ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い 作:ヤマタノオロチ
また長くかかってしまった・・・1日が本当に短い。いや、残業が長すぎる。全く嫌な事だ。
しかもポケモンの方で新しいゲームが出て、新アニメが今日始まる。早く進めなければ!
感想と評価をお待ちしております。
カロスリーグに挑戦する為、旅を続けていたカイト達は、遂にショウヨウジムがあるショウヨウシティに辿り着いた。
「ショウヨウシティ!遂に着いたわ!」
「やった!着いたーー!!」
「来たぜピカチュウ!」
「ピカチュー!」
「今度のジム戦も面白いといいなグラエナ」
「ガーウッ!!」
「頑張って下さいね兄様!」
「コーン!」
この日の為に日々特訓してきた結果を出す為、必ずジム戦に勝つと意気込むサトシとジム戦で心躍るバトルを期待しつつ勝利を狙うカイト。思惑は少し違うが、彼らの戦意は最高潮まで達していた。そして彼らは山の上にあるショウヨウジムへ向かうのであった。
その頃、かつてカイト達が行った化石研究所で、再び騒ぎが起きていた。
「どうだ、居たか!?」
「いえ、此処には居ません!」
「そうか・・・一体何処に行ってしまったんだアマルスとチゴラスは!?」
仲間の報告を聞いてタケダは大声で叫んでしまう。実は数日前、彼らはいつものようにアマルルガ達と復活したチゴラスの健康チェックを行うとしたが、部屋に居る筈の1体のアマルスとチゴラスの姿が何処にもなかったのだ。
その後研究所内をくまなく探したが見つからなかった。途方に暮れるタケダ達を他所に、アマルスとチゴラスは・・・。
「チ~ゴ!」
「ル~ス」
人々の視線を気にせずに堂々と道を歩いていた。彼らはある者達の後を追っているのだ。それが誰なのかは、この先にある山の頂上で判明するのであった。
再び視点が変わり、カイト達はジムに入って受付を済ませて奥に進んで行く。進んだ先には大部屋があって、中はロッククライミング用の岩山があった。
「わぁ・・・!」
「ピーカ・・・!」
「これはまた・・・」
「ガウ・・・!」
「これがショウヨウジム・・・だと思う」
「ジムにしては・・・随分大きく、面白そうな感じね」
「それに何かカラフル!」
目の前のジムを観察していると、ある岩肌でロッククライミングしているザクロを見つけた。
「ザクロさ~ん!ジム戦、チャレンジに来ました!お願いします!」
「俺も同じです。宜しくお願い致します!」
「勿論ですとも!待ってました。さぁ、登って来て下さい!」
「えっ・・・登る?」
「まさか此処を?」
「ピカ?」
「ガウ?」
「この壁ですよ。バトルフィールドはこの上です!」
「「「「「「えぇ~~!?」」」」」」
まさかこの岩山の上にバトルフィールドがあるとは流石のカイトも思っていなく、サトシ達と一緒に驚きの声を上げる。
「嘘!?」
「びっくり~!」
「あっ、もしかしてザクロさんが岩タイプの使い手だからこんな感じに?」
「その通りです。このショウヨウジムはシノンちゃんが言った通り岩タイプのジムです。素晴らしき岩の世界に触れて貰いたくて、チャレンジャーも皆さんに自力でバトルフィールドに登って頂く事にしています」
「それって、まさか皆やるんですか!?」
「ご心配なく。ちゃんとエレベーターもありますよ。選択は自由です。壁を登らないからと言って、チャレンジを受けない訳ではありません」
「サトシ、どうする?」
「勿論登る!」
「やっぱり・・・」
「それでは兄様も?」
「あぁ、俺も登るつもりだ。それにジム戦前の準備運動には丁度いい」
そう言ってカイトとサトシは、肩にそれぞれの相棒を乗せて登り始める。
「その意気込みは素晴らしい。では私は一足先に上で待ってますよ!」
再びロッククライミングを開始して、バトルフィールドに向かうザクロ。その後をカイト達は追って登り続けた。
