ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い   作:ヤマタノオロチ

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皆様、お待たせ致しました。今年初の物語は、カロス地方のチャンピオンが登場する話です。
エレガントな大人の魅力を持つ彼女の活躍を是非楽しみながら読んで下さい。
感想と評価をお待ちしております。



カロスチャンピオン・カルネ登場!

シャラジムがあるシャラシティに向かって旅をしているカイト達。

その途中に立ち寄った大きな街で、彼らは電光掲示板に表示されている“ある情報”を見て足を止めた。それはこの街で行われるエキシビションマッチ開催のお知らせだった。対戦する相手は昨年のこの街のポケモンバトルチャンピオンである強豪トレーナーと、カロス地方のチャンピオン・カルネとの事だ。

 

 

「まさかカルネさんがこの街に居るとはな」

 

「凄い偶然ですね兄様」

 

「カイトとシノンはこの人の事を知っているのか?」

 

「あぁ、カルネさんはシロ姉の大親友で、長期休暇の際に互いに休みが重なったりする時は会って話し合う程なんだ。その時に俺達も一緒に会った事があるのさ」

 

「その際にいろいろと相談にも乗ってくれたり、バトルの相手をしてくれたりといろいろお世話になった事があるのよ。ちなみにカルネさんはチャンピオンである以外に有名な大女優でもあるの。ほら、アレを見て」

 

 

サトシに軽く説明しながらシノンが近くの建物を指差す。そこには彼女が主演の映画「マイスイーツレディ」のポスターが大きく飾られていた。

 

 

「あの大ヒット中の映画の他にもいろいろな作品に出演しているのよ」

 

「そうなの!そしてカルネさんはエレガントで大人の余裕たっぷりで、全てにおいて完璧な女性と呼ばれているの。あぁ~私もカルネさんの様な素敵な女性になりたい///」

 

「うんうん!ユリーカもなりたい~!」

 

 

シノンの説明にセレナが付け加える様に言った後、彼女は頬を赤く染めて手を合わせながらポスターを見つめる。その表情から察する事ができるが、彼女に対してかなり心酔していた。さらにシトロンとユリーカも同じようだ。

 

 

「そうなのか・・・よし!決めた」

 

「どうせカルネさんにバトルを申し込む気だろ?」

 

「あれ?何で分かったんだ?」

 

「ピーカ?」

 

「お前の考えなんてすぐに分かるよ」

 

「ガウガウッ」

 

 

これまで一緒に旅をしてきた者ならサトシの単純な考えなんてすぐに分かる。そう言うかのようにカイトはため息をつきながら頭を振るう。しかしサトシはそんな事は気にせずに話を続ける。

 

 

「チャンピオンのカルネさんとバトルしたいと言うのは、ポケモントレーナーなら当然だろ?だからカルネさんに会ってお願いしてみるんだ!もしもの時はカイトとシノンに頼めばいいしよ」

 

「おいおい、いくら知り合いだからと言って俺達が頼めば大丈夫と思う「兎に角行って会いに行こうぜ!」のは止めろ・・・っておい!」

 

 

話を最後まで聞かずにサトシはエキシビジョンマッチが開催されるスタジアムに向かって走り出した。ポケモンやバトルの事になるといつもこうだな~、と内心またため息を吐きながらカイトも走り出す。それに少し遅れながらシノン達も後を追い掛けた。

だが途中カイトが突然足を止めて、ポケモンセンターへ寄りたいから先に行っててくれと言って皆と別れた。そしてポケモンセンターに辿り着くと育て屋の祖父母の元に連絡して、手持ちのハブネークとあるポケモンを交換してもらってから再びスタジアムに向かうが、その途中にあったスイーツ店を見てまたまた足を止める。

タイミング良くその店が開店した直後で他のお客さんもあまりいなかった事もあって、カイトはその店に入ってある物を予約してから今度こそスタジアムに向かった。

それから数分後、スタジアムに到着したカイトは待っていてくれていたシノン達に遅くなった事を詫びながら合流して、会場内に入り込んでカルネが待機している部屋を訊ねに行ったのだが・・・。

