして、皆様方をバトル場にお連れいたします」
そう言ってイッコンはカイト達を案内しながらバトルシャトーについて説明する。
バトルシャトーは紳士淑女のトレーナー達に極上の戦いを提供する社交場である。此処は元々過去に行われたれ歴史ある騎士の決闘をお手本に始められたものだ。
ポケモンバトルを騎士道精神で高めると言う流儀で、自慢のポケモンをただ戦わせるのではなく、礼節や格式を重んじると言う風潮を生ませたのだ。
また此処ではトレーナーの事を“ナイト(騎士)”と呼ばれている。
そしてバトルの結果によってナイト達は爵位と呼ばれる称号を得られ、その爵位の階級によって強さの順番を付けている。その為ナイト達は上位の爵位を目指して奮闘しているのだ。ジム戦が主流になっている現代でもカロス地方独特のバトルとして違った雰囲気を味わえるから多くのトレーナーに利用されている場所だ。
そして説明が終わったのと同時にとある部屋の扉の前に辿り着いた。
「これからご案内するのはサロンでございます。バトルシャトーに来たら、こちらで対戦相手を選んで頂くのです」
メイドが扉を開けると部屋の中には多くのトレーナーならぬナイト達が待機していた。
此処にいる者達は全員爵位を持っている者ばかり・・・なかなか強そうな者だらけで楽しめそうだ。
静かに闘志を燃やしているナイト達を見てカイトは内心全力とまではいかないがそれなりに本気でバトルできる事に喜んだ。
そう思っている間にイッコンが二コラがやって来た事を伝え、ナイト達は揃って見つめる中で二コラは数歩前に出て右手を胸の前に構えて敬礼しながら対戦相手を求めた。
すると1人のナイトが白い手袋を軽く投げつけた。それを拾い上げれば戦いを受けた証となる。
これも歴史ある騎士の決闘の正しい作法だ。
「私がお受け致しましょう。私はバロンの称号を持つファルレ」
「宜しくお願いします」
「どうぞお手柔らかに」
対戦が決まるまでのやりとり見たサトシが「誰とでもバトルができる」と言うが、テスラが言うに同じ爵位の相手ではないと戦えない決まりらしい。それを聞いてナイト達を片っ端から潰せないと分かって少し残念に思った。
「ピカ?ピカピ!ピカピカ!?」
「うん?どうしたピカチュウ?」
突然ピカチュウが驚きの声を出してある方向を指差しながらサトシを呼ぶ。その声に反応して全員が指を差す方向を見ると1人の男が壁を登っていた。サトシ達の驚く声に気付いたのか男は片手で窓の縁を掴んでぶら下がりながらこちらを見下ろした。
「あの人は一体何を?」
「彼はザクロさんと言ってね。いつも登っているんだ」
「すごく強いんだよね」
「・・・そうだと思った」
何しろあの人の体中から感じた闘志はジムリーダーと同じものだ。きっとザクロさんはどこかのジムリーダーだろう。使用するポケモンとタイプを知りたいな!此処でバトルしてくれないかな!と願いながら再びメイドに案内されて外のテラスからバトルを観戦する。
水面に囲まれたバトルフィールドで二コラとファルレは白いマントを羽織って現れた。
テスラから話を聞くとバトルシャトーでバトルをするナイトは階級ごとに違う色のマントを身に着けるのがしきたりで、白いマントはバロンの証なのだ。
ちなみに階級は6つあって下から順にバロン(白)、ヴァイカウント(青)、アール(深緑)、マーキス(山吹色)、デューク(赤)、グランデューク(紫)でバトルに勝つ事で昇格していく。説明を聞いた後サトシは最初にイッコンが言った事を思い出した。
「と言う事は・・・カイトは1番強い爵位って事か!?」
「当然ですよサトシ。先程イッコンさんがダークマスターの名はカロス地方でも広く知られていると言ってたじゃない」
シノンがそう言うとサトシを始め全員がカイトを見つめる。だが当の本人は自分の事よりも目の前で始まろうとしているバトルを興味深そうに見ていた。
そんな中で二コラとファルレのバトルが始まった。二コラのポケモンは先程見たヒノヤコマで、ファルレのポケモンゴーストタイプのヨノワールだ。
ヨノワールのトリッキーな戦法と効果抜群の『雷パンチ』に苦戦しながらもお腹の火袋が点火したヒノヤコマの『ニトロチャージ』によって二コラが優位に戦いを進めていた。
