ポケットモンスターXY 神に魅入られた悪使い 作:ヤマタノオロチ
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遂にメガシンカをする事ができたコルニとルカリオだったが、極限まで高まった波導の力を制御できずルカリオは暴走してしまう。それをコントロールできるようにする為、コンコンブルから新たな修行を命じられる。カイト達もその修行に参加する事にして、一行はムスト山目指した。
その途中山へ続く洞窟にてロケット団とのトラブルがあって離れ離れになったり、メカでパワーアップした彼らの襲撃を受けたりしたが、メガルカリオによって何とか撃退する事ができた。だがその場合でもメガルカリオがコルニの指示を聞いたのは一瞬の事であった。それから数日経ってカイト達はムスト山に辿り着き、メガシンカポケモンをパートナーにしているというトレーナーの屋敷に到着した。
「こんにちは!シャラシティのコルニです。おじいちゃんに言われてやって来ました!」
「バウバーウ!」
礼儀正しくしながら待っていると、扉が開いて中から後頭部に大きな鰐のような牙を持った大顎が特徴のあざむきポケモンのクチートが出て来た。
「チート?」
「おや?クチートではないか」
「ガウガウ」
「あぁ、久しぶりに見たぜ!」
「ピカピカ!」
「これがクチート・・・結構可愛いわね」
『クチート。あざむきポケモン。角が変形してできた大きな顎が頭についている。鉄骨を噛み切ってしまう』
セレナが図鑑でクチートについて調べた後、コルニがトレーナーは何処にいるのか訊ねる。すると後ろから何者かの声が聞こえて全員が振り向くと、そこには沢山の花を載せたバイクに似た乗り物に乗っている老婆がいた。彼女が杖をついてカイト達の前に出るとクチートが笑顔で迎えた。
「チート!」
「お留守番ご苦労様」
「チ~♪」
「これはこれは、皆さんこんにちは。私の名はメープルです」
「はじめまして、カイトと言います。こっちは相棒のグラエナです」
「グガウッ!」
「俺はサトシです。こっちは相棒のピカチュウです」
「ピカチュウ!」
「私はセレナです」
「私はユリーカ。こっちはデデンネで、こっちはお兄ちゃん」
「ネネネ!」
「シトロンです。宜しくお願いします」
「シノンと申します。こっちはパートナーのキュウコンです」
「コーン!」
「私はコルニです」
「バウ!」
「お話は伺っていますわ。まずは貴方達2人の実力、見させてもらいましょうか?」
「はい!」
「バウ!」
自己紹介を済ませた後、メープルはコルニとルカリオの実力を見る為に全員をバトルをするのに丁度いい野原へ案内する。そして互いに準備を整えた後、バトルが開始された
「それでは始めましょう」
「行くよルカリオ!メガシンカ!!」
「アオオオオォォォォォォォォン!!」
「・・・立派な波導です事。クチート、メガシンカ!!」
「チィィィトオオォォォォ!!」
コルニがルカリオをメガシンカさせたのを見て、メープルも持っていた杖に加工してあったメガストーンに触れてクチートをメガシンカさせて対峙する。
一方カイト達は、初めて見るメガクチートの姿に目を輝かしていた。
「見て見て、クチートも・・・!」
「デネデネ!」
「へぇ~、アレがクチートのメガシンカした姿か」
「ガウ~」
「こっちも強い力を感じるな。どんなバトルをするのか楽しみだぜ!」
「ピカピカ!」
それぞれ感想を言っている間、コルニはメガルカリオに『グロウパンチ』を命じる。しかしメガクチートは素早い動きで攻撃を躱す。それに苛立ったメガルカリオは、また勝手に『ボーンラッシュ』を出してしまう。
「ボーンラッシュ?成程・・・」
「よし!ガンガン行くよ!!」
「クチート、躱すのです」
