利根-1 伊58
寒い...風が冷たい...
少しでも遠くに行かなくては...
はやく...
どす黒い島影が遠目に見えてきた...
助かった...
しかしその島が異常なことに気が付く...
その島には黒い甲殻や顋が積み上げられていた...
いまさら後戻りは出来ない、帰る体力も場所もない...
あの島に何が在ろうとも、彼処で朽ちることになろうとも...
ああ...寒い...
疲れた...視界が狭まっていく...
このまま海底で眠るのも悪くないかもしれない...
重い瞼を降ろす...
つかれた。
艦装を海に破棄し、波に体を浮かべる、願わくばどこかの大地へ、
このまま海底に沈み朽ち果てるとしても、最後は"艦"ではなく"人間"でいたい。
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......!
ここはどこだ...?
助かったのか..?
体を砂から起こし周りを見渡す
周りには黒い骸が乱雑に並べられている
あの島に流れ付いたらしい
体のあちこちが痛む。思う様に動かない
もしここが深海棲艦の巣なら私は助からないであろう
誰かの声が聞こえる
辛うじて首を動かしそっちを視ると二人の娘が話している
「こやつ大丈夫かのぉ?いかにも寒そうじゃ」
「裸で傷だらけクマ、どう見ても大丈夫には見えないクマ。」
「球磨はこの娘に着せる服を用意するんじゃ、ここから近い我輩の工厰に連れていく。」
「分かったクマ。」
白い方の娘が駆けていく
もう一人に抱えられる
助かった...?
気が付くとベッドの上で知らない天井を見つめていた。
「お主、大丈夫か?服も着ないでそこの海岸で寝ておったのだぞ」
「ここはどこ?あなたは...」
「我輩は利根じゃ、ここは我輩の工厰じゃ、お主は何処から来たのじゃ?」
「◆◆鎮守府でち...逃げ出して...」
「む、お主も巷で噂の脱走艦娘とやらなのか?」
「うん...」
「どうか助けてくだちい!もうあそこは嫌!」
「安心せい!お主の件は我輩に任せれておる!悪くはせん!」
「ありがとうございます...ありがとうございます...」
いつの間に涙を流していたらしい。
利根が慌てている。
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「さっき、”お主も”って...」
「ん?そうじゃ、お主以外の脱走艦娘も幾らか見つけて鎮守府で保護しておる。」
「そうとう酷い扱いを受けていたそうじゃな、他から聞いておるぞ。」
「...」
「今は体を休めるのじゃ、これからの事は今決めなくてもよい」
「...はい」
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利根が所属する●●鎮守府に連れてこられた、提督と顔を合わせてこれからの事を決めるらしい。利根に執務室の前に連れてこられる。利根が扉を開くと中から大きな話し声が聴こえる。口論のようだ
「うるせぇ!いいからやるんだよ!オラァ!」
「こんな怪しい薬のテストベッドなんて無理ですよっ!」
「潜水艦の娘なら他にいくらでも居るでしょ!」
「ちゃんと安全な段階だから!死にはしないから!」
「全く安心できません!」
「変な副作用とか出たらどうするんですか!」
「軍人ダルルォ!こんくらいやって見ろよオラァ!」
利根が声を掛ける。
「のお、客が来とるのだが...」
「うお!ノックしろよぉ!」
「すまん、忘れておった。」
「あんな大声で何の話をしとったのじゃお主らは...」
「磯風の開発した薬のテストをコイツに頼もうとしててな」
「そやつは我輩の部署の潜水艦なんじゃがのぉ」
「言ってやって下さいよ!利根さん!」
「頼むぜ利根いいだろ!あのトカゲ飼わしてやったじゃんか!」
「むむ!すまんなユキ子頑張るんじゃぞ。」
「えぇ...」
話が付いたのか利根に手招きされ部屋に入る。
そこには顔に紅い絵の具を蒔いたような跡を顔に付けた男がいる
「潜水艦の伊58です。」
「話は聞いたよ、君についても調べた。」
「俺は君をどうこうしようとは思ってない」
「君次第だ、どうしたいか言ってくれ。」
「また一度◆◆に戻るか」
「嫌です...」
「他の鎮守府に行くか?」
「戦いを辞めるか?」
「宛のない旅だってできる。」
「ほかにも出来ることもあると思う。この●●はある程度の援助もする。」
「...」
自分だけがいいのだろうか、あの時一緒に逃げた娘達は...
「まだ、決まらないか?」
「あの...」
「ゴーヤをここに置いて下ちい!」
「なんでもします!お願いします!」
「ここか...予想外だ...」
「はい!お願いします!」
「わかったよ、利根頼めるか」
「もちろんじゃ!丁度潜水艦が磯風に一人盗られたからの!」
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「まさか此処に来たいとは、変わっとるのぉ」
「あの島をみると皆怖がるんじゃが。戦いから身も退けたじゃろう。」
「ゴーヤは、沈んだみんなの分まで海で戦いたいでち!」
「皆の分か...」
「あの島を見て、きっと強くなれると思ったんでち!」
「強く...」
「うむ!気に入った!飛びっきり強い装備を作ろうぞ!」
「でも、決して命を無駄にするんじゃないぞ!」
「死んでは皆の分まで戦えんからの!」
「...はい!でち!」