俺はトレジャーハンターのグランツ、"ボク"じゃない。緑の鎧がチャームポイント。黒いバケツ頭の相棒ゲラと一緒に一攫千金を夢見て悪魔の"ハスタ洞窟"に挑んだ。その洞窟は1000を越える冒険者が挑み、生きて帰ったのはたった一握り、しかしその全てが巨万の富を手にしていた。もうすぐその仲間入りのはずだ。
俺達は怪物犇めく暗い旧坑道を抜け、魑魅魍魎が潜む広大な地下ジャングルを彷徨い、凍えるような氷の迷宮を走破し、黄金に輝く死者の回廊を駆け、炎噴き出す悪魔の巣を突き進み、異形蠢く機械の要塞を登り、ここにいる。
俺達の前には彫刻が彫られた石の扉がある。
ここを越えれば、財宝が有るのだろうか、それとも怪異が待ち受けているのだろうか。
「開けるぞ、ゲラいいか?」
「ええ...なにが有っても私達なら大丈夫よ」
扉を押す、そこにはいくつもの金貨の山とそれに埋もれる大量の人骨
金貨の山の一つに何かが座っている。
それはいつの間にか立ち上がってこちらを視ていた。
白に青い差し色が入ったローブを羽織った子供だ。
「子供...?」
「なんで子供が...」
子供は細い脚で金貨の山を駆け降りて、此方に向かってくる。
俺たちは警戒しながら、その様子を見ていた。
「おぅ?あなた達人間?」
「人間があそこから出てくるなんて久しぶり!」
その子供が話し掛けながら俺達が開けた扉を閉じる。
「君は?どうして此処に?」
「お姉ちゃんが住んでるの!」
「あなた達は宝石を広いに来たの?」
「あたしのコインは持ってかないでね!」
俺達が喋る前に言いたい事を言って、金貨の山から赤い宝石のついた金のネックレスと美しく装飾されたマチェットを掘り出して手渡してきた。
「これは?」
「あげる!コインしか要らないの!」
「...いいのかい?」
「持っていっていいよ?コインはダメだよ!」
そう言うと子供の形が溶けて金貨の山に染み込んでいく。
「...! メタモルフォーゼか...」
ゲラが言う。
金貨の山から声が聞こえる、
〈帰るときは声を掛けて!〉
「どうするんだ?グランツ?」
「持っていっていいなら持っていこう。」
「金貨は拾うなよ、メタモルフォーゼは厄介だ、怒らせたくない。」
金塊、王冠、宝石
俺達は袋に入るだけ財宝を詰める。
「帰るには声掛けるといいんだっけか?」
「これだけの宝を持ってあの魔巣を帰れないだろう。」
「呼んだ?帰る?」
「うおぉ!あ、あぁ。」
金貨の山から突然童が生えてくる。
俺の手を引き、ウキウキと金貨の山を幾つも越えていく、
しばらく歩くと彫刻が彫られた緋石の扉がある。
童が扉を押し開く。
翼が生えた女の獣人の像が並ぶ通路を歩いて行く、すると上に続く縦穴が突き当たりにある。外に続いているのだろうか。しかし登れない。
「俺達はこんな穴登れないぜ?」
「大丈夫!みんなー!」
そう言うと口笛をならす。
すると像が動きだし、翼を持った獣人になる。
「上に連れていってあげて!」
四体の獣人が飛んで来て、俺とゲラ、財宝を持つ。
何も持たない一体が穴を登りモノを持った三体がそれに続く。
しばらく穴を登って行くと、一体目が天井に当たり、天井を持ち上げる、光が漏れる。おそらく太陽の光だ...
この穴は森の中に有るようだ。俺達が光に慣れる前に何処かの道に下ろされた。財宝の袋を持って立ちすくみ、ゲラと顔を見合わせる...
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看護婦が入ってくる、昼食の時間のようだ。
”ボク”は漫画『テール・ベリィ食料店』を閉じる。
時間を忘れて読み耽っていたようだ。
今日の昼食はなんだろうか。