再び攻撃するメガルカリオだが、メガクチートは先程と同じように素早い動きで躱していく。その様子を見て、カイト達はいつもの癖が出てしまったと表情を硬くする。
「また指示無しに攻撃してしまったか・・・」
「なかなかあの癖は直りませんね」
「そうね・・・長年一緒に過ごしてきた分、コルニはアレで良いと思っているからね」
「けどあのままじゃいつまで経ってもメガシンカをコントロールする事なんてできない。コルニ!」
「えっ?・・・あ、そうだった。これじゃ駄目だったんだ」
サトシの声を聞いて、コルニはコンコンブルに言われた事を思い出す。そしていつものバトル方法を変えようとメガルカリオに指示を出そうとした時、今まで躱していただけだったメガクチートが反撃に出た。
「クチート!アイアンヘッド!!」
「クチ~ト!!」
メガクチートの『アイアンヘッド』が決まり、メガルカリオは空高くブッ飛ばされる。何とか上手く着地して体勢を立て直したが、また自分自身の波導に振り回され、メガルカリオは暴走を始めてしまった。
「ヴヴヴゥゥゥガアアアアァァァオオォォォッ!!」
「ルカリオ、頑張って!私の指示を聞いて!」
暴走するメガルカリオに必死に声を掛けるコルニだが、メガルカリオは彼女の声を全く聞かず、再び指示無しに攻撃してしまった。しかしメープルは勢いよく突撃してくるメガルカリオを見つめながら冷静にメガクチートに指示を出した。
「クチート!妖精の風です!!」
「チィ~~トォーーー!!」
メガクチートの放った『妖精の風』を真正面から受けて、メガルカリオはまたもや大きくブッ飛ばされて地面に倒れた。同時にメガシンカが解けて、戦闘不能になってしまった。
それを見たカイト達がルカリオに駆け寄る中、メープルはクチートを労いながらメガシンカを解いた。
「ルカリオ、しっかりして・・・」
「ウァゥ・・・」
「大丈夫、すぐにコントロールできるようになるよ。だってその為に来たんだもん。メープルさん、私達頑張ります!宜しくお願いします!!」
「えぇ、しっかり教えてあげますよ。けどまずはルカリオの治療をしませんとね」
「チート」
そう言ってメープルとクチートは、カイト達を連れて屋敷に戻り、ルカリオの治療を行う。そしてそれが済んだ後、メープルは沢山の花が置いてある部屋へと案内した。
「わぁ~!綺麗なお花だ~!」
「そうね。これは全部メープルさんが摘んできたものですか?」
「えぇ、そうです。どれもとても綺麗だし、コルニさんとルカリオにも活けてもらいたいと思いましてね」
「えっ?あの・・・私達修行とか特訓とか、そういうのをやりたいんですけど?」
「バウ!」
「まあいいじゃないですか。良かったら皆さんも活けてみませんか?」
「本当に?」
「いいんですか!?」
「構いませんよ。パートナーとご一緒にやって御覧なさい」
「分かりました。ありがとうございます!やりましょうキュウコン」
「コーン」
修行とは言えない内容にコルニとルカリオは困惑するが、メープルに言われた通りに花を活け始める。カイト達も同様にパートナーと一緒に花を活けて、それぞれ個性的で違った作品が出来上がった。
この時シトロンが自信満々にメカを出して、それで花を活けようとしていつものように爆発を起こしてしまったのは余談だ。
「よく出来ましたね。皆さんの個性、しっかりと作品に表れていますわ」
「クチ~」
そう言ってメープルはカイト達が活けた花の作品の良さと感想を言う。そして最後にコルニとルカリオの作品の元へ行ってじっくり観察する。
「この作品はコルニさんとルカリオ、それぞれが活けたのかしら?」
「そうだよ、素敵でしょ?」
「バウ!」
「えぇ、あなた方が似た者同士で深く理解し合っているとこの作品からも窺えますわ」