 

 

「押さないで下さーい!!」

 

 

既に多くの報道陣が部屋の前に集まっていて、部屋には近づけない状況だった。そして扉の前でマネージャーと思われる眼鏡をかけた小柄な女性が懸命に声を出して報道陣に説明する。

 

 

「えー!本日は一切の取材及び面会をお断りしていまーす!」

 

 

それを聞いて報道陣から落胆の声が漏れる。そしてサトシ達も同様に残念な表情になる。

 

 

「この様子じゃ無理な感じですね」

 

「サトシ、どうする?」

 

「う~ん・・・カイト、シノン、なんとかできないか?」

 

「いくらなんでも難しいと思うよサトシ(汗)」

 

「まぁ、一応聞いてみるけどよ・・・」

 

 

そう言ってカイトが部屋に近づこうとした時、突如横から制止するかのように誰かの手が伸びて来た。伸びてきた方向を見ると隣の部屋の僅かに開いた扉の隙間からプラターヌ博士が覗いていた。

 

 

「やあカイト君、久しぶりだね」

 

「プラターヌ博士!?」

 

 

予想外の人物がいた事に驚きつつもカイト達は彼に招かれて部屋の中に入り、設置されていた椅子に座る。そしてセレナが皆の代表として質問した。

 

 

「どうして博士が此処に?」

 

「僕が研究所を離れる理由は1つしかないだろ?」

 

 

それを聞いたカイトは瞬時に内容を理解した。

 

 

「もしかして・・・メガシンカの研究の為ですか?」

 

「流石カイト君は鋭いね。今回はカルネさんが持つサーナイトのメガシンカを調べる為に来たんだ」

 

「サーナイト・・・カルネさんの1番のパートナーがメガシンカするのか・・・」

 

 

確か昔カルネさんにポケモンを見せてもらった際に1番最初に出してくれたのもサーナイトだった。あの時はただ綺麗なポケモンとしか思わなかったが、今思うとシロ姉のガブリアス同様にかなり強いオーラを出していたな。そんなサーナイトがメガシンカする事ができるのか。

 

 

「これは是非とも見てみたいものだ。シノンはどう思う?」

 

「私も同じ気持ちです。絶対にサーナイトのメガシンカを見てみたいです!勿論この子も一緒に」

 

 

そう言ってシノンは自分のサーナイトが入っているモンスターボールを手に取る。サーナイトはいつになく興奮しているのか、ボールをカタカタと揺らしている。

その様子を見てカイトが微笑んだ後、未だ話し続けられているサトシ達の会話へ意識を戻した。

 

 

「博士はもうカルネさんに会ったんですか!?」

 

「あぁ、僕はもう会ったよ。今は隣の部屋でメイク中さ」

 

「え~~~!?あの扉の向こうにカルネさんが!?」

 

「素敵素敵素敵ー!!」

 

「こんな幸運滅多にありませんよ!」

 

 

憧れのカルネが隣の部屋にいるのを聞いて、ファンであるセレナ・ユリーカ・シトロンの3人は激しくテンションを上げる。

それとは別にてテンションを上げたサトシはバトルを申し込もうと席を立ち、扉に近づこうとする。だがそれをカイトが制した。

 

 

「待てよサトシ。今行くのはダメだ。もう少し大人しく待っていろ」

 

「えっ、だけど・・・」

 

「バトルを申し込みたい気持ちは分かるけど、カルネさんの事も考えないとダメよ。大丈夫。私達も一緒にお願いしてあげるから」

 

 

2人に言われてサトシも渋々席に戻ろうとした時、扉がゆっくりと開いてそこから1人の女性が出て来た。白い衣装を着て、少し薄めの黒髪を綺麗に結んで、人形のような白い肌と綺麗な顔立ちが特徴のカルネであった。

 

 

「博士、お待たせ・・・あら?他にもお客さんがいるのね」

 

 

甘美な香りを漂わせつつ、カルネは温かい目でサトシ達を順番に見つめながら優しく言う。彼女に会えただけでなく、見つめられた事もあってセレナ達は心の底から歓喜に打ち震えた。