一方シノン達はエレベーターに乗って上を目指した。そして彼女達が到着したのと同時に、カイト達も登りきってバトルフィールドに辿り着いた。日頃ポケモン達と一緒に特訓をしていたおかげか、2人は全く息を切らしていなかった。
「ザクロさん、お待たせしました」
「無事に登りきりましたよ」
「ピカピカ!」
「ガーウ!」
「いや、2人とも素晴らしい。2人はポケモンだけでなく、自分自身も鍛えているようですね」
「えっ?どうして分かるんですか?」
「実はこの壁はチャレンジャーの皆様の為、初心者用に作ってあるんです。けど運動神経の良いトレーナでも大抵の者は息を切らしてしまいます。ですが先程も言った通り、2人は息を切らしていない。以下に普段2人が努力しているのかが分かりますよ」
「そう言う事でしたか。けど俺達はただ皆と一緒に特訓しただけですよ」
「俺も同じです。皆と一緒にやってこそ、意味があると思っています!」
「ガウッ!」
「ピカ!」
「そうですか。ところで、2人は登っている時どんな気持ちでした?」
「えっと・・・何も考えていませんでした」
「おいおい・・・」
頭に手を置きながらサトシははっきり言う。それを聞いてカイトはつい溜息をついてしまう。しかしザクロは優しい表情で頷く。
「それで良いのです。カイト君はどうでしたか?」
「俺は・・・何処をどう行けばすぐ上に登れるか、その事だけを考えながら上を見つめていました」
「成程、君達はどちらも余計な事は考えず、一点の事に集中していました。それは曇りがない透き通った素晴らしい心です。この壁を制覇したその先には、今度は私と言う壁があります。私を制覇して下さい、2人のチャレンジャー!」
「「はい!!」
「ピカピカチュー!」
「グッガァヴウ!」
「ザクロさん、どうしてチャレンジャーに壁登りを?」
「精神統一の為ですよ」
「精神・・・?」
「統一?」
「どういう意味でしょうか?」
「壁登り・・・それは最高の精神修養なのです。壁を登る時、私は無心になります。見つめているのはただひたすらに上、望む事は登り切った達成感、そこに壁がある限り私は挑戦を続けます。チャレンジャーにも上を見据えて無心に這い上がって来て欲しいのです!」
ザクロからロッククライミングの狙いを聞いて、カイト達は全員その意味を理解するのであった。そして遂にジム戦が始まった。
最初にバトルしたのはサトシだ。理由は単純に此処へ来るまでにジャンケンで決めていたからだ。サトシはイワークの『岩石封じ』とチゴラスの『流星群』に対し、特訓で得た連続ジャンプを活かした“岩石封じ封じ”と“流星群封じ“を用いて、激闘の末に見事ジム戦に勝利した。余談だが、勝利に喜ぶサトシを見て、セレナは涙目で愛する人を称えた。
そして時を移さずにカイトのジム戦が始める為、カイトは観客席からバトルフィールドに向かう。その途中で観客席へと向かうサトシからエールが送られる。
「頑張れよカイト!」
「勿論だ。お前ばかりに良い格好をさせる訳にはいかないからな」
そう言ってカイトはバトルフィールドに堂々と立つ。そして審判から説明を聞いた後ザクロに質問した。
「ザクロさん、イワークとチゴラスは先程のバトルで戦闘不能になっていますが・・・ポケモンはどうするのですか?」
「ご安心下さい。バトルシャトーでイッコンさんと戦った君の強さを知り、私の持つポケモン達の中で最も強い2体のポケモンを出させて頂きます!行け、ガチゴラス!!」
「ゴーラ!!」
「ほぉ、カッコイイポケモンだ。どれどれ・・・」
『ガチゴラス。暴君ポケモン。分厚い鉄板を紙の様に噛み千切る大顎で古代の世界では無敵を誇った』
成程、以前研究所で見たチゴラスの進化形で岩・ドラゴンタイプか。ポケモン図鑑で調べ終わった後、カイトは腰にあるボールを1つ取り出す。
「1番手はお前だ。ノクタス、出陣!!」
「ノーク!」
「ノクタスですか、草と悪タイプを持つポケモン。カイトも最初はセオリー通りですね」