「でしょ?私達、小っちゃい頃からずっと一緒で、固い絆で結ばれているの」
「バ~ウ」
「固い絆ね・・・アレではあまりそうは見えないな」
「ちょ、兄様・・・!」
コルニとルカリオは笑顔で頷き合う中、カイトは少し複雑な表情をしながら小さく呟く。それを隣にいた事で聞こえたシノンが苦笑しつつカイトを睨む。しかしそれは仕方がない事だ。なにしろどちらも別々の花を活けていたからだ。なのでその事を言うとするが・・・。
「・・・・・(フルフル)」
「ヌッ・・・?」
咄嗟に目が合ったメープルが静かに首を横に振るう。フム、どうやらこれが修行みたいだったようだ。なら今は何も言わないでおくとしよう。
「成程、では明日も良い作品ができるように頑張って下さい」
「明日も生け花ですか!?」
「嘘!?修行は?特訓は?」
「バウウ!?」
「焦りは禁物ですよ。兎に角明日も頑張って下さいね」
そう言ってメープルは部屋を後にした。一体どう言うつもりなのか?答えが分からず誰もが呆然とする中、カイトが「兎に角言われた通りにしよう」と言った事で全員その日は屋敷でゆっくり過ごす事にした。
それから夜が明け、再び生け花をする為に部屋に集まるとメープルから生け花をする為に必要な花を自分達の手で摘みに行って欲しいと言われる。カイト達はそれに従い、籠を持ってそれぞれお目当ての花を探しに行く。
「では、行って来ま~す!」
「気を付けるんですよ」
「綺麗なお花を探すぞ~!」
「デネ~!」
「俺達も行くぞ!」
「ピカチュ~ウ!」
「私達も早く行きましょう兄様」
「コン!」
「あぁ!」
「ガウ!」
「待って!」
「コルニさん、ちょっといいですか?」
「ん?」
「バウ?」
「山の景色をじっくり見るといいわ。パートナーのルカリオと一緒にね」
「景色?」
「そうすれば、きっと良い事がありますよ。きっとね・・・」
メープルの助言に首を傾げながらコルニとルカリオは花摘みに行く。そして言われた通りルカリオと一緒に景色を見て花を摘み、摘んできた花を活ける。そんな毎日を繰り返し行う為、誰もが飽きてしまうだろうと思うが、ムスト山はかなり広くて見る景色やいろんな種類の花が沢山ある。それによりカイト達は毎日楽しく様々な作品を完成させた。
「皆さん今日もよく頑張りました。明日もこの調子で素敵なお花を活けて下さいね」
「えっ?明日もですか?」
「ピーカ?」
「そう、明日も明後日も」
「「「「「「えぇ!?」」」」」」
まさかこの花を活ける事が修行とは思っていないサトシ達は驚きの声を上げる。唯一その事に気が付いているカイトはそれを見て苦笑する。
そこへとうとう我慢できなくなったコルニがメープルに訴えた。
「そんな!お花はもう結構です!!」
「バウ!」
「そう言わずにもっと見せて下さい。コルニさんとルカリオが心を通わせて作ったお花を・・・ね?」
「っ・・・」
必死の訴えも聞いてもらえず、コルニとルカリオはガッカリした表情になる。う~ん、このままだと今後の修行に悪影響を及ぼすかもしれない。ちょっとだけアドバイスしようかなとカイトが近づこうとした時、先にサトシが2人に近寄った。
「そんな顔すんなよコルニ。ルカリオ。今はこうでも、いつか必ずメープルさんは修行してくれる筈さ。それに花を活けるなんて滅多にない体験なんだから楽しまないと!」
「サトシ・・・」
「それに俺もコルニやセレナ、皆の作った作品をもっと見てみたいしさ」
「ピカ!」
「・・・うん!そうだね。よーしルカリオ、明日はもっと遠くの方へ行ってみよう!」
「バウ!」
サトシの言葉を聞いてコルニとルカリオは再びやる気に満ちた表情になる。さらに彼女だけでなく、セレナも顔を少し赤くしながらやる気満々になった。本当にコイツは女を落とす事に関して天才だな。
