図書館に入ると一人の緑っぽい艦娘が本を読んでおり、
もう一人の艦娘は机に突っ伏して寝ていた
両方ともこの鎮守府の艦娘だろうか
書類を図書館にいつ艦娘に渡せと言われたがこのどちらかだろうか
司書が居るようなカウンターもあるが誰も居ない
「ねぇ、この紙は誰に渡したらいいの?」
緑の艦娘に尋ねた
「あー、私この鎮守府の艦娘じゃないんです」
「そうなんだ...困ったなぁ」
「あ、あの!貴女って...」
「ん?どしたの?」
「あ、えっと、川内さんですよね!あの有名な!」
「うん、まぁ多分その川内だよ」
「こんな場所で有名人に逢えるなんて!」
「●●には良く来るんですか!?」
「初めてかな、」
「川内さんも本を読みに来たんですよね!」
「まあね」
彼女は夕張という名前で本を読むために度々●●を訪れているらしい
彼女は"人型兵器の研究データII""白兵戦武装I"と書かれた紙の束を机の上に重ねていた
本というよりは研究資料といった感じだ
どうやらこの鎮守府では研究データなどを閲覧出来るらしい、随分無用心だ
「それでこの紙はどうしたらいいの?」
「係のヒメさんが何時もいるんですけど、なんだか忙しいみたいです」
「代わりの人とか居ないの?」
「その人も忙しそうで、それであの子が来たんだけど...」
机に突っ伏して寝ている艦娘を指差す
「寝ちゃったのね」
「はい...」
「ねぇねぇ...」
寝ている艦娘を揺する
「すぅ...んぅ...」
軽く背中を叩く
「おーい、起きてー」
「すぅ...」
「参ったな~」
頬を積まみ、軽く引っ張る
「ほ~、柔らかいね~」
「んっ...だぁれ?」
「お、起きた?私はねぇ川内だよ」
「ユウはね...ユウなの...ふぅ...」
「あ、ちょっと」
「寝ないでよ...おーい」
ユウが再び眠りにつく
「夕張はどうしたの?」
「私が来た時はヒメさんがいました」
ため息つき頭を掻く
「どうしもんかなぁ...」
また起こそうと揺らしたり、頬を摘まんだりするが
小さな声を上げるだけで一向に起きる気配が無い
「あ、あの川内さん!」
「なに?」
「川内さんはどんな本を探しに来たんですか?」
私が●●の図書館に来たのはあの島
屍と鉄屑に覆われた島と未知の絵文字について知るためだった
あの島について知る為、本や資料を漁っていた時に△△鎮守府の最上
昔●●に所属していた彼女からこの鎮守府について教えて貰ったからだ
「うーん、なんて言うんだろうね」
「民族学?言語学?とかの本を探してて...あ、生物学かも...」
「へ~、色々読むんですね」
「あー、そうじゃなくてさ、どんな本読んだらいいのか判らなくて...」
「私、普段真面目に本なんて読まないから...」
________
暫く言語学の本を幾つかとり、目次を見てページをペラペラ捲り
私があの時みた気味の悪い絵文字や似たものを探していた
何冊手に取っても似たものすら見つからない
そこに白衣を着て眼鏡を掛けた艦娘が入って来た
だらしなく乱れた白衣と寝巻きのような運動着のせいで艦種は特定出来ない
「すみませんッス夕張さん、空けちゃて...」
「あ、図書館のお客さんでスよね?」
「そうだけど係のヒメさんって貴女?」
「そうッス、えっと書類は貰ったスか?」
「貰ったよー、提督からじゃないけど...」
書類を渡す
「ん、木曾さんなら大丈夫ッス」
「あ、本の貸出は私が居る時しかしてないッス」
「あと、一部の本と資料は貸出してないッス」
「それと本棚に入ってない本が見たい時はこのファイルから選んで欲しいッス」
「それと―
ヒメから図書館の規則やら何やらを聞かされる
「ふぅ~、これで以上ッス、よし!」
ヒメが何かをやり切った顔をする
「あと他に何かあったら私に言って欲しいッス」
「それじゃあ早速いいかな?」
「なんスか?」
「古代文字っていうか昔の字に関する本とか見たいんだけど...」
「さっきまで読んでたじゃないスか」
「調べたいのが載ってなくてね...」
「それに載ってなかったんスか...なに語を調べたいのか知りませんスけど」
「あんまり深追いしないほうがいいかもしれないッスよ、長年の勘って奴ッス」
すこしドキッとした、もしかして私のような者が他に居たのだろうか
ヒメはファイルを何冊か手にとって捲り、一枚切り取ったメモ用紙に番号を書いていく
ヒメがそのメモを持って奥に引っ込む
「この番号の奴ならそれに載ってない物も載ってるッスよ」
「こっちは、深追いしない方が良いやつッス」
口調は軽くただの驚かしとも思ったが、その表情に何か引っ掛かった
深追いしない方が良いやつを後にし、先に渡された本を捲る
似た物はあったが私があの時見たものについては書かれていなかった
もしかしたらここでも手掛かりが得られないかもしれない
注意を受けた分厚い紙束に手を伸ばす
目次を見ても全く知らない、聞いたこともない名前の言語が並んでいた
例えこの中に自分が探している物があってもどれだか判らない
紙を一枚ずつ捲り、自分の記憶と照らし合わせていくのにどれだけ時間が掛かるだろう
________
私の手は震えていた
あの時、私が見たものと同じ文字が私の目に映ったからだ
頭の中にあの軟泥の臭いと泥に埋もれた得体の知れない骸が浮かび上がる
気分が悪い、あの腐り果てた大地で感じた恐怖が蘇りそうだった
そこに書かれていたのは
聞いたこともない古代の言語
未知の都市、未知の種族、未知の文明、未知の信仰...
何も知らない人間ならば馬鹿らしいの一言で片付けてしまうような
異常なオカルトめいた内容だった
だが、今の私はそれを否定する事が出来なかった
ここに書かれた事が全て正しいとも思えないが、少からずあの島は夢ではなかった
やはり存在しない原始的な言語を夢に視るほど私は夢想家ではないのだ
読み進めるとあの象形文字の意味やモチーフになったと思われる水棲生物の絵までついていた
私では彼処でみた文を思い出し訳す事も再び遭遇した時に訳せるようになる事も出来ないが
絵のなかに等の昔に絶滅した生物がいくつも書かれていた事は私でも判った
「大丈夫ッスか?顔色凄いッスよ」
「え?ほ、ほんと?」
「汗だくで顔面蒼白ッス」
「休んだほうが良いでスよ、時間はいくらでもありまスからね」
「...そうだよね」
「そうッス」
「ねぇ、この資料のここだけ印刷とか出来る...?」
「ん~まぁ良いッスけど...」
「けど...?」
「深追いは駄目ッスよ、大分体にキてるみたいでスし」
「解ってる、艦娘は体が資本だもんね」
眼鏡の艦娘が資料を持って図書館の奥に戻っていく
あの資料からあの島の事はどれ程解るだろう