「当然よシトロン、兄様はバトルをする前から戦略を考えているんだから。兄様!ノクタス!頑張って下さい!」
シトロンの呟きにシノンは自慢するように答えて、カイトの勝利を祈りながら応援する。それに応えるようにカイトは手を上げて、ノクタスを見つめて頷いた後、審判の合図でバトルが始まった。
「行けノクタス!」
「ノーク!」
「まずはこの技からです。ガチゴラス!噛み砕くです!」
「ゴッラアァ・・・ガアアァァッ!?」
「なっ!?」
先制攻撃とばかりにガチゴラスが『噛み砕く』で攻撃しようとするが、それよりも先にノクタスが一瞬で接近していて、ガチゴラスの腹に攻撃を決まっていた。何が起きたのかザクロをはじめ、シトロン達も分からず呆然とするが、サトシとシノンだけは分かっていた。
「シノン、今のってあの技だよな?」
「えぇ、今のは不意打ち。相手が攻撃技の時に先制する事ができる技よ。さっき兄様はノクタスとアイコンタクトしていたからきっとその時に指示を出していたんだわ」
シノンの言う通り、先程ノクタスが攻撃した技は『不意打ち』である。そしてバトルが開始する前にカイトがノクタスを見つめて頷いた時のものが合図だったのだ。彼女の話を聞いて全員が驚く。特にアイコンタクトだけで指示が通った事に「凄い」と呟く。だがそんなやり取りが行われている間にもバトルは続いていた。
「どんどん行くぞノクタス!ミサイル針!」
「ノーククク!」
「ストーンエッジ!」
「ゴッラアァァァァッ!!」
一旦距離を取ったノクタスが連続で『ミサイル針』を放つ。それに対してガチゴラスは『ストーンエッジ』を繰り出し防いでしまう。それどころか『ストーンエッジ』はそのままノクタスに迫った。
「ジャンプして躱せ!」
「ノーク!」
「逃がしません!飛んでドラゴンテール!」
ジャンプして躱すノクタスに向かって、ガチゴラスは先に戦ったチゴラス同様・・・否、それ以上の脚力で迫って『ドラゴンテール』を繰り出す。危機的状況に対してカイトは薄く笑っていた。
「今だノクタス、ニードルガード!」
「ノーク!」
「ゴラアアアァァァッ!?」
「あの体勢からこんな!?」
ノクタスの『ニードルガード』によりガチゴラスは大きく吹っ飛ばされ、そのまま落下して地面に激突した。空中なら身動きが取れないはず・・・そう思って上手く誘い込み、一気に勝負を決める技を繰り出したのにまさかそれが破られるとは!?
ザクロは、驚きと作戦を破られたショックで一瞬思考が停止してしまい、それによりカイトが次なる手にかかっている事に気づかなかった。
「ノクタス!一気に接近しろ!」
「ノーク!」
地面に着地したノクタスは勢いよく走り出し、ガチゴラスへ接近する。しかしザクロもガチゴラスもまだ闘志は消えていなかった。
「ガチゴラス!流星群です!」
「ゴオォラアアァァァァァ!!」
「ノクタス、ジム戦対策用のもう1つの技を使うぞ。ニードルアーム!」
「ノーク!クータタタタタ!!」
迫るノクタス目掛けて、ガチゴラスは『流星群』を大量に放つ。それを見てノクタスは走るのを一旦止めて、両腕を猛スピードで回して大量の『流星群』を『ニードルアーム』で次々と粉砕してしまった。そして最後の1つを破壊し、再びガチゴラス目掛けて走り出す。ザクロは次に『岩石封じ』を指示し、ガチゴラスは大量の『岩石封じ』を放つがそれも破壊されてしまい、ノクタスは遂にガチゴラスの目の前まで接近した。
「ゴラァ!?」
「なっ!?こんな事が・・・」
「そのまま決めろ!」
「ノーークタァァァ!!」
ガチゴラスが防御する暇もなく、ノクタスの『ニードルアーム』が腹に決まった。しかも両腕であった為ダメージは大きく、ガチゴラスはゆっくりと倒れてそのまま目を回しながら動かなくなった。
「ガチゴラス戦闘不能、ノクタスの勝ち!!」
「よし!よくやったぞノクタス!」
「ガウガウッ!」
「ノークタ!」
「お見事です兄様!」
「コーン!!」