 

 

「本物のカルネさんだ!!」

 

「綺麗~」

 

「フフフ、ありがとう。あら?」

 

 

セレナとユリーカに褒められたカルネは、微笑みながらお礼を言う。そして再び視線を動かした時、後ろに立っていたカイトとシノンに気がつく。

 

 

「カイト君!シノンちゃん!久しぶりね。元気にしてた?」

 

「お久しぶりですカルネさん」

 

「はい!私と兄様、そしてポケモン達全員も元気です」

 

「そう、昨日シロナから久しぶりに電話があってね。2人が今カロスにいるから会ったら自分が一緒にいられない分、いろいろ世話してあげてねって言われたの」

 

「やれやれ・・・シロ姉らしいな」

 

「本当ですね」

 

 

カルネの話を聞いてカイトとシノンはつい苦笑してしまう。

普段チャンピオンとして威厳ある姿を見せているシロナだが、2人の事になると少々・・・否、かなり過保護になるのだ。その理由は知っての通りシノンが実の妹であり、そんな彼女との間で抱えていた悩みと問題をカイトが解決してくれたからだ。それ故にシロナはシノン同様にカイトの事が好きでたまらないのは余談である。

その後3人が話をして、区切りが良い時を見計らってプラターヌ博士が声を掛けた。

 

 

「カルネさん、さっきのお話の件ですが・・・考えて頂きましたか?」

 

「キーストーンを預からせてほしいとの事ですが・・・お断りさせて下さい。勿論、他にできる限りの協力は致します。しかし、このキーストーンは私とサーナイトの絆そのものです。例え一時でも手放す訳には・・・」

 

 

話をしながらカルネはキーストーンと言う胸元で綺麗に光って、中に不思議な模様が見える小さな石のペンダントを優しく包むように握る。キーストーン・・・それがメガシンカに必要な物であろうかとカイトが考えている間、プラターヌ博士は懸命に説得する。

だがそれを横から誰かが遮った。

 

 

「無理です!無理です!カルネさんはこの後もスケジュールがびっしりです。ミアレシティに立ち寄る予定は今のところありません!!」

 

 

現れたのは先程まで報道陣の相手をしていたマネージャーだった。彼女は怒った顔でプラターヌ博士を睨み、そのまま詰め寄りながら言う。

 

 

「まぁまぁミナミちゃん、相変わらず怒った顔もキュート・・・」

 

 

そんな彼女にプラターヌ博士は何故か口説こうとするが、彼女は持っていた分厚いスケジュール帳で彼の顔を叩き潰しながら断った。そして表情を一変して優しい顔になりながらカルネの元に近寄った。

 

 

「カルネさん、スタンバイお願いします」

 

「ええ、良かったら皆さん、バトルを見て行って下さい」

 

 

そう言ってカルネは部屋を後にした。

彼女が去ってから少し経った後全員がスタジアムに移動して席に座り、カルネと対戦相手のトレーナーの自己紹介が行われているところを観戦していた時に、サトシが隣にいるプラターヌ博士に質問した。

 

 

「博士、さっき言っていたキーストーンって何なんですか?」

 

「キーストーンは、メガシンカにとって重要なアイテムなんだ。我々はトレーナーが持つ石をキーストーンと呼び、ポケモンが持つ石をメガストーンと呼んでいる」

 

「トレーナーが持つ石がキーストーン、ポケモンが持つ石がメガストーン・・・と」

 

 

プラターヌ博士の説明を聞きながらシノンは熱心にメモを取る。

その頃フィールドでは、カルネがパートナーのサーナイトを繰り出した。華麗に姿を見せるサーナイトの胸には、カルネと同じペンダントを付けていた。

 

 

「サーナイトもペンダントを付けているわ!」

 

「本当だ!」

 

「あれがメガストーンですか?」

 

「そうだよ。呼び方はメガシンカするポケモンによってそれぞれ違うんだけど、サーナイトのはサーナイトナイトと呼んでいるんだ」

 

「サーナイトナイト・・・それではアレはサーナイトだけしか使えない物なんですね」

 