なかなか良い技を覚えさせているなと思っていた時、背後から何かの気配を感じた。振り返ってみるとそこには懐かしい人がいた。
「やっほー!」
「えっ?ビオラさん!?」
「久しぶり!まさか此処で再会するなんてね」
そこにいたのはハクダンジムのジムリーダーで、虫タイプの使い手であるビオラだった。ちなみに今の彼女はジム戦の時とは服装と髪型が違って、大人の女性の美しさが溢れているものだった。
カイトの驚きの声とビオラの返事を聞いてサトシ達も振り向いて同じように驚く。
「どうしてビオラさんが此処に?」
「こう見えて私、ダッチェスの称号を持ってるんだから!」
「ダッチェスと言うと・・・デュークの女性用で2番目に強い称号ですね」
「へぇ~、称号は男性用と女性用で呼び名が違うんだ」
称号について話をしている間にバトルの勝敗が決定した。
バトルに勝利したのはヒノヤコマで、これにより二コラはヴァイカウントに昇格して青いマントを羽織った。
熱いバトルを見られて満足したイッコンとナイト達が健闘した両者とポケモンに拍手を送る。その時大窓の近くでドスンと何かが落ちてきた。その正体はザクロで、彼は痛々しい呻き声を出しながら四つん這い姿勢でぶつけた部分を擦っていた。その様子を見てカイト達は心配して近寄り、ビオラは頭を抱え、イッコンは呆れながら言う。
「ザクロ様・・・またですか?」
「つい拍手しちゃうんですよね。素晴らしいバトルとポケモンに愛を!」
両手を広げながら言うザクロにビオラが呆れながら近寄って来る。
「ザクロ君ねぇ、そう思っているなら降りてから拍手すれば?」
「壁が僕を離してくれないんですよ。此処の壁はいけない・・・滑らかで艶らかで僕を誘うんです。ビオラにはバトルシャトーの壁のたおやかさが分からないかな~~?」
「どんなに力説されても・・・壁には燃えないのよね私・・・(汗)」
ビオラとザクロの会話を聞いて誰もが2人が知り合いだと分かった。そしてビオラからザクロが壁を見たら登らずにはいられないがデュークの称号を持っていてかなり強いと教えられる。
それを聞いてサトシ達はさらに驚くが、カイトだけは何の反応もしなかった。なぜならジムリーダーや四天王の大半が変な趣味を持っていると知っているからだ!(えっ!?)
話が終わった後メイドが次の対戦相手の名を呼ぶ。次はサトシとテスラのデビュー戦だ。
呼ばれた2人はバトルフィールドに立ち、ボール同士を合わせて自陣に戻る。そしてサトシはピカチュウ、テスラはヤヤコマでバトルを開始した。結果はサトシの圧倒的な勝利だった。これまでのバトルで得た経験と戦術、さらにカイトに鍛えて貰った事で1つ1つの技の威力が高かくそれ程時間もかからなかった。
そしてサトシはバロンの称号を手に入れて白いマントを羽織ってピカチュウと一緒に誇らしげに胸を張って勝利を喜んだ。
それからテスラと共にバトルフィールドを後にするとメイドが再び次の対戦相手の名を呼んだが、その相手が・・・。
「続きまして我が当主・イッコン様対ダークマスター・カイト様のバトルを始めます!」
「何?」
ザワザワザワザワ
メイドの言葉を聞いてナイト達は驚いた。勿論カイトも同じで突然の事に驚いているとイッコンが近づいてくる。
「申し訳ありませんカイト様、ですが私はどうしても貴方様の強さを味わいたいのです。どうか私の我儘に付き合っていただけないでしょうか?」
「良いですよ。実を言いますと俺もバトルをしてみたいと思っていましたので」
「お聞き頂きありがとうございます。私に勝てばグランデュークの爵位を贈呈致します」
「分かりました」
話をまとめた後カイトとイッコンはバトルフィールドに向かう。そんな2人を見てナイト達はさらに騒ぎ出す。
あまりバトルはしないが運良く見られた者からバトルシャトーの当主だけにその強さは絶大だと知られているイッコン。そんな彼がこれまた絶大な強さを誇るダークマスター・カイトとバトルをする。2人のバトルを見ようと全員がテラスに集まった。
「良きバトルを」
「良きバトルを」
バトルフィールドの中央でボール同士を合わせて自陣に戻った後、それぞれポケモンを出す。