「やっぱりカイトは強いな」
「そうね!」
「ノクタス、カッコイイよ!」
「今までのバトルでもそうでしたが、カイトの2手、3手先を読んだ戦術には毎回驚かされます!」
戦闘不能になったガチゴラスをザクロは健闘を称えながらモンスターボールに戻した。
「お疲れ様でしたガチゴラス、戻って下さい。お見事でしたカイト君、サトシ君の時も驚かされましたが、君の先の先を読んだ戦術にも驚かされました。ビオラが君と戦う時は覚悟を決めなさいと言っていた理由、理解しましたよ」
「ありがとうございます。今までの旅の結果、今の戦術になったのです。そして俺が考えたバトルに皆が信じてくれた事もありますから。それではザクロさん、そろそろ次のバトルを始めましょうか。そしてもう1つの壁も乗り越えさせていただきます!」
「分かりました。では私の2体目はこの子です。行け、アマルルガ!」
「ルガーーー!!」
ザクロが次に出したポケモンは岩・氷タイプの2つを持つアマルルガであった。だが化石研究所で見たアマルルガとは違って、ザクロのアマルルガから凄まじいオーラが溢れていた。カイトはアマルルガのタイプと自分の手持ちの事を考えた結果・・・。
「ご苦労だったノクタス、ゆっくり休め。そしていよいよ初陣だ。お前の力をたっぷり見せるがいい・・・第2陣、ヒトツキ!!」
「ヒート!」
カイトはノクタスを戻した後、腰にあるボールを1つ取る。そして出したポケモンはヒトツキであった。
「ほぉ、ヒトツキですか。タイプの相性は勿論、私から見ても良い面構えをしていると分かりますね」
「ありがとうございます。こいつは今回初のジム戦なんですが、ザクロさんを越えたいと前から言っていたので・・・それにそろそろアレだしな」
ザクロの質問にカイトは丁寧に答える。けど最後のところは小声で言ったので聞こえる事はなかった。そして2戦目のバトルが始まった。
「まずこれからだ。ヒトツキ、金属音!」
「ヒートォォォ!」
「成程、防御力を下げて一気に勝負を付けようと言う考えですか・・・ならこちらはオーロラビームです!」
「ルゥガァァーー!」
ヒトツキの『金属音』を食らい、苦しい表情になるアマルルガ。しかしザクロの指示を聞いて、必死に耐えながら『オーロラビーム』を放つ。それを見てヒトツキは『金属音』を止めて、避けようとするが・・・。
「逃がしません。そのままオーロラビーム!続けて岩石封じです!」
「ツキ!?ヒトーーー!!?」
「くっ!避けきれなかったか」
アマルルガが執拗に『オーロラビーム』を放ち続けた上に、『岩石封じ』まで出して来た為ヒトツキは攻撃を受けてしまった。しかも鞘を持っていた手の部分に当たり、追加効果によってその部分が凍ってしまった。それによりバランスが悪くなってヒトツキはふらつく。
「どうやらこの勝負、私の方に流れが向いてきたようですね」
「いえ、勝負は最後まで分かりませんよ。ヒトツキ、行けるな?」
「ヒートト!」
カイトの問いにヒトツキは体を震わせながら応える。そして鞘に力を込めて自力で氷状態を解いてしまった。それを見てザクロは驚きの表情になる。
俺も最初の時はあんな表情になったものだ。ゲームだけしかないと思っていた絆の力による奇跡・・・凄いものだ。まぁ、今はそんな事は置いといて。
「そのままシャドークローだ!」
「そうはさせません。吹雪!」
『シャドークロー』で攻撃しようとするヒトツキをアマルルガは口から凄まじい威力を誇る『吹雪』を放つ。ヒトツキは回避しようとするが『吹雪』の攻撃範囲は広い。その為今度はヒトツキの下半身が凍り付いてしまった。さらにそのまま落下して岩に突き刺さり、身動きができなくなってしまった。
「ヒトツキが!?」
「カイト!早く抜けさせるんだ!」
「ピカチュー!」
「でもあれでは身動きがとれない。脱出するのは難しいです」
「そんな!?」
「兄様!ヒトツキ!」
「コーン!」
シノン達が騒ぐ中、カイトは心を落ち着かせつつ冷静に状況を確認する。