 

シノンの質問にプラターヌ博士は大きく頷く。次にシトロンが2つアイテムを揃えばメガシンカする事ができるのかと質問すると、プラターヌ博士は首を横に振るう。

 

 

「揃えるだけではダメなんだ。トレーナーとポケモンの心が1つにならないとメガシンカはできないんだ」

 

「心が1つに・・・?」

 

「言い換えれば、それだけ強い絆が必要と言う訳だ」

 

「そっか。だからカルネさんはキーストーンを絆そのものって言ったんだ」

 

 

先程カルネが言った言葉の意味をサトシはようやく理解した。ちなみにその話を変装してやって来ていたロケット団がこっそり盗み聞きしていたのは余談だ。

 

 

「シノン、そろそろバトルが始まるからサーナイトのボールを出した方がいいんじゃないか?」

 

「そうですね兄様、生憎席が空いていなかったからボールからしか見せられないけど、貴方も一緒に見ましょう」

 

 

そう言ってシノンは己のサーナイトが入ったモンスターボールを手に持って、見やすい所まで持ち上げる。するとサーナイトはお礼を言うかのようにカタッと動かすのであった。

そうしている間、相手トレーナーは災いポケモンのアブソルを出した。あれはなかなか育てられているなとカイトが思っていると準備が整い、いよいよバトルが始まるのを感じて観客達は静かに見守る。そしてプラターヌ博士は記録する為に持って来たハンディカムを構える。

そして審判からエキシビションマッチの開始が宣言された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしバトルはあっと言う間に決着が付いた。

アブソルの『噛みつく』や『サイコカッター』等の攻撃をサーナイトはアイコンタクトでカルネと意思疎通しながら全て避け、効果は今ひとつの『シャドーボール』で大ダメージを与えて、そのまま効果抜群の『ムーンフォース』で忽ち戦闘不能にしてしまった。

圧倒的な強さと華麗さを魅せてくれたカルネとサーナイトのバトルに、全ての観客から激しい歓声が沸き上がった。

そんな中で2人だけ違う事を考えている者がいた。1人はサトシで、カルネの圧倒的なレベルの高さに驚いたが、相手が強ければ強い程燃える性質の為、何としてでもバトルを申し込もうと決心した。

もう1人はカイトで、久しぶりに見た彼女のバトルにより内心潜めていた“強者へ挑戦する”と言う気持ちをさらに高まらせていた。

 

 

「あんな凄いバトルを見せられたらもう我慢できないぜ!絶対にバトルを申し込むぞ!」

 

「そうだな。俺も久しぶりに強い人に挑戦したくなった。一緒に頼みに行こうぜサトシ」

 

「本当か!?勿論良いぜ!」

 

「僕ももう一度、頼んでみるか」

 

 

こうしてカイトとサトシはバトルを申し込む為に、プラターヌ博士はサーナイトのメガシンカした姿を撮る為に再びカルネが待機している部屋の前までやって来たのだが、そこでは最初の時に見た光景と同じように多くの報道陣が集まっていた。

 

 

「申し訳ございませんが、カルネさんは既に映画の撮影の為に移動されました」

 

 

そして扉の前にいた警備員の説明を聞いて誰もがガッカリする。

無論カイト達も同様で、残念な気持ちを抑えながらこの後の予定を話し合う。

 

 

「この後どうしますか?」

 

「そうね・・・あっ!此処からそう遠くない所にとっても美味しいガトーショコラがあるの。此処に行こうよ!」

 

「お、この店は・・・」

 

 

横からセレナの電子機器を覗いたカイトがつい声を出す。なぜならその店が此処へ来る前に立ち寄って、今提案しているガトーショコラを予約したスイーツ店だったからだ。その事を全員に伝えようとするカイトだが、サトシ達は早く食べに行こうと言って走り出してしまった。それを見たカイトはやれやれと呆れ、プラターヌ博士に今回のお礼を言ってから後を追い掛けた。

それから少し経って目的のスイーツ店に辿り着くと、そこには多くの人がガトーショコラを手に入れようと長蛇の列を作っている光景が目に映った。

 