それからコルニとルカリオは毎日いろんな花をそれぞれ取りに行って活け花を完成させ、それをメープルに見せた。そしてある日の事・・・。
「どうですか?」
「バウ?」
2人が持って来た花は鈴蘭に似た花で、ピンク色の花瓶に挿してあってとても綺麗な作品であった。また彼女自身気に入ったのか、余った鈴蘭を腕飾りにしていた。
「うん、今までで1番良いですよ」
「本当ですか!?」
「バウバウ!」
それを見たメープルはにっこり微笑みながら褒めて、2人は手を取り合って喜んだ。
その後カイト達はツリーハウスの寝室に戻り、各々ベットや椅子に座ってのんびりする。そんな中、コルニとルカリオは外の景色を見たいと言って外に出ていった。それと同時にセレナがぐったりしながら呟いた。
「ちょっと飽きちゃったかな~。毎日毎日お花とにらめっこだもん。いくら綺麗でもこれじゃあねぇ・・・」
「そうかな?私はとっても楽しいよ!」
「ネーネ」
「そうよセレナ。前にサトシが言ったように滅多にない体験なのよ?ユリーカの言う通り楽しまないとね」
「うぅ・・・そうだけど~」
「それにしても・・・こんな事を続けるなんて、メープルさんはどういうつもりなのかな?」
「ピーカ?」
「う~ん、何か考えがあるんだと思いますが・・・カイトはどう思いますか?」
シトロンは窓から外の景色を眺めていたカイトに訊ねる。話を振られたカイトが室内に視線を戻すと、全員が期待を寄せた視線を向けていた。それを見てカイトは少し苦笑しつつコルニ達がいない事を確認してから話し出した。
「俺の考えでは、これがメープルさんがコルニ達の為に与えた修行だと思う」
「ガウ」
「修行?生け花が?」
「どう言う事なのカイトさん?」
「ネネ?」
「うん、これまでコルニ達が活けた作品だけど、互いに別々の花を活けていただろ?その為俺はコルニが固い絆で結ばれていると言った時、そうは思えないと感じてしまった。しかし今日の作品は1つの花で活けていた。それを見て俺は2人の気持ちが1つになったなと感じたよ」
「成程、確かに兄様の言う通りかもしれませんね。2人の心を1つにさせる為にメープルさんが生け花をさせたんだと思うわ」
「コーン」
カイトの説明を聞いて誰もがこの生け花の意味を理解した時、突然ドアからノック音が響いた。1番近くにいたシノンがドアを開けると、そこには紅茶が入った人数分のカップを乗せたトレーを持って立っていたクチートがいた。
「わぁ、良い香り!」
「ありがとうなクチート」
「チ~ト」
クチートにお礼を言いながらトレーを受け取ろうとした時、突然窓のガラスが派手に割れて、外から大きな手のような物がグラエナ、キュウコン、ピカチュウ、クチートの4体を連れ去った。
「ピカチュウ!?」
「グラエナ!?」
「キュウコン!?」
「クチート!?」
連れ去らわれたグラエナ達を追って外に出ると、騒ぎを聞きつけたコルニ達がやって来た。そして彼女達に事情を説明していると空から聞き覚えのある高笑い声がした。顔を上げるとそこにはニャース型の気球に乗ったロケット団がいた。さらに下部分には檻に閉じ込められたグラエナ達もいた。
「貴方達は!?」
「貴方達は!?と言われたら!」
「黙っているのが常だけどさ!」
「「それでも答えて上げるが世の情け!」」
「「世界の破壊と混乱を防ぐため!」」
「「世界の平和と秩序を守るため!」」
「愛と真実の悪と!」
「力と純情の悪を貫く!」
「クールでエクセレントであり!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「ミズナ!」
「ロバル!」
「「宇宙と銀河を駆けるロケット団の4人には!」」
「「ホワイトホールとブラックホール、2つの明日が待っているぜ!」」