「(この状況を切り抜けるにはあれしかない。もうそろそろ良い頃合いの筈なんだが・・・)」
「どうですかカイト君?私のアマルルガの切り札とも言える吹雪の威力は。さぁ、堂々と立ち塞がるこの壁・・・君達はどうやって登り切りますか?それとも諦めますか?」
「いいえ、この程度の事で諦める俺達ではありません。ヒトツキ、お前がこれまで努力してきて得た力はこんな物か?そうじゃないだろう。今こそお前の本当の力を見せてやれ!」
「ヒーートーーー!!」
カイトの言葉に応えるようにヒトツキは大声を出す。するとヒトツキの体が青く輝き始め、岩を壊しながら姿形が変化していった。剣がもう1本増えて、鞘を持つ部分が青から薄紫色に変化していた。
「ギール!!」
「とうとう進化したか!」
『ニダンギル。刀剣ポケモン。進化して2本に分裂した。テレパシーで会話して連続攻撃で敵を切り刻む』
進化した事に喜びながら図鑑で調べ、新たに覚えた技などを確認する。
「これは驚きました。まさかあの状況で進化するとは!」
「言った筈ですよザクロさん。この程度で諦める俺達ではないと。ニダンギル!お前の得た新しい力を見せてやれ。瓦割り!」
「ギル!ニーダダ!」
「格闘技!?ならばもう一度吹雪です!」
「ルガ!ル・・・ガアアアァァァーー!?」
迫るニダンギルをもう一度『吹雪』で動きを止めようとするザクロとアマルルガだが、進化前よりもスピードが早くなったニダンギルの『瓦割り』が先に当たってダメージを受ける。効果抜群だけでなく、パワーアップした上に先の『金属音』で防御力が下がっていた事もあってアマルルガはその場に膝を付く。
その様子を見てザクロは厳しい表情をする。対するカイトも同様の表情だ。お互いに自分のポケモンがそろそろ限界だと気付いているのだ。
「どうやら次が最後になりそうですね。なので私の最も好きな技で決めさせていただきます。岩石封じ!」
「ルガーーー!!」
「受けて立ちます!ニダンギル、両剣で瓦割りだ!」
「ギール!ニーダダ!!」
今度は無数の岩石がニダンギルに向かって行く。しかしニダンギルはそれを次々と切り裂く。そして最後の岩石を切り裂いた後、2本の剣がアマルルガの首目掛けて振り落とされた。ニダンギルが剣を鞘に入れたのと同時にアマルルガはゆっくり倒れて、目を回しながら戦闘不能になった。
「アマルルガ戦闘不能、ニダンギルの勝ち!!よって勝者、チャレンジャーカイト!!」
「よし!見事だったぞニダンギル!!」
「ガウガウゥ!」
「ギール!!」
審判の勝利宣言を聞いて、緊張が解けて褒め称えながらグラエナと一緒にニダンギルの元へ駆け寄る。シノン達も観客席で喜びの声を上げる。
「おめでとうございます兄様!」
「コーン!!」
「凄いぜカイト!」
「ピカピカ!」
「カイトも勝った!」
「やったー!」
「ふぅ~カイト達の力も凄いです」
「よく頑張ってくれました。おかげで良いバトルになりましたよ。ありがとうアマルルガ」
「ルガ~~」
ザクロは奮闘したアマルルガにお礼を言ってモンスターボールに戻し、駆け寄って来たシノン達と話をしているカイトの元へ向かう。
「実に素晴らしいバトルでしたよカイト君。特にあの状況でヒトツキがニダンギルに進化した事が、まさにサプライズでした!」
「ありがとうございます。ノクタスとニダンギル、グラエナ、そして皆の力があってからこそです」
「本当に素晴らしい。サトシ君の時もそうでしたが、チームが一丸となって見事ショウヨウジムと言う壁を乗り越えました。これがその証、ウォールバッジです。受け取って下さい」
「ありがとうございます!見ろグラエナ、これが今回手に入れたウォールバッジだ」
「ガーウ!」
バッジを貰ってケースに入れた後、全員でショウヨウジムから外に出る。出ると外はもう日が暮れていた。
「ところでカイト君、サトシ君、3つ目のバッチは何処のジムで挑戦するか決めているんですか?」