 

「嘘~、こっちも人だかり・・・」

 

「うわ~・・・」

 

「今日は行く所行く所どこも混んでいますね」

 

「ああ・・・」

 

「本当ね・・・」

 

「でも負けていられない!突撃よ!」

 

「イエッサー!」

 

「お、おいセレナ!ユリーカ!行っちゃったか・・・」

 

 

勇ましく行列に加わっていくセレナとユリーカ。そんな2人を見てカイトはまた言いそびれたとため息を吐きつつ、シノン達に席を確保しておいてくれと言って自分も列に並んだ。

それから数十分後、先に店から出て来たのはセレナ達で、持って来たトレーの上には濃厚なチョコレートに粉砂糖がかけてあるガトーショコラが1個あった。

 

 

「くたびれた~」

 

「でも、なんとかゲットする事ができたわ」

 

「お疲れ様。・・・あれ?」

 

 

疲れた2人を労うシノンだが、目当てのガトーショコラが1つしかないのに気がついた。

また、カイトの姿がなかったのでセレナに訊ねようとしたが、それよりも先にサトシが手を伸ばそうとした。

 

 

「おっ!待ってました。それじゃあ頂きm「ペシッ!」ッイテテ・・・」

 

「ピーカ?」

 

「コーン?」

 

 

しかしそれをセレナが叩き落とし、ピカチュウとキュウコンがどうしたの?と言うように鳴く。

 

 

「何考えてるの!6人で分けて食べるの!」

 

「えぇっ!?この1個を!?」

 

「もしかして・・・セレナ達で丁度売り切れてしまった感じ?」

 

「そう!だからこれを均等に分けないといけないのよ!」

 

 

仁王立ちで言うセレナを宥めつつ、シノンが今度こそ訊ねた。

 

 

「ねぇセレナ、兄様はどうしたの?」

 

「えっ?カイトも一緒に並んだの?」

 

「うん。セレナ達の後を追うように・・・」

 

「でも私達見てないよ。ね~」

 

「ネ~ネ」

 

 

2人で丁度売り切れてしまったから戻って来ても良い筈なのに、とシノンが思っていた時にカイトが戻って来た。その手には大きな箱があった。

 

 

「兄様、随分と遅かったですね。それとその箱は?」

 

「あぁ、目的の品だよ」

 

 

そう言ってカイトがテーブルの上に箱を置いて中を開けると、そこには人数分のガトーショコラが入っていた。

 

 

「えぇ!?なんで持っているの!?」

 

「スタジアムに向かう前に見つけたスイーツ店が此処だったんだ。丁度開店した直後だったから美味しいと評判のガトーショコラを予約しておいたのさ」

 

「なら先に言ってくれても良かったんじゃ・・・」

 

「ピーカチュ」

 

「言う前に皆が走り出してしまったんだよ!・・・まぁいい、さっさと食べようぜ。余った1個は後で考えればいい」

 

「ガウガウ」

 

 

そう言ってカイトがガトーショコラを皿に移し、全員が席に座っていざ食べようとした時、後ろから女性の落胆した声が響いた。

振り返ってみると店の入り口の前で店員と黒の帽子に黒のコートを着て、大きな黒いサングラスをした女性がいた。

 

 

「何と言う悲劇・・・この店のガトーショコラが食べられると思って遠路遥々やって来たのに・・・あぁ、この世の終わりだわ」

 

 

どうやら女性はカイト達と同じガトーショコラを食べに来たが、売り切れてしまったと聞いてもの凄く落胆してしまったようだ。

そのあまりの様子にカイト達は放っておく事ができず、声を掛けた。

 

「あの~、1つ余っているので良ければあげますけど?」

 

「本当に!?」

 

「ええ」

 

 

まさかくれる人がいるとは思っていなかった女性は驚きつつもとても喜び、明るい雰囲気を漂わせながら優雅な足取りで近づく。その時グラエナが女性の匂いを嗅いでその正体をカイトに言った。

 

 

「ガウガウ!」

 

「どうしたグラエナ?」

 