「にゃーんてニャ!」
「ソォーナンス!」
「イートマ!」
「エアーー!」
毎度お馴染みのお決まりの長い台詞を言うロケット団。その間にシトロンがメープルにロケット団が何者なのか分かりやすく説明する。その間ロケット団は捕獲用ロケットランチャーを取り出してルカリオを捕まえようとする。しかしルカリオはコルニの素早い指示に従って躱す。それならばとロケット団はそれぞれ手持ちポケモン4体を出した。
「行け!バケッチャ!」
「お前も行け!マーイーカ!」
「行くじゃん!シシコ!」
「行きなさい!カメテテ!」
飛び出した4体に加えて、ミズナとロバルはイトマルとエアームドもバトルに参加させる。それによりイトマルはバケッチャの体に飛びつき、カメテテはエアームドの足に掴まり、シシコはマーイーカの触手に抱き抱えられるようにして構える。
それを見たカイト達も空を飛べるポケモンで対抗しようとモンスターボールに手を伸ばそうとした時、ルカリオが手で制しながら前に出た。
「ガガウ!」
そして戦闘態勢を取りつつコルニに振り返って一声かける。それを見てコルニは頷いて拳を握りしめながら決心する。
「そうだよね!私達が皆を助けなきゃ!行くよルカリオ!メガシンカ!!」
「アオオオオォォォォォォォォン!!」
コルニのキーストーンとルカリオのメガストーンが結び付き、オレンジ色の光がルカリオを纏ってメガシンカさせる。それにより波導の嵐が巻き起こって、ロケット団の動きが一瞬止まる。
「ルカリオ!グロウパンチ!!」
「させるか!マーイーカ、サイケ光線!」
「シシコ、火炎放射じゃーん!」
ロケット団の隙をつこうとコルニは素早く指示を出し、ルカリオはバケッチャに『グロウパンチ』を食らわせようとする。しかしマーイーカの『サイケ光線』とシシコの『火炎放射』に阻まれた上に攻撃を受けてしまう。どちらも効果抜群だった為、メガルカリオは膝を付いてしまう。それを見たロケット団は追い打ちを掛けように『シャドーボール』、『糸を吐く』、『ラスターカノン』、『水鉄砲』を放つ。
「バウ・・・!」
次々と放たれる攻撃によってメガルカリオは次第に追い詰められていき、木からジャンプした際に着地に失敗して地面に叩きつけられてしまう。
そこへバケッチャ、マーイーカ、エアームドが三方から取り囲む。コルニは急いでそこから脱出させようと指示を出そうとした時、ゆらりと立ち上がったメガルカリオの雰囲気が変わった事に気がついた。
「ヴヴゥ・・・・・ガアアアアァァァッ!!」
またもやメガルカリオは波導に振り回され始め、目に殺意と敵意を込めて鋭い犬歯を剥き出した暴走状態になる。それを見てコルニは不安な表情になり、カイト達も彼女達を助けるべく今度こそモンスターボールを投げようとする。だがそれをメープルが止めてゆっくりとコルニに近づき、そっと彼女の左手を握る。
「貴方ならできる!」
「・・・・・はい!」
メープルから激励を受けたコルニは、真っ直ぐメガルカリオを見つめる。そして先程メープルが言った言葉を内心呟く。
「(心は1つ、景色は2つ。状況をよく見て、ルカリオを助けてあげるの!)」
その間メガルカリオはロケット団のポケモン6体の猛攻に劣勢を強いられていた。
バケッチャとイトマルが『シャドーボール』と『糸を吐く』で攻撃し、それを躱して反撃しようとしたところへエアームドとカメテテが左側から『鋼の翼』と『シェルブレード』で攻撃する。さらにマーイーカとシシコが右側から『体当たり』と『頭突き』で追撃した。
次々と攻撃を受けて地面に倒れるメガルカリオだが、ゆらゆらと立ち上がって本能のままに飛び出そうとした時、コルニが両手を大きく広げて目の前に立ち塞がった。
「ヴヴヴ・・・ガアアアアアアァァァァッ!!」