「いえ、まだ決めていません」
「これから考えようと思っていました」
「提案ーー!3つ目のジムは、此処が良いと思うの。シャラジム!近くにマスタータワーがある所なの。一度行ってみたかったのよね」
そう言ってセレナは皆にシャラジムの画像を見せる。画像に映っているシャラジムは、海に囲まれたジムであった。それにマスタータワーか、歴史的な良さを感じるな。
「シャラシティですね。成程、良い街ですよ」
「シャラシティ・・・シャラジムか」
「なかなか良さそうな所だ。それにマスタータワーと言う所が気になる」
「私もです!そこにしましょうよ兄様」
シノンもマスタータワーが歴史的古風な場所だと思ってそこに行こうと勧める。さらにザクロからそこのジムで一味違う体験ができると言う話も聞いて、次の目的地はシャラシティに決まった。
「カイト君、サトシ君、次はバトルシャトーでリベンジをお願いします」
「俺は大丈夫ですよ」
「俺はグランデュークにならないといけないから・・・ジム戦をしつつ、必ずグランデュークになってバトルをします!」
ザクロがバトルシャトーでリベンジをお願いするとカイトはすぐに承諾し、サトシはジム戦をしつつ、必ずグランデュークになる事を決意する。
そしてザクロに別れの挨拶をした後、カイト達はポケモンセンターへ向かおうとした時・・・。
「チ~ゴーーー!!」
「ル~ス!!」
「何!?うおっ!」
「きゃあ!?」
突然カイトとシノンに何かが覆い被さってきた。2人が慌ててそれを退かして見てみるとそれはなんとアマルスとチゴラスであった。
2体は喜びの表情でカイトとシノンの体に顔を擦り寄せてくる。この2体、もしかして・・・。
「化石研究所にいたアマルスとチゴラスか!?」
「えっ!?でもどうして此処に・・・」
「取り合えず化石研究所に連絡してみよう」
そう言ってポケモンセンターに向かい、化石研究所に連絡するカイト達。するとすぐにタケダが画面に現れて、事の状況を説明してくれた。
「成程、そう言う事でしたか」
『えぇ、2体が何処に行ったのか分からず、とても心配していたのですが・・・見つかって良かった』
「どうやらこの2体、俺達の後を追い掛けていたみたいです」
『カイト君とシノンさんの?そう言う事か・・・』
「タケダさん?」
理由を知ったタケダは少しの間目を瞑り、再び目を開けると驚きの事を言い出した。
『カイト君、シノンさん。君達さえ良ければ、このまま2体をお願いできませんでしょうか?』
「えっ、良いんですか!?」
「しかしそれではタケダさん達が困るのでは?それにアマルスには仲間もいますし・・・」
『構いません。アマルスとチゴラスが選んだ事ですし・・・それにもう1体のアマルスとアマルルガも納得しているんですよ』
「どう言う事ですか?」
『実は2体がいなくなった後すぐアマルルガ達に話したところ、彼らは分かっているような雰囲気だったのです。きっとアマルスが事前に話を付けていたんだと思います』
「そうでしたか・・・」
『そう言う訳でカイト君、シノンさん。改めてアマルスとチゴラスの事をお願いします!』
「分かりました」
「必ず愛情を持って大切にします!」
タケダから許可を得たカイトとシノンは足元にいる2体を真剣な眼差しで見つめる。
「チゴラス、お前の気持ちは分かった。改めて俺と一緒に来るか?」
「チーゴ!!」
「アマルス、これからは貴方とずっと一緒だからね。宜しくお願いね」
「ル~ス!!」
2人は同時にモンスターボールを取り出し、優しく2体に当てる。そしてモンスターボールは音を鳴らしてながら止まった。
「チゴラス、ゲット完了!」
「グガウゥッ!!」
「アマルス!ゲットです!」
「コーン!」
2つ目のバッジをゲットし、新しい仲間もできた事にカイトとシノン。サトシ達から祝いの言葉を貰いつつ、次なる目的地・シャラジムに向かって行く事を決めた。
カイト達の挑戦はまだまだ続く。