「ガウガ!ガウガーウ」

 

「ほぉ、そうだったのか」

 

 

グラエナによってカイトが女性の正体を知ったのと同時に女性もカイト達に気がついた。

 

 

「あら?カイト君、シノンちゃん、それに貴方達も・・・」

 

「えっ?どうして私や兄様の名前を・・・?」

 

「それはなシノン。この人がカルネさんだからだよ」

 

「えっ!?カルネさん!?」

 

 

目の前にいる女性がカルネだと言うカイトにシノン達が疑問に思っていると、女性は小さく笑みを浮かべながらサングラスを下にずらして顔を見せた。

 

 

「私よ」

 

「「「「「ええええっ!?カルネさん!!?」」」」」

 

「ピーカァ!?」

 

「ネーネェ!?」

 

「コーオン!?」

 

 

本当にカルネであった事にシノン達は全員席を立って一斉に名前を言う。それをカイトとカルネが落ち着かせて、皆で美味しくガトーショコラを食べた。

-

その後カルネとスイーツの事や女優の事、キーストーンの事などいろいろ話をして、ユリーカのシルププレでセレナ達が離れたのを見計らってカイトが話し掛けた。

 

 

「カルネさん、今よろしいでしょうか?」

 

「あら?どうしたのカイト君?」

 

「実は久しぶりにカルネさんとポケモンバトルをしたくなって・・・もしお時間があるようでしたらバトルをお願いしたいのですが・・・」

 

「いいわ。実を言うと私も久しぶりにカイト君とバトルをしたいって気持ちがあったの。お相手してくれるかしら?」

 

「はい!宜しくお願い致します!あと俺の他にもう1人バトルをしていただけませんでしょうか?とても面白くて良い奴ですから」

 

「もう1人?」

 

「サトシ」

 

 

カイトが後ろで控えていたサトシに声を掛けると、彼はとても喜んだ表情になってカイトにお礼を言った後カルネにバトルを申し込んだ。

 

 

「俺、マサラタウンのサトシと言います!ポケモンマスターを目指していて、チャンピオンのカルネさんとどうしてもバトルをしたいんです!お願いします!!」

 

 

サトシの熱い視線を見ながらカルネは少し考える。自分と同じチャンピオンであり親友でもあるシロナが愛して愛してやまないカイトが推薦したトレーナー。

現に彼の瞳からは闘志の炎とチャレンジャー魂が溢れるくらいに燃えている。なら期待しても良いかもしれない。それに先程のガトーショコラのお礼もある事から非公式なバトルを受ける事にした。

そしてプラターヌ博士と合流して、市街地から人気のない森の中に移動してバトルの準備を整える。

最初にバトルをする事になったのはサトシで、相棒のピカチュウを出して既に出ていたカルネのサーナイトとバトルを開始した。

勢いよく『アイアンテール』、『電光石火』、『エレキネット』、『10万ボルト』と次々と技を出すピカチュウだが、サーナイトはエキシビションマッチと同様にカルネのアイコンタクトで全て避けて、隙をついた『シャドーボール』を放って大きく吹っ飛ばした。

咄嗟にサトシが動いて受け止めたが、バランスを崩して背後の木に背中と後頭部を強く打ち付けてしまった。

 

 

「サトシ!」

 

「ピカピ・・・」

 

「痛ってて・・・大丈夫だよピカチュウ」

 

 

心配するセレナとピカチュウに大丈夫だと言い、逆にピカチュウの事を心配するサトシ。そんな主人にピカチュウは「大丈夫!」と言う。

そんな彼らを見てカルネは内心思った。

 

 

「(ポケモンの為にあそこまでする熱いトレーナー。そしてトレーナーの為に尽くそうとする熱いポケモン。とても良いコンビだわ。カイト君が気に入る訳ね)サトシ君、まだ続けるかしら?」

 

「当然です!行きますよカルネさん!」

 

「ピカチュウ!」

 

 

2人がバトルの続きを行うとした時、突如四角い箱のようなメカが投げられた。そしてそのメカから光の檻が出てサーナイトを捕らえてしまった。

突然の事に全員が驚いていると空からニャース型の気球に乗ったロケット団が降りてきた。

 