突然現れたコルニを見てメガルカリオは一瞬動きを止めるが、すぐにまた犬歯を剥き出して何の躊躇いもなく彼女に襲い掛かる。
しかしコルニは恐れず、腕を交差させて噛みついてきたメガルカリオの牙を受け止めながら必死に呼び掛けた。
「ルカリオ・・・ルカリオ、聞いて!心は1つ、景色は2つ。2つの景色を束ねて、戦う力に変える!」
コルニの脳裏にこれまでルカリオと一緒に歩んできた大切な記憶が映し出される。さらに腕飾りにしていた鈴蘭の花も揺れて、偶然にもそれが視界に入ったメガルカリオは、あの時の喜びが甦ると同時にコルニの声が次第にはっきりと聞こえ出す。
「ルカリオ!ルカリオ!!私達の心は1つ!波導に身を委ねて!!」
コルニがそう言った瞬間、メガルカリオの獰猛な瞳の中が正気になってゆっくりと腕から牙を離す。それと同時に鈴蘭の腕飾りが千切れて、白い花がぱあぁ、と宙を舞った。
「何さっきからゴチャゴチャ言ってんのよ!バケッチャ!悪の波動!!」
「チャチャー!」
先程から攻撃を仕掛けて来ず、変な事をやり出した2人に痺れを切らしたムサシがバケッチャに再度攻撃指示を出した。
放たれた『悪の波動』がコルニに命中するかと思った時、メガルカリオが『ボーンラッシュ』で防いだ。
「ルカリオ!」
「バウゥ!」
コルニの呼び掛けにメガルカリオは答える。その瞳は正常で、暴走していた名残は無い。どうやら波導を制御する事ができたようだ。静かに2人の様子を見守っていたカイト達は喜びの声を上げ、メープルは満足気に頷いた。
そしてコルニとメガルカリオは背中合わせで並び立ち、強い意志を込めた目でロケット団を睨む。
「ルカリオ、行くよ!皆を助け出すんだ!!」
「バウ!」
「小癪な!サイケ光線3度目!!」
「火炎放射で焼き尽くすじゃーん!」
「迎え撃つわよ!」
技を放とうとするマーイーカとシシコを空中で迎え撃とうとするメガルカリオの死角を狙って、バケッチャ、イトマル、エアームド、カメテテの4体がそれぞれ『シャドーボール』、『糸を吐く』、『ラスターカノン』、『水鉄砲』を構える。
しかしコルニは彼らの動きを冷静に見極めており、メガルカリオのもう1つの目となりながら指示を出した。
「ルカリオ、左右から来る!ボーンラッシュで打って上に避けて!」
「バウ!」
指示を聞いたメガルカリオは空中で器用に体を捻らせて技を全て避け、さらに『シャドーボール』を『ボーンラッシュ』で打ち、その反動で上に飛び上がる。それによりマーイーカとシシコの放った『サイケ光線』と『火炎放射』が誤ってバケッチャとイトマルにそれぞれ命中してしまった。
「ボーンラッシュ!!」
同士討ちをした事で動揺するロケット団の隙をついて、コルニはまた素早く指示を出す。そしてメガルカリオは、ダメージで動きが止まっているバケッチャとイトマルに『ボーンラッシュ』を連続で攻撃した。
それは一撃一撃が重く、2体はまったく反撃する事ができなかった。そして強烈な一撃を食らって大きくブッ飛ばされてしまい、そのまま気球の檻に激突した。それによって檻は壊れ、捕まっていたグラエナ達は外に投げ出された。
「グラエナ!」
「キュウコン!」
「ピカチュウ!」
「クチート!」
「ガウ!」
「コーン!」
「ピカピ!」
「クチー!」
落ちてくる4体に向かってカイト達は駆け出し、両手を前に出してしっかりと受け止めた。大切な相棒を取り戻せて全員が安堵の溜息を洩らしながら笑みを浮かべる。そして全員がコルニ達に向き直ってお礼を言う。
「コルニ、ルカリオ、2人ともありがとうな!」
「おかげでグラエナ達を取り戻す事ができた。本当にありがとう」
「えぇ、貴方達には感謝しきれないわ」
「いいのよ、当然の事をしたまでだから。それよりも!」