「頼みましたぞシュバルゴ!」
「シュバーーー!!」
イッコンが出したポケモンは騎兵ポケモンのシュバルゴで、タイプは虫・鋼タイプだ。バトルシャトーに相応しい感じのポケモンで、体から溢れるオーラは大きかった。これはなかなか楽しめそうだと思いながらカイトは、足元にいる己の最高の相棒であるグラエナを出した。
「グラエナ、今回は久しぶりに・・・手加減無しの本気で行くぞ!!」
「ガウ!」
カイトの指示を聞いたグラエナはどこか嬉しそうに頷き、ゆっくりバトルフィールドに立つ。そして激しく咆哮する。
「グラアアアァァゥゥゥッ!!」
「「「ッ!?」」」
グラエナの咆哮を聞いたシュバルゴは2、3歩後退する。また特性:いかくの影響もあって攻撃力が下がる。だがそれは通常よりも下がったような気がした。
さらに影響を受けたのはシュバルゴだけでなく、イッコンやサトシ達、周りにいた野生ポケモン達も一瞬恐怖を感じた。
「これは・・・唯のいかくとは思えない程の威力ですな」
「ありがとうございます。ですが驚くのはまだまだ早いですよ」
イッコンは恐怖を感じつつも相手が自分が戦って来た者達の中で遥かに強い事に喜びを感じた。
そしてメイドの合図と共にバトルが開始した。
「先攻はそちらからどうぞ」
「承知しました。シュバルゴ、鉄壁です」
「まずは防御を高めてきたか。でも無駄だ・・・グラエナ、悪の波動!!」
全身を光らせて『鉄壁』で防御力を高めるシュバルゴだが、グラエナは構わず『悪の波動』を放つ。本来なら効果はいまひとつの技だが、攻撃を受けたシュバルゴはかなりのダメージを食らっていた。
「(相性はこちらが有利の筈なのにこれ程までダメージを受けるとは!?)やはりカイト様は強いですな。ですがこちらも負けません!剣の舞から虫のさざめきです」
「シュッバ~~!」
シュバルゴは『剣の舞』で攻撃力を上げた後『虫のさざめき』を放つ。強烈な音にグラエナは苦痛の表情になって必死に耐える。相手が動かなくなった隙をイッコンは逃さない。
「シザークロスです」
「噛み砕くで受け止めろ!!」
シュバルゴは素早い動きで正面から『シザークロス』で切りかかる。誰もが決まったと思ったがグラエナは『噛み砕く』で受け止めてしまった。驚くシュバルゴにグラエナは「先程の攻撃なんて効いていない」と言わんばかりに鼻で笑った。そしてシュバルゴの腕に噛みついたまま勢いよく地面に叩きつけた。
「止めだ!焼き尽くす!!」
「グウゥガアアァァッ!!」
効果抜群の『焼き尽くす』を食らってシュバルゴは目を回しながら動かなくなった。それを見てグラエナは勝利の咆哮を上げた。
そしてバトルに勝利したカイトはグランデュークの称号を手に入れて紫のマントを羽織い、グラエナと一緒に喜び合った。
ちなみにカイトはよくリーグ戦などで専用の服とマントを着用していたからマントを羽織った姿はかなり似合っていて、その姿を見たシノン他女性達は見惚れた。
「あれがダークマスター・カイトの実力か・・・!」
「何て強さだ・・・」
「噂通りチャンピオンと変わらない強さだ・・・」
一方テラスでカイトの凄まじい力を見たナイト達は自分との力の差を知り、内心勝てないと悟る。
だが唯1人だけ・・・サトシだけは違った。彼はカイトの力を再確認して絶対に追い付いてみせると心に誓った。
そしてカイトがイッコンと共にバトルフィールドから去って戻ってくると多くのナイト達やメイド達から握手やサインを求められた。カイトは1人1人と丁寧に向き合って対応し、その姿を見てシノンはまるで自分の事のように誇りに思った。
そうしている間に最後のバトルが始まった。対戦相手はビオラとザクロで、ビオラはアメタマ、ザクロは岩タイプのイワークを出した。ザクロのイワークは『岩石封じ』の岩石を自由自在にコントロールでき、アメタマの氷のフィールドによるスピードを封じて勝利を収めた。それによってザクロもグランデュークの称号を手に入れた。
その後ザクロの帰り際にカイト達はザクロがショウヨウシティのジムリーダーだと知った。そして彼の使うタイプと戦術を見たカイトは今日此処に来て良かったと思いながらサトシと一緒に『岩石封じ』の対策について特訓を始めるのであった。