 

「相手が女優と言うのなら!」

 

「黙っているのが常だけどさ!」

 

「「それでも答えて上げるが世の情け!」」

 

「業界の破壊と混乱を防ぐため!」

 

「「「世界の平和と秩序を守るため!」」」

 

「愛と真実の芝居と!」

 

「力と純情の悪を貫く!」

 

「クールでエクセレントであり!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ミズナ!」

 

「ロバル!」

 

「宇宙と銀河を駆ける大女優の私には!」

 

「「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待ってます!」」」

 

「にゃーんてニャ!」

 

「イートマ!」

 

「エアーー!」

 

 

いつもとは少し違った長い台詞を言うロケット団。彼らはサーナイトを捕らえた光の檻を回収して気球の下部に取り付ける。その間にセレナがカルネに何者なのか分かりやすく説明する。

 

 

「ポケモンを盗むなんて・・・とんでもない人達ね!」

 

「これはこれは・・・お褒めに預かり光栄です」

 

「芋女優のポケモンは、この大女優のムサシが戴いたわ」

 

「大女優?」

 

 

台詞の時もそうだったが、今日はやけに女優を言うなとカイトが考えている間、カルネはサーナイトに『シャドーボール』で檻を壊すように命じる。だが撃ち出された『シャドーボール』は光に触れた瞬間に吸収されてしまった。

 

 

「フフ、ご苦労様です」

 

「その檻は技の力を吸収してしまうのニャ!」

 

「お返しにこれあげるじゃーん!」

 

 

ミズナが投げたのは先程のメカであった為、カイト達は捕らえられると思って身構える。だが出て来たのは光の檻ではなく黒い煙幕だった。

全員が身動きが取れない隙にロケット団はその場から逃走した。

 

 

「しまった!」

 

「逃げられた!」

 

 

急いで後を追い掛けようとするサトシ達だったが、それをカルネが制して胸にあるキーストーンを握りしめながら自分が案内すると言って走り出した。

そして走っている最中に撮影中に自分におきた出来事を話し、それを聞いたプラターヌ博士は石同士が呼びあったのではないかと推測する。しかしカイトが別の事を言った。

 

 

「俺はきっとカルネさんの心とサーナイトの心が強い絆で結ばれていたからだと思います!」

 

「強い絆・・・」

 

「俺もそう思います!」

 

「私も兄様の言う通りだと思います!」

 

 

カイトの言葉にサトシやシノン、セレナ達も同意する。彼らを見てカルネは柔らかい笑みを浮かべながら頷き、サーナイトが待つ場所に向かってさらに走るスピードを上げた。

 

 

 

 

 

それから暫くしてカイト達はサーナイトがいる場所に辿り着いた。彼らは近くの茂みに隠れながらロケット団の様子を窺う。

 

 

「このサーナイトがメガシンカをねぇ」

 

「コイツを本部に届けたら大出世は間違いなしだぜ!」

 

「当然ですよ。なにしろチャンピオンのポケモンですから」

 

「夢のメガ出世なのニャ~」

 

「笑いが止まらないじゃーん」

 

 

愉快に笑うロケット団を見てサトシが勢いよく飛び出そうとするが、カルネが穏やかに制止する。

 

 

「サトシ君達は此処にいて」

 

「えっ?でも・・・」

 

「大丈夫」

 

「待って下さいカルネさん。今回は俺にもやらせて下さい。せっかくバトルができると思っていたところを潰されたのですから」

 

「分かったわ」

 

 

話を終えた後、カルネとカイトは堂々と茂みから姿を現して、ロケット団の前に立った。

 

 

「貴方達!大人しくサーナイトを返しなさい」

 

「ニャ!?」

 

「チャンピオンにダークボーイ!?」

 

「どうやって此処に!?」

 

「あり得ません。何度も追跡されていない事を確認したのに!」

 

「フン!何度来たって無駄よ!」

 