コルニが睨み付ける先には折角捕まえた獲物が逃がされた事と、手持ちポケモンを傷つけられて憤慨しているロケット団がいた。
「よくもやったニャ!容赦はしないニャ!!」
「その言葉、そのままお返しします。クチート、メガシンカ!!」
今にも攻撃してきそうなロケット団に怯まず、メープルは杖を持ちあげてメガストーンに触れてクチートをメガシンカさせる。
メガクチートはそのままメガルカリオの横に移動して並び立つ。
「これで終わらせるじゃーん!火炎放射!!」
「サイケ光線だ!!」
「妖精の風!!」
2体が放った『火炎放射』と『サイケ光線』をメガクチートは『妖精の風』で押し返し、マーイーカとシシコはブッ飛ばされて気球に激突する。
それならばと、ロケット団はエアームドとカメテテで倒そうとするが、それよりも先にグラエナ達の『悪の波動』、『10万ボルト』、『火炎放射』を食らって同じようにブッ飛ばされてしまった。
そこへメガルカリオが両手を構えてある技を放とうとする。それはコルニにとって初めて見る技であった。
「ルカリオ、それって・・・覚えたのね!」
「ワウ!」
「よし!お見舞いしてやろう!波導弾!!」
「ウウゥ・・・バウゥ!!」
メガルカリオが新たに覚えて放った技は『波導弾』であった。その強力な技はロケット団の手持ちポケモン達全員を巻き込みながら気球を大爆発させた。
「「やな~~!!」」
「カンジ~~!!」
「ソ~ナンス!」
「「ああああぁぁぁ~~!!」」
お決まりの台詞を言いながらロケット団は空の彼方へ飛んで消えていった。
「やったねルカリオ!」
「バウ!」
ロケット団を撃退できた事にコルニとメガルカリオは大きな満月の下でハイタッチを交わし、そのまま手を組んで見つめ合う。
ようやく得た本当の絆を2人は暫くの間喜び合い、それをカイト達は静かに見つめたのであった。そして一夜が明けて、出発準備を整えたカイト達をメープルとクチートが見送りに来た。
「ありがとうございました!メープルさんに会えて本当に本当に良かったです!」
「波導を制御できたからと言って安心してはいけませんよ。更なる高みを目指して、これからも頑張って下さい」
「はい!頑張ります!」
優しい表情でコルニのお礼を受け取ったメープルは、そのまま優しい言葉で彼女達に激励を送る。それを聞いてコルニはさらに輝かしい笑顔で頷き、力強く答えた。
そこへサトシがタイミングを見計らって話し掛けた。
「コルニ、此処でお別れだ」
「えっ?」
「突然で悪いが、そうさせてもらう」
サトシから突然の言葉を聞いた上にカイトもそれに同意する様子にコルニは驚いた。それは後ろにいたシノン達も同様で、シノンが代表して2人に理由を訊ねた。
「どうしてですか兄様?このままシャラジムに行ってコルニ達に挑戦した方が良いのでは・・・」
「いや、今回の件でコルニとルカリオは波導を制御できるようになった。なら俺達もそれを越えられるように鍛えなければならない。そうでなければ最高なバトルを楽しめないからな。なぁサトシ?グラエナ?」
「ガーウ!」
「あぁ、鍛えて強くなってバトルに勝ち、絶対ジムバッジをゲットしてみせる!そうだろうピカチュウ!」
「ピーカ!」
「うん!サトシとカイト達とのバトル、楽しみにしてるよ!」
「バウ!」
2人の理由を聞いたコルニとルカリオは、勝気な笑みを浮かべて頷く。そして彼女はシューズのスイッチを入れてローラーを出して走り出した。
「皆ー!またねー!!」
「バアーウ!!」
「さよならコルニー!ルカリオー!」
「気を付けてねー!」
「また会いましょうー!」
「御爺さんにも宜しくお伝えくださいー!」
「それじゃ、出発するか!」
「あぁ、皆行こうぜ!」
こうしてコルニ達と別れたカイト達は、更なる強さを求める為に修行の旅へと歩き出すのであった。