「悪いがそうはいかないぜ。バトルを台無しにされた恨み・・・今晴らしてやる!ヘルガー、出陣!!」

 

「ヘール!!」

 

 

カイトが出したポケモンはダークポケモンのヘルガーだった。万が一カルネとのバトルをする事に備えてポケモンセンターでハブネークと交換したのがコイツなのだ。さらにこのヘルガーは、グラエナの数少ない弟子の1体でもあるのだ。

 

 

「グルルル・・・ルガー!!」

 

 

ヘルガーはロケット団を睨みつけながら大きく咆哮を上げる。それを聞いてロケット団は内心恐怖する。対してカルネはヘルガーを見て微笑む。

 

 

「いつ見てもカイト君のポケモン達は良く育てられて、鍛え上げられているわね」

 

「ありがとうございます。なにしろアイツはグラエナの弟子でもありますから。なぁグラエナ」

 

「ガウッ!」

 

「成程ね。私達も負けていられないわね。サーナイト!私達の絆の力、見せてあげましょう!」

 

「サーナ!」

 

 

カルネが胸のペンダントに触れると強い光が溢れ出す。そしてサーナイトのペンダントも強い光が出て、2つの光は2人の間で結ばれていく。

 

 

「サーナイト!メガシンカ!!」

 

「サー!!!」

 

 

カルネの言葉と共にサーナイトの姿がメガシンカした姿に変わった。

初めて見るメガシンカに隣にいたカイトは勿論、シノン達も絶賛する。逆にロケット団は先程のヘルガーの咆哮も加えて、サーナイトのメガシンカした姿を見て弱気になる。それでも技のエネルギーを吸収する檻があるから大丈夫だと言うが、カルネがメガサーナイトに指示した数発の『シャドーボール』で木端微塵に破壊されてしまった。

驚愕するロケット団を他所にメガサーナイトはカルネの前に静かに降り立つ。それに合わせてヘルガーも横に並ぶ。

 

 

「カルネさん、一気に決めましょう」

 

「ええ!チェックメイトよ。サーナイト、ムーンフォース!」

 

「ヘルガー、オーバーヒート!」

 

 

2体のポケモンが技を放とうとするのを見てロケット団は慌てて気球に乗り込み、その場から逃げようとする。

 

 

「此処は一先ず退散するニャ!」

 

「急いでよ!」

 

「でしたらエアームド!ラスターカノンで妨害するのです!!」

 

「イトマルは毒針を放つじゃーん!!」

 

 

逃げる時間を稼ごうとロバルとミズナはエアームドとイトマルに攻撃を指示する。2体も助かる為に全力で技を放つが、それを遥かに上回るメガサーナイトとヘルガーの技によって技は撃ち消されて、そのまま気球に命中する。

 

 

「「「「「やな感じーー!!」」」」」

 

 

技を決められたロケット団はいつもよりも勢いよく空の彼方へ吹っ飛ばされて行った。

それが終わった直後、カルネを迎えに来たマネージャーのミナミがヘリコプターに乗って現れた。時刻はもう夕暮れ時、カルネのプライベートタイムは終わって、次の撮影場に行かなければならないと言う事だ。

彼女はサトシにバトルが中途半端に終わってしまった事を詫びるが、サトシはカロスリーグに優勝してバトルの続きをすると宣言する。それを聞いてカルネは「期待しているわ」と楽しそうに言う。それが終わると今度はカイトとシノンの元へ行く。

 

 

「カイト君、シノンちゃん。久しぶりに話ができて本当に楽しかったわ。けどバトルができなくてごめんなさいね」

 

「いいえカルネさん、気にしないで下さい。さっきサトシが言ったように俺もカロスリーグに優勝して、今度こそバトルしますので!」

 

「その時は私も観に行きます。その時にまたお話させて欲しいです!」

 

「ええ!勿論よ。それじゃあ皆、また会いましょう」

 

 

そしてカルネはカイト達に見送られながら夕陽の向こうに飛び去って行った。

見送りが済んだ後、カイト達はポケモンセンターで泊まり、再びシャラシティのシャラジムを目指して旅は続けるのであった。

 

